Anthropicは2026年7月23日、有料プランのClaude音声モードでClaude OpusとClaude Sonnetを使えるようにした。Freeの音声モードは引き続きClaude Haikuに限られるが、有料プランでは契約に応じてテキスト会話で最後に選んだモデル系列を引き継ぎ、会話の途中でも切り替えられる。GmailやSlack、Google Calendarなどの接続ツールにも音声から届き、日本語を含む11言語・地域変種を利用できる。音声がテキスト版のモデル選択とツール利用へ近づく一方、ターン制、プラン別の利用枠、権限確認、保存データという制約も持ち込まれる。
Haiku固定を外し、会話中にモデルを選び直す
旧音声モードがHaikuを採用した理由は速さだった。Anthropicによると、利用者は短い質問より長い業務上の問題を声で考えるようになり、会話は速くても深さが足りない場面が生じた。そこで複雑な推論を担うOpusと、執筆や分析、多段作業に使うSonnetを選択肢へ加えた。
利用者が選ぶのは「Opus」「Sonnet」「Haiku」という系列名であり、特定世代ではない。音声モードを始めると、直前のテキスト会話で使った系列を選び、その系列の最新世代へ自動的に移る。Anthropicは会話を滑らかにするため、選択したモデルの高速な版を使うと説明している。Haikuで始めた相談が複雑になれば、その会話を残したままOpusへ切り替えられる。
ただし、テキスト版と音声版のモデル表は一致しない。Freeのテキスト会話ではHaikuとSonnetを使えるが、音声モードはHaikuに限られる。有料プランでは契約に応じてSonnetやOpusへ広がるものの、長時間の自律作業向けモデルであるFableは音声モードに対応していない。
モデル変更は利用時間にも効く。音声会話は通常の利用上限を消費し、Anthropicの選択ガイドは上限の消費量をHaikuが最も軽く、Sonnetが中程度、Opusが重いと説明する。深い推論を声で使える代わりに、同じ利用枠で続けられる会話量は減りうる。モデル切替は性能と残り時間を選ぶ操作でもある。
ターン制を保ったまま、声で考え続ける
Claudeの音声モードは、利用者とモデルが同時に話し続ける方式ではない。Claudeは発話を聞き、いったん考えてから答えるターン制である。Anthropicはこの間を残したまま、OpusとSonnetで問い返しや論点の掘り下げを増やし、企画の穴を探す、複数の仮説を比べるといった使い方を前へ出した。
操作には2種類ある。既定のハンズフリーでは自然な間を検知して応答を始め、利用者が話し始めるとClaudeが発話を止めて聞き直す。周囲が騒がしい場合は、ボタンを押している間だけ音声を送るプッシュ・トゥ・トークへ切り替えられる。同じスレッド内でテキストへ戻ってURLやコードを入力し、再び音声へ移っても、それまでの会話は引き継がれる。
提供先はiOSとAndroidのモバイルアプリ、Claude Desktop、Webで、全チャット利用者向けのベータである。Anthropic自身もスマートフォンで最もよく動くとしている。音声認識の正解率、最初の音声が返るまでの時間、割り込みの成功率は公表されていない。「Opusになったから自然な会話も改善した」とまでは確認できず、今回確定した変化は会話を処理するモデル系列と作業範囲である。
メールを読み、予定を動かす音声インターフェース
新しい音声モードは、接続済みのGmailやGoogle Calendar、Google Docs、Slack、Canvaを会話中に呼び出せる。Anthropicが挙げる例では、当日のメールを要約して重要な返信の下書きを作る、遅刻しそうなときに予定を30分ずらす、顧客向け提案の会話をCanvaの1ページ資料へ変える、といった流れを声で頼める。
外部データへの接続自体は今回が初めてではない。Anthropicが2025年5月27日にモバイル向け音声モードを公開した際も、Calendarの要約とDocsの検索を例示していた。今回の差は、Haikuから上位モデルへ作業を渡せることと、接続先の広がり、検索後に予定や文書を変更する動作を同じ音声会話へ組み込んだ点にある。
声で頼めることと、無条件で実行できることは同義ではない。Claudeは接続ツールを使う前に許可を求め、元サービスで利用者が持つ権限を超えてデータへ触れない。Google Calendarでは予定の作成、更新、削除が可能だが、Gmailは検索と下書き作成までで、メール送信は利用者がGmail側で行う。
組織側にも停止線がある。TeamとEnterpriseの所有者は、Google Driveの読み取りを許可して文書の作成や編集を止めるなど、操作単位で「常に許可」「承認が必要」「ブロック」を設定できる。Freeは音声モードで接続ツールを1件使え、有料プランは接続済みのツールを利用できる。音声操作が増えるほど、導入時にはモデル名より、どの操作を誰に許すかという権限表が重要になる。
日本語を含む11言語、切り替えは手動
対応する音声設定は英語を含む11種類になり、日本語と韓国語も選べる。ヒンディー語とインドネシア語も加わった。欧州系ではフランス語、ドイツ語、イタリア語に対応し、ポルトガル語はブラジル向けである。スペイン語はラテンアメリカ版とスペイン版を分けた。言語は全プランで使える。
英語以外の対応はベータで、Claudeは話された言語を自動判定しない。利用者は音声設定で言語を選ぶか、会話中に切り替えを指示する必要がある。アプリの表示言語を日本語にしていても、音声設定は引き継がれない。多言語対応の本数より、話題の途中で言語を変えたときに文脈と固有名詞を保てるかが実用上の判断材料になる。
音声記録と接続データに残る管理境界
音声会話のテキスト記録は、通常のチャットと同じように履歴へ保存される。接続ツールから取得したデータも関連するチャットとともにAnthropicのサーバーへ保存され、チャットを削除すれば消せる。Google Workspaceのコネクターデータ自体はモデル訓練へ使われないが、利用者が内容を手動で貼り付け、消費者向けアカウントで訓練利用を許可している場合は別の扱いになりうる。
音声入力には機能ごとの違いがある。Anthropicは商用製品のディクテーションについて、文字化が終われば音声録音を削除し、声をモデル訓練に使わないと明記する。一方、音声モードの現行FAQが説明するのはテキスト記録の保存までで、音声録音そのものを保持するか、いつ削除するかは同じページに記されていない。ディクテーションの処理を音声モードへ当てはめることはできない。
出力音声も自由に複製できる設計ではない。利用者は限られたプリセット音声から選び、特定人物の声を複製したり模倣させたりする機能は提供されない。また、Claude CoworkとClaude Codeではディクテーションを使えるが、音声モードは使えない。Coworkに置いたProjectsやSkillsへ音声モードからアクセスすることもできない。
今回の更新で、Claudeは声で難しい問題を考え、その結論を接続ツールへ移す経路を得た。次の評価はモデル一般の性能表では決まらない。日本語で長く話した際の認識精度、Opusへ切り替えた後の応答時間、予定変更や文書作成の成功率、音声録音の保持条件が開示され、実際の会話で再現できるかが普及を左右する。



