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AMD次世代GPU「UDNA/RDNA 5」、HDMI 2.2対応も帯域は80Gbpsか

Y Kobayashi

2025年6月20日5:19PM

AMDの次世代GPUアーキテクチャ「RDNA 5」が、最新の映像出力規格HDMI 2.2をサポートする可能性が浮上した。ただし、その帯域幅は規格上限を下回る見込みだ。この一報が意味するものとは何だろうか?

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次世代Radeonの心臓部、HDMI 2.2へ。ただし「条件付き」

半導体業界の動向に詳しいリーカー、Kepler_L2氏がX(旧Twitter)上で発信した情報によれば、AMDの次世代GPUアーキテクチャ、通称「RDNA 5」あるいは「UDNA」(内部コードネーム: GFX13)は、HDMI 2.2規格をサポートするようだ。これは、現行のRDNA 3/4世代が採用するHDMI 2.1b(最大48Gbps)から、伝送能力を大幅に引き上げることを意味する。

しかし、注目すべきはその実装の詳細だ。Kepler_L2氏によると、サポートされる帯域幅は64Gbpsと80Gbpsの2モードになるという。2025年のCESで正式発表されたHDMI 2.2規格が持つポテンシャルは、最大96Gbps。つまり、AMDの次世代GPUは、規格が持つ能力のすべてを解放するわけではない、いわば「条件付き」での対応となる可能性が高い。

とはいえ、80Gbpsという帯域は現行の48Gbpsから約67%もの向上であり、これは決して小さな一歩ではない。4K解像度でのさらなる高リフレッシュレート化や、8Kゲーミングの本格的な普及に向けた重要な布石となることは間違いないだろう。

なぜフルスペックではないのか?浮かび上がる複数のシナリオ

では、なぜAMDは最大帯域である96Gbpsを見送る判断を下した可能性があるのだろうか。そこにはいくつかのシナリオが考えられる。

コストか、戦略か。過去の事例から読み解くAMDの狙い

最も単純な理由は、コスト削減だ。最高性能を追求すれば、当然ながらチップの設計は複雑化し、製造コストも上昇する。市場の大半のユーザーにとってオーバースペックとなる機能を削り、価格競争力を維持するのは合理的な判断と言える。

しかし、より戦略的な意図が隠されている可能性を指摘したい。それは、製品ラインナップ間での意図的な差別化である。

思い出されるのは、現行のRDNA 3世代におけるDisplayPort 2.1の扱いだ。ゲーマー向けのRadeon RX 7000シリーズでは、帯域が54Gbps(UHBR13.5)に制限されていたのに対し、プロフェッショナル向けのRadeon PRO W7000シリーズでは、フルスペックの80Gbps(UHBR20)がサポートされた。

この前例に倣うならば、今回リークされた80Gbpsという仕様は、あくまでゲーマー向けのRadeonシリーズに適用されるものであり、将来登場するであろうプロ向けのRadeon PROシリーズでは、96Gbpsのフルスペックが解放される、という筋書きだ。AMDがゲーミング市場とプロフェッショナル市場、双方の要求に的確に応えるための、巧みな製品戦略と見ることもできるだろう。

UDNAアーキテクチャの野心と現実

もう一つの視点は、RDNA 5が「UDNA (Unified DNA)」と呼ばれる、より野心的なアーキテクチャであるという点だ。このUDNAは、ゲーミング向けのRDNAと、AI・HPC向けのCDNAという二つのアーキテクチャを統合し、開発効率を高めることを目的としているとされる。このような大規模なアーキテクチャ変更の過程で、ディスプレイ出力エンジンの実装に何らかの技術的制約やリソース配分の優先順位が影響した可能性も否定はできない。

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80Gbpsが拓く未来のゲーミング体験

「フルスペックではない」という言葉は、ややネガティブな響きを持つかもしれない。だが、80Gbpsという帯域幅が、我々のゲーミング体験を陳腐化させることは決してない。むしろ、未来への扉を大きく開くものだ。

HDMI 2.2規格は、4K@480Hzや8K@240Hzといった、現時点では想像の域を出ない超高解像度・高リフレッシュレートを視野に入れている。80Gbpsの帯域があれば、これらの究極的なスペックには届かないものの、例えば「4K@240Hz」や「8K@120Hz」といった、現在のハイエンド環境を遥かに凌駕する表示を、圧縮技術なしに実現できる可能性が出てくる。

近年、OLED(有機EL)テレビやモニターは急速に進化しており、すでに4K@165Hzといった製品も市場に登場している。80Gbpsという帯域は、こうしたディスプレイ技術の進化に十分追随し、今後数年間のハイエンドゲーミング環境を支える強固な基盤となるだろう。

「Zenモーメント」への布石か。RDNA 5への期待と展望

今回の情報は、AMDのグラフィックス部門が迎えるかもしれない大きな転換点を予感させる。同社はRDNA 4世代においてハイエンドモデルの投入を見送り、リソースを次世代のRDNA 5に集中させたと噂されてきた。そのRDNA 5が、同社のCPU事業を劇的に変えた「Zenアーキテクチャ」のような飛躍、すなわち「Zenモーメント」になるのではないか、という期待は根強い。

TSMCの先進的な3nmプロセス(N3E)で製造され、ハイエンドGPU「big core flagship」の復活が囁かれるRDNA 5。その登場は2026年後半から2027年初頭と見られている。今回のHDMI 2.2への対応は、その大きな進化を構成する重要なピースの一つに他ならない。

果たしてRDNA 5は、グラフィックス市場の勢力図を塗り替えるほどのインパクトをもたらすだろうか。

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