Mercedes-BenzとNVIDIAは2026年10月16日、次世代の運転支援・自動運転システムを共同開発する戦略提携の拡大を発表した。車両OSのMB.OSを、NVIDIAの車載計算機・センサー構成であるHyperionと連携させる。運転判断には推論機能を持つAlpamayo Stackを使い、Halosによる安全の仕組みを重ねる方針だ。

両社はすでにCLAの都市型運転支援を共同開発し、Sクラスを使う将来のレベル4構想も公表している。両社は今回の協業拡大で、そうした計画を次世代へ進めるため、AIの判断と車両全体の安全設計を組み合わせる方針を示した。NVIDIAの発表とMercedes側の発表は、将来の自動運転リムジンを含む用途の開発を挙げている。

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都市型レベル2とSクラスの構想から何が進むのか

Mercedes-Benzが1月7日付で紹介したCLAの「MB.DRIVE ASSIST PRO」は、駐車場から目的地まで、市街地の走行を支援するSAEレベル2のシステムである。NVIDIAのAIと運転ソフトウェアを使っていても、運転者が監視する前提は変わらない。都市を走れることと、人が運転に関与しなくてよいことは別の条件だ。同社は1月の説明で、中国では2025年末から提供済み、米国では2026年内に導入する予定としていた。

米運輸省道路交通安全局(NHTSA)の自動運転レベルの説明では、レベル2は操舵と加減速を同時に支援しても、運転者が注意を払い続ける。レベル3はシステムが運転を担う一方、要求された際に人が引き継ぐ。レベル4になると、限定された運行範囲ではシステムがすべての運転タスクを担い、乗員は運転への関与を求められない。数字が表すのは、運転タスクの分担である。

両社の発表を、この違いと提供状態で並べると、今回の位置づけが見えてくる。

公式資料の日付 対象・計画 資料が示す段階
2026年1月7日 CLAのMB.DRIVE ASSIST PRO 都市型のレベル2運転支援。1月時点で中国では提供済みと説明
2026年1月29日 新型Sクラスのレベル4対応アーキテクチャ 将来のUber経由のロボタクシー運用を想定した設計
2026年10月16日 次世代システムに向けた提携拡大 運転支援と将来のレベル4用途を支える共同開発

表はCLAの公式解説、Sクラスの公式解説、今回の共同発表を、対象と開発・提供状態で分類したものだ。Sクラスの解説は1月29日付だが、現行ページには9月のHyperion名称変更を反映したとの注記がある。

今回の発表は、すでに公表されたSクラスのレベル4対応構想を踏まえた提携拡大であり、レベル4サービスの開始発表ではない。

「レベル4対応」の設計と、乗客を乗せて無人運行できるサービスの間には、車両への実装と運行条件の具体化が残る。10月の発表は、発売する車種や運行都市、サービス開始日を示していない。既存のCLAやSクラスが無線更新によってレベル4になるという約束とも読めない。

推論AIを支える、並行した安全の仕組み

NVIDIAがSクラス向けに説明する設計は、AIに運転判断を任せつつ、別系統の従来型ソフトウェアを並行して動かすものだ。さらに計算機を冗長化し、カメラに加えてレーダーとLiDARを使う。ソフトウェアの判断と、周囲を捉えるセンサー、計算を続けるハードウェアのそれぞれに、異なる手段を組み込んでいる。

CLAの都市型運転支援について、Mercedes-Benzは約30個のセンサーを使うと説明し、内訳としてカメラ10個、レーダー5個、超音波センサー12個を挙げていた。一方、Sクラスのレベル4対応構想では、LiDARを含むセンサーの多様性と、計算機の一部が故障しても動作を維持するための冗長化を強調する。両者の違いは、AIモデルの性能だけでは説明できない。人が監視する支援と、人の運転関与を必要としない運行では、車両側に求める備えも変わる。

今回の協業でも、各技術は異なる役割を担う。MB.OSは運転機能や無線ソフトウェア更新を支え、Hyperionは車載計算機とセンサーを組み合わせる。Alpamayo Stackは状況を推論する運転ソフトウェアとして、都市の地点間走行支援や自動駐車、予防安全を支える。そしてHalosは、Mercedesの安全基盤に、並行して動く安全用ソフトウェアを含む仕組みを加える。

Halosの公式解説は、AIによる一連の運転処理と、処理を機能ごとに分けた従来型ソフトウェアの併用を説明している。設計段階から検証までを対象にし、シミュレーションや安全機能も組み込む。AIが複雑な状況で行動を選ぶ能力と、その動作を安全な範囲に保って確かめる仕組みを、別の責務として扱うわけだ。

ただし、これらは企業が説明する設計である。並行するソフトウェアが必ずAIの誤りを捕捉するという保証や、今回の車両で事故がどれだけ減るかを示す独立試験の結果は、共同発表に含まれていない。

もう一つ区別したいのが、公開AIモデルと車両に載るソフトウェアだ。NVIDIAは8月4日、公開モデル「Alpamayo 2 Super」の商用利用が可能になったと発表した。同社が示す開発経路では、大規模なモデルをクラウドで動かし、推論過程を記したデータや合成訓練データを作る。それを教師にして能力を小さなモデルへ移す「蒸留」を行い、車両で実時間処理できるように最適化する。

この経路なら、開発時に使う大きなモデルと、車載で効率よく動くモデルを使い分けられる。だが、10月の発表は搭載モデルの具体名や規模を明らかにしていない。「Alpamayo Stackを使う」ことから、公開版Alpamayo 2 Superをそのまま車内で動かすと結論づけることはできない。推論能力を量産車の機能に変えるには、車両ごとのセンサーや計算機に合わせた実装と検証が必要になる。

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Volvoにも広がる共通基盤、次は運行条件の具体化へ

Mercedes-Benzの発表前日、10月15日にはVolvo CarsもNVIDIAとの協業拡大を発表した。同社が次世代車で使うとしたのも、Hyperion、Alpamayo Stack、Halos OSである。高速道路から市街地、駐車までを対象に、運転者が前方を監視し続けなくてもよい機能を段階的に導入する方針を示した。

二つの発表を合わせると、NVIDIAが複数の自動車メーカーに提供するものは、車載の計算能力に加えて、運転ソフトウェアと安全な開発・検証の基盤へ広がっていると読める。車両メーカーは自社の車両設計や安全技術と組み合わせ、NVIDIAは共通して使える技術を供給する。Mercedesの発表が自社のMB.OSを明記している点も、そうした役割分担を示している。

もっとも、同じ技術名を採用しても、異なるメーカーの車が同じ場所で同じように走れるとは限らない。センサーの構成や車両への実装に加え、どの道路・天候で機能を使えるのかという条件が、実際のサービスを決める。メーカー間のデータ共有や契約の排他性も、今回の発表からは判断できない。

MercedesとNVIDIAの次の発表では、対象車両と走れる条件が、検証結果や運用体制とともにどこまで具体化するかが判断材料になる。その条件が示されれば、利用者は、監視を続ける都市型運転支援と、乗客として移動できる自動運転サービスを、実際に使える機能として比較できるようになる。