多数の自律型AIエージェントをゲームの仮想世界で活動させたとき、互いに協力して社会や文明を築くことはできるのだろうか。複数のAIエージェントによる協調作業は、ソフトウェア開発の自動化やサイバーセキュリティへの応用とともに、急速に関心を集めている。しかし、複雑な環境に多数のエージェントを投入しても、生産的な協力関係が自然に生まれるとは限らない。むしろ、形式的な手続きばかりが増え、肝心の作業が進まなくなる可能性がある。
米アクセラレーターのYC Labsと、AI向けシミュレーション環境を開発するOlam Labsは2026年10月29日、自律型AIエージェント同士の協調や対立をゲーム環境で検証した調査レポート『Agents in Games』を公開した。実験では、50体のエージェントによるMinecraft内での文明構築、10対10のチーム対戦、工場建設と防衛を競うリアルタイム戦略ゲームという3つのシナリオが用意された。それぞれの環境で、エージェントがどのように意思決定し、役割を分担し、予期しない問題に対処するかを記録している。
なかでも注目を集めたのが、Minecraft内のAIエージェントが複雑な「官僚機構」を形成し、生産活動を停滞させた事例だ。この結果は、AIが人間社会の非効率な側面を再現したかのように受け止められ、ソーシャルメディア上でも話題となった。しかし、今回の記録だけでAI社会の普遍的な性質や、特定のフロンティアモデルの優劣を判断することはできない。実験ログからは、モデルの推論能力に加え、エージェント名簿の順序や通信ツールといった実行環境の設計が、集団の意思決定や組織構造に大きく影響していたことが読み取れる。
3つのゲーム環境で検証されたAIエージェントの協調と対立
今回の実験を理解する上で重要なのは、検証に使用されたゲーム環境とモデルの構成を区別することだ。すべての実験がMinecraft内で行われたわけではなく、独立したゲームエンジンを使用するシナリオも含まれている。また、各実験ではエージェントの数や目標、使用するツールが異なるため、結果を同じ条件で測定されたモデル性能の比較として扱うことはできない。
最初の実験「Civ50」では、サバイバルモードの単一のMinecraftワールドに、OpenAIのGPT-6.1 Solを搭載した50体のエージェントを投入した。与えられた目標は「繁栄する文明を築く(Build a thriving civilization)」という自由度の高い指示だけで、具体的な役割分担や統治方法は定められていなかった。実験は3時間にわたって行われ、エージェントが自発的にどのような社会を形成するかが観察された。
2つ目の実験は、Minecraftの人気マルチプレイヤー対戦モード「Bed Wars」を使ったPvP(プレイヤー対プレイヤー)戦だ。GPT-6.1 Solを搭載した10体のエージェントと、AnthropicのClaude Opus 5.5を搭載した10体のエージェントがチームを組み、1試合45分の対戦を計9回行った。Bed Warsでは、自陣のベッドを守りながら相手チームのベッドを破壊し、敵のリスポーン(復活)を阻止して全滅させることが勝利条件となる。
3つ目の「Mindustry」は、Minecraftとは別のゲームを使用した実験だ。Mindustryは、工場建設、タワーディフェンス、リアルタイム戦略(RTS)を組み合わせたオープンソースの2Dゲームである。この実験では、GPT-6.1 SolとCodexを組み合わせたチームが、Claude Opus 5.5とClaude Codeを組み合わせたチームと対戦した。全7試合、合計約9.5時間にわたり、資源生産や防衛設備の構築、敵拠点への攻撃を競った。
- GPT勝利
- Claude勝利
データを表で見る
| GPT勝利 (試合数) | Claude勝利 (試合数) | |
|---|---|---|
| Bed Wars (全9戦) | 6 | 3 |
| Mindustry (全7戦) | 6 | 1 |
| 実験名 | 実行環境と制限時間 | エージェントと実行環境 | 目標と結果 | 観察された協調行動 | 主な検証上の限界 |
