OpenAIは米国時間9月29日、開発者イベント「DevDay 2026」で、チームとAIが文書やファイルを共有して働く「ChatGPT Space」を発表した。従来のLibraryを置き換え、共同編集できる文書「Pages」を仕事の中心に据える。ChatGPTの返答を別の文書へ移す作業から、同じページを人とAIが直し続ける作業への転換である。ただし、ページの共同編集と、外部資料を使った継続更新は条件が異なる。Spaceの価値を見極めるには、何を一緒に編集できるかに加え、更新をどう任せ、集めた情報を誰に見せるかまで見る必要がある。OpenAIの発表
返答を配る仕事から、同じ文書を直す仕事へ

Pagesでは、文章や画像、表を組み合わせた文書を、ChatGPTと人が直接編集できる。見出しやチェックリストを置き、関連資料は子ページに分ける。企画書の一節を選んで改稿を依頼したり、コメントでChatGPTを呼び出して変更を頼んだりでき、編集権を持つ同僚も同じページで作業できる。Pagesの公式ガイド
例えば新製品の発売計画なら、ページ上部に決定事項を置き、担当者ごとの作業をチェックリストにする。詳しい調査は子ページへ移し、根拠となるファイルや会話を参照する。同僚が「この説明では対象顧客が分からない」とコメントすれば、該当箇所を指定してAIに書き直させられる。原稿を各自の会話で作り、あとから一つにまとめる手間を減らせる構成だ。
文書には、読者が操作できる図や小さな計算機も置ける。公式ガイドは、人数や期間、1人当たりの費用を変えて試す予算計算機を例に挙げている。数字を読んでもらうだけでなく、前提を変えると結果がどう動くかを同じページで確かめられる。再利用できる依頼文を「Prompt」ブロックに置き、読み手がそこから会話を始めることも可能だ。会議で読む資料と、次の作業を始める入口が近くなる。
もっとも、ChatGPTで資料を共有して働くこと自体が初めてではない。既存のProjectsも、関連する会話やファイル、指示をまとめ、参加者が新しい会話を始めたり、同僚の会話から分岐したりできる。Spaceで加わるのは、共同で改訂する文書を前面に置いた作業の進め方である。Projectsで議論や調査を重ね、Pagesでチームが見る計画を整える、という役割分担も考えられる。Projectsの公式説明
文章を直接編集し、選んだ箇所をAIに直させる使い方も、既存のCanvasが備えていた。Canvasの導入時の説明では、人が文章やコードを編集し、特定の部分を指定してChatGPTに修正を頼めるとされている。Spaceで新しいのは、その文書を複数の共同編集者が同じPages上で改訂し、関連資料や子ページとともに共有できる作業の単位だ。AIと文書を直す機能を、チームで維持する文書の仕組みへ広げたものと捉えられる。
なお、ChatGPTの個人用または組織用の「ワークスペース」と、Space内に作るテーマ別の「space」は別のものだ。前者はメンバーや設定、使えるアプリを定める環境で、後者は関連するページをまとめる場所を指す。チーム用のspaceを共有すれば、その中のページにもアクセスを与えられる。単独のページを作って共有する使い方もある。Spaceの公式ガイド
同じページを開いていても、全員のAIが同じ条件で動くとは限らない。共同編集者が使うエージェントや接続ツール、指示は人によって異なり得ると、OpenAIは説明している。チームが共有するのは文書の内容である。誰がどの部分を直し、どの資料を根拠にするのかを合わせておく必要がある。エージェントとの作業ガイド
「更新を続ける文書」には、更新の予約が要る
OpenAIはSpaceを、接続先の情報を取り込みながら更新を続ける文書のための場所と紹介する。ただし、専用の「Keep Updated」機能は開始時点では利用できない。定期更新を行うには、チャットで作業を依頼し、保存されたスケジュールを確認する必要がある。ページや指示欄に「毎週更新」と書くだけでは、タスクを予約したことにはならない。公式ガイドの定期作業に関する説明
例えば、接続したSlackとGoogle Driveの資料を毎週確認し、発売計画の未完了項目を更新する使い方が考えられる。その場合は、参照する資料と更新する箇所を指定し、タスクの実行日時と有効状態を確認する。さらに実際の実行結果を見て、ページが意図どおり変わったかを点検する。「いつかAIが見てくれる」という期待を、実行される依頼へ変える工程だ。
実行場所にも違いがある。Webの定期タスクはアップロードした資料や接続ツールを使えるが、利用者のPC内にあるフォルダーを直接扱えない。一方、デスクトップアプリでローカル資料を使う定期タスクには、PCの電源とアプリの稼働が必要になる。Spaceの更新すべてにPCの常時稼働が必要なのではなく、更新時に使う資料がどこにあるかで条件が変わる。定期タスクの公式ガイド
