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NotionがGPT-4.1・Claude 3.7搭載の「Notion AI for Work」を発表

Y Kobayashi

2025年5月14日

コラボレーションツール「Notion」が、AI機能を大幅に強化した「Notion AI for Work」を発表した。これは、OpenAIの「GPT-4.1」やAnthropicの「Claude 3.7」といった最先端の大規模言語モデル(LLM)をワークスペースに直接統合し、議事録作成からエンタープライズサーチ、リサーチまでを網羅するオールインワンAIツールキットだ。この動きは、乱立するAIツールと既存ワークフローとの連携不足という、多くの企業が抱える課題へのNotionなりの回答と言えるだろう。

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AI活用の「分断」と「複雑さ」に終止符を:Notion AI for Work登場の背景

AIの可能性に期待が寄せられて久しいが、実際の業務現場では、複数のAIツールが乱立し、それぞれのツールがチームのワークフローと十分に連携していないために、その真価を発揮しきれていない状況が散見される。Notion自身の調査でも、「AIの統合」がビジネスにおける最大の課題として挙げられているという。

「Notion AI for Work」は、まさにこの課題解決を目指すものだ。個別のAIツールを導入することによるコスト増大や運用の複雑化を避け、Notionという使い慣れたワークスペース内で、シームレスに高度なAI機能を利用できる環境を提供する。

Notionのブログ記事によれば、主な新機能は以下の通りだ:

  • AI ミーティングノート: 面倒な議事録作成から解放され、会議の要点やアクションアイテムを自動で抽出。
  • エンタープライズ検索: Notionワークスペースだけでなく、Slack、Google Drive、GitHubなど連携する全てのアプリから必要な情報を瞬時に検索。
  • リサーチモード: プロジェクト報告や調査レポートなど、必要なドキュメントの草稿をAIが自動生成。
  • 最先端のAIモデルへのアクセス: OpenAIのGPT-4.1やAnthropicのClaude 3.7など、高性能なAIモデルを別途契約なしに利用可能。
  • オールインワンの料金体系: 複数のAIツールを個別に契約する手間とコストを削減。

これらの機能は、OpenAI、Ramp、Vercel、Harveyといった先進企業ですでに導入が始まっているという。単なる思いつきの機能追加ではなく、実用性を見据えた戦略であることがうかがえる。

仕事のあり方を変革する注目の新機能群

では、個々の機能は具体的にどのような体験をもたらすのだろうか。

AIミーティングノート:議事録作成からの解放と「使える」記録へ

Introducing AI Meeting Notes

会議は不可欠だが、その記録と共有は常に悩みの種だ。「どれだけ熱心な記録係がいても、会議が終わった瞬間に、決定事項やアイデア、重要な気づきの多くは失われてしまいます」とNotionは指摘する。この課題に対し、「AI ミーティングノート」は強力な解決策を提示する。

この機能は、会議中の会話をリアルタイムで文字起こしし、終了後には自動で要約、さらには具体的なアクションアイテムまで抽出してくれる。また、NotionのAIが文字起こしをしている間もユーザーがメモを取れるという。 全ての会議データがNotion内に保存されるため、後からAIで検索したり、関連プロジェクトと連携させたりすることも容易だ。

特筆すべきは、この機能がNotionのデスクトップアプリに直接組み込まれている点だ。Notionカレンダーと連携していれば、会議通知からワンクリックでAIミーティングノートを開始できる。記録された会議データはNotion内に保存され、後からAIで検索したり、関連プロジェクトと連携させたりすることが可能である。使い慣れたNotionのインターフェース内で、既存のAIノート製作ツールと同様の利便性を実現することを目指している。

対応言語も英語、日本語、中国語、スペイン語、フランス語、ドイツ語、韓国語など多岐にわたる。

エンタープライズ検索:情報過多の時代に「探す」から「見つける」へ

現代の仕事は、Slack、Gmail、Google Drive、GitHubなど、無数のツールに情報が散在しがちだ。「必要な情報を見つけるには、アプリの森を探し回るか、チームメンバーの返信を何時間も待つしかありません」。Notionが提示するこの課題認識は、多くの人が共感するところだろう。

「エンタープライズ検索」は、この課題に対するNotionのソリューションだ。Notion内の情報はもちろん、連携している外部アプリケーションの情報も横断的に、自然言語で検索できる。例えば、「次のブランドキャンペーンの最新情報は?」と聞くだけで、Notion AIが関連情報を探し出し、提示する。

現在対応しているコネクタはSlack、Microsoft、Jira、Google Workspace、GitHubなどで、今後はLinear、Gmail、Zendesk、Box、Salesforceにも対応予定である。

リサーチモード:「下調べ」をAIに任せ、創造的な業務に集中

「チームのプロジェクトの進捗について報告を求められたり、『これってどこかに記録されていますか?』という、聞き慣れた質問を受けたりします」。こうした日常的なシーンで、情報収集と資料作成に膨大な時間を費やした経験は誰にでもあるはずだ。

「リサーチモード」は、この負担を劇的に軽減する。ユーザーがプロンプトを入力すると、Notion AIがワークスペース内の全情報ソースに加え、ウェブ上の情報まで分析し、整理された詳細なドキュメントを自動で下書きしてくれるのだ。 プロジェクトの進捗報告、市場調査レポート、社内向けのベストプラクティス集など、これまで数日かかっていた作業が数分で完了する可能性もあるという。 これにより、人間はより創造的な業務や意思決定に集中できるようになるだろう。