|---|---|---|---|---|---|
| Civ50 | Minecraft(サバイバル)、3時間 | GPT-6.1 Sol 50体(Pi+Mineflayer) | 繁栄する文明の構築。生存を優先し、食料生産は確立できず | Adaへの権限集中、配給台帳の作成、許認可手続きの肥大化 | 単一ワールドでの1試行のみ。再現性は未確認 |
| Bed Wars | Minecraft(Bed Wars)、45分×9試合 | GPT-6.1 Sol 10体 vs Claude Opus 5.5 10体 | 敵ベッドの破壊と敵チームの全滅。GPT側が6勝3敗 | GPT側は頻繁に連絡を取り、ベッド破壊を優先。Claude側は防衛と敵の撃破を重視 | 試行数が9試合と少なく、ツールの不具合への対応差も影響 |
| Mindustry | Mindustry(RTS)、全7試合、合計約9.5時間 | GPT-6.1 Sol+Codex vs Claude Opus 5.5+Claude Code | 敵コアの破壊。GPT側が6勝1敗 | GPT側は分散的な意思決定とソースコードの調査を活用。Claude側はリーダー主導の合意形成を採用 | モデルと実行ハーネスの違いを分離できず、計算資源コストも未計測 |
これらの結果は、厳密に条件を統制した学術的なベンチマークによるものではない。研究者や開発者に向けて公開された探索的な実験記録であり、第三者による再現性の検証も行われていない。そのため、対戦成績だけでモデルの優劣を判断するのではなく、異なる環境でどのような協調行動や問題が生じたのかを分析する資料として捉える必要がある。
食料生産より許認可が優先された50体のAIエージェント
文明構築を目指したCiv50では、50体のエージェントに、互いのIDを確認できるエージェント名簿、全員がアクセスできる共有サンドボックス、1対1でやり取りできるダイレクトメッセージ機能が与えられた。エージェントはこれらの手段を使い、作業計画を立てたり、他のメンバーに指示を出したりできる。3時間の実験中に交わされたメッセージは、約5,900通に達した。
しかし、文明建設は開始直後から困難に直面した。実験記録によると、3時間のあいだに計34件の死亡イベントが発生し、そのうち22件が最初の夜に集中していた。暗闇に現れるゾンビなどの敵性モブに襲われ、多くのエージェントが倒されたのである。ゲーム内ではリスポーンによるペナルティが比較的軽かったものの、最初の夜に大きな被害を受けたことで、当初計画されていた積極的な開拓作業の多くが放棄された。
その後、エージェントたちは屋外での資源採取を避け、松明で照らされた狭い避難所に集まり、防衛を優先するようになった。とりわけ深刻だったのが、食料の確保である。安定した食料供給に必要な農業体制は最後まで確立できず、限られた食料を細かく配給しながら生活する状態が続いた。食料不足に苦しみつつ、安全な水辺での釣りに頼って生き延びる場面も多く見られた。
データを表で見る
| 記録値 (件 / 通) | |
|---|---|
| 総通信数 (約) | 5,900 |
| 初夜の死亡数 | 22 |
| 全期間の総死亡数 | 34 |
| Ada宛ダイレクトメッセージ | 616 |
こうした状況で発達したのは、生産活動よりも複雑な管理手続きを重視する組織だった。共有サンドボックスには食料の配給台帳や生活規則、各種作業の許可申請に関する規定が書き込まれ、特定の仕事を担当する役職も設けられた。象徴的なのが、農作物の成長を促す骨粉の使用を巡る議論だ。4体のエージェントが11分間にわたって協議した結果、たった1つの小麦ブロックに骨粉を1個使用するために、唯一の施肥担当者(sole fertilizer operator)を任命することになった。本来なら短時間で終わる作業に、過剰な意思決定手続きが必要になっていたのである。
この組織で事実上の指導者となったのが、「Ada」と名付けられたエージェントだった。Adaは選挙や投票で選ばれたわけではなく、エージェント名簿の先頭にアルファベット順で掲載されていた。これが他のエージェントの初期行動に影響し、残る49体のうち46体が、最初のメッセージの送信先としてAdaを選んだ。初期の連絡が集中したことで、Adaは自然と情報を集約する立場になった。