Spaceでは、継続して仕事を担うAIエージェント「dot」にも、ページ内やコメントから依頼できる。ただし、Spaceとdotは提供条件が同じではない。Spaceの対象はPro、Business、Enterpriseで、dotは対象地域のProとBusiness Premiumなどに提供される。Enterpriseでは管理者が試験提供を有効にする条件もある。BusinessでSpaceが使えることから、dotも利用できると判断するのは早い。DevDayの提供条件
更新を任せる場面では、書き換えてよい事実も決めておく必要がある。発売日を記した計画でも、根拠資料に「承認待ち」とあれば、日付を確定事項として扱うべきではない。OpenAIのガイドも、こうした場合は日付とリンクを保ちながら、提案中で承認を待っていることを明記する例を示している。文書を新しくする能力と、何が確定したかを判断する能力は分けて確かめたい。
つまり、担当者が減らせるのは更新のために文章を直す作業であり、更新対象や確定事項を決める仕事は残る。AIが書き換えやすい文書を作るなら、決定事項と検討中の案を区別し、根拠となる資料を近くに置く。その整理が、継続して使える計画書を支える。
AIが集めた情報は、誰に見えるのか
共有ページに情報を持ち込む方法には、参照元の権限を保つリンクと、ページの閲覧者へ情報が見えるアップロード・転記という違いがある。
2026年9月30日時点のOpenAIの管理ガイドとSpaceの説明から、持ち込み方と閲覧できる範囲を分類すると、次のようになる。
| 情報を持ち込む方法 | 共有ページを読める人に見えるもの | 元ファイルの権限との関係 |
|---|---|---|
| 元ファイルへのリンクを置く | 参照先を示すリンク | 元ファイルを開くには、そのファイルの権限が必要 |
| ファイルをページにアップロードする | ページの権限に従って共有されたファイル | ページの共有範囲に合わせて扱われる |
| 内容を転記する、AIに要約させて載せる | ページに書き込まれた内容 | 元ファイルを開けない人にも、その記述は見える |
公式仕様を整理した表であり、実環境でアクセス権を変更して試験した結果ではない。判断が変わるのは最後の行だ。限られた担当者だけが読める資料でも、要約を広く共有したページに載せれば、その要約はページの読者に見える。元ファイルの閲覧権を新たに与えたわけではないが、情報は共有先へ移っている。
私的な会話や保存メモリにも同じ区別が当てはまる。ページを共有しても、他の人が私的なチャットやメモリそのものを読めるようにはならない。ただし、ChatGPTがメモリを参照して個人的な情報をページに書けば、その記述は共同作業者に見える。共有前に確認する対象は、元の会話を公開したかどうかに加えて、ページに何が書かれたかである。Spaceの共有に関するFAQ
アクセスを止める操作にも注意点がある。Spaceの共有権限は中のページに、親ページの共有権限は子ページに引き継がれる。直接の招待を削除しても、親ページやSpaceから得たアクセス権が残っていれば、その人は引き続きページを開ける。共同作業の公式ガイド
さらにEnterpriseの管理ガイドは、共有を無効にしても、止まるのは新規共有と権限変更で、既存の共有アクセスは残ると説明する。接続アプリの解除も、その接続を使った今後のアクセスを止める操作であり、保存済みの内容を自動で消すものではない。共有範囲を狭めたいときは、招待や接続設定だけでなく、ページが置かれた場所と残っている情報まで確認する必要がある。企業向け管理ガイド
BusinessとEnterpriseのデータを既定でモデル学習に使わないという方針も、共同作業者の閲覧権とは別の話だ。チーム向けに資料を集めるときには、AIが参照できる情報と、ページの読者に見せてよい情報を区別する。更新を自動化するほど、その判断を依頼文や共有設定に反映しておく意味は大きくなる。
文書を維持する仕事まで引き受けられるか
現時点のSpaceは、共同編集できるPagesを中心に評価する段階にある。Pro、Business、Enterpriseで利用でき、Webとデスクトップではページを作成・編集できる。モバイルは検索や閲覧、共有に対応するが、作成と編集は今後の提供だ。共同編集するスライドとスプレッドシートも予告されているものの、まだ現在のPagesと同列には扱えない。Spaceの提供範囲
スライドや表計算まで共同作業の対象が広がれば、企画書から会議資料、数値の検討までを同じ場所で進める用途が考えられる。ただし、その実装日程や、既存ソフトから全面的に移れるだけの機能・互換性は、この発表から判断できない。新しい作業場所ができたことと、職場の文書環境を置き換えられることの間には、検証する余地が残る。
Spaceが提示する変化は、AIに原稿を書かせる場面の先にある。計画が変わったときに、根拠を確認して文書へ反映し、次に参加する人が使える形へ整える。そうした維持の仕事まで依頼できれば、文書は会議のたびに作り直す資料から、判断を積み重ねる場所へ変わり得る。
評価すべきなのは、最初に作ったページの見栄えだけではない。承認待ちの情報を確定扱いせず、指定した資料から必要な部分を更新し、意図した相手だけに共有できるか。この条件を満たす更新が続けば、チームは文書の作り直しに追われる時間を減らし、その文書を使って次の判断を進められる。



