日本のゲーム大手、任天堂は2025年5月8日、待望の次世代ゲーム機「Nintendo Switch 2」について、発売初年度となる2025年度(2026年3月期)に全世界で1500万台の販売を見込んでいると発表した。
Switch 2、ついにベールを脱ぐ! 発売日と販売予測の衝撃
任天堂が2025年5月8日に発表した2025年3月期決算説明資料によると、2025年6月5日に全世界で発売される「Nintendo Switch 2」について、ハードウェア販売予測数量として1,500万台の販売を見込んでいることが明らかになった。同時に、ソフトウェアは4,500万本の販売を見込んでいる。
この1500万台という数字は、決して低いハードルではない。比較として、現行モデルのNintendo Switchは、発売初年度(2017年3月発売から約1年間)に約1486万台を販売し、爆発的なスタートを切った。今回のSwitch 2の目標は、この成功体験に匹敵する、あるいはそれを超えようとする野心的なものと言えるだろう。
一方で、Bloombergがまとめたエコノミスト調査の予測中央値である1680万台よりはやや控えめな数字となっている。しかし、市場調査会社Omdiaは2025年単年で1470万台の販売を予測しており、これは初代Switchのデビュー年を約10%上回るペースであると指摘している。
任天堂の業績とSwitch 2への「大きな賭け」
任天堂が発表した2025年3月期(FY25)の連結決算は、売上高が前期比30.3%減の1兆1649億円、営業利益が46.6%減の2825億円、純利益が43.2%減の2788億円となった。これは、現行Switchの販売台数がピークアウトし、多くのゲーマーが次世代機であるSwitch 2の登場を待って買い控えした影響が大きいと考えられる。実際、FY25のSwitchハードウェア販売台数は1080万台と、前期比で31.2%減少した。
アナリストによれば、任天堂の収益の約90%は依然としてSwitchビジネスからもたらされている。それだけに、Switch 2の成功は同社の将来を左右すると言っても過言ではない。
任天堂は2026年3月期(FY26)の業績予想として、売上高1兆9000億円(前期比63.1%増)、営業利益3200億円(同13.3%増)、純利益3000億円(同7.6%増)を掲げており、Switch 2が業績回復の強力な牽引役となることへの期待が明確に示されている。
市場の反応と専門家の見解:「期待」と「慎重論」が交錯
Switch 2の販売予測1500万台に対し、市場や専門家からは様々な声が上がっている。
ジェフリーズ証券のアナリスト、Atul Goyal氏は、Switch 2の「需要は供給を大幅に上回るだろう」と強気の見方を示している。また、人気ゲームシリーズ「グランド・セフト・オート6」の発売が2026年5月に延期されたことも、任天堂にとっては追い風になると指摘。「GTA6は任天堂に直接的な影響はないが、ゲーム発売の観点から任天堂の競争環境をはるかに緩やかなものにする」と述べている。
一方で、東京を拠点とするゲームコンサルタント会社Kantan GamesのCEO、Serkan Toto氏は、任天堂の予測は通常保守的であるとしつつも、「関税をめぐる現在の状況が、これまで以上に慎重になるあらゆる理由を彼らに与えている」とコメント。関税問題が任天堂にとって「不透明な未来」を生み出しており、ハードウェアメーカーが販売予測を立てることを「不可能にしている」と警鐘を鳴らしている。
最大の懸念材料:米国の関税問題とその影響
任天堂の古川俊太郎社長も、米国の通商関税が業績に影響を与える可能性について懸念を表明している。同社は、2025年4月10日時点の米国の関税率を前提に業績予想を作成していると明記しており、今後の関税率の変更が予測に影響を与える可能性があると警告している。
CNBCの報道によると、任天堂のコンソールはベトナムで製造されており、Trump大統領によって導入された関税措置が施行されれば、最大46%の関税に直面する可能性があるとのことだ。古川社長は、追加関税が課され、製品価格の調整が必要になった場合、米国での需要が減少する可能性があると述べており、関税によって利益が数百億円規模で打撃を受ける可能性も示唆している。
任天堂は、Trump大統領による広範な関税発表後、米国でのSwitch 2の予約受付を数週間遅らせるなど、既に関税問題への対応を迫られている。この問題の行方は、Switch 2の販売戦略、ひいては任天堂の業績全体に大きな影響を与える最重要ファクターと言えるだろう。
1500万台は通過点か、それとも… Switch 2の未来は?
任天堂が打ち出したNintendo Switch 2の初年度販売台数1500万台という目標は、同社の自信の表れであると同時に、乗り越えるべき課題の大きさを物語っている。初代Switchが築き上げた1億5000万台以上(2025年3月末時点でのセルスルー累計)という巨大なユーザーベースは、後継機へのスムーズな移行を後押しする強力な基盤となるだろう。
しかし、初代機からの大幅な価格上昇、そして依然として不透明な米国の関税問題は、楽観できない要素である。任天堂が持つ強力なIP(知的財産)、魅力的なローンチタイトル、そしてSwitch 2ならではの革新的なゲーム体験が、これらのハードルを乗り越え、再び世界中のゲームファンを熱狂させることができるのか。2025年6月5日の発売以降、その真価が問われることになる。
Sources
- 任天堂:決算説明資料 [PDF]