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Notion AIを支える頭脳 ~GPT-4.1とClaude 3.7を搭載、モデル選択も可能に~

ChatGPTやClaudeといった高性能なAIモデルは注目を集めているが、利用するには別途契約が必要だったり、作業ウィンドウを切り替える必要があったりした。Notionは、これらの最先端モデル(具体的にはOpenAIのGPT-4.1とAnthropicのClaude 3.7 Sonnet)を、追加費用なしでNotionワークスペース内で利用可能にする。

特筆すべきは、ユーザーが作業の流れを中断することなく、Notionのワークスペース内でこれらの高性能モデルを切り替えて利用できる点だ。 これにより、例えばより会話的なトーンが求められる作業にはClaude 3.7を、高度なコーディング支援が必要な場合にはGPT-4.1を、といった使い分けが可能になる。Notion AIエンジニアリングリードのSarah Sachs氏はVentureBeatに対し、「この設定により、Notion AIはビジネスニーズを理解し、関連性の高い回答を提供し、顧客データのを安全かつコンプライアンスに準拠した形で保護しながら、1秒未満のレイテンシでサービスを提供できます」と語っている。

さらにSachs氏は、これらの外部モデルに加え、Notion独自のモデルも活用し、特にNotion内での検索タスクに特化させるためにファインチューニングを施していることを明らかにしている。

Notionが推論モデル一辺倒ではなく、GPT-4.1(テクニカルには推論モデルではない)とハイブリッドなClaude 3.7 Sonnetを採用した点は興味深い。Notion AIエンジニアリングリードのSarah Sachs氏は、「低遅延な体験を実現するため、信頼できるテスターからのフィードバックと内部利用を通じてモデルをファインチューニングし、Notionの検索タスクに特化させた」とコメントしており、精度、安全性、プライバシーを犠牲にすることなく、企業が必要とする速度で応答することを目指した結果であることがうかがえる。

NotionのAI戦略:単なる機能追加ではない「プラットフォーム化」への布石か?

今回の「Notion AI for Work」の発表は、単に便利なAI機能が追加されたという以上の意味を持つと筆者は考えている。これは、Notionが目指す「オールインワン・ワークスペース」という構想を、AIの力で加速させるための重要な布石ではないだろうか。

オールインワン戦略の強みと価格設定

Notionは、検索、メモ、ライティング、チャット、翻訳といったAI機能を個別のツールとして導入する場合、1ユーザーあたり月額150ドルから300ドル以上のコストがかかる可能性があると指摘。 これに対し、Notionはこれらの機能をすべて含んだ上で、月額30ドル未満という価格設定を提示している(ビジネスプラン、エンタープライズプランの場合、AI機能は無制限利用可能)。 この価格戦略は、特に中小企業やスタートアップにとって大きな魅力となるだろう。複数のツールを使い分ける煩雑さや、それぞれに発生するコスト、データのサイロ化といった問題を一挙に解決しようという野心的な試みだ。

熾烈な競争環境とNotionの独自性

しかし、AIを活用した生産性向上の領域は、すでに激しい競争が繰り広げられている。OpenAIやAnthropicといったモデル開発企業自身も、自社のチャットプラットフォームに生産性機能を組み込み始めている。 GoogleやMicrosoftといった巨大プラットフォーマーも、それぞれのワークスペース製品群に強力なAI機能を統合済みだ。さらに、会議の文字起こしや要約に特化したRead AI、Circleback、Granola、Otterといった専門ツールも多数存在する。

このような状況下で、Notionが打ち出す強みは何か?それは、「既存のワークスペースとの深い統合」「シームレスなオールインワン体験」 に尽きると言えるだろう。多くのユーザーがすでにドキュメント管理やプロジェクト管理のハブとしてNotionを利用している。そこにAI機能が自然な形で組み込まれることで、新たなツールを導入したり、作業コンテキストを頻繁に切り替えたりする必要がなくなる。この「いつもの場所で、すべてができる」という利便性は、他の追随を許さないNotionならではの価値となる可能性が高い。

「ツールは、思考の負荷を減らし、生産性を高めてくれるものであるべきです」。Notionが掲げるこの理念は、今回のAI戦略によってさらに具現化されようとしている。

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料金体系と提供時期、そしてデータプライバシーについて

気になる料金だが、Notionは新しい料金体系を導入した。詳細は公式サイト(notion.com/pricing)で確認できる。 新規契約者には即日適用され、既存契約者でプラン価格が変更になる場合は、2025年8月13日以降の最初の更新時から新料金が適用されるとのことだ。

機能の提供時期については、リサーチモードとAIミーティングノートはすでに利用可能。エンタープライズ検索とAIコネクタは現在順次展開中であり、まだ利用できないユーザーも間もなくアクセスできるようになる見込みだ。 無料プランまたはプラスプランのユーザーは、これらの機能を一定回数まで試用できる。ビジネスプランまたはエンタープライズプランのワークスペースでは、無制限に利用可能となる。

そして、AIを利用する上で最も重要な懸念事項の一つがデータプライバシーだろう。この点についてNotionは、「デフォルトでは、Notionも当社のAIサブプロセッサーも、お客様のデータをモデルの学習に使用することはありません」と明言している。 詳細はNotion AIのセキュリティとプライバシーに関するヘルプページで確認できるが、これはユーザーにとって大きな安心材料となるはずだ。


Sources

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