Xiaomiの人型ロボットが、同社の電気自動車(EV)工場でナット供給作業の成功率を98%まで引き上げた。3月に公表した90.2%から7.8ポイントの改善で、同時にセンターコンソールの側面カバー仕分けと部品箱の折り畳みという二つの作業を加えた。目を引くのは「人の合格率まで1ポイント」という説明だが、生産設備として評価するには成功率の母数と稼働時間が要る。介入回数と費用も欠かせない。4カ月の進歩は、研究デモから量産工程へ移るための条件をどこまで満たしたのか。

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90.2%から98%、失敗頻度は約8割減った

 

Xiaomiが示した出発点は2026年3月の実証である。人型ロボットはEV工場のナット供給工程で3時間連続して自律運転し、車体の左右へ同時に部品を供給する作業を90.2%の成功率で処理した。ラインが製品を送り出す間隔に当たるタクトタイムは最短76秒で、ロボットもこれに追随した。ロボットは自動供給機からナットを取り、位置決め治具へ置く。その後の締結は搬送装置と専用設備が担うため、ロボットが受け持つのは変動の残る取り出しと位置合わせだ。

7月14日の更新では、この作業の成功率が98%に上がった。差は7.8ポイントだが、改善幅は失敗側から見ると大きい。判定方法が同じなら、失敗頻度は9.8%から2.0%へ下がり、約79.6%減った計算になる。判定条件が揃っているかは未確認だが、公開値の範囲では失敗側の改善が成功率の差以上に大きい。

作業範囲も広がった。総組立エリアでは、センターコンソールの側面カバーを指定順に並べる作業と、空になった部品箱を折り畳んで回収する作業を追加し、Xiaomiはいずれも成功率90%と説明している。小さく硬いナットを決まった場所へ置く工程から、大型で形が不規則なうえ、変形しやすい部品を扱う工程へ踏み込んだ。これは制御上の難しさが一段上がる変化である。

ただし、7月の発表は98%を算出した試行回数、連続運転の長さ、3月と同じ76秒のタクトを維持したかを明らかにしていない。Xiaomiは側面カバーの作業を「長時間」と表現し、無編集の連続映像も公開したが、公開資料から正確な時間は確定できない。改善の方向ははっきりした一方、量産工程での持続性はまだ測れない。

変形する大型部品は、固定動作では扱いにくい

センターコンソールの側面カバーは、持ち上げるだけでも形と姿勢が変わる。箱の奥から引き出すときには縁へ引っ掛かり、手を持ち替えれば重心もずれる。ロボットは視覚で位置を読むとともに、手先へ加わる力を検知し、引っ掛かりが生じたときは姿勢を細かく直さなければならない。遠い部品へ手を伸ばす場面では、腕の軌道と上体、脚のバランスも同時に動かす必要がある。

ここで効くのが、Xiaomiが3月の工場実証の基盤に据えた視覚・言語・行動モデル「Xiaomi-Robotics-0」である。47億パラメータのモデルは、Qwen3-VL-4B-Instructが画像と指示を処理し、Diffusion Transformerがロボットの関節状態を加味して次の一連の動作を生成する。約2億タイムステップのロボット軌跡と8000万件を超える視覚・言語データで事前学習した後、作業ごとの追加学習を施す設計だ。

推論待ちで手が止まればラインのタクトを外す。このためXiaomiは、現在の動作列を実行している間に次の動作列を推論する非同期処理を採用した。視覚から行動までをつなぐモデルに、力覚、全身制御、強化学習を重ねることで、決め打ちの軌道では吸収できないずれへ対処する。

工場側のシステムとの接続も欠かせない。ロボットは生産指示と部品番号、収納位置を受け取り、複数台で作業状態を同期する。危険な状態や復旧困難な異常が起きた場合は、人が遠隔操作へ切り替える経路を残した。これは自律性の限界というより、生産停止を避けるための工程設計である。人型ロボットが工場へ入るとき、評価対象には本体とAIに加え、治具、通信、復旧手順を含む生産セル全体が入る。