Adaが受信したダイレクトメッセージは、実験全体で616通に達した。Ada自身も共有サンドボックスに開拓計画を書き込み、食料の配給や役職の割り当てを進めたため、組織運営の中心的な役割を担うようになった。この経緯は、集団の指導者が複雑な政治的判断によって選ばれたというよりも、名簿の並び順という単純な初期条件が、後の組織構造に強く影響したことを示している。ただし、名簿順を変更した追試は報告されておらず、Adaへの権限集中が別の配置でも起きるかは分かっていない。
レポートの執筆者らは、エージェントたちの過度に慎重で手続きを重視する振る舞いについて、コーディング支援エージェントがコードレビューで見せる慎重すぎる態度に似ていると指摘している。どちらも失敗を避けようとするあまり、実際の作業より確認や合意形成を優先してしまうという見方だ。ただし、これは実験結果に対する執筆者らの定性的な解釈であり、ソフトウェア開発とゲーム内の集団行動が同じ仕組みによって生じていると実証されたわけではない。
GPTは拠点攻略を優先、Claudeは防衛を重視した対戦実験
文明構築を目的とするCiv50とは異なり、Bed WarsとMindustryでは、対戦相手に勝つという明確な目標が与えられた。両実験ではGPT-6.1 Sol側が勝ち越したものの、その過程ではモデルごとの行動方針や通信方法に大きな違いが見られた。特にBed Warsでは、ゲームの勝利条件をどの程度優先するかが、両チームの戦術を分ける要因となった。
Bed Warsの全9試合では、GPT-6.1 SolチームがClaude Opus 5.5チームに6勝3敗で勝ち越した。Bed Warsで勝つには、相手を何度も倒すだけでは不十分で、敵のベッドを破壊してリスポーンを封じ、最終的に全滅させる必要がある。つまり、敵の撃破数を増やすことと、試合の勝利条件を満たすことは必ずしも一致しない。
Claudeチームは強固な陣地防衛と敵プレイヤーの迎撃を重視し、キル数ではGPTチームを大きく上回る場面があった。実際にClaude側が敗れた3試合では、キル数がそれぞれ63対16、57対19、59対24と、いずれもClaude側が優勢だった。しかし、防衛線を維持して敵を倒すことに注力するClaude側に対し、GPT側は損害を受けても敵のベッドを破壊する方針を優先した。その結果、GPT側がキル数では大幅に劣りながらも、防衛の隙を突いてベッドを破壊し、勝利する展開が繰り返された。
通信頻度にも顕著な違いがあった。ある試合(Game A)では、Claudeチームが送信したダイレクトメッセージは82通だったのに対し、GPTチームは1,147通に達していた。GPT側は頻繁に情報を共有しながら行動を調整していた一方、Claude側の通信は比較的少なかった。こうした連絡体制の違いは、ゲーム中に発生した予期しない問題への対応にも表れている。
対戦中、ブロックを破壊できなくなるツールの不具合が両チームで発生した。GPT側はこの異常を不具合として認識し、代替手段や回避策をメンバー間で共有することで作業を継続した。一方、Claude側の複数のエージェントは環境の不具合だと判断できず、「このブロックは破壊できない」という結論に至り、作業を断念した。少なくとも今回の試合では、問題の認識と対処方法の共有において、GPT側の通信が有効に働いたと考えられる。ただし、通信量そのものが勝敗を左右したのか、それとも不具合への対応方針など別の要因が重要だったのかは切り分けられていない。
Mindustryでも、GPT-6.1 SolとCodexのチームが、Claude Opus 5.5とClaude Codeのチームに6勝1敗で勝ち越した。この実験では、両チームに同じゲーム操作APIと対称的な資源配置が与えられ、開始時に具体的な戦術指示は与えられなかった。各エージェントは独立したLinuxサンドボックス内で動作し、汎用的な実行ハーネスを介してゲームを操作した。両チームは資源の生産や施設の建設、防衛設備の配置、敵拠点への攻撃などを自律的に進める必要があった。
