ドイツの放送許認・監督委員会(ZAK)は2026年7月14日、Googleの「AI Overviews」とPerplexityを対象に、AI検索とAIチャットボットへのメディア州間協定(MStV)適用を初めて明示した。従来の検索サービスは第三者の情報を探す仲介者と考えられてきたが、生成AIは検索結果をもとに新しい文章を返す。ZAKはここに線を引き、生成した回答を事業者自身のコンテンツ、その後ろに並べる出典を第三者コンテンツへの案内とみなした。一つの検索画面に、発信者と仲介者の二つの責任が生じる。

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初の行政命令はGoogleとPerplexityで違う

ZAKは、14州のメディア監督当局のトップで構成される共同機関だ。全国向けのオンラインメディアを監督し、各件の決定は担当する州当局が準備・執行する。今回はハンブルク=シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州メディア当局がGoogle、ベルリン=ブランデンブルク州メディア当局がPerplexityの手続きを担った。

Googleについては、AI Overviewsの置き方が問題になった。AI回答は検索結果の主要部分として目立つ位置に表示され、従来のリンク一覧はその下へ退く。ZAKは、Google自身のコンテンツであるAI回答を優先し、従来のリンクを見つけにくくする表示を不当な差別と評価した。

一方、Perplexityのようなチャットボットは、回答の後ろに「Sources」や「追加情報」として第三者へのリンクを付ける。どの出典を選び、どこに配置するかで、ユーザーが原典を見つけられるかが変わる。ZAKはこの機能がメディア仲介者の要件を満たすと判断した。

ただし、公開されたのは命令の要旨であり、各社に命じた具体的な是正、履行期限、金銭制裁の有無までは示されていない。両社は法的救済を求められるため、確定した司法判断でもない。Reutersへの回答でGoogleは不服を申し立てる方針を示し、AI要約は新しいコンテンツの発見や追加質問を助けると反論した。Perplexityは命令そのものへのコメントを控えた。

AI回答は自社コンテンツ、リンクはメディア仲介

この二分法により、ZAKはEUのデジタルサービス法(DSA)が設ける免責を生成回答には認めず、検索・リンク仲介機能と切り分けた。DSA第4条から第6条は、伝送、一時保存、ホスティングといった仲介サービスに、一定の条件で第三者情報への免責を認める。ホスティングなら、対象はサービスの利用者が提供した情報である。

AI回答はこの条件に収まらないとZAKはみる。ユーザーが投稿した文章を保存・表示するのではなく、事業者のシステムが複数の情報を新しい言葉で要約し、凝縮し、混ぜて返すからだ。ドイツ州メディア監督当局が委託した法的意見も、利用者から見て第三者の文章をそのまま示していると明確な場合を除き、生成回答は原則として事業者のコンテンツだとした。

これは、検索サービス全体がDSAの外へ出るという意味ではない。ウェブから候補を集め、リンクとして並べる部分は仲介機能であり続ける。そのため、同じサービスでも生成文には一般法上の責任、第三者リンクには透明性と差別禁止の義務がかかる。

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月100万人から課される透明性と差別禁止

MStVは、新聞社や放送局のサイトなど、第三者のジャーナリズム・編集コンテンツを集め、選び、一般公開するテレメディアをメディア仲介者と定義する。第91条は、仲介機能が別のサービスに組み込まれた場合にもこの規則を適用する。AI回答と引用リンクが一体化した検索画面を射程に入れる根拠がここにある。

適用には規模の線引きがある。ドイツで直近6カ月平均の月間利用者が100万人未満なら、送達代理人、透明性、差別禁止を定めた第92条から第94条は原則として適用されない。ただし、第95条の必要書類を提出する義務は残る。商品・サービスの情報に特化した仲介、私的・家族利用も第92条から第94条の対象外となる。従って、小規模なAIチャットボットが今日から一律に同じ義務を負うわけではない。

適用対象になると、第92条によりドイツ国内の送達代理人を定め、サービス上で分かりやすく示す必要がある。第93条は、コンテンツを取り込む基準、残す基準、集約・選別・表示の主要基準とその重み付けを、アルゴリズムの働きも含めて平易な言葉で常時公開するよう求める。

第94条は、仲介者が見つけやすさを大きく左右するジャーナリズム・編集コンテンツを差別することを禁じる。公開した基準から正当な理由なく体系的に外れるか、基準そのものが特定のサービスを不当かつ体系的に妨げれば違反になり得る。ZAKはGoogleのAI回答と従来リンクの上下関係を、この発見可能性の問題として捉えた。

「リンクを置いた」では終わらない

Googleはウェブサイトへのリンクを強化している。2026年6月3日の公式説明では、AI Overviewsの月間アクティブ利用者が25億人を超えたとし、回答内のインラインリンク、利用者が優先サイトを選ぶ「Preferred Sources」、購読メディアのラベル表示を取り組みとして挙げた。生成AI検索に自サイトを使わないよう選べるSearch Consoleの管理機能も、英国の一部サイトで試験を始めている。

それでも、ZAKの問題設定は残る。問われたのはリンクが存在するかではなく、事業者自身が作る回答と第三者コンテンツを相対的にどこに置くかである。Perplexityも公式ヘルプで、ウェブをリアルタイム検索し、複数ソースを統合した直接回答を作ると説明する。各回答に引用と原典リンクを付けつつ、多数のページを巡る手間を省くことを価値としている。

利用行動の調査は、規制当局が画面配置を注視する理由を補強する。Pew Research Centerは、米国成人900人が2025年3月に行ったGoogle検索68,879件を分析した。AI要約がある訪問で従来リンクが押された割合は8%、AI要約がない場合は15%だった。AI要約内の引用リンクへ進んだのは1%である。米国の限られた時期と標本の結果だが、出典リンクを追加することと、原典への移動が増えることは分けて測る必要がある。

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未確定の行政命令が開いた次の争点

今回の判断には、約1カ月半前の民事事件との接点がある。ミュンヘン第1地方裁判所は2026年5月28日、AI Overviewが出版社2社を詐欺や不誠実な商慣行と結び付けたとして、特定の