任天堂は、次世代ゲーム機「Nintendo Switch 2」の日本国内における予約抽選応募が想定を大幅に上回る220万件に達し、初期供給数がこれに全く追いつかない状況であり「相当数のユーザーが当選しない」ことを公式に発表した。同社の古川俊太郎社長は供給不足について謝罪するとともに、今後の増産体制強化を約束している。
異例の220万件応募、初期供給を遥かに凌駕
任天堂が4月2日に詳細を発表し、同日より「マイニンテンドーストア」で受付を開始したNintendo Switch 2の予約抽選販売。その結果は、任天堂自身の想定すら遥かに超えるものであった。
任天堂の古川俊太郎社長は、公式Xアカウントを通じて声明を発表。日本国内だけで約220万件もの応募があったことを明らかにした。古川社長は声明の中で、「事前に多くの部材を調達し、生産を進めてきました」「ただ、これは私たちの事前の想定を大幅に上回っており、マイニンテンドーストアから6月5日にお届けできる『Nintendo Switch 2』本体の数量を大きく超えてしまっております」と述べ、供給が需要に全く追いつかない状況を認めた。
古川です。みなさまのお手元に「Nintendo Switch 2」をお届けすべく、事前に多くの部材を調達し、生産を進めてきました。4月2日には「Nintendo Switch…
— 任天堂株式会社 (@Nintendo) April 23, 2025
この220万件という数字がいかに大きなものかは、比較対象として、2017年に発売された初代Nintendo Switchの数字を見てみると分かりやすい。初代Switchの日本国内における発売後約1ヶ月(集計期間:2017年3月3日~3月26日)の販売台数は約36万台だった。単純計算で、今回の予約応募数は、初代Switchの発売初期需要の約6倍に達する規模ということになる。世界的に見ても、初代Switchは発売後数週間で274万台を販売しており、日本国内だけでそれに匹敵する初期需要が示された形となった。
供給不足による影響と任天堂の対応
この状況を受け、任天堂は「大変残念なことに、明日4月24日の当選発表においては、相当数のお客様が当選しないことが想定されます」と、多くの応募者が初回抽選で購入できない見通しであることを明言した。
落選者への配慮として、任天堂は「第1回の抽選販売で当選されなかった方の再応募のお手間を避けるため、第1回の抽選販売で当選されなかった方を第2回の抽選販売に自動的に繰り越して抽選させていただきます」と発表した。しかし、続けて「ですが、第2回抽選販売の数量を含めても、いただいたご応募すべてにお応えすることはできません」と述べ、2回目の抽選をもってしても、初期の応募者全員に行き渡らせることは不可能であるという、厳しい見通しを示した。
古川社長は「事前に準備をしていたにもかかわらず、みなさまのご期待にお応えできないことを深くお詫びいたします」と、異例とも言える謝罪を行った。
転売対策は? 抽選システムの意図と現実
今回のNintendo Switch 2の予約は、従来の先着順ではなく、マイニンテンドーストアでの抽選販売形式が取られた。更に、この抽選に参加するためには一定の条件が付与されていた。具体的には、有料サービス「Nintendo Switch Online」に1年以上加入し、かつ特定の期日までに50時間以上のプレイ履歴があるアカウントが優先されるというものだ。
これは、PlayStation 5発売時の品薄状況で横行したような、自動化されたボットによる買い占めや、転売ヤーによる大量購入を防ぐための措置と考えられる。ログイン認証やアカウントの利用実績を条件とすることで、純粋なゲームファンに製品が行き渡る確率を高めようという意図があったものと見られる。
しかし、こうした対策にもかかわらず、一部の転売ヤーはすでに対応策を見出している可能性が指摘されている。日本のフリマアプリ「メルカリ」や「ヤフオク!」などでは、抽選結果発表前にもかかわらず、「Nintendo Switch 2 予約権利」などと称する出品が見られた。これらは本体の確保を保証するものではなく、あくまで抽選への参加権(あるいは当選後の購入権利の又売り)である可能性が高いものの、それでも高額で取引されようとしている事実は、転売需要の根強さを示唆している。
とはいえ、過去のゲーム機発売時に見られたような、ボットによる瞬時の大量購入といったあからさまな手法は、今回の抽選システムによってある程度抑制されていると考えられる。任天堂の転売対策は完全ではないものの、一定の効果は発揮し、転売ヤーにとってはより手間のかかる状況を作り出したと言える。
今後の供給とグローバル展開
任天堂は、今回の爆発的な需要を受け、「現在、この需要を受けて、さらに生産体制を強化するなどの取り組みを行っております」と述べている。また、「『Nintendo Switch 2』は今後も相当数を生産・出荷していく計画を立てています」とし、継続的な供給努力を行う姿勢を強調した。
日本国内では、マイニンテンドーストアだけでなく、4月24日以降、全国のゲーム取扱店やオンラインショップでも順次、予約受付または抽選販売が開始される予定である。ただし、各販売店での具体的な供給数や販売方法は不明であり、こちらも厳しい競争となることが予想される。
海外での状況を見ると、ヨーロッパの一部地域ではすでに予約が開始され、瞬く間に完売したと報じられている。米国では、当初関税問題による遅延が懸念されていたが、4月24日から449.99ドルで予約が開始される予定だ。
日本国内では、マイニンテンドーストア限定で多言語対応版(予価69,980円)も用意されており、国内専用モデル(予価49,980円)と合わせて展開される。
初代Switchの成功と、そのライフサイクル終盤における期待感の高まりが、今回のNintendo Switch 2への異常とも言える需要を生み出したと考えられる。任天堂は供給体制の強化を約束しているものの、消費者の手元に十分な数のNintendo Switch 2が行き渡るまでには、しばらく時間がかかる可能性が高い。「みなさまのご期待にお応えできるようになるまで、お時間をいただくことになってしまい大変申し訳ございません」という古川社長の言葉が、現状の深刻さを物語っている。当面の間、Nintendo Switch 2の供給数は、需要に対して極めて限定的な状態が続くこととなるだろう。
Sources
- 任天堂 (X)