Teslaは2026年10月15日(米国時間)、テキサス州マクレガーにあるSpaceXの試験施設で、次世代の電動スポーツカー「Roadster」を公開した。発表会では、車両が湾曲したランプを駆け上がって逆さまに走行し、空中で姿勢を立て直して着地するという驚異的な実演を披露。さらに、並べられた複数のTesla車の上を、空中で回転しながら飛び越える姿も見せた。2017年の試作車発表から約9年を経て登場した新型Roadsterは、床下の吸着ファンで接地力を高め、SpaceXの技術を応用した高圧ガスの噴射装置で加速や空中での姿勢制御を行う。ただし、飛行機能を備える仕様は公道走行を想定しておらず、実際の性能を評価するには、噴射に使うガスの再充填や連続使用時の制約も考慮する必要がある。

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公道向けから飛行対応まで、3種類のRoadsterを展開

 

新型Roadsterには、基本仕様の「Performance」に加え、推進装置を備えた「Thrust」と「Rocket」が用意される。Teslaが公式Xアカウントで公開した仕様と加速性能によると、3種類は単なる性能違いではなく、想定する用途や乗車定員も異なる。発表会で披露された空中での回転や飛行は、すべてのRoadsterに共通する機能ではない。

仕様 乗車定員・用途 主な装備 0–60mph加速の公称値
Performance 2人乗り、公道向け・予約受付 可動式空力装置、吸着ファン 1.6秒未満
Thrust 2人乗り、レース向け・限定提供 Performanceの装備に後部のコールドガススラスターを追加 0.9秒未満
Rocket 1人乗り、飛行対応・招待制 車体周囲にもスラスターを配置し、上昇や空中での回転を制御 0.59秒未満

これらの加速性能は、停止状態から時速60マイル(約97km/h)に達するまでの時間を示しており、日本で一般的な0–100km/h加速とは異なる。また、Teslaの日本公式サイトでは、Rocketについて「公道での使用は認められていません」と明記されている。Performanceが公道向けとされていることも、すべての国や地域で走行認可を取得済みという意味ではなく、実際の販売や使用には各地域の法規制が適用される。

一方、発表会で行われた加速実演では、0–60mphを0.81秒で達成したとTeslaが報告している。これは実演時の計測結果であり、Rocketに設定された「0.59秒未満」という公称性能とは区別する必要がある。現時点では、第三者による独立した計測結果として確認されたものではなく、異なる仕様の加速性能を同一条件で比較した数字でもない。

車を逆さまに走らせる吸着ファンの仕組み

新型Roadsterの特徴の一つが、床下に設けられた吸着ファンだ。ファンによって車体と路面の間にある空気を吸い出し、周囲との圧力差を作ることで、車体を路面へ押し付ける力を生み出す。床下の隙間から空気が流入するのを抑えるシール機構も組み合わせ、強い吸着力を維持する仕組みだ。Teslaの公式サイトによれば、この装置は車両が静止した状態でも、逆さまの姿勢を保持できるほどの吸着力を発生させるという。

通常のスポーツカーに使われるウイングやスポイラーは、走行中の空気の流れを利用してダウンフォースを発生させるため、速度が低下すると効果も小さくなる。一方、電動ファンによる吸着装置は、走行速度に大きく依存せずに車体を路面へ押し付けられる。これにより、発進時や低速コーナリングでもタイヤの接地力を高められる。逆さまの走行はその性能を視覚的に示した実演だが、本来の狙いはタイヤが路面に伝えられる駆動力や旋回力を増やすことにある。

ただし、ファンによって車を逆さまに走らせる技術自体は、今回初めて実証されたものではない。英国のMcMurtry Automotiveは2025年4月、電動スポーツカー「Spéirling PURE」の検証用試作車を使い、逆さまの状態で自力走行する実験を成功させている。この実験では、車両を載せた専用の装置を回転させて上下を反転し、ファンの吸着力で車体を保持したまま走行した。Roadsterのように湾曲したランプを走り、そのまま空中へ飛び出すものではないが、低速でも強い接地力を生み出せるという基本原理は共通している。

Roadsterでは、吸着ファンに加えて可動式の空力装置も組み合わせている。Track Modeでは車高やサスペンションの設定を変更し、高いダウンフォースを得る状態と、空気抵抗を抑える状態を使い分けられるという。Teslaによれば、可動式ウイングの駆動機構には、人型ロボット「Optimus」のアクチュエーター技術を応用している。SpaceX由来の推進技術に加え、ロボット開発で培った駆動機構も取り入れた点が、新型Roadsterの特徴となっている。

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0.59秒未満の加速を可能にする高圧ガススラスター

吸着ファンと並ぶ新型Roadsterの大きな特徴が、SpaceXの技術を応用した「コールドガススラスター」だ。これはタンクに蓄えた高圧ガスをノズルから噴射し、その反作用によって推力を得る装置である。燃焼によって高温のガスを発生させるロケットエンジンとは異なり、あらかじめ圧縮したガスを噴射する。NASAジョンソン宇宙センターが公開した小型衛星向けの技術資料でも、高圧タンクから調圧したガスを複数のスラスターへ送り、姿勢や移動方向を制御する仕組みが説明されている。

Roadsterでは、この技術を自動車の加速や空中での姿勢制御に利用する。車体後部からガスを噴射すれば前方への推力が発生し、車体の周囲に配置したノズルを使い分ければ、上昇や回転も制御できる。吸着ファンがタイヤを路面へ押し付け、摩擦によって伝えられる力を増やすのに対し、スラスターはタイヤを介さず車体へ直接推力を加える。したがって、車体が路面から離れた後も姿勢を変えられるのは、吸着ファンではなくスラスターの働きによるものだ。

