Appleは米国時間2026年9月9日、iPhone 18 ProとiPhone 18 Pro Max、そして新登場のiPhone Duoに搭載する「A20 Pro」を発表した。2nmプロセスを採用し、A19 ProからCPUは最大20%、GPUは最大40%高速になるという。さらにメモリ帯域を50%広げ、ダイの横にメモリを置く実装でチップから熱を逃がしやすくした。前世代からの変化は、演算資源の増強に加え、その演算器へデータを届け、負荷が続いても性能を保つ仕組みに表れている。
A19 Proから増えたもの
A20 Proは6コアCPUと7コアGPU、合計32コアのNeural Engineを備える。前世代のA19 Proと並べると、CPUのコア数は同じで、GPUとAI向けの演算資源を増やしたことが分かる。
| 項目 | A19 Pro | A20 Pro | Appleが示したA19 Proからの性能変化 |
|---|---|---|---|
| CPU | 6コア | 6コア、ニューラルアクセラレータを統合 | 最大20%高速 |
| GPU | 6コア | 7コア | 最大40%高速 |
| Neural Engine | 16コア | 16コアを2組、計32コア | 演算能力が2倍 |
出典:A19 Proの発表、A20 Proの発表、同じA20 Proを搭載するiPhone Duoの発表。性能変化は2026年9月9日にAppleが公表した値であり、独立測定ではない。CPUとGPUの測定負荷や時間、比較前後の絶対スコアは当該性能節に記載されていない。
CPUはコア数を増やさずに最大20%の高速化をうたう。一方、GPUのコア数は(7−6)÷6×100で約16.7%増えているが、Appleの公称性能は最大40%向上している。コア数を数えるだけでは、世代間の性能差を説明できない。各コアの設計やデータ供給の改善も関係し得るが、それぞれの寄与は公表されていない。
メモリ帯域もA19 Pro比で50%広がった。これは単位時間あたりに転送できるデータ量の変化であり、CPUの処理速度やGPUの描画速度とは異なる指標だ。性能を評価する際には、動かしたい処理が演算とデータ転送のどちらで待たされているかを見極める必要がある。
メモリを横に置き、チップから熱を逃がす
iPhone 18 Proシリーズでは、A20 Proのダイとメモリを横に並べる。Appleによると、Mシリーズから着想を得た独自のパッケージにより、メモリをチップの放熱経路から外し、A20 Proを次世代ベイパーチャンバーへ直接接続できるようになった。
ベイパーチャンバーは、内部の液体の蒸発と凝縮を利用して熱を広げる冷却部品だ。新しい部品は素材を改め、表面積をiPhone 17 Pro世代の3倍にしたという。チップから熱を逃がす経路と、その熱を広げる部品を一緒に変えている。
この熱管理の説明で、AppleはiPhone 18 Proシリーズの持続性能が前世代から最大40%向上するとしている。GPUの最大40%と端末の持続性能の最大40%は、対象が異なる。前者はA19 Proに対するGPUの世代差、後者は冷却系を含む端末が負荷を受け続けたときの性能差だ。両者を足したり掛けたりして総合性能を求めることはできない。
短い処理を終える速さと、重い処理を続ける力では、冷却の効き方も変わる。温度上昇に伴う性能制限を抑えられれば、長時間のゲームや動画編集で速度を維持しやすくなる。今回の実装変更は、そうした持続的な負荷で評価したい改良である。
2nmと帯域50%増が支える端末内AI
2nmの製造技術が量産製品へ広がる背景には、トランジスタ構造の世代交代がある。TSMCはN2の技術紹介で、初代ナノシート技術を採用し、2025年第4四半期に量産を始めたと説明している。もっとも、Appleの今回の発表は「2nm」としており、N2とN2Pのどちらかを明記していない。
プロセス名の数字だけで性能差は計算できない。2nmは製造世代を示す名称で、チップ内のすべての寸法が2nmという意味でもない。A20 Proを評価するには、Appleが実際に増やした演算資源や転送能力まで見る必要がある。
