欧州委員会は7月20日、電子商取引プラットフォームAliExpressに€5億5,000万の制裁金を科し、違法品、危険品、模倣品が流通するリスクを十分に評価・低減しなかったと認定した。対象は個別の出品を削除できたかではなく、危険な商品が掲載され、推薦され、再び現れる流れを事業者がどこまで抑えられていたかである。AliExpressには2026年10月20日までに是正計画を提出する期限が与えられた。今回の決定で委員会は、商品安全をモデレーション部門の削除処理だけで測らず、運用全体の連鎖として検証した。
€5億5,000万を決めた三つの不足
欧州委員会は、AliExpressのリスク評価に三つの不足があったとした。第一に、違法の疑いがある商品を審査する人員が十分かを適切に見積もらず、モデレーター数と作業量の不均衡を現実的に織り込んでいなかった。第二に、推薦システムと広告システムが違法商品の拡散をどう強めるかを十分に評価していなかった。第三に、モデレーションの有効性を測る定量指標が一つしかなく、似た形で再掲載される違法商品のリスクを測れていなかった。
委員会の調査では、違法商品が効果的に削除される前に、消費者へ推薦または広告表示される例が多数確認されたという。テストでも、モデレーション後に大量の違法商品が流通を続けていた。出品を見つける仕組みと、露出を広げる仕組みを別々に評価しても、危険な商品の流通をどこまで抑えたかは分からない。今回の判断は、運用人員、アルゴリズム、測定指標を一つのリスク低減策として検証した点にある。
削除後も残る出品、すり抜ける分類
委員会は、違法商品の見落としに加え、発見後の対応も問題にした。模倣品、危険なおもちゃ、危険な化粧品を含む商品は、発見後も数週間にわたり掲載される例があった。違法商品を売った販売者へのペナルティーも十分に執行されず、制裁を受けた店舗がAliExpressで営業を続けられたという。
商品分類の確認も弱点だった。販売者は、審査要件が緩い分類へ意図的に商品を入れることで、掲載前のチェックを回避できたと委員会は認定した。AliExpressは分類の正しさを確認する人員を十分に置かず、管理策も誤分類を掲載前に検出できなかった。また、模倣品販売を防ぐための必須の「brand authorisation」制度も十分に機能せず、人員も足りなかったため、販売者は容易に回避できた。多数の商品が模倣品として後から削除されていた。
委員会は、削除の速さに加え、誤分類、販売者への制裁、ブランド認証の連動も検証した。これらが機能しなければ、削除された商品や販売者が別の経路から戻る。委員会は、この連鎖を抑えられなかったことを、違法商品の流通に関するシステミックリスクを低減できなかった理由として扱った。
2025年のコミットメントで終わらなかった論点
調査は2024年3月14日に始まった。欧州委員会は2025年6月18日、AliExpressが提示した一連のコミットメントを拘束力あるものとして受け入れている。未登録利用者も使える通報機能、広告と推薦システムの透明性、販売者の本人確認、研究者のデータ利用などが対象だった。
ただし同日、委員会は違法商品の流通に関するリスク評価と低減について、DSA不遵守との暫定判断も示した。この二つの論点はコミットメントの対象外だったため、今回の制裁手続に残った。€5億5,000万の算定では、侵害の性質、影響を受けたEU利用者に対する重大性、少なくとも2025年6月まで続いた期間が考慮された。一方、DSAが新しい制度であることは、AliExpressに有利な軽減事情として扱われた。
この経緯は、インターフェースの透明性や通報導線を改善しても、商品流通を支える監視・審査・露出制御は別に検証されることを示す。DSAの第34条と第35条は、超大規模オンラインプラットフォームにシステミックリスクの評価と、そのリスクに合わせた合理的、比例的かつ有効な低減措置を求めている。今回の決定は、その義務を商品安全の運用へ具体的に当てはめたものだ。
10月20日から始まる是正計画の審査
AliExpressは2026年10月20日までに、違反を是正する措置を記した行動計画を委員会へ提出しなければならない。計画の受領後、欧州デジタルサービス委員会は1カ月以内に意見を出し、欧州委員会はさらに1カ月以内に最終決定と実施期限を定める。今回の不遵守決定に従わない場合には、定期的な制裁金が科される可能性がある。
次の審査では、違法商品が掲載後に何件削除されたかという報告だけで、流通リスクが下がったことを示すことはできない。推薦・広告が危険な商品を増幅していないか、販売者が分類や認証を回避していないか、人員と指標が再掲載まで含めたリスクを測れているか。10月の行動計画には、違反を是正するための措置が記される。その内容が、今回認定された各不備へどう対応するかが次の判断材料になる。
