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2025年第2四半期のDRAM価格動向:下落緩和とHBM上昇へ

Y Kobayashi

2025年3月25日

市場調査会社TrendForceの最新の分析によると、2025年第2四半期の従来型DRAM価格は0〜5%の小幅下落にとどまる一方、HBM(高帯域幅メモリ)を含めた平均価格は3〜8%上昇する見通しだ。

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DRAM市場全体の価格動向

在庫削減が価格下落を緩和

TrendForceの調査では、米国の関税引き上げを見越して多くのダウンストリームブランド(完成品メーカー)が2025年第1四半期に出荷を前倒ししたことが明らかになった。これによりメモリサプライチェーン全体の在庫削減が加速し、第2四半期の従来型DRAM価格の下落を0〜5%という小幅な範囲に抑える効果をもたらしている。

HBM出荷増加が平均価格を押し上げ

特筆すべきは、HBM3e 12hi(12層積層型高帯域幅メモリ)の出荷増加によって、HBMを含めた平均DRAM価格が3〜8%上昇する見通しであることだ。この上昇傾向はAI(人工知能)分野における需要の継続的な拡大を反映したものといえる。

用途別DRAM市場の動向

PC向けDRAM:前期比で横ばいの見通し

PC向けDRAM市場では、関税リスクに対応するための前倒し生産が在庫消費を加速させている。

米国の関税引き上げへの対応策として、主要PC OEM(相手先ブランド製造業者)はODM(委託設計製造業者)に対して生産増加を要請している。これにより在庫のDRAM消費が加速するとともに、在庫水準が低下したOEMは2025年後半の安定供給を確保すべく、第2四半期の調達量を増やす動きが予想される。

供給側に目を向けると、SamsungはHBMの認証プロセスが想定よりも遅延しているものの、従来型DRAMへの大規模な生産能力シフトは実施していない。SK hynixはサーバーおよびモバイル向けDRAMに引き続き注力しており、PC向けDDR5(第5世代Double Data Rate)メモリの供給は制限的な状況が続いている。

他方、DDR4価格は消費者需要の低迷と中国メーカーによる生産能力の継続的拡大を背景に弱含みで推移している。こうした要因が複合的に作用した結果、PC向けDRAM価格は第2四半期において前期比で横ばいになると予測されている。

サーバー向けDRAM:AI投資が価格を下支え

サーバーDRAM市場では、北米大手のクラウド事業者と中国のAI投資が需要を牽引している。

北米の主要クラウドサービスプロバイダー(CSP)上位3社による汎用サーバーの調達拡大と、中国におけるAIサーバー投資の強化がサーバーODMの稼働率を向上させ、DDR5需要を押し上げる要因となっている。

各サプライヤーはDDR4からDDR5への生産移行を進めているが、初期供給は依然として逼迫した状態にある。加えて、NVIDIAのB200およびB300シリーズGPUからのHBM需要増加が、メモリメーカーの生産能力配分にさらなる圧力をかけている状況だ。

これらの市場環境を背景に、DDR5価格は第2四半期に安定的に推移する見込みである。DDR4の価格下落幅も当初予想を下回り、サーバーDRAM全体の平均契約価格は横ばいになると見られている。

モバイル向けDRAM:高性能タイプは上昇傾向へ

モバイルDRAM市場では、中国の政策支援と高級機種需要が市場回復を後押ししている。

モバイルDRAM需要は、中国政府によるスマートフォン購入補助金政策と高級スマートフォンの出荷量微増を追い風に改善の兆しを見せている。さらに、PCやサーバー用途からの需要シフトがLPDDR5X(低電力DDR5X)のビット消費量を増加させる要因となっている。

中国メーカーの積極的な供給拡大によりLPDDR4X市場では十分な供給量が確保されているものの、価格下落は0〜5%の範囲にとどまる見通しだ。一方、ビット供給量の増加にもかかわらずLPDDR5Xは依然として供給不足の状態が続いている。サプライヤー各社が供給逼迫感を演出していることもあり、LPDDR5X価格は前期比で0〜5%上昇すると予測されている。

