PS2のゲームディスクをPS5に挿入するだけで、ゲームデータを取り込み、そのまま起動できる。非公式PS2エミュレーター「PS5SX2」のバージョン2.01で、こうした操作を自動化するベータ機能が追加された。ただし、利用できるのは、非公式ソフトウェアを実行できるように制限を解除した、いわゆる「脱獄済み」のPS5に限られる。続くバージョン2.02では、ディスクから直接ゲームを読み込んでプレイする実験的な機能も追加され、手持ちのPS2ゲームをPS5で楽しむための選択肢が広がりつつある。ただし、ゲームをコピーしてから起動する方式と、ディスクを直接読み込む方式では仕組みも動作確認の状況も異なる。単に「PS2ディスクに対応した」というだけでは、実際に利用できる条件を正確に伝えられない。
PS2ディスクを挿入するだけで自動起動、直接読み込みにも対応
PS5SX2のディスク対応には、バージョン2.01で追加された「コピー後の自動起動」と、バージョン2.02で導入された「ディスクの直接読み込み」という2つの方式がある。
開発者のSword氏は、GitHubで公開したバージョン2.01のリリースノートで、PS2ディスクをPS5に挿入すると、まだ取り込んでいないゲームであれば自動的にデータをコピーし、完了後に起動する仕組みを説明している。ディスクを取り出すとゲーム一覧画面に戻り、PS5SX2を起動していない状態でもディスクの挿入を検知して動作するという。
つまり、ディスクの挿入をきっかけにゲームの取り込みと起動が始まり、実際のプレイには保存されたゲームデータを使用する仕組みだ。すでに取り込み済みのゲームであれば、再びコピーすることなく起動できる。
バージョン2.02のリリースノートによると、コピー中のゲームは一覧画面に表示され、進捗状況も確認できるようになった。コピーが完了するまではゲームを起動できないため、読み込み途中のデータを誤って実行することも防げる。
一方、ディスクの直接読み込みは、開発者のHeyde Moura氏が提出したプルリクエスト「PR #34」を基にしている。この提案では、ディスクドライブを内蔵していないPS5でも、USB接続のDVDドライブなどを使ってPS2ゲームを読み込めるようにしたと説明されている。Sword氏は提案の一部を取り込み、バージョン2.02では設定を変更した場合にのみ利用できる実験機能として追加した。初期設定では無効になっている。
両方式の違いを整理すると、次のようになる。
| 方式 | ゲームデータの扱い | 提供状況・動作確認 |
|---|---|---|
| 2.01のディスク自動起動 | 未取り込みのディスクはゲームデータをコピーし、保存されたデータから起動 | ベータ機能。開発者が報告した実機試験は初期型PS5の1台 |
| 2.02のディスク直接読み込み | ディスクドライブからゲームデータを直接読み込んで実行 | 実験機能で初期設定では無効。外付けドライブでの試験結果はあるが、正式に取り込まれた実装の検証は限定的 |
直接読み込み機能の提案者が公開した動作確認では、ファームウェア12.20のPS5にTSSTcorp製のDVDドライブ「SN-208FB」を接続し、DVD版『Kingdom Hearts』(SLUS-20370)を実行している。ディスクを認識してから約3秒でゲーム名が表示され、その後、数分間は正常な速度でプレイできたという。
ただし、この試験には重要な制約がある。使用されたのはRADVを描画に利用するビルドであり、PS5SX2が通常使用するVulkanドライバー「ps5vk」を組み込んだビルドでは動作確認されていない。また、PS2のCD-ROM版ゲームや、ゲーム一覧の表示中にディスクを交換した場合の動作なども未検証とされている。
正式な開発版への取り込みに際しても、Sword氏はディスクドライブを備えた実機での検証が必要だと指摘している。そのため、特定のPS5と外付けドライブでゲームを実行できたという報告を、さまざまなドライブで問題なく動作することが確認されたと解釈すべきではない。
コピー後に自動起動する方式についても、安定性を高めるための改良が進んでいる。例えば、ディスクに不良セクターがあり、コピーが途中で中断された場合には、未完了であることを示す印を残して自動起動を停止する。また、同じディスクから短時間に起動を繰り返すことを防ぐ仕組みも導入された。
ディスクを認識してゲームを起動できるだけでなく、読み込みに失敗した場合や処理が中断された場合にも適切に対応できるよう、機能の完成度を高めている段階だ。
PS5SX2はPCSX2をPS5へ移植した非公式エミュレーター
PS5SX2は、PC向けのPS2エミュレーターとして知られる「PCSX2」を、PS5で動作するように移植したソフトウェアだ。
プロジェクトの公式GitHubリポジトリによると、PS2のプログラムを変換して実行する再コンパイラーはPS5のCPU上で動作し、グラフィックスの描画にはMihawk-99氏が開発したVulkanドライバー「ps5vk」を調整したものが使われている。
PCで実行したゲームの映像をPS5へストリーミングする方式ではなく、ゲームの処理から描画までPS5本体で実行する点が特徴だ。
ただし、PS2のゲームプログラムをPS5がそのまま実行しているわけではない。PCSX2によるエミュレーションと命令の変換を介して動作するため、ゲームによって互換性や描画品質、処理速度などが異なる可能性がある。
また、今回の機能追加は、一般的なPS5にPS2のディスクを入れるだけで遊べるようになったという意味でもない。
ソニーが公開しているPS5の取扱説明書では、PS2やPS3などのゲームディスクをPS5で再生することはできないと明記されている。PS5SX2は、あくまで非公式ソフトウェアの実行が可能な脱獄済みPS5を対象としたプロジェクトだ。
