NVIDIAは2026年10月13日、DLSSのフレーム生成を高速化する新設定「Preset C」を、NVIDIAアプリのベータ版で公開した。GeForce RTX 40/50シリーズに対応し、前後のフレームから動きを推定する処理の一部を、より軽量なアルゴリズムに置き換える。NVIDIAによると、RTX 5060では最大35%の高速化を実現するという。一方、画質についてはわずかな低下が生じることも認めている。今回の改良で注目すべきなのは、AIが生成するフレームの数を増やすのではなく、同じ生成倍率のままフレームレートを引き上げられる点だ。ただし、その効果を正しく評価するには、表示上のfpsだけでなく、ゲーム本来の描画性能や操作への応答性も考慮する必要がある。

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フレーム生成を高速化する「Preset C」の仕組み

DLSSのフレーム生成は、ゲームエンジンが描画したフレームの間にAIが生成した画像を挿入し、映像を滑らかに見せる技術だ。

NVIDIAの公式説明によると、従来のFrame GenerationとMulti Frame Generationでは、役割の異なる2つのAIモデルを使用している。

1つ目のモデルは、ゲームエンジンから提供される動きベクトルと深度情報を利用する。

動きベクトルは、画面上の物体などがどの方向へ、どれだけ移動したかを表す情報だ。一方、深度情報はカメラから物体までの距離を示す。これらを組み合わせることで、ゲームが描画した2つのフレームの間で、物体がどのように動いたのかを推定する。

2つ目のモデルは、前後の画像を直接比較し、画面上の見かけの動きを推定する「光学フロー(Optical Flow)」を計算する。

これは、ゲームエンジンから提供される動きベクトルだけでは捉えきれない変化を補うための処理だ。

例えば、画面に重ねて表示されるユーザーインターフェース(UI)や、レイトレーシングによって生じる反射・照明の変化などは、3D空間内の物体の移動情報だけでは正確に把握できない場合がある。

そこで、実際の画像から変化を推定する光学フローを利用し、フレーム生成の精度を高めている。

今回のPreset Cでは、この光学フローを計算する2つ目のAIモデルを、より高速で軽量なアルゴリズムに置き換えている。

NVIDIAによると、これにより通常のFrame Generationだけでなく、Multi Frame GenerationやDynamic Multi Frame Generationも高速化できるという。

ただし、新しいアルゴリズムの具体的な仕組みは公表されていない。

光学フローの処理は、以前からNVIDIAが最適化を進めてきた部分でもある。

NVIDIAは2025年のDLSS 4発表で、それまでハードウェアで計算していた光学フローを、より効率的なAIモデルに置き換えたと説明していた。

今回のPreset Cは、そのAIモデルをさらに軽量な処理へ変更するものだ。ただし、以前の専用ハードウェアを使用する方式に戻ったのか、引き続きAIをどの程度利用しているのかは明らかになっていない。

また、光学フローは生成フレームの品質に関わるため、処理の軽量化によって画質が変化する可能性もある。

NVIDIA自身も、Preset Cには画質面でわずかな妥協が伴うと説明している。ただし、具体的にどのような場面で、どの程度の違いが生じるのかを示す比較結果は公開されていない。

したがって、画質への影響が本当に小さいのかどうかは、実際のゲームで検証する必要がある。

RTX 5060では最大35%高速化、6X設定では255fpsから348fpsに

NVIDIAはPreset Cの効果を示すため、GeForce RTX 5060 8GBモデルを使った『Cyberpunk 2077』の性能比較を公開している。

公式の性能グラフでは、従来のQuality Modeに相当するPreset A/Bと、新しいPerformance ModeであるPreset Cを、同じフレーム生成倍率で比較している。

グラフに掲載された数値から増加率を算出すると、次のようになる。

フレーム生成の設定 Preset A/B Preset C 表示fpsの増加率
フレーム生成OFF 83fps 対象外 対象外
2X 120fps 132fps 10.0%
4X 197fps 244fps 23.9%
6X 255fps 348fps 36.5%

測定条件は、解像度1440p、レイトレーシングは中程度、DLSS超解像度はBalancedモード。CPUにはAMD Ryzen 7 9800X3D、メモリには64GBのDDR5を使用している。

増加率は、NVIDIAが2026年10月13日に公開したグラフの数値をもとに「(Preset Cのfps ÷ Preset A/Bのfps − 1)×100」で算出し、小数第1位に丸めたものだ。当編集部が独自に測定した結果ではない。