箱折りには現在の限界も見える。2面目を畳む際、ロボットはいったん箱の向きを変え、留め具を正面へ向けてから操作する。熟練者は指先の感覚で留め具を探り、向きを変えずに外せる。Xiaomiは生体模倣型の多指ハンドを改良して、この余分な動作を減らす考えだ。7月の資料は、新しい二つの作業に何時間のデータと追加学習を使ったかを示していないため、未知の作業へそのまま移れる段階だとは判断できない。

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人まで1ポイントでも、失敗率はなお2倍

Xiaomiは98%を、人の作業合格率99%まで1ポイントと表現した。同じ試行数と判定条件なら、ロボットは100回につき2回、人は1回失敗する計算になる。成功率の差は1ポイントでも、失敗率は2倍だ。しかも公開資料には、失敗後にロボット自身が復旧したのか、人が介入したのか、部品を廃棄したのかという内訳がない。

他社の公開実績と並べると、Xiaomiに足りない証拠の種類が見えてくる。

実証 作業 公開された運用データ 読み取れない点
Xiaomi EV車体向けナット供給、側面カバー仕分け、部品箱折り 3月は3時間、90.2%、最短76秒。7月はナット98%、新作業は各90% 7月の試行回数、運転時間、タクト、介入率、費用
BMW・Figure 02 溶接前の板金部品供給 10カ月、9万点超、約1250時間、3万台超のBMW X3に関与 成功率、介入回数、1作業当たりの費用
AgiBot G2 タブレット量産ラインの検査工程 累計64時間、6万4828作業、99.99%、22秒タクト、精度変動2mm 費用、失敗と介入の詳しい定義

数字の大小で順位は決められない。BMWのFigure 02は板金部品を扱う歩行型、AgiBot G2は検査設備へタブレットを出し入れする車輪型で、Xiaomiの変形しやすい部品を扱う作業とは難しさも失敗条件も違う。それでも、長期導入なら運転時間と処理数を、信頼性を示すなら失敗の定義と介入回数を公開する必要がある、という比較軸は共有できる。

BMWの実証では、ロボットの導入に合わせて安全柵と区画を見直し、工場内の5G通信も改善した。高性能なモデルを置けば終わる話ではない。安全に止まり、早く復旧し、既存設備と同期できて初めて、ロボットは生産能力として数えられる。

中国の評価軸は成功率から経済性まで広がった

中国工業情報化部は6月、人型ロボットとエンボディドAIを実環境で訓練・検証する2026年の特別行動を始めた。達成度を測る項目には、実作業の成功率に加え、効率の改善率、安全性と信頼性、経済的な成立性が明記された。2026年末までに100件を超える価値の高い利用場面をまとめ、1万台規模の導入能力につなげる目標も掲げる。

政策が評価軸を細かくする一方で、製品数も急増した。工業情報化部によれば、2025年の中国には人型ロボットの完成機メーカーが140社を超え、330を超える製品が登場した。動く試作機を見せるだけでは企業間の差を測れない。工場で同じ作業を何回、どの速さで、どれだけ人手を借りずにこなし、既存の専用機や人より安く運用できるかが選別を進める。

Xiaomiの次の開示で確かめたい数字は明確だ。98%の母数と判定規則、76秒を維持した連続稼働時間、平均故障間隔、遠隔介入からの復旧時間、複数工程へ移すための学習量、そして成功1回当たりの総費用である。これらの数値が開示され、76秒のタクト下でも介入率、停止時間、成功1回当たりの費用が工場の許容水準に収まることが確認されて初めて、4カ月の改善を量産設備としての生産性へ換算できる。98%は有力な途中経過だが、導入判断を下すには「どれだけ動き続け、止まったときに何分で戻り、いくら掛かるか」までが要る。