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OpenAIとMicrosoft、報道機関のAI活用に15億円規模の支援プログラムを開始

Y Kobayashi

2024年10月23日

OpenAIとMicrosoftは2024年10月22日、米国の報道機関向けに総額1000万ドル(約15億円)規模の支援プログラム「Lenfest Institute AI Collaborative and Fellowship program」を開始すると発表した。この取り組みは、ジャーナリズムの次世代発展を支援するLenfest Instituteとの協働で実施される。

支援内容は両社がそれぞれ250万ドルの直接資金と、同額のソフトウェアおよび企業クレジットを提供するというものである。初回の支援対象として、Chicago Public Media、The Minnesota Star Tribune、Newsday、The Philadelphia Inquirer、The Seattle Timesの5社が選出された。

各社独自のAI活用計画が明らかに

支援を受ける各社は、2年間のAIフェローを雇用し、それぞれ以下のような特色ある取り組みを展開する計画である:

  • Chicago Public Media:AI技術を活用した文字起こし、要約、翻訳サービスによるコンテンツ提供の拡大
  • The Minnesota Star Tribune:記者と読者双方向のAI要約・分析・コンテンツ発見システムの実験
  • Newsday:ニュースルーム向けの公共データ要約・集約ツールの開発
  • The Philadelphia Inquirer:アーカイブ検索用の対話型インターフェース構築
  • The Seattle Times:広告販売やトレーニング支援におけるAI活用

地方ジャーナリズムの持続可能性を追求

OpenAIのTom Rubin知的財産・コンテンツ責任者は「記者の中心的役割は代替不可能だが、AIは取材、調査、配信、収益化の面で重要なジャーナリズムを支援できる」と述べ、特に脆弱な地方ジャーナリズムの分野でAIが貢献できると強調している。

一方、MicrosoftのTeresa Hutson副社長は「地方ジャーナリズムには市民への情報提供、不正の暴露、市民参加の促進という役割がある」と指摘。AIイノベーションを通じて、報道機関の新製品開発や収益源の開拓を支援し、持続可能な未来の構築を目指すとしている。

著作権訴訟の渦中での大胆な一手

この支援プログラムの発表は、The New York Timesをはじめとする複数のメディアが、OpenAIとMicrosoftに対して著作権侵害訴訟を起こしている最中になされた。両社は一部のメディアとライセンス契約を結んでいるものの、訴訟は継続中である。

この支援プログラムは、AIと報道機関の関係性を再定義する重要な転換点となる可能性を秘めたものだ。特筆すべきは、支援対象が大手メディアではなく地方報道機関に焦点を当てている点にある。

地方メディアの経営難が深刻化する中、AIツールの効果的な活用は、コスト削減だけでなく、より深い報道活動への人的リソースの集中を可能にするだろう。また、各社の取り組みを業界全体で共有する仕組みは、ジャーナリズム全体のデジタル変革を加速させる触媒となることが期待される。

ただし、著作権問題が未解決である中でのこの動きは、両社による「アメとムチ」的なアプローチとも解釈できる。今後、AI企業とメディアの関係性がどのように発展していくのか、業界関係者から注目が集まっている。


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