Teslaが公表した加速性能を物理的に考えると、スラスターの役割がより明確になる。Rocketの公称値である0–60mph加速0.59秒未満を、完全な停止状態から計測したものと仮定すると、平均加速度は標準重力加速度の約4.6倍を上回る。時速60マイルを秒速26.8224mに換算し、0.59秒と標準重力加速度9.80665m/s²で割ると、約4.6Gとなる計算だ。ただし、これは加速区間全体の平均値であり、瞬間的な最大加速度や乗員に作用する合成荷重を表すものではない。

また、自動車の加速性能では、発進直後の一定距離を計測時間から除外する「ロールアウト」が使われる場合がある。ロールアウトを含めるかどうかによって数値の意味が変わるため、公称加速時間から計算した約4.6Gも、完全停止からの加速という条件を置いた参考値にすぎない。実際の加速度や路面条件、計測方法をそろえた第三者による検証が必要となる。

スラスターの性能を左右するのは、車両に蓄えられる高圧ガスの量だ。発表会での説明によると、実演車には合計容量600Lのタンク2基が搭載され、約250kgのガスと10基の噴射ノズルを使用している。Teslaは、炭素繊維で補強した高圧容器を車体内部の空間に配置し、蓄えられるガスの量が多いほど、空中にとどまれる時間も長くなると説明している。ただし、これらは実演車について公表された情報であり、すべての販売仕様に同じ装置が搭載されると決まったわけではない。

スラスターはガスを噴射するたびにタンク内の蓄えを消費するため、繰り返し使用するには再充填が必要になる。Elon Musk氏は車両側でタンクを再充填できると説明したものの、再充填にかかる時間や消費電力、1回の充填で何秒間噴射できるかといった詳細は明らかにしていない。バッテリーによる通常走行の性能と、高圧ガスを消費する加速・飛行性能は、別々に評価する必要がある。特にサーキットで繰り返し使用する場合、再充填に要する時間と、連続走行でどこまで性能を維持できるかが実用性を左右する。

2017年の構想から大きく変わった新型Roadster

Teslaが次世代Roadsterの試作車を初めて公開したのは2017年だった。当時は0–60mph加速1.9秒、航続距離620マイル(約998km)という目標を掲げ、優れた加速性能と長い航続距離を両立する電動スポーツカーとして注目を集めた。当時の公式決算資料でも、Roadsterは電気自動車の性能に対する従来の常識を覆す存在として位置付けられていた。しかし、量産計画は延期を重ね、今回の新型発表まで約9年を要することになった。

今回Teslaが示した航続距離は300マイル超(約483km超)で、2017年に掲げた620マイルから大幅に短くなっている。一方、0–60mph加速は基本仕様のPerformanceでも1.6秒未満とされ、ThrustやRocketではさらに短い時間が公称値として示された。ただし、航続距離の試験方法や車両の構成が同じ条件で比較されているわけではないため、実際の航続性能が半減したと断定することはできない。高圧ガスタンクや噴射装置の搭載が航続距離の変更にどの程度影響したのかも、公表された情報だけでは判断できない。

車体デザインも2017年の試作車から大きく変更された。Teslaは、超音速偵察機「SR-71」や戦闘機「F-35」をデザインの参考にしたと説明しており、従来のTesla車よりも直線的で、CybertruckやCybercabに通じる造形を採用している。室内には、ステアリング操作を電気信号で伝えるステアバイワイヤ方式のヨーク型ハンドルを搭載。シート位置の固定や手動操作の採用によって軽量化を図り、マグネシウム、チタン、炭素繊維などの素材も使用しているという。

こうした変更によって、新型Roadsterは2017年に構想されていた長距離走行可能なEVスーパーカーから、特殊な空力装置と高圧ガス推進装置を組み合わせた車両へと進化した。強力な吸着ファンによる接地力の向上に加え、スラスターによる極端な加速や短時間の飛行という、新たな性能を追求している。ただし、これらの機能を日常的にどの程度使用できるかは依然として不明であり、加速時間だけで車両全体の性能を判断することは難しい。

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日本では予約金682万円、量産開始目標は2028年

Teslaは日本でも新型Roadsterの予約を受け付けている。日本公式の予約ページで選択できるのはPerformanceで、予約時に68万円、その後10日以内に614万円を支払う必要がある。予約に必要な金額は合計682万円となるが、これは車両本体の販売価格ではなく、あくまで予約のための支払いだ。最終的な車両価格はまだ公表されておらず、所定の期限までに支払いが完了しなければ、予約がキャンセルされる場合もある。

また、日本向けには左ハンドル仕様のみが案内されている。Rocketについては公道での使用が認められておらず、日本で販売される仕様や利用条件も今後の発表を確認する必要がある。Musk氏は発表会で2028年の生産開始を目標に掲げたが、これは購入者への納車時期を保証するものではない。2017年の発表以降、Roadsterの量産計画は繰り返し延期されてきたこともあり、予約受付の開始と実際の生産・納車は区別して考える必要がある。

今後の焦点は、今回披露された性能が量産車でも再現できるかどうかだ。特に、第三者による加速性能の測定に加え、スラスターの噴射可能時間や再充填時間、複数回の加速・飛行を繰り返した場合の性能が重要になる。さらに、各仕様の正式な販売価格や地域ごとの法的要件、納車条件が明らかになれば、実際に購入できる製品としての評価も進むだろう。新型Roadsterが今回の実演で示した能力を、繰り返し利用できるスポーツカーの性能として確立できるかが、2028年の量産開始に向けた最大の注目点となる。