観察記録によると、GPTチームは試合が進むにつれてメッセージを短く圧縮し、専門化された指示を分散的にやり取りするようになった。特定の指導者に意思決定を集中させず、各エージェントが役割に応じて動く傾向が見られたという。これに対してClaudeチームは、1体のリーダーを中心に作戦を立て、主要な提案に対して他のメンバーが「+1」と返信して賛同を示す方式を採用した。ただし、最後の2試合を除く多くの対戦は接戦であり、意思決定方式の違いが戦況や勝敗にどの程度影響したのかは検証されていない。
さらに、接戦となった試合では、GPT側のエージェントがインターネット上からMindustryの公開ソースコードを取得し、ゲーム内部の仕様や計算処理を調べて戦略に反映させた。これは実験のルールで禁止されていない情報収集であり、ゲームのプログラムを改ざんしたわけでもない。一方、Claude側で同様の方法を取ったエージェントは確認されなかった。この違いは、エージェントが与えられた操作手段だけでなく、利用可能な外部情報をどこまで活用するかという点でも異なる行動を取ったことを示している。
勝敗だけでは測れないモデル性能と実行環境の影響
今回の結果だけを見ると、GPT-6.1 SolはClaude Opus 5.5よりも複数エージェントによる協調に優れている、あるいは多数のAIエージェントを集めると必然的に官僚的な組織が生まれる、と結論づけたくなるかもしれない。しかし、実験設計を詳しく見ると、そうした一般化には慎重であるべき理由がいくつもある。特に、試行回数の少なさ、実行ハーネスの違い、計算資源コストの未計測は、結果を解釈する上で重要な制約となる。
まず、Civ50は単一のMinecraftワールドで3時間だけ実施された1回限りの実験だ。Adaへの権限集中や、最初の夜の被害をきっかけとした防衛重視への転換は、あくまでその環境で観察された出来事であり、他の条件でも同じ結果になるとは限らない。名簿順や初期配置、ゲーム内の偶然の出来事を変更した場合に、組織構造がどう変わるかは確認されていない。そのため、今回の結果をAIエージェント集団に共通する普遍的な行動特性とみなすことはできない。
対戦実験についても、Bed Warsは9試合、Mindustryは7試合と、試行回数が限られている。6勝3敗や6勝1敗という結果は報告された対戦シリーズの成績を示すものだが、初期条件や偶然の出来事による影響を十分に評価できる規模ではない。勝率の推定には大きな不確実性が残り、条件を変えた場合にも同じ優劣が維持されるかは分からない。安定した性能差を判断するには、条件を統一した上で試行回数を増やす必要がある。
さらに重要なのが、モデルと実行ハーネスを切り分けられていない点だ。Mindustryでは、GPT側がCodexを基盤とする実行環境を使用したのに対し、Claude側はClaude Codeを使用していた。両チームに与えられたゲーム操作APIは共通だったものの、システムプロンプトや会話履歴の圧縮方法、コンテキストウィンドウの管理、外部ツールの呼び出し方など、ハーネスに依存する条件まですべて統一されていたわけではない。したがって、GPT側の6勝1敗という結果が、モデル自体の戦略立案能力によるものなのか、実行環境やツールの使い方によるものなのか、この実験だけでは判断できない。
計算資源の消費量も評価されていない。レポートには、各チームが消費したトークン総数や、API利用料を含むドル換算の実行コストが記載されていない。Bed Warsで1試合に1,147通のメッセージを送信したGPTチームの方法は、勝利にはつながったものの、通信や推論にかかった費用が成果に見合っていたかは不明だ。現実の業務では、より多くのメッセージを交換して成功率を高める方法が、常に最も効率的とは限らない。成功率だけでなく、必要な時間やトークン消費量、運用コストを合わせて評価することが欠かせない。
