テクノロジーと科学の最新の話題を毎日配信中!!

Qualcommの次世代Snapdragon 8 Elite Gen 2仕様がリーク – TSMCの3nmプロセスで性能41%向上か

Y Kobayashi

2025年3月29日

Qualcommの次世代フラッグシップSoC(System-on-a-Chip)、「Snapdragon 8 Elite Gen 2(仮称)」に関する詳細なスペック情報が中国の著名リーカー数码闲聊站(デジタルチャットステーション)からリークされた。現行のSnapdragon 8 Eliteから製造プロセス、GPU、対応命令セットなどが強化される可能性が示唆されており、前世代比で最大41%もの性能向上が期待されている。

スポンサーリンク

リークされた主なスペックと変更点

著名なリーカーであるデジタルチャットステーション氏などの情報によると、次期フラッグシップSoC(モデル番号:SM8850)は、現行モデルからいくつかの重要なアップグレードが施される見込みだ。

製造プロセス:TSMCの次世代3nm「N3P」へ移行か

最も注目すべき変更点の一つは、製造プロセスである。Snapdragon 8 Elite Gen 2は、台湾のファウンドリ大手TSMCの第3世代3nmプロセス「N3P」を採用すると報じられている。これは、現行のSnapdragon 8 Eliteが採用するN3Eプロセスよりもさらに進んだ技術であり、一般的にトランジスタ密度の向上や消費電力効率の改善が期待される。

今回、QualcommがTSMCに独占的にチップ製造を発注した可能性もあり、Samsungのファウンドリは再び候補から外れた可能性もありそうだ。一方で、単一のファウンドリへの依存は、コスト上昇のリスクもはらんでいると指摘する声もある。N3Pへの移行は、性能向上と効率改善の両面で大きなアドバンテージとなる可能性がある一方、最終的なチップ価格への影響も注視される。

CPU構成:Oryonコア継続、構成は「2+6」維持か

CPUに関しては、Qualcommが独自開発した「Oryon」コアの第2世代が搭載される見込みである。リーク情報によれば、CPUクラスタ構成は現行のSnapdragon 8 Eliteと同様の「2つのプライムコア(高性能コア) + 6つのパフォーマンスコア」という「2+6」構成を維持するとされている。

ただし、コア自体がアップグレードされた「Pegasus」コアになる可能性もあるようだ。そして、プライムコアの動作周波数は5.0GHzでテストされているという。現行のSnapdragon 8 Eliteのプライムコアが4.47GHzであることを考えると、これは約12%のクロック向上となる。コアアーキテクチャの改良とN3Pプロセスの採用により、クロック周波数の向上や電力効率の改善が図られる可能性は十分にありそうだ。

GPU:Adreno 840へのアップグレード

グラフィックス処理を担当するGPUも、現行のAdreno 830から次世代の「Adreno 840」へとアップグレードされる見込みだ。現時点ではAdreno 840の具体的な性能に関する情報はリークされていないが、世代交代に伴い、ゲームや高画質動画編集など、グラフィックス性能を要求するアプリケーションでの体験向上が見込まれる。

新アーキテクチャと機能:ArmV9、SME/SVEサポートの意義

技術的に重要な進展として、Snapdragon 8 Elite Gen 2がARMの最新アーキテクチャ「ArmV9」を採用する可能性が指摘されている。現行のSnapdragon 8 EliteはArmv8アーキテクチャをベースとしていたため、これは大きな世代交代となる。

ArmV9アーキテクチャへの移行に伴い、いくつかの重要な拡張命令セットのサポートが追加される見込みだ。具体的には、「Scalable Matrix Extension(SME)」と「Scalable Vector Extension 2(SVE2)」である。

  • SME (Scalable Matrix Extension): 行列演算を効率化する命令セットであり、特に機械学習(ML)やAI関連のワークロードにおいて大幅な性能向上が期待できる。Wccftechは、SMEのサポートによりマルチコア性能が最大20%向上し、AppleのM4シリーズに匹敵する可能性があると指摘している。
  • SVE2 (Scalable Vector Extension 2): ベクトル演算を強化する命令セットであり、HPC(高性能コンピューティング)、機械学習、コンピュータビジョンなど、幅広い分野での処理効率を高める。

これらの拡張機能のサポートは、チップがより複雑なタスクを効率的に処理できることを意味する。また、ArmV9アーキテクチャは「Memory Tagging Extension(MTE)」のようなセキュリティ機能のサポートを必須としている。MTEはメモリ関連の脆弱性からシステムを保護する技術であり、Pixel 8シリーズなどで既に採用されている高度なメモリ保護機能の基盤となる。これにより、次世代Androidスマートフォンのセキュリティ強化にも繋がる可能性がある。

性能予測:AnTuTuスコア380万点の衝撃と解釈

性能に関する具体的な指標として、AnTuTuベンチマーク(V10)のスコアがリークされている。デジタルチャットステーション氏の情報によると、Snapdragon 8 Elite Gen 2は380万点を超えるスコアを達成する可能性があるという。

ただし、このスコアの解釈には注意が必要である。

  • GSMArena は、現行のAnTuTuランキングで最高スコアを記録しているSnapdragon 8 Elite搭載機(iQOO 13)の約269万点と比較し、約41%の大幅な性能向上になると報じている。
  • 一方、Notebookcheck は、Qualcommのリファレンスデバイスが記録したSnapdragon 8 Eliteのスコア(約300万点)と比較しており、その場合は約26%の向上となると指摘している。市販デバイスでは冷却性能などの制約から、リファレンスデバイスほどのスコアが出ない場合があるため、比較対象によって向上率は変動する。

いずれにせよ、380万点というスコアが事実であれば、現行世代から大幅な性能向上となることは間違いない。ただし、ベンチマークスコアはあくまで指標の一つであり、実際の使用感、特に持続性能や電力効率については、製品が登場してからの検証が必要となる。現行のSnapdragon 8 Elite搭載機で見られた発熱問題を踏まえ、次世代チップでは持続性能の向上も期待したい所だ。

スポンサーリンク

Xenospectrum’s Take

Snapdragon 8 Elite Gen 2(仮称)は、今年秋(10月頃)の発表が見込まれている。TSMCの最新3nmプロセス、第2世代Oryonコア、Adreno 840 GPU、そしてArmV9アーキテクチャとSME/SVEサポートといった強化点により、Androidスマートフォンの性能を新たなレベルに引き上げる可能性を秘めている。

特に、SME/SVEのサポートは、AppleがMシリーズチップで先行するAI・機械学習性能において、Qualcommが追いつき、あるいは凌駕する可能性を示唆している。スマートフォン上での高度なAI機能の実現や、より複雑なアプリケーションの快適な動作に貢献することが期待される。

また、Qualcommが2026年にはTSMCの2nmプロセスへ移行し、複数のフラッグシップSoC(Snapdragon 8 Elite Gen 3を含む可能性)を発表する計画も伝えられており、Qualcommが今後も継続的に技術革新を進め、AppleやMediaTekといった競合他社との競争をリードしていく姿勢を示していると言えるだろう。

ただし、今回のリーク情報は、あくまで発表前の非公式なものであり、最終的な製品仕様とは異なる可能性がある点に留意が必要である。しかし、示唆された技術的な進化は、次世代スマートフォンの性能と機能に対する期待を大きく高めるものと言えるだろう。Qualcommからの正式発表が待たれる。


Sources

Follow Me !

\ この記事が気に入ったら是非フォローを! /

フォローする
スポンサーリンク

コメントする