半導体テスト装置大手のTeradyneは2026年10月27日、2026年第3四半期(7〜9月期)の決算を発表した。売上高は前年同期比70%増の13億600万ドルとなり、メモリテストや統合システムテストでは四半期売上高が過去最高を記録した。しかし、全社の売上高を前四半期と比較すると、過去最高だった4〜6月期の13億2,900万ドルを下回っている。10〜12月期の会社見通しも中央値は13億ドルであり、直近の売上高は13億ドル前後で横ばいとなっている。前年比70%という大幅な成長率だけでは見えにくいが、四半期ごとの推移からは、急拡大してきた売上高がいったん踊り場に差しかかっている可能性が読み取れる。
市場予想を上回る好決算、それでも時間外取引では株価が6%下落
Teradyneの発表によると、7〜9月期の売上高は13億600万ドル、非GAAPの希薄化後1株利益(EPS)は2.29ドルだった。売上高の内訳は、半導体テスト事業が10億7,200万ドル、製品テスト事業が1億3,800万ドル、ロボティクス事業が9,600万ドルとなっている。Greg Smith CEOは、AI関連の需要がメモリやハードディスクドライブ(HDD)のテストから、高速インターコネクト、ロボティクスまで幅広い分野に広がっていると説明した。こうした需要の拡大により、売上高は会社側が事前に示していたガイダンスの上限を超えたという。
相場情報サイトMoveSurgeの分析によると、事前の市場予想は売上高12億6,000万ドル、非GAAP EPS2.04ドルで、実績はいずれも上回った。しかし、好決算にもかかわらず、発表直後の株価は下落した。同サイトが記録した取引データでは、決算情報が配信された米東部時間10月27日午後4時30分からの10分間で、Teradyne株は6.25%下落している。この間の出来高は8万7,149株だった。
ただし、これは通常取引終了後の時間外取引における短時間の値動きであり、翌営業日の終値を示したものではない。また、MoveSurgeの分析では下落の原因までは特定されていない。業績が市場予想を上回ったにもかかわらず株価が下がった理由については、現時点で確認できる情報だけでは判断できない。そこで、株価の動きとは分けて、決算数値から売上高と利益率の変化を検討する。
前年比70%増の一方、四半期売上高は13億ドル前後で横ばい
Teradyneの2026年4〜6月期の売上高は13億2,900万ドルだったが、7〜9月期は13億600万ドルとなり、前四半期比で約1.7%減少した。さらに、今回示された10〜12月期の売上高見通しは12億5,000万〜13億5,000万ドルで、その中央値は13億ドルとなる。これは7〜9月期の実績を約0.5%下回る水準だ。少なくとも会社側が示した見通しの中央値では、直近の売上高が再び大きく伸びる展開は想定されていない。
| 四半期 | 売上高 | 前四半期比 |
|---|---|---|
| 2026年1〜3月期(実績) | 12億8,200万ドル | — |
| 2026年4〜6月期(実績) | 13億2,900万ドル | +3.6% |
| 2026年7〜9月期(実績) | 13億600万ドル | −1.7% |
| 2026年10〜12月期(ガイダンス中央値) | 13億ドル | −0.5% |
なお、10〜12月期の13億ドルは、会社が公表した売上高見通しの上限と下限から計算した中央値であり、特定の着地額を予測したものではない。見通しの上限である13億5,000万ドルを達成した場合、7〜9月期から約3.4%の増収となる。また、Teradyneは7月28日の前四半期決算発表で、7〜9月期の売上高を12億〜13億ドルと予想していた。この上限は4〜6月期の実績を下回っていたため、前四半期比で売上高が減少する可能性は、すでに7月時点で会社側の見通しに織り込まれていたことになる。
それでは、前年同期比70%という高い成長率をどう解釈すべきなのか。比較対象となる2025年7〜9月期の売上高は7億6,900万ドルであり、今回の13億600万ドルは約1.7倍に相当する。一方、2026年1〜9月期の累計売上高は39億1,700万ドルとなり、前年同期の21億700万ドルから86%増加した。つまり、9カ月累計で見ても極めて高い成長率を維持しているものの、直近の四半期だけを取り出すと、前年同期比の伸び率は累計値を下回っている。
さらに、9カ月累計から7〜9月期の売上高を差し引き、上半期だけを比較すると違いが明確になる。2026年1〜6月期の売上高は約26億1,100万ドルで、前年同期の約13億3,700万ドルから約95%増加した。一方、7〜9月期の前年同期比成長率は70%にとどまる。ただし、これを需要の勢いが明確に弱まった証拠とみなすことはできない。2025年7〜9月期の売上高は、同年上半期の四半期平均を上回っており、比較対象の水準が異なるためだ。
実際、2026年7〜9月期の売上高13億600万ドルは、同年上半期の四半期平均である約13億600万ドルとほぼ一致する。前年同期比の成長率が95%から70%へ低下したことよりも、直近3四半期の売上高が13億ドル前後で推移している点に注目すべきだ。前年比では急成長を維持しているが、前四半期比では売上高の拡大がいったん止まっている。この二つは矛盾するものではなく、異なる時間軸で業績を捉えた結果である。