また、ゲーム環境と現実の企業組織や物理世界には大きな違いがある。Minecraftでは死亡してもリスポーンでき、誤って設置したブロックも比較的容易に撤去できる。しかし、現実の業務では法的責任や金銭的損失が生じる場合があり、情報へのアクセス権限や作業の承認手続きにも厳格な管理が求められる。ゲーム内では非効率に見えた慎重な確認作業も、現実の高リスクな業務では必要になる可能性があるため、手続きの多さだけで行動の適切さを評価することはできない。
観測データの精度にも限界がある。レポートによれば、Civ50の配給記録の一部はゲーム内アイテムの実測値ではなく、エージェント自身の申告に依存していた。また、アイテムの所有者を判定する際にも誤りが含まれており、記録された配給状況がゲーム内の実態を正確に反映しているとは限らない。こうした測定上の問題も含め、今回の結果は探索的な観察として評価する必要がある。
オープンソース環境が開くマルチエージェント研究の可能性
今回の取り組みで重要なのは、注目を集めた対戦成績や官僚的な振る舞いだけではない。YC LabsとOlam Labsは、実験に使用した環境や関連ツールをオープンソースとして公開し、他の研究者や開発者が再現実験や改良に取り組めるようにした。特定のモデルが勝ったという結果だけでなく、エージェント同士の協調を検証するための環境が公開されたことに意義がある。
YC Labsが公開したMinecraft向けエージェントハーネスは、エージェントの思考ループを制御する「Pi」と、Minecraft世界とのやり取りを担うJavaScriptライブラリ「Mineflayer」を組み合わせて構築されている。周囲の環境を把握する機能、過去のやり取りを保持するメモリ、移動や採掘などの操作、他のエージェントとのメッセージ交換、任意のスクリプト実行といった機能を備える。これらの仕組みによって、エージェントはゲーム世界の状況を認識し、必要な操作を選びながら他のメンバーと協力できる。
一方、Olam LabsはMindustryを使用した実験を再現・拡張するため、「Multi-Agent Mindustry」と「Multi-Agent Harbor」を公開した。これらのフレームワークは、異なるモデルを混在させたチームの編成や、複数回の試行から優れた戦略を評価するBest-of-N方式の対戦に対応している。さらに、最大20体のエージェントが継続的な攻撃に対処する「Endless Survival」モードも用意されている。同社は、フロンティアAI研究所向けにモデルの能力や安全性を評価・訓練するシミュレーション環境を開発しており、今回のツール群もその技術を活用したものだ。
レポートの執筆者らは、今後の研究課題として、異なる能力を持つモデルを混在させた場合に、どのような役割分担や指揮系統が形成されるのかという問いを挙げている。例えば、高性能だが計算コストの大きいモデルを少数配置したチームと、軽量で安価なモデルを多数組み合わせたスウォーム型のチームでは、どちらが複雑な課題を効率よく達成できるのだろうか。個々のモデルの能力だけでなく、チーム全体の構成や通信方法が成果にどう影響するかを調べることが、次の研究テーマとなる。
そのためには、実験条件を統一した追試が不可欠だ。モデル自体の性能差を評価するには、実行ハーネスを共通化し、ツールの呼び出し方や会話履歴の管理方法を揃える必要がある。また、Civ50で見られた名簿順による権限集中を検証するには、エージェントの掲載順序をランダムに変更したり、通信可能な相手を制限したりする実験が考えられる。通信ネットワークの構造と意思決定の速さ、タスクの成功率、トークン消費量を比較することで、どのような協調方式が実際に効率的なのかを定量的に評価できるようになる。
今回の実験は、AIエージェントを多数集めるだけでは、生産的で効率的な組織が自動的に生まれるとは限らないことを示唆している。ただし、Civ50は1回限りの試行であり、官僚的な手続きの肥大化が必然的に起こると証明されたわけではない。重要なのは、モデルの推論能力だけでなく、情報共有の方法や権限の配分、合意形成に必要なコストが、集団全体の成果をどのように左右するかという点だ。無駄な手続きを抑えながら複雑な作業を確実に進めるための協調制御技術が、今後のマルチエージェントシステム開発における重要な研究課題となる。