注目すべきなのは、同じフレーム生成倍率でも、Preset Cへ切り替えることで表示fpsが大きく向上している点だ。

2X設定では120fpsから132fpsへと10.0%向上し、4Xでは197fpsから244fpsへと23.9%向上している。

さらに6X設定では、従来の255fpsから348fpsへと増加した。増加率は約36.5%に達する。

NVIDIAが発表本文で示している公称値は「最大35%」だが、グラフに記載された255fpsと348fpsから計算すると約36.5%になる。この違いについては、公称値とグラフから算出した数値を区別して捉える必要がある。

いずれにしても、これはRTX 5060を使った特定のゲーム設定での結果であり、すべての対応GPUやゲームで同じ性能向上が得られるわけではない。

また、今回の比較は画質を完全にそろえたものではない点にも注意したい。

NVIDIAはPreset Cについて、従来の設定と比べて画質がわずかに低下する可能性を認めている。

高いフレーム生成倍率で大幅なfps向上が確認されたとしても、その性能差に見合う画質を維持できるかどうかは別の問題だ。

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フレーム生成の処理負荷を軽減、ただしfps向上と入力遅延は別問題

フレーム生成は、追加の画像を作り出すためにGPUの処理能力を使用する。そのため、フレーム生成自体にも一定の処理時間が必要になる。

NVIDIAが開発者向けに公開しているStreamlineのDLSS Frame Generation資料には、フレーム生成にかかる処理時間の目安が掲載されている。

例えば、GeForce RTX 5080で1440pのフレーム生成を行う場合、2X設定では2.04ミリ秒、4X設定では3.61ミリ秒となっている。

ただし、これはPreset Cを使った測定結果ではなく、今回のRTX 5060による性能比較とも条件が異なる。NVIDIAも、ゲームエンジンや実装方法によって処理時間が変わるため、あくまで参考値として示している。

それでも、フレーム生成にはGPUの処理時間が必要であり、生成倍率が変われば負荷も変化することがわかる。

ゲーム本体の描画処理が高速でも、追加フレームの生成に時間がかかれば、次のフレームを処理するペースに影響する可能性がある。

Preset Cは、こうしたフレーム生成の処理負荷を軽減する改良と考えられる。

実際、NVIDIAの測定では、同じ6X設定のまま255fpsから348fpsへと表示フレームレートが向上している。

これは、生成するフレームの倍率を引き上げた結果ではない。フレーム生成に必要な処理を効率化することで、従来と同じ設定でも、より多くのフレームを表示できるようになったということだ。

ただし、ここで重要なのが、表示上のfpsと、ゲームエンジンが実際に描画するfpsは異なるという点だ。

DLSSのフレーム生成では、ゲームエンジンが描画したフレームに加え、AIが生成したフレームも画面に表示される。

NVIDIAのStreamline資料でも、アプリケーション本来のフレームレートと、1フレーム当たりに実際に表示されるフレーム数を使って、最終的な出力fpsを計算する方法が説明されている。

つまり、フレーム生成によって表示fpsが増えても、それと同じ割合でゲーム内部のシミュレーションや入力処理が高速化されるわけではない。

例えば、Preset Cで348fpsを表示できたとしても、ゲーム本体を通常描画だけで348fps動かした場合と、同等の操作応答性が得られるとは限らない。

光学フローの処理が軽くなれば、GPU全体の負荷が下がり、ゲーム本来の描画性能や遅延にも良い影響を与える可能性はある。しかし、今回NVIDIAが公開したグラフでは、これらの指標は測定されていない。

また、DLSSのフレーム生成には、システム全体の遅延を抑える「NVIDIA Reflex」も組み込まれている。

Streamlineでは、DLSS Frame Generationを使用する際にReflexの統合が必須とされているが、それによってPreset C自体が入力遅延を何ミリ秒改善するのかが明らかになるわけではない。

Preset Cの効果を総合的に判断するには、表示fpsだけでなく、実際の入力遅延やフレームの表示間隔なども測定する必要がある。

RTX 40シリーズも対応、ただし6Xフレーム生成は利用できない

Preset CはGeForce RTX 40シリーズとRTX 50シリーズの両方で利用できる。

ただし、Preset Cに対応したからといって、RTX 40シリーズでMulti Frame Generationや6Xフレーム生成が使えるようになるわけではない。

