Circanaの集計によると、2026年8月の米国におけるゲーム機の販売台数は、前年同月比15%減の55万9000台だった。8月としては2013年以来の低水準だ。一方、ゲーム機への支出額は同3%減の3億200万ドルにとどまった。1台あたりの平均購入価格が前年の476ドルから541ドルへ13.7%上昇し、販売台数の減少による影響を大幅に相殺したためだ。過去1年間にはSony、Microsoft、任天堂の3社が相次いで米国での希望小売価格を引き上げ、各社のゲーム機は発売当初よりも高くなっている。こうした値上げは販売動向にどのような影響を与えたのか。また、物価上昇を考慮すると、現在のゲーム機は発売時と比べて実際にどれほど高くなっているのだろうか。
販売台数は15%減、それでも支出額が3%減にとどまった理由
Circanaのアナリスト、Mat Piscatella氏が2026年10月8日にBlueskyで公表した8月の集計では、販売台数、支出額、平均購入価格の3つが明らかになっている。販売台数は55万9000台で、8月としては2013年の42万3000台以来の低水準となった。支出額は前年同月の3億1200万ドルから3億200万ドルへ3%減少した。一方、平均購入価格は541ドルに達し、それまで8月の最高記録だった2025年の476ドルを更新した。
ゲーム機への支出額は、販売台数に平均購入価格を掛けることで、おおむね求められる。販売台数が前年の0.85倍に減った一方、平均購入価格は541÷476で約1.137倍となった。両者を掛け合わせると約0.966倍、つまり支出額の減少率は約3.4%となる。実際、55万9000台に平均購入価格の541ドルを掛けると約3億240万ドルとなり、公表された3億200万ドルとほぼ一致する。平均購入価格の13.7%上昇が販売台数15%減の影響を大きく相殺し、支出額の減少を3%程度に抑えたことが分かる。
前年の数字からも確認できる。販売台数が15%減だったことから、2025年8月の販売台数は約65万8000台と逆算できる。これに当時の平均購入価格476ドルを掛けると約3億1300万ドルとなり、公表値の3億1200万ドルに近い。ただし、逆算に使用した15%という減少率は整数に丸められた数字であり、前年の販売台数や金額は概算となる。
注意したいのは、541ドルという数字が全機種を合算した平均購入価格であり、個々の機種の値上げ幅を示すものではない点だ。平均価格の上昇が定価の引き上げによるものなのか、より高価な機種の販売比率が高まったためなのかは、この数字だけでは判断できない。
比較対象となる2025年8月にも特殊な事情がある。Sonyが米国でPS5の価格を引き上げたのは8月21日で、同月の大半は値上げ前の価格で販売されていた。また、同月はSwitch 2の発売から3か月目にあたる。2026年8月の販売台数15%減という数字は、こうした条件の異なる前年同月との比較である。
さらに、2026年1〜8月の累計支出額は前年比11%減の25億ドルと、8月単月の3%減よりも落ち込みが大きい。少なくとも8月については平均購入価格の上昇が販売台数の減少を補ったものの、年間を通じて同じ傾向が続いていたわけではない。
Sony、Microsoft、任天堂が相次いで値上げ、販売台数も前年割れ
2025年8月21日のSonyによるPS5の値上げから、2026年9月1日に実施された任天堂のSwitch 2の値上げまで、約1年間にわたって大手3社の価格改定が続いた。この間、SonyとMicrosoftはそれぞれ2回の値上げを実施している。
Circanaの販売データを見ると、2026年5月にはPS5の販売台数が、7月と8月にはゲーム機市場全体の販売台数が、それぞれ前年同月を下回った。
| 日付 | 出来事 | 主な数値・内容 |
|---|---|---|
| 2025年8月21日 | Sonyが米国でPS5を値上げ | PS5:549.99ドル、Digital Edition:499.99ドル、PS5 Pro:749.99ドル |
| 2025年10月 | Microsoftが米国でXbox本体を値上げ | 機種により20〜70ドルの値上げ |
| 2026年4月2日(3月27日発表) | SonyがPS5を再び値上げ | PS5:649.99ドル、Digital Edition:599.99ドル、PS5 Pro:899.99ドル |
| 2026年4月4日終了週 | Circanaの週次集計 | PS5の販売台数・金額が、当時の2026年における週間最高を記録 |
| 2026年5月8日 | 任天堂が米国でのSwitch 2の値上げを発表 | 9月1日から449.99ドルを499.99ドルに引き上げ |
| 2026年5月 | Circanaの月次集計 | PS5は台数58%減、金額43%減。PS5の平均購入価格は672ドル(33%上昇)、業界全体では502ドル(前年440ドル) |
