中国のDRAMメーカーCXMTが試作する8層HBM3の歩留まりは約25%にとどまると、韓国ChosunBizが2026年9月9日に報じた。AI向けの広帯域メモリを国内で賄おうとする中国にとって厳しい数字だが、これを直ちに「量産失敗」と受け取ることはできない。6月の分析にも同水準の推定があり、今回の報道だけでは急落したとは言えず、工程別の割合を掛け合わせても全体の数字と一致しないからだ。CXMTの供給力を見極めるには、この25%の意味を確かめたうえで、DRAMを良品のHBMへ仕上げる工程まで見る必要がある。
25%と「8割不合格」を分母から読み直す
ChosunBizの報道は、CXMTの事情を知る匿名の半導体装置業界関係者を根拠に、前工程の歩留まりを約30%、そこを通過した分が後工程を経て良品になる割合を約70%としている。CXMTが公表した測定値ではなく、検査条件や対象期間も示されていない。
歩留まりは、ある工程へ投入したもののうち、良品として残る割合を指す。したがって、前工程の合格分を次の工程へ送るなら、後工程の70%は最初の投入全体に対する割合ではない。両工程を同じ対象が順次通ると仮定して計算すると、30%×70%は21%であり、記事全体の約25%とは一致しない。
| 数字の出どころ | 前工程 | 前工程の合格分に対する後工程 | 両者を掛けた値 | 文中の全体歩留まり |
|---|---|---|---|---|
| ChosunBiz、2026年9月9日の報道 | 約30% | 約70% | 21% | 約25% |
| SemiAnalysis、2026年6月23日のモデル推定 | 約35% | 約70% | 24.5% | 約25% |
表の計算値は、記載された割合をそのまま掛けた算術上の値であり、CXMTの実測歩留まりを求め直したものではない。概数の丸め方や母集団が不明なため、今回の差が生じた理由までは判断できない。
一方、SemiAnalysisの6月23日付分析では、8層HBM3の前工程を35%、後工程を70%とモデル化している。こちらは35%×70%=24.5%で、約25%という表現と整合する。ただし、別の時点の推定と匿名関係者の説明を並べて、前工程が35%から30%へ悪化したと結論することもできない。
「100個から約8割が良品にならない」という累積の説明と、「最終検査へ入った100個の約8割が落ちる」という説明では、失敗が起きる場所が違う。報道の70%を使う限り、後工程へ進んだ分の不合格率は約30%となる。8割という数字を、最終検査だけの不合格率として扱うべきではない。
薄いDRAMを重ねるほど難しくなる接合
CXMTはすでにDDR5などのDRAMを公式製品として掲載している。しかし、DRAMそのものを製造する能力と、複数のチップを縦に接続してHBMへ仕上げる能力は、同じではない。
HBMは、DRAMのチップを重ね、多数の縦配線で接続する。SK hynixの技術説明にあるTSV、すなわちシリコン貫通電極は、チップ内部を上下に貫く電極だ。チップ同士の境界では微小な接点をつなぎ、積み重ねた全体で信号を通す。内部の電極ができても、積層時の位置や接合状態が適切でなければ完成品としては機能しない。
しかも、高さをむやみに増やせない。SK hynixは2023年の12層HBM3開発で、従来の8層製品と同じ高さに収めるため、積むDRAMを40%薄くした。開発チームの説明によれば、薄化するとチップが曲がりやすくなり、改良した封止材料とAdvanced MR-MUFという積層・封止技術で対処したという。
薄く加工する精度と、重ねて接合する条件、隙間を満たしてチップを保護する材料を、組み合わせて成立させる必要がある。積層数が増えれば、同じ完成品の中で良好に保つべき接合箇所も増える。先行メーカーの開発経験は、微細化したDRAMを用意するだけでは解けない製造課題を具体的に示している。
ただし、これはSK hynixの工程である。CXMTが同じ材料や方式を使っていることも、同じ期間で歩留まりを改善できることも意味しない。CXMTの問題を特定の装置一台の不足や、接合方式一つに還元する根拠はない。
積層前の選別と、積層後の検査が果たす別の役割
