Teslaは2026年10月21日、2026年7〜9月期の決算を発表した。売上高は280億4,600万ドルと前年同期からほぼ横ばいだった一方、米国会計基準(GAAP)による普通株主に帰属する純利益は前年同期比43%減の7億8,700万ドルに落ち込んだ。同時に、人型ロボット「Optimus」の生産をカリフォルニア州フリーモントの工場で開始したことも明らかにした。新事業が実際の製品を生産する段階に進む一方、事業全体では粗利益の増加を営業費用の増加が大きく上回り、利益が圧迫される状況が続いている。AIやロボットへの投資を将来の収益につなげられるかが、今後の焦点となる。

AD

粗利益は9%増加したものの、営業費用の急増で営業利益は56%減

今回の決算では、どの利益指標を使うかによって業績の見え方が大きく変わる。Teslaの公式決算資料によると、GAAPに基づく普通株主に帰属する純利益は、前年同期の13億7,300万ドルから7億8,700万ドルへ43%減少した。一方、株式報酬費用やデジタル資産・投資の未実現損益などを調整した非GAAPベースの純利益は16億9,700万ドルで、前年同期比の減少率は4%にとどまった。調整後の希薄化後1株当たり利益(EPS)は0.48ドルだった。GAAPと非GAAPでは計算に含める項目が異なるため、43%減と4%減はそれぞれ異なる基準に基づく数値として理解する必要がある。

営業利益を見ると、Teslaの収益性が悪化した要因がより明確になる。売上高は前年同期の280億9,500万ドルから280億4,600万ドルへわずかに減少したが、粗利益は増加している。ところが、研究開発費などの営業費用がそれ以上に膨らみ、営業利益は大幅に減少した。Teslaが公表した未監査の連結決算を基に、前年同期との違いを整理すると次のようになる。

項目(単位:百万米ドル) 2025年7〜9月期 2026年7〜9月期 前年同期比の増減額
粗利益 5,054 5,494 +440
営業費用 3,430 4,776 +1,346
営業利益 1,624 718 −906

粗利益は前年同期比9%増の54億9,400万ドルとなり、4億4,000万ドル増加した。しかし、営業費用は13億4,600万ドル増の47億7,600万ドルに達し、前年同期から39%増加している。この結果、営業利益は9億600万ドル減少し、7億1,800万ドルとなった。粗利益の増加額を営業費用の増加額が上回った分だけ、営業利益が減少した構図だ。営業利益率も前年同期の5.8%から2.6%へ低下しており、売上高に対する利益の割合が大きく縮小している。

営業費用の増加で特に目立つのが研究開発費だ。前年同期の16億3,000万ドルから27億6,100万ドルへ約69%増加しており、営業費用全体の増加を主導した。Teslaは、同社が「Super Intelligence」と呼ぶAI関連分野などの研究開発に加え、株式報酬費用や販売費・一般管理費の増加を営業減益の要因として挙げている。ただし、研究開発費の増加額を事業別にすべて開示しているわけではなく、増加分がそのままOptimusの開発費に相当するとは判断できない。

自動車の納車台数は2%減、電池供給が増産の制約に

自動車事業では、顧客への納車台数が48万6,532台となり、前年同期の49万7,099台から約2%減少した。Teslaは、乗用車の受注残が過去4年間で最高水準に達したと説明しており、現在の増産を制約している主な要因として電池の供給不足を挙げている。このため、納車台数の減少だけを根拠に需要が落ち込んでいると断定することはできない。一方で、受注残の増加や電池供給に関する会社側の説明だけで、需要面の懸念がすべて解消されたと判断することも適切ではない。

自動車部門の売上高は前年同期比3%減の205億6,000万ドルだった。特に、排出規制クレジットの売却収入が前年同期の4億1,700万ドルから1億1,300万ドルへ大幅に減少している。一方、このクレジット収入を除いた自動車部門の粗利益率は18.1%となり、前年同期の15.4%、前期の16.3%をいずれも上回った。Teslaは、販売地域や車種の構成改善、運転支援機能「FSD」の契約増加などが収益性の改善に寄与したと説明している。ただし、車両の平均販売価格の低下が、その効果の一部を相殺したという。

エネルギー事業では、蓄電池の導入量が増えたにもかかわらず、売上高が減少した。蓄電池の導入量は前年同期の12.5GWhから13.7GWhへ約10%増加した一方、エネルギー部門の売上高は16%減の28億8,100万ドルに落ち込んでいる。Teslaは減収の要因の一つとして、関税に関連した顧客への返金を挙げた。このため、売上高を導入量で単純に割った数値から、蓄電池の販売単価が同じ割合で下落したと結論づけることはできない。

対照的に、充電サービスや保険、部品販売などを含むサービス・その他部門は成長を続けている。売上高は前年同期比33%増の46億500万ドルとなり、粗利益は7億3,400万ドルに達した。Teslaによると、充電、保険、部品販売の拡大が成長を支えたという。自動車とエネルギー部門の売上高が減少する一方、車両販売後のサービス関連事業が売上と粗利益を増やしており、事業によって収益の動向が分かれている。

AD

Optimusが生産開始、商用化に向けて新たな段階へ

今回の決算で注目されるのが、人型ロボット「Optimus」の生産開始だ。Teslaは、カリフォルニア州フリーモントの量産用ラインでOptimusの製造を始めたと発表した。同社によると、このラインから完成した機体は、Teslaが初めて製造した製品品質のOptimusに当たる。ハードウェアや製造工程の改良は今後も続けるものの、現在の製造方式が商用製品に適していることを確認できたとしている。