| 2026年6月25日(8月1日実施) | Microsoftが世界的な価格改定を発表 | 512GBモデルは100ドル、1TBモデルは150ドル値上げ。2TBモデルは販売終了 |
| 2026年7月 | Circanaの月次集計 | 市場全体の販売台数39%減、平均購入価格542ドル(16%上昇)、支出額29%減の2億8200万ドル |
| 2026年8月 | Circanaの月次集計 | 市場全体の販売台数15%減の55万9000台、平均購入価格541ドル |
| 2026年9月1日 | 任天堂が米国でSwitch 2を値上げ | 449.99ドルから499.99ドルへ |
時系列で見ると、3社の値上げが続くなか、2026年5月のPS5は前年同月比58%減、7月のゲーム機市場全体は39%減、8月の市場全体は15%減となっている。ただし、5月はPS5単体、7月と8月は市場全体の数字であり、比較対象が異なる。また、値上げと販売台数の減少が同じ時期に起きているからといって、値上げが減少の原因だったと断定することはできない。
前年同月比は、比較対象となる月の市場環境にも左右される。2025年6月にはSwitch 2が発売され、同年8月21日にはPS5が値上げされている。こうした出来事が翌年の前年比に影響する点を考慮する必要がある。
実際、7月の39%減から8月の15%減へと減少率が縮小したからといって、市場が回復したとは限らない。7月のSwitch 2の販売台数は前年同月比51%減だったが、比較対象の2025年7月は発売2か月目であり、需要が集中しやすい時期だった。一方、同月のPS5は6%減、Xbox Seriesは18%減と、機種によって減少幅に大きな違いがあった。前年の販売状況が異なれば、前年比の数字も大きく変わる。
4月4日終了週の販売記録についても、慎重に見る必要がある。Sonyが3月27日に値上げを発表し、4月2日に新価格へ移行した週、PS5の販売台数と販売金額はいずれも、その時点で2026年の週間最高を記録した。ただし、これが値上げ前の駆け込み需要によるものだったのか、また、その後の夏場の需要にどのような影響を与えたのかは、Circanaの公表データからは判断できない。
値上げについて各社が説明した理由も一様ではない。Sonyは2025年8月に「厳しい経済環境」、2026年3月には「世界経済の継続的な圧力」を理由に挙げた。任天堂は「市場環境の変化」と説明している。
一方、Microsoftはゲーム機に使用するストレージとメモリの価格が2.5倍以上に高騰しており、2027年秋までにさらに倍増する見通しだと説明した。同社は、ゲーム機本体を製造原価よりも安く販売するのが一般的だとも述べている。その前提では、部品価格が上昇すれば、販売価格を据え置いた場合の1台あたりの損失がさらに膨らむことになる。
PS5は販売台数が減っても販売金額が増加、Xboxとの違いはどこにあるのか
2026年8月のCircanaによる米国小売市場の集計では、ゲーム機の販売台数と販売金額に興味深い違いが見られる。
販売台数はPlayStationが前年同月比11%減で、8月としては2013年以来の低水準となった。Xboxは31%減で2020年以来の低水準、Nintendoは15%減だった。
ところが、販売金額ではPS5が17%増加した一方、Xbox SeriesとSwitch 2はいずれも13%減少している。販売台数、販売金額ともにSwitch 2が首位、PS5が2位となった。
ここでいうPS5の販売金額17%増は、Circanaが集計した米国小売市場でのPS5本体の販売額であり、Sonyの決算上の売上高を示すものではない。
実際、Sonyが公表した2026年4〜6月の全世界におけるPS5の出荷台数は160万台で、前年同期の250万台から減少している。ただし、こちらはメーカーから小売店などへの出荷台数(sell-in)であり、Circanaの米国小売市場における販売データとは対象地域も集計方法も異なるため、直接比較はできない。
販売金額と販売台数の変化率からは、1台あたりの平均購入価格がどの程度上昇したかを概算できる。
計算式は次のとおりだ。
平均購入価格の変化率=(1+販売金額の変化率)÷(1+販売台数の変化率)−1
この式を当てはめると、PlayStationは1.17÷0.89で約31%、Xboxは0.87÷0.69で約26%の上昇となる。
ただし、公表されている変化率は整数%に丸められているため、逆算値には誤差が生じる。また、PlayStationについては販売台数がPlayStationハードウェア全体、販売金額がPS5ハードウェアを対象としており、集計範囲が完全には一致していない。そのため、約31%という数字は厳密な平均価格の上昇率ではなく、参考値として扱う必要がある。
では、実際の希望小売価格はどれほど上昇したのか。
PS5は2025年8月21日の値上げ後から2026年4月2日の再値上げ後までに、通常版が549.99ドルから649.99ドル、Digital Editionが499.99ドルから599.99ドル、PS5 Proが749.99ドルから899.99ドルとなった。上昇率は18.2〜20.0%だ。
Xboxについては、Microsoftが公表した2026年8月1日の値上げ幅と、二次報道で確認できる機種別の価格を組み合わせると、2025年8月から2026年8月までにSeries S(512GB)は379.99ドルから499.99ドルへ31.6%、Series Xは599.99ドルから799.99ドルへ33.3%上昇した計算になる。
これに対し、Circanaの8月の販売台数と販売金額から逆算した平均購入価格の上昇率は、PlayStationが約31%、Xboxが約26%だ。
Xboxの平均購入価格の上昇率は、同期間における定価の上昇率である約32〜33%を下回っている。一方、PlayStationは逆算値の約31%が、直近の定価の値上げ幅である18〜20%を上回る。ただし、PS5については比較対象となる2025年8月の大半が値上げ前の価格だったため、両者を単純に比較することはできない。
PS5の場合、前年8月の平均購入価格には値上げ前の水準が大きく反映されている。したがって、約31%という上昇率には、2025年8月以前の定価から現在の定価への値上げ分も含まれる。ただし、参照した一次資料では2025年8月21日の改定前の定価を確認できていないため、その影響を数値として分離することはできない。
さらに、平均購入価格には定価の変更だけでなく、売れた機種の構成も影響する。
例えば、8月22日終了週のPS5の平均購入価格は680ドルで、通常版の希望小売価格649.99ドルを上回っていた。899.99ドルのPS5 Proの販売比率が高まった可能性も考えられるが、機種別の販売台数は公表されておらず、確認はできない。
Xboxの平均購入価格の上昇率が定価の上昇率を下回った背景には、比較的安価なSeries Sの販売比率が高まった可能性もある。ただし、これも推測にとどまる。なお、同じ週の平均購入価格はXbox Seriesが622ドル、Switch 2が451ドルだった。
Nintendoについては、販売台数が初代Switchを含むNintendo製ゲーム機全体、販売金額がSwitch 2単体という異なる集計範囲のため、同じ方法で平均購入価格を逆算することはできない。
1〜8月の累計販売台数を見ると、Xboxは前年比33%減で、同期間として過去最低となった。PlayStationも25%減と、2013年以来の低水準に落ち込んでいる。
それでも、同期間の平均購入価格はXboxが529ドル(前年比26%上昇)、PlayStationが597ドル(同20%上昇)と、いずれも米国での過去最高を記録した。なお、これらは1〜8月の累計をもとにした機種別の平均であり、8月単月の市場全体の平均購入価格541ドルとは集計期間も対象も異なる。
Piscatella氏は2026年10月9日、こうした状況について「消費者が価格に敏感になっていることが、現実的な問題になりつつある」と指摘した(原文:"Price sensitivity is becoming a real problem.")。
物価上昇を考慮すると、PS5ディスク版は発売時とほぼ同額、Xbox Series Sは約3割高い
ゲーム機が発売時と比べて実際にどれほど高くなったかを考えるには、単純な値上げ率だけでなく、その間の物価上昇も考慮する必要がある。
ここでは米国の全項目消費者物価指数(CPI-U、季節調整なし)を使い、発売時の価格と2026年8月時点の希望小売価格を比較する。
米国のCPI-Uは、2020年11月の260.229から2026年8月には334.980へ上昇した。約5年9か月で物価水準は28.7%上昇したことになる。
実質的な価格の上昇率は、2026年8月の希望小売価格を物価の上昇倍率(334.980÷260.229)で割り、発売時の価格と比較することで求められる。
例えば、2020年11月に499.99ドルで発売されたPS5ディスク版は、その価格を2026年8月の物価水準に換算すると約644ドルとなる。現在の希望小売価格649.99ドルとの差はわずか1.0%だ。
| 機種 | 発売時の米国希望小売価格 | 2026年8月時点の米国希望小売価格 | 名目上の上昇率 | 物価調整後の上昇率 |
|---|---|---|---|---|
| PS5ディスク版 | 499.99ドル | 649.99ドル | +30.0% | +1.0% |
| PS5 Digital Edition | 399.99ドル | 599.99ドル | +50.0% | +16.5% |