さらに、利用には自分が所有するPS2本体から取り出したBIOSが必要となる。PS5SX2にはBIOSやゲームデータ、暗号鍵などは付属しておらず、利用者が適切に用意しなければならない。
ディスクの種類にも制約がある。
Tom's Hardwareの報道では、PS5SX2で読み込める物理ディスクとしてDVD版のPS2ゲームが紹介されている。一方、ソニーの対応メディア一覧によると、PS5はCDの再生に対応していない。
そのため、PS5の内蔵ディスクドライブでDVD版ゲームを読み込めることと、CD-ROM版のPS2ゲームも同様に扱えることは別の問題だ。
ただし、内蔵ドライブの制約が、外付けドライブを使う場合にもそのまま当てはまるとは限らない。PR #34にはCDの読み込み処理に関する実装も含まれているが、PS2のCD-ROM版ゲームを使った実機試験はまだ行われていない。
現時点では、内蔵ドライブがCDに対応していないことと、外付けドライブによるCD読み込みが未検証であることを区別する必要がある。
最大4K描画やフレーム生成にも対応、108作品で動作試験
PS5SX2の特徴は、PS2ゲームを読み込めることだけではない。元のPS2より高い解像度でゲームを描画する機能も備えている。
GitHubのREADMEでは、PS2本来の最大6倍の解像度による描画と4K出力への対応が紹介されている。さらに、バージョン2.00のリリースノートによると、PS5 Pro向けには8倍の解像度設定も追加された。
ただし、これらは選択可能な描画設定であり、すべてのPS2ゲームが最高解像度で快適に動作することを保証するものではない。ゲームの内容や処理負荷によっては、解像度を下げる必要がある。
フレームレートに関する機能も充実しているが、ここではゲーム自体のフレームレートを変更する機能と、表示フレームを補間する機能を区別する必要がある。
PS5SX2はPCSX2由来の60fpsパッチに対応している。これは、対応するゲームの動作を高フレームレート化するものだが、処理負荷が増えるため、安定した動作を維持するには描画解像度を下げなければならない場合があると開発者は説明している。
一方、バージョン2.00では、実験的なフレーム生成機能も追加された。
この機能は、120Hz対応テレビを利用する場合、60fpsのゲームを120fps相当、30fpsのゲームを60fps相当の表示にするものだ。元のゲームが生成するフレームの間に新しい表示フレームを補うことで、見た目の滑らかさを高める仕組みとなっている。
ただし、フレーム生成が機能するのは、元のゲームのフレームレートが安定している場合に限られる。また、画面上のFPS表示はテレビへ送信されるフレーム数を数えているため、表示上の数値が倍になっても、ゲーム内部の処理速度まで倍増したことにはならない。
描画解像度、ゲームそのものの動作速度、画面表示の滑らかさは、それぞれ別の性能として評価する必要がある。
互換性については、PS5SX2のREADMEに108作品の動作試験結果が掲載されている。
ただし、この108作品という数字は、2026年9月の初期ビルドなどで起動を確認したゲームの合計であり、すべての作品が最初から最後まで問題なくプレイできたことを意味するものではない。
開発者自身も、一覧は互換性を保証するものではないと明記している。試験時間が3分未満のゲームや、起動後にどれだけプレイしたかが記録されていない作品も含まれているためだ。
さらに、この108作品はPS5SX2全体の動作試験結果であり、物理ディスクからの自動起動や直接読み込みが確認された作品数ではない。
バージョン2.01のディスク自動起動について、開発者が明記している実機試験は初期型PS5の1台に限られる。遊びたいゲームの動作報告を調べる際には、ゲームファイルから起動した結果なのか、物理ディスクを使った試験なのかを確認する必要がある。
PS2ディスクをPS5で遊ぶため、今後の互換性検証が重要に
今回のディスク自動起動機能によって、PS2のゲームディスクをPS5に挿入し、データを取り込んで起動するまでの手順を自動化できるようになった。
これまでも、あらかじめゲームデータをファイルとして用意すればPS5SX2で実行できたが、今回の機能は、物理ディスクを使ってゲームを起動したい利用者にとって利便性を高めるものだ。
特に、バージョン2.02で追加されたコピーの進捗表示は、ゲームデータの取り込みにどれだけ時間がかかるのかを把握しやすくする改善といえる。
一方、ディスクを直接読み込む方式については、まだ実験段階にある。外付けドライブでの動作報告はあるものの、さまざまなPS5本体やディスクドライブ、ゲームとの組み合わせで安定して利用できるかは、今後の検証次第だ。
今後の普及を判断するうえで重要なのは、単に対応ゲーム数が増えることだけではない。
ディスクからのコピーを最後まで正常に完了できるか、直接読み込みで長時間のプレイを続けられるか、ディスクの交換や抜き差しによって不具合が発生しないかといった点が重要になる。
PS5本体のモデルやファームウェア、使用したディスクドライブの種類を明示した動作報告が蓄積されれば、利用者は自分の環境でどの方式が使えるのかを判断しやすくなる。
PS5SX2の開発が進めば、かつてPS2で遊んでいたゲームを、現在のハードウェアで再び楽しむための選択肢はさらに広がる可能性がある。ただし、現段階では脱獄済みPS5を必要とする非公式プロジェクトであり、すべてのPS2ゲームが問題なく動作するわけではない。今回の機能追加は、手持ちのPS2ディスクをPS5で活用するための技術的な前進であると同時に、実用化に向けた検証がこれから本格化する段階といえる。



