Googleは2026年8月13日、コーディングとAIエージェント向けのGemini 3.7 Flashを公開した。3.6 Flashの発表から23日しか経っていない。新モデルはGoogleの評価でコード生成や長時間のソフトウェア開発を大きく伸ばし、2026年末までは3.6 Flashのリリース時価格の半額で使える。ただし、現行の3.6 Flashにも同じ期間限定料金が適用されている。開発者にとっての変化は、直ちに請求単価が下がることより、同じ単価で成功率をどこまで上げられるかにある。
23日で重ねたアルゴリズム改良
Gemini 3.7 Flashは、3.6 Flashを基に推論部分へアルゴリズム改良を加えたモデルである。Googleは開発者からの反応も短期間での更新につながったと説明する。モデルカードによると、品質、費用、待ち時間の配分はthinkingの設定で調節できる。入力はテキストと画像に加え、音声と動画にも対応する。最大100万トークンの文脈と6万4000トークンのテキスト出力を扱う。
APIのモデル名はgemini-3.7-flashで、プレビューではなくStableとして提供が始まった。開発者はGemini APIとGoogle AI Studio、Android Studio、Google Antigravityから利用できる。企業向けにはGemini Enterprise Agent PlatformとGemini Enterpriseアプリ、個人向けには対応国のGoogle AI ProおよびUltra利用者が使うGemini Sparkへ展開した。
今回の更新でGoogleが前面に出したのは、3.6を基に推論と実行精度を磨いたアルゴリズム改良である。既存モデルを23日で改良し、StableのAPIとして投入した。
コード評価に集中した大幅な伸び
Googleが公表したFrontierCode 1.1 Mainでは、3.7 Flashが43.6%を記録し、3.6 Flashの34.4%を9.2ポイント上回った。長時間のソフトウェア開発を測るDeepSWE v1.1も約49%から65.3%へ伸びた。なお、3.6 Flashの値はGoogleの発表記事で49.0%、モデルカードで48.6%とわずかに異なる。
| 評価 | 3.7 Flash | 3.6 Flash | Claude Sonnet 5 | GPT-5.6 Terra |
|---|---|---|---|---|
| FrontierCode 1.1 Main | 43.6% | 34.4% | 42.7% | 41.3% |
| DeepSWE v1.1 | 65.3% | 約49% | 53.8% | 69.6% |
| AutomationBench | 30.4% | 17.0% | 10.7% | 23.6% |
| Intelligence Index | 56 | 52 | 55 | 57 |
比較すると、改善の輪郭ははっきりする。3.7 FlashはFrontierCodeと企業の業務自動化を測るAutomationBenchで両競合を上回る一方、DeepSWEではGPT-5.6 Terraに4.3ポイント届かない。総合的なモデル能力をまとめたArtificial Analysis Intelligence Indexも56で、3.6 Flashの52とClaude Sonnet 5の55を超えたが、GPT-5.6 Terraの57には及ばなかった。性能向上は、とりわけコード生成とエージェント実行に集中している。
改善はコードに限られない。Web開発のCode ArenaはElo 1538から1588、複雑なPDFを読むGDP.pdfは22.0%から34.0%へ上昇した。ただし、複雑な図表を統合するCharXivではツールなしが85.2%から84.5%、ツールありが89.4%から88.7%へ下がった。デスクトップ操作を測るAgent's Last Examの26.3%もClaude Sonnet 5の33.3%を下回る。Google自身の表でも、用途ごとの優劣は残っている。
年内0.75ドル、恒久値下げではない
2026年12月31日までの標準API料金は、入力100万トークン当たり0.75ドル、thinkingを含む出力100万トークン当たり3.75ドルである。3.6 Flashは7月21日のリリース時に入力1.50ドル、出力7.50ドルだったため、Googleがいう「半額」はこのリリース時価格との比較だ。現在の料金表では3.6 Flashにも0.75ドルと3.75ドルが設定されており、年内に3.6から3.7へ切り替えてもトークン単価は変わらない。
期間限定料金は2027年1月1日に入力1.50ドル、出力7.50ドルへ上がる。入力と出力をそれぞれ100万トークン使う単純な例なら、標準料金は4.50ドルから9.00ドルになる。したがって、3.7 Flashの採用計画を現在の単価だけで組むと、年明けに同じ使用量でもAPI費用が倍になる。
一方、同じトークン単価でタスクの成功率が上がり、再試行や手直しが減れば、成果物1件当たりの費用は下がり得る。Googleは3.7 Flashが障害に適応し、指示に忠実に従い、複数段階の計画とツール呼び出しをより規律正しく進めると説明する。しかし、3.6 Flashと比べて出力トークンや試行回数が何割減るかは公表していない。価格性能を確かめるには、自社の処理を最後まで完了するのに必要な総トークンと再試行回数を測る必要がある。
ベンチマークの伸びを実運用コストへ移せるか
最大100万トークンの入力と6万4000トークンの出力は、長いコードベースや複数文書を一度に扱う余裕を与える。その反面、thinkingを深くすれば課金対象の出力が増え、待ち時間も変わる。モデルカードは幻覚に加え、ときどき処理が遅くなることやタイムアウトを既知の制約に挙げている。知識の基準日は分野により2026年3月または2025年1月であり、最新情報を扱う処理では検索や社内データによる補完も要る。
Google公表の評価値は、3.7 Flashがコード修正や業務自動化で3.6 Flashを上回ったことを示す。ただし、ベンチマークの順位は実際のリポジトリにおける成功率、待ち時間、利用するツールの費用を代わりに測ってはくれない。年内の同額期間は、3.6と3.7を同じタスクで並べ、完了1件当たりの総費用を比べられる。2027年1月1日の価格改定までに、その差が2倍の単価でも残るかを確認できたチームほど、3.7 Flashを本番へ移しやすい。



