OpenAIは2026年第3四半期に入ってから、法人向けを軸に売上ランレートの伸びを速めた。CNBCが8月19日に報じた全社会議の資料では、四半期累計の全社売上ランレートは35%増、法人売上ランレートは50%増だった。RampがAPI接続企業から日次で取得した企業API支出でも、OpenAIは前四半期比82%増となり、Anthropicの76%を上回った。
ただし、ここからOpenAIが売上規模でもAnthropicを抜き返したとはいえない。7月末の年間換算ランレート(ARR)はAnthropicが650億ドル、OpenAIが400億ドル超であり、OpenAIの数字は下限を示すにとどまる。成長率、年間換算の売上ペース、四半期売上、そしてAPI支出の増加率は、分母も対象も違う。今回の数字は、追い上げの速さと企業利用の変化を示すが、首位の交代をそのまま示すものではない。
Q3累計ではOpenAIの伸びが前に出た
CNBCが確認したOpenAIの社内資料は、四半期が始まってからの売上ランレートの変化を示す。これは確定した四半期売上でも、前年同期比でもない。OpenAIの2026年第2四半期売上は67億ドルで、第1四半期比18%増だったとCNBCは報じたが、Q3累計35%増をこの実績値と同じ指標として並べることはできない。
法人部門のランレートが50%増だったという説明と並んで、AIコーディングおよび業務向け製品の週間利用者は2,000万人とされた。企業需要がどの製品や契約にどれだけ配分されたかは、社内資料からは分からない。
モデル投入の時系列は明確だ。OpenAIはGPT-5.6 Solを7月9日に一般提供し、API価格を入力100万トークン当たり5ドル、出力100万トークン当たり30ドルと定めた。RampのAra Kharazianは、Solの品質と開発者の選好をOpenAIの伸びの理由に挙げた。ただし公開データでは、35%または50%の増加のうち、Solがどれだけを生んだかを切り分けられない。
既存のモデル別集計では、直近1カ月にSolはOpenAIのトークンの25%、支出の23%を占めた一方、AnthropicのFable 5は同社トークンの6%、支出の11.4%だった。これは直近1カ月のモデル別利用・支出の状況を示す前提情報であり、会社全体の売上やQ3の成長寄与を表すものではない。
650億ドル対400億ドル超は別の順位を示す
Anthropicは規模でなお先行する。CNBCが確認した7月末のARRは650億ドルで、OpenAIは400億ドル超だった。OpenAI側が下限付きの数字であるため、ここから差額や倍率を正確に算出することはできない。この比較は同じ会計条件でそろえた売上順位ではなく、規模感の目安にとどまる。
四半期の売上でも、CNBCが確認したAnthropicの2026年第2四半期暫定売上は115億ドルだった。OpenAIの第2四半期売上67億ドルとの差は、API支出の伸び率が一時点で逆転したことと矛盾しない。大きい基準値を持つ企業が成長率で下回っても、売上額がすぐ逆転するわけではないからだ。
両社のARRを確定した年間売上へ置き換えることもできない。ARRは短期の売上ペースを12カ月へ延ばした指標で、将来の実績ではない。OpenAIのQ3累計ランレートも、監査済み決算ではなく、CNBCが匿名情報源を通じて報じた社内資料の数字である。
API支出と有料採用率は分母が違う
Rampの82%対76%は、通常公開されるAI Indexの支出集計ではない。企業がAPIを接続したトークン支出管理データから日次で取得した、Q3累計の前四半期比成長率である。技術企業寄りのサンプルであり、市場全体、全企業の売上、消費者向け売上を代表しない。
| 数字 | 対象・分母 | 比較から分かること | 同一視できないもの |
|---|---|---|---|
| OpenAIのQ3累計35%増、法人50%増 | 四半期開始後のOpenAI社内売上ランレート | 同社が示した全社・法人の伸び | 確定四半期売上、前年比、前四半期比 |
| OpenAI 82%、Anthropic 76% | RampへAPI接続した企業のトークン支出管理データ | 企業API支出の前四半期比の伸び | 両社の全社売上成長率、市場シェア |
| Anthropic 650億ドル、OpenAI 400億ドル超 | 各社が示した年間換算ランレート | 売上ペースの規模感。OpenAI側は下限付き | 確定年間売上、差額・倍率、会計条件をそろえた比較 |
| Anthropic 43.5%、OpenAI 39.7% | 7月にAI製品への正の取引が1件でもあったRamp対象企業 | 有料採用があった企業の比率 | 支出金額シェア、無料利用を含む利用者数 |
通常のRamp AI Indexは、米国企業のカード・請求書取引を使う。月内にAI製品への正の支出が一件でもあれば採用と数え、無料利用や個人アカウント経由の利用は捉えない。7月の有料採用率ではAnthropicが43.5%、OpenAIが39.7%で、こちらはAnthropicが上だった。既存顧客の利用額が増えれば支出は伸びるが、有料採用率は新たな企業が支払いを始めない限り上がらない。二つの指標が違う方向を指しても不自然ではない。
企業が支出先を選ぶ際は、モデル性能と単価に加え、データ保持の条件も考慮する。契約や既存ワークフローへの統合、利用上限も判断を左右する。RampのデータはAPI接続企業の変化を細かく追える一方で、何が各社の支出増を決めたかまでは証明しない。
IPOで会計の差が見えるまで
比較をさらに難しくするのが、売上認識の範囲である。Wall Street Journalは4月、Anthropicがクラウドパートナー経由の技術販売を売上に含め、OpenAIは含めないと報じた。利益指標も、両社は訓練費用を含むものと除くものを示しており、AnthropicはEBITDA、OpenAIはEBITを用いる。ARRの差額から、採算や顧客支出の差まで結論づけることはできない。
CNBCはOpenAIが2026年6月にIPO書類を非公開で提出し、Anthropicも同様に提出済みと報じている。公開後のS-1で収益認識、粗利率、顧客集中が開示されれば、いまは並べにくい数字を同じ表で読む手がかりが増えるだろう。
現時点で確認できるのは、OpenAIがQ3累計の法人需要と、RampにAPIを接続した企業の支出データで伸びを加速させたこと、そしてAnthropicがARRと7月の有料採用率で先行していることだ。次に見るべきは、成長率の競争がどの契約形態と収益認識の下で売上額へ変わるかである。