RTX 40シリーズが利用できるのは通常のFrame Generationであり、複数のフレームを生成するMulti Frame Generationや、生成倍率を動的に調整するDynamic Multi Frame GenerationはRTX 50シリーズ向けの機能だ。

NVIDIAもDLSS 4.5の機能紹介で、動的なフレーム生成制御と最大6Xのフレーム生成はRTX 50シリーズ向けと説明している。

したがって、RTX 40シリーズでは、対応する通常のフレーム生成を軽量化するためにPreset Cを利用することになる。

また、今回の性能グラフにRTX 40シリーズの測定結果は含まれていない。

RTX 5060で2X設定の表示fpsが10.0%向上したからといって、RTX 40シリーズでも同じ改善率が得られるとは限らない。

GPUの世代や性能だけでなく、解像度やゲームの処理負荷によっても、軽量化の効果は変わる可能性がある。

もう一つ注意したいのが、DLSSの超解像度設定とフレーム生成設定の違いだ。

Preset Cは、あくまでフレーム生成に使用するモデルの設定であり、DLSS Super ResolutionのPerformanceモードへ切り替えるものではない。

NVIDIAの公式グラフでも、超解像度はBalancedモードに固定したまま、フレーム生成のPreset A/BとPreset Cを比較している。

Preset Cを有効にする手順

NVIDIAが案内している設定方法は、次のとおりだ。

  1. NVIDIAアプリを最新版に更新し、「Settings」の「About」から「Opt in to access Beta or experimental features」を有効にする。ベータ版の更新がダウンロードされたら、画面の案内に従ってインストールする。
  2. NVIDIAアプリの「Graphics」を開き、対応するゲームを選択する。すべての対応ゲームに適用したい場合は「Global Settings」を選ぶ。
  3. 「Driver Settings」にある「DLSS Override - Model Presets」を開き、「Custom」を選択する。
  4. 「Frame Generation」のドロップダウンメニューから「Preset C」を選び、「Apply」をクリックする。Preset Cが表示されない場合は、NVIDIAの案内に従ってPCを再起動する。

なお、この設定を利用できるのは、フレーム生成とDLSS Overrideに対応するゲームに限られる。

フレーム生成に対応していないゲームへ、新たにその機能を追加できるわけではない。

まずはゲームごとにPreset Cを適用し、従来の設定と比較してみるのがよいだろう。

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画質と応答性を比較し、自分の環境に合った設定を選びたい

DLSS 4.5では、今回のPreset Cに先立ち、従来のPreset Bでもフレーム生成の画質改善が行われていた。

Preset Bでは、対応ゲームから追加のUI情報を受け取ることで、ミニマップや画面上の表示をより正確に再現できるようになっている。

つまり、フレーム生成の画質はAIモデルの性能だけでなく、ゲームエンジン側から提供される情報にも左右される。

今回のPreset Cについて、NVIDIAは光学フローを担当するモデルを軽量なアルゴリズムに置き換えたと説明しているものの、従来のUI向け処理が具体的にどう変化したのかまでは明らかにしていない。

そのため、ミニマップの表示が必ず崩れる、反射部分に必ず残像が発生するといった判断はできない。

実際に比較するなら、同じゲームの同じ場面で、DLSS超解像度とフレーム生成の倍率を固定し、Preset A/BとPreset Cだけを切り替えて確認するのがよいだろう。

その際は、表示fpsの違いだけでなく、カメラを動かしたときのUIや細い物体の輪郭、反射や照明の変化などにも注目したい。

静止画では違いがわかりにくい場合でも、実際に動かしてみると生成フレームの品質差が見えることがある。

さらに、マウスやコントローラーの操作に対する反応も重要な比較対象だ。

もちろん、こうした点を確認する必要があるからといって、Preset Cで特定の画質問題や入力遅延の悪化が確認されたという意味ではない。

今回NVIDIAが示したのは、フレーム生成に必要な処理を効率化することで、GPUを買い替えずに表示フレームレートを向上させられる可能性だ。

今後、RTX 40シリーズを含む幅広いGPUで独立した検証が進み、同じ生成倍率での画質や入力遅延への影響が明らかになれば、どのような環境でPreset Cを使うべきか判断しやすくなるだろう。

画質や操作への応答性を十分に維持しながら表示fpsを高められるのであれば、既存GPUの性能をさらに引き出す、有用な選択肢になりそうだ。