ただし、生産を開始したことと、十分な数量を安定して製造・販売できるようになったことは別だ。Teslaの決算資料では、カリフォルニア州のOptimus生産について「Early Ramp(増産の初期段階)」と記載しており、テキサス州の生産設備は建設段階にある。今回の発表では具体的な生産台数や販売台数、Optimus単独の売上高や損益は明らかにされていない。したがって、商用化に向けた製造工程の確立が進んだことは確認できるものの、量産規模や採算性を評価できる段階には至っていない。

ほかの新製品についても、開発や事業化の進捗はそれぞれ異なる。大型電動トラック「Tesla Semi」はネバダ州で量産を開始し、専用ロボタクシー「Cybercab」は9月3日からテキサス州オースティンの配車サービスに投入された。一方、10月15日に披露された次世代「Roadster」は、決算資料の製造状況一覧では設計開発段階とされており、製造拠点も未定だ。生産開始、サービスへの投入、新型車の発表は、それぞれ事業化に向けた異なる段階を示しており、いずれも直ちに収益への貢献を意味するわけではない。

また、製造設備の年間生産能力と、実際の生産台数を混同しないことも重要だ。例えば、Tesla Semiの年間生産能力は2万5,000台と記載されているが、これは設置済みの設備が持つ能力を示したもので、現在の年間生産ペースではない。Teslaも、生産能力と実際の生産速度は異なり、部品供給や設備の稼働状況などによって制約を受ける場合があると注記している。Optimusについても、今後の量産拡大を評価するには、具体的な生産実績と販売状況を確認する必要がある。

一方、ソフトウェア事業では、すでに契約数の増加が具体的な数字として表れている。FSDの有効契約数は前年同期比67%増の174万件に達し、北米の新規納車では75%超にFSDの契約が付いたという。ただし、有効契約数には一括購入と月額契約の両方が含まれ、無料体験は集計対象から除外されている。そのため、174万件という数字を、毎月料金を支払う契約者が174万人いるという意味に解釈することはできない。また、新規納車に対する75%超という割合も北米市場に限ったものであり、世界全体の販売車両や既存の保有車両にそのまま当てはめることはできない。

なお、FSD(Supervised)は運転者による常時監視を必要とする運転支援機能であり、車両が完全に自律走行することを意味しない。監視者なしで運行するRobotaxiとは機能や運用条件が異なるため、両者の利用実績を混同すべきではない。FSDの契約数は増えているものの、その成長が今後どれだけの売上や利益につながるかを判断するには、契約形態や収益認識の状況も確認する必要がある。

フリーキャッシュフローは黒字回復、年末の設備投資が焦点に

現金収支を見ると、Teslaのフリーキャッシュフローは15億3,100万ドルの黒字となり、前期の10億9,200万ドルの赤字から回復した。フリーキャッシュフローは、営業活動で得た現金から設備投資を差し引いたもので、事業が生み出す現金と投資負担の関係を把握するための指標だ。ただし、前年同期の39億9,000万ドルと比べると62%減少しており、黒字に戻ったことが前年並みの現金創出力を回復したことを意味するわけではない。

7〜9月期の営業キャッシュフローは62億6,300万ドルとなり、前期の46億9,700万ドルから増加した。一方、設備投資は前期の57億8,900万ドルから47億3,200万ドルへ減少しており、この支出減もフリーキャッシュフローの黒字回復に寄与している。ただし、設備投資額は前年同期の22億4,800万ドルと比べれば約2.1倍に増えており、AIやロボット、製造設備などへの投資負担が依然として大きいことに変わりはない。

今後の焦点となるのは、2026年末にかけての設備投資の規模だ。Teslaは7月に米証券取引委員会(SEC)へ提出した第2四半期の四半期報告書で、2026年の設備投資額が250億ドルを超えるとの見通しを示していた。しかし、今回の決算資料に記載された第1〜第3四半期の設備投資額を合計すると130億1,400万ドルとなる。この見通しを維持する場合、第4四半期だけで119億8,600万ドルを超える設備投資が必要になる計算だ。

この金額は、250億ドルという年間見通しから9カ月間の実績を差し引いたものであり、Teslaが第4四半期の設備投資額として新たに公表した予想ではない。それでも、当初の年間計画を達成するには、年末にかけて設備投資を大幅に増やす必要があることを意味する。ElectrekのFred Lambert氏もこの差に注目し、第4四半期に支出が急増するのか、それとも投資の一部が2027年以降にずれ込むのかを見極める必要があると指摘している。設備投資を抑えれば短期的なフリーキャッシュフローは改善しやすくなるが、それだけで投資効率が向上したとも、開発計画が遅れているとも判断できない。

また、Teslaを巡っては、SpaceXとの合併の可能性も浮上している。The Vergeの報道によると、両社は合併の可能性を検討するため、それぞれ特別委員会を設置した。ただし、合併の実施や条件が決まったわけではなく、実際に成立するかどうかは不透明だ。こうした企業再編の観測とは別に、Tesla自身が進めるAIやロボット、製造設備への投資を、将来どのような収益によって回収していくかという課題は残る。

Teslaの7〜9月期末の現金・現金同等物・短期投資は454億4,700万ドルに達しており、一定の資金余力を維持している。しかし、豊富な手元資金があることと、大規模な投資が利益を生み出すことは別の問題だ。Optimusは生産開始という節目を迎えたものの、実際の販売規模や採算性はまだ明らかになっていない。今後は、Optimusの量産拡大と販売実績、FSD関連売上の成長、研究開発費の増加に見合う粗利益の改善、そして年末の設備投資が現金収支に与える影響が重要な判断材料となる。新事業の立ち上げが進むなかで、投資負担を上回る収益を生み出せるかどうかが、Teslaの今後の業績を左右することになる。