グラフィックス向けDRAM:次世代製品需要で下支え

次世代グラフィックボードの発売準備とAIモデル需要がグラフィックスDRAM市場を支えている。

グラフィックスDRAM分野では、第2四半期のGDDR7(第7世代Graphics DDR)需要は主に次世代グラフィックボードの在庫確保を目的としたものとなる見込みだ。供給の制約からGDDR7価格は横ばいないしは小幅な下落にとどまると予想されている。

GDDR6に関しては、DeepSeekのオープンソースAIモデル向け需要に下支えされ、価格下落幅は3〜8%程度に抑制される見通しだ。GDDR7の生産量は増加傾向にあるものの、供給の安定性にはまだ課題が残っている。

主要DRAMメーカーは価格下落を食い止めるための戦略として、GDDR6をバンドル販売する手法を採用。これにより契約価格の安定化を図りつつ、在庫削減を同時に進める取り組みを展開している。

コンシューマー向けDRAM:インフラ投資で回復へ

通信インフラ投資の拡大がコンシューマーDRAM市場の回復を後押ししている。

コンシューマーDRAM市場は、4G/5G基地局の整備や光ファイバー網のアップグレードといった新規インフラ投資から恩恵を受ける見込みである。これらのインフラ整備プロジェクトが徐々に需要を押し上げると予想されている。

在庫水準が健全な状態に戻りつつあることから、購入意欲も回復傾向にあり、前期比での成長再開を後押しする材料となっている。

供給面においては、DRAMメーカー各社は2024年後半から慎重な姿勢を強め、在庫圧力と最終需要の弱さを受けてDDR3/DDR4の生産縮小に踏み切った。この生産調整と需要回復の兆しを背景に、DDR4契約価格は2025年第2四半期に0〜5%上昇に転じると見られている。

一方、DDR3市場は過去の過剰在庫の影響が依然として色濃く残っているため、最近の調達活動が活発化しているにもかかわらず、価格は横ばいで推移すると予測されている。

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価格変動の背景要因と業界への影響

複合的な市場要因が価格動向を左右

2025年第2四半期のDRAM価格動向には、複数の重要な要因が影響を及ぼしている。まず、米国による関税引き上げ方針は多くのダウンストリームブランドの行動パターンを変化させ、出荷の前倒しと在庫削減を加速させる結果となった。これが短期的にはDRAM価格の下落圧力を緩和する効果をもたらしている。

AI関連需要、とりわけNVIDIAのB200およびB300シリーズGPUに搭載されるHBM需要の拡大は、メモリメーカーの生産能力配分戦略に大きな影響を与えている。HBM3e 12hiの出荷増加は、DRAM市場全体の平均価格を押し上げる主要因となっている。

サプライヤー各社の戦略的対応

サプライヤー側では、SamsungとSK hynixの生産能力配分戦略が市場価格に影響を与えている。SamsungはHBMの認証プロセスが予定より遅延しているにもかかわらず、従来型DRAMへの大規模な生産能力シフトには慎重な姿勢を示している。SK hynixはサーバーおよびモバイル向けDRAMに経営資源を集中させる戦略を継続している。

地域政策と投資がセグメント別需要を形成

中国政府によるスマートフォン購入補助金政策と高級モデルの出荷増加は、モバイルDRAM需要を改善させる要因となっている。また、中国におけるAIサーバー投資の活発化はDDR5需要を刺激する効果をもたらしている。

通信インフラ分野では、4G/5G基地局の整備や光ファイバー網のアップグレードといった投資が、コンシューマーDRAM市場の回復を後押ししている。

今後の市場展望

こうした市場環境の変化は、DRAM業界に複雑な影響をもたらしている。従来型DRAMの価格下落が緩和される一方で、HBMをはじめとするAI関連メモリの需要増加により、メモリメーカー各社は生産能力の最適配分という課題に直面している。

2025年第2四半期の価格動向は、年後半の市場展開の方向性を示す重要な指標として注目される。特にAI需要の継続的な拡大と従来型DRAM需要のバランスが、業界全体の収益性と投資戦略を左右する重要な要素となるだろう。


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