半導体検査装置を手がけるアドバンテストの2023年11月の技術説明資料、16ページは、HBMの検査を積層の前後に分けている。積む前にはDRAMダイとロジックダイをそれぞれ検査し、重ねた後にも複数の検査を行う工程例だ。最後に完成品を調べる一回の関門ではない。
積層前には、まず良品のチップを選びたい。同社が良品ダイと定義するものは、検査で良品とされた未封止のチップである。不具合のあるチップを先に見つければ、それを積層するための作業や材料を追加投入せずに済む。
しかし、積む前に良品だったことは、積んだ後の良品を保証しない。接合や取り扱いを経た完成状態でも、メモリへのアクセスや機能を確かめなければならない。個々のチップの品質を選別する検査と、積層した製品としての動作を確かめる検査は、別の問題に答えている。
アドバンテストは同じ資料で、積層数と記憶密度が増すと検査時間が延び、高速化や電流の増加も検査装置の課題になると説明している。同時に試験できる数にも影響し得る。検査を厳しくすれば、それ自体で工場が作る良品が増えるわけではなく、検査に使う時間と設備も必要になる。
この工程を踏まえると、CXMTの歩留まりを読む際には、不良品が「どの時点で見つかったか」が欠かせない。前工程での不合格を減らす対策と、接合後の不合格を減らす対策では、調べる工程も改善に使うデータも異なる。全体の25%だけでは、どちらが改善したのかを追跡できない。
歩留まりが左右する良品の量と、採算の違い
投入量も製品も検査条件も変えず、全体歩留まりが仮に25%から50%になれば、得られる良品は50÷25で2倍になる。これはCXMTの改善予測ではなく、歩留まりと供給量の関係を示す単純な計算だ。工場へ投入できる量が同じでも、顧客へ届けられる量は大きく変わる。
一方で、良品が倍になったから製造原価がそのまま半減する、とは言えない。工程ごとに費用が発生し、歩留まりを上げるために検査や加工を増やせば追加の費用もかかるからだ。積層後に不合格となった製品には、その時点までの加工や材料がすでに使われている。前工程で排除した不良品と、最終段階まで進めた不良品は、同じ一個でも失う費用が違う。
このため、ある歩留まりを超えたら一律に量産可能、あるいは採算が合うという線は引けない。販売価格や工程別の費用に加え、顧客が必要とする数量によって評価は変わる。今回の報道からCXMTのHBM原価や損益を算出することはできないが、低歩留まりが、同じ投入量から得られる供給量を抑えるという関係は変わらない。
中国のAIチップ設計企業にとっては、試作品が動くことと、予定したシステム台数に必要なメモリを継続調達できることの間に、この差がある。試作成功をそのまま大規模な国産代替へ結び付けるには、良品の出荷量という証拠が必要になる。
HBM3Eの試作報道と、HBM4の商用出荷の間
8月末にはThe InformationがCXMTのHBM3E少量生産を報じている。生産規模や検査条件の詳細は未確認だ。今回の8層HBM3の数字を、HBM3Eの歩留まりへ転用することはできない。
競合側では、Samsungが2026年2月12日にHBM4の量産開始と商用出荷を発表している。同社の説明では、HBM4はデータ入出力の本数が1,024から2,048へ倍増し、それに伴う電力や熱の課題にも対処した。HBMの競争は、世代名を更新するごとに接続と実装への要求も変わる。
したがって、CXMTと先行各社の差を評価するには、世代と積層数を合わせ、その製品が試作中なのか、顧客の検証中なのか、商用出荷されているのかを区別する必要がある。旧世代の試作歩留まりと、新世代の完成品の性能を一つの数字で順位付けしても、国内のAIシステムを何台作れるかは分からない。
米商務省BISは2024年12月2日にHBMの輸出規制追加を発表し、米国原産品に加え、所定のルールで米輸出管理規則の対象となる外国製品も規制に含めた。海外からの調達が制約される環境では、国内で使えるHBMを増やす意味は大きい。ただし、規制の存在だけで今回の低歩留まりの原因を説明したり、少量生産を規制の無効化とみなしたりはできない。
CXMTの次の進展を測る材料は、同じ製品と検査条件での良品出荷量が増え、顧客の継続採用につながるかどうかだ。そこまで進めば、中国のAIチップ設計企業は、国産メモリを使えるという期待を、実際の生産計画へ組み込めるようになる。