もっとも、Teradyneは今回も会社見通しを上回る実績を残している。7〜9月期の売上高13億600万ドルは、事前ガイダンスの上限13億ドルを約0.5%、中央値12億5,000万ドルを約4.5%上回った。非GAAP EPSも2.29ドルとなり、ガイダンスの上限2.15ドルを約6.5%超えている。したがって、直近の売上高が横ばいであることと、会社側の予想を上回る好調な業績を維持していることは、分けて評価する必要がある。
一方、利益率には売上高以上に明確な前四半期比の低下が見られる。非GAAP EPSは4〜6月期の2.47ドルから7〜9月期には2.29ドルへ減少し、非GAAP営業利益率も33.7%から31.6%へ2.1ポイント低下した。GAAPの売上総利益率も59.8%から59.1%へ0.7ポイント下がっている。売上高が1.7%減少する間に、販売管理費は1億9,250万ドルから1億9,900万ドルへ、研究開発費は1億5,630万ドルから1億6,310万ドルへそれぞれ増加した。売上高が横ばいとなる一方で費用が増えたことが、営業利益率を押し下げる要因となっている。
成長は一時停止か、それとも次の拡大に向けた準備段階か
直近の売上高が13億ドル前後で推移しているという見方には、有力な反論もある。現在の横ばい傾向は需要の限界を示しているのではなく、会社側がガイダンスを保守的に設定しているために、将来の成長が数字に十分反映されていない可能性だ。この見方を支える材料はいくつか存在する。
第一に、Teradyneは4〜6月期と7〜9月期の2四半期連続で、会社が事前に示した売上高ガイダンスの上限を超えている。こうした傾向が続けば、10〜12月期の実績も中央値の13億ドルを上回る可能性がある。第二に、今回の10〜12月期ガイダンスは市場予想を上回っている。MoveSurgeが示した売上高の市場予想12億6,000万ドルに対し、会社見通しの中央値は約3%高い13億ドルとなっている。非GAAP EPSについても、中央値の2.10ドルは市場予想の2.01ドルを上回る。ただし、市場予想は情報提供会社によって異なるため、これらの数値はMoveSurgeが掲載した予想との比較である。
第三の材料は、在庫の増加だ。Teradyneの2026年9月末時点の在庫は約5億7,500万ドルとなり、2025年12月末の約3億7,960万ドルから約51%増加した。また、今回の決算発表に含まれるキャッシュフロー計算書では、7〜9月期の在庫増加に伴う資金流出が1億7,090万ドルに達している。これは今後の出荷増加に備えた在庫の積み増しと解釈することもできる。需要の拡大に対応するため、製品や部材の確保を進めているのであれば、現在の売上高の横ばいは一時的なものにとどまる可能性がある。
第四に、経営陣は2027年以降の成長機会について前向きな見通しを示している。Smith CEOは4〜6月期の決算発表で、半導体の前工程に使われる製造装置への投資が急速に増加しており、それが2027年以降の成長を支えるとの考えを示した。半導体メーカーの設備投資が拡大すれば、製造された半導体を検査するテスト装置への需要も、時間差を伴って増える可能性がある。現在の売上高が横ばいであっても、今後の需要拡大に向けた準備が進んでいるという見方には一定の根拠がある。
ただし、これらの材料だけで成長の再加速を確実視することはできない。在庫の増加は出荷準備が進んでいる可能性を示す一方、実際の需要が計画を下回れば、在庫の滞留や評価損につながるおそれもある。また、ガイダンスの中央値が市場予想を上回っていることと、売上高が13億ドル前後で推移していることは矛盾しない。半導体製造装置への投資拡大が将来のテスト装置需要につながるとしても、その時期や売上高への寄与はまだ確定していない。
したがって、今回の分析はTeradyneの中長期的な成長が止まったと判断するものではない。現時点で確認できるのは、2026年4〜6月期に13億2,900万ドルへ達した売上高が7〜9月期には小幅に減少し、10〜12月期の会社見通しの中央値も同程度の水準にとどまっているという事実だ。この推移から、急拡大してきた売上高が短期的な踊り場に入ったと考えられる。
この見立てを再評価する条件は二つある。一つは、2026年10〜12月期の実績が会社見通しの上限である13億5,000万ドルを超えることだ。もう一つは、次回決算で示される2027年1〜3月期の売上高ガイダンスが、同じ13億5,000万ドルを上回ることである。いずれかが実現すれば、直近の売上高減少は一時的なもので、成長が再加速している可能性が高まる。ただし、その判断には実際の売上高と利益率の推移を併せて確認する必要がある。
日本の半導体業界にとっては、競合するアドバンテストの業績も重要な比較材料となる。同社の公式IRカレンダーによると、2026年度第2四半期決算は10月28日午後3時30分(日本時間)に発表される予定だ。AI半導体向けテスト装置の需要がTeradyneと同様に高い水準を維持しているのか、それとも顧客や製品分野によって違いが生じているのかを確認できる。
Teradyneの今回の決算は、AI関連投資の拡大が半導体テスト装置市場に大きな成長をもたらしていることを示した。一方、売上高の前四半期比での減少と利益率の低下は、前年比の高い成長率だけでは見えにくい変化である。今後の焦点は、13億ドル前後という売上高の水準が一時的な停滞にすぎないのか、それとも次の成長局面に入るまで続くのかという点にある。10〜12月期の実績が13億5,000万ドルを超えるかどうかが、その判断を左右する最初の重要な指標となる。