| Xbox Series X | 499ドル | 799.99ドル | +60.3% | +24.5% |
| Xbox Series S(512GB) | 299ドル | 499.99ドル | +67.2% | +29.9% |
名目上の価格だけを比較すると、4機種とも発売時より30.0〜67.2%高くなっている。しかし、米国の消費者物価指数を使って物価上昇分を差し引くと、機種によって大きな違いが見えてくる。
PS5ディスク版の実質的な価格上昇率はわずか1.0%で、発売時とほぼ同じ水準にある。一方、PS5 Digital Editionは16.5%、Xbox Series Xは24.5%、Xbox Series S(512GB)は29.9%上昇している。つまり、物価上昇を考慮しても、Xboxの2機種は発売時より2〜3割ほど高くなったことになる。
ただし、この比較にはいくつかの注意点がある。
まず、使用したCPI-Uは米国の消費者物価全体を対象とする指数であり、ゲーム機固有の価格動向を示すものではない。また、PS5は発売後に薄型モデルへ移行し、ストレージ容量も変更されている。したがって、まったく同じ仕様の製品を比較しているわけではなく、同じ製品系列の希望小売価格を比べたものとなる。
Xboxについては、発売時の価格に推定小売価格の499ドルと299ドルを使用した。2026年8月時点の価格は、Microsoftが公式に発表した値上げ幅と、二次報道で確認できる機種別の価格から算出している。機種別の現行価格については、公式ページで直接確認できていない。
Switch 2は発売が2025年6月と新しいため、2020年発売の4機種とは分けて計算した。米国での希望小売価格は発売時の449.99ドルから2026年9月1日に499.99ドルへ引き上げられ、約15か月で名目上11.1%の値上げとなった。2025年6月のCPI-U(322.561)と2026年8月のCPI-Uを使って物価上昇分を除くと、実質的な上昇率は約7.0%となる。
市場全体でもゲーム機の平均購入価格は上昇している。年間平均は2019年の247ドルから2025年には過去最高の452ドルとなり、名目上83%上昇した。各年の平均CPI-Uで調整しても、実質45%の上昇となる。
ただし、市場全体の平均購入価格には、消費者が購入する機種の構成の変化も反映される。そのため、同じ製品系列の希望小売価格を比較した4機種の数字とは性質が異なる。
なお、日本でも2026年にゲーム機の値上げが行われた。Sonyは4月2日からPS5を9万7980円、PS5 Proを13万7980円に引き上げた。任天堂も5月25日からSwitch 2の日本語・国内専用モデルを4万9980円から5万9980円へ値上げしている。日本の価格は税込、米国の希望小売価格は税抜であるため、両国の価格を直接比較することは避けた。
10月22日の9月販売データが、Switch 2値上げの影響を見極める最初の材料に
2026年8月の米国ゲーム機市場では、平均購入価格の上昇が販売台数の減少による影響を大幅に相殺した。ただし、1〜8月の累計支出額は前年比11%減少しており、値上げによる平均価格の上昇が市場全体の販売金額を支え続けているとは言い切れない。
今後の焦点は、さらなる価格上昇に対して販売台数がどのように変化するかだ。
まず注目されるのが、Piscatella氏が10月22日に公表する予定の9月の販売データである。
8月に販売台数・販売金額の両方で首位だったSwitch 2は、9月1日に米国での希望小売価格が449.99ドルから499.99ドルへ引き上げられた。9月は値上げ後初めての1か月分の販売動向を確認できる月となる。
仮にSwitch 2の販売金額が大きく減少していれば、平均購入価格の上昇だけでは販売台数の減少を補えなかった可能性がある。逆に販売金額が維持されれば、値上げ後も単価の上昇が販売額を下支えしていたことになる。ただし、販売台数の変化には前年の発売直後の需要や市場環境なども影響するため、値上げだけの影響を切り分けることはできない。
Piscatella氏は、11月に予定される大型タイトルの発売が市場の落ち込みを和らげる可能性に言及する一方、メモリや部品の供給不足と価格高騰によって、米国のゲーム機市場は1980年代初頭以来ともいえる不安定な状況にあると指摘している。
Microsoftも、ゲーム機の値上げの背景としてメモリとストレージの価格高騰を挙げており、2027年秋までにそれらの価格がさらに倍増するとの見通しを示している。
各社が値上げに踏み切った事情は必ずしも同じではない。それでも、部品コストの高騰が続くのであれば、今後の価格設定でも無視できない要因となる。ゲーム機メーカーにとっては、値上げによって1台あたりの採算を改善することと、購入しやすい価格を維持して販売台数を確保することの両立が、ますます難しくなりそうだ。