端末内で大きなAIモデルを動かす場合、演算回路が速くても、必要なデータの到着を待てば処理は進まない。メモリ帯域の50%増は、そうしたデータ供給の制約を緩める方向の変更だ。ただし、どの処理がどれほど速くなるかは、モデルの大きさや演算方法、キャッシュの使い方によって変わる。
Neural Engineの演算能力が2倍という説明も、会話アプリの返答が一律に2倍速くなるという意味ではない。アプリ側が新しいハードウェアを使えるか、処理のどこに時間がかかっているかで効果は変わる。CPUにもAI演算を支援する回路が入るため、専用のNeural Engineのコア数だけで端末内AIの能力を測るのも難しい。
なお、Appleは今回の発表でメモリ帯域の絶対値やメモリ規格、バス幅を示していない。50%増という事実から、特定のメモリ規格やバス幅を逆算して確定することはできない。
SnapdragonとDimensityとの比較で分かる設計の違い
Snapdragon 8 Elite Gen 5は、GPU向けに18MBの専用メモリ「Adreno HPM」を備える。一方、Dimensity 9500はCPUとGPU、NPUのデータを扱う動的なキャッシュ設計を採用する。競合も、演算器へデータを効率よく届ける仕組みに力を入れている。
| 項目 | Apple A20 Pro | Snapdragon 8 Elite Gen 5 | MediaTek Dimensity 9500 |
|---|---|---|---|
| CPUの構成 | 6コア | OryonのPrime 2コア+Performance 6コア | C1-Ultra 1コア+C1-Premium 3コア+C1-Pro 4コア |
| GPU | 7コア | Adreno | Arm Mali-G1 Ultra MC12 |
| AI向け専用回路 | 計32コアNeural Engine | Hexagon NPU | NPU 990 |
| データ供給の強化 | A19 Pro比でメモリ帯域50%増 | 18MBのHPMとTile Memory Heap | CPU・GPU・NPUの動的キャッシュとSLC管理 |
出典:Apple、Qualcomm製品資料、MediaTek製品情報。2026年9月10日確認の公表仕様。各社でCPUやGPU、AI回路の内部構成が違うため、コア数を横断的な性能指標として読むことはできない。
この表から性能順位は決められないが、データ供給の改善方法は比較できる。Appleが公表したのはメモリ帯域の拡大で、QualcommのTile Memory HeapはGPU側のメモリ利用と帯域を最適化する機能だ。MediaTekは、チップ内の共有キャッシュであるSLCの管理を含め、遅延や帯域の改善を説明している。
外部メモリとの転送能力を広げることと、チップ内でデータを再利用して転送を減らすことは、併用できる方法である。発表された特徴の違いは、他方の手法を使っていないことを意味しない。実効性能を比較するなら、これらの仕組みを使う同じ処理を実行し、速度と消費電力を測る必要がある。
発売後に確かめたいゲームとAIの実効性能
iPhone 18 ProとiPhone 18 Pro Maxは、日本を含む地域で9月12日に予約を開始し、9月18日に発売する予定だ。Appleの公称値を実際の購入判断につなげるには、製品版を使った独立検証も必要になる。
ゲームでは、開始直後の最高フレームレートに加えて、負荷をかけ続けた後のフレームレートと消費電力を見たい。同じゲームの画質設定や描画解像度をそろえ、周囲の温度も記録すれば、新しい熱経路が実際の遊びやすさにどれほど効いたかを判断しやすくなる。
端末内AIなら、同じモデルと量子化条件で、最初の応答が出るまでの時間と、その後の生成速度を分けて測る必要がある。A19 Proから買い替える価値も、他社端末との優劣も、GPUの最大値だけでは決まらない。重いゲームやAI処理を長く使う人にとって、今回の実装変更の価値を確かめる材料は、使い続けたときの速度と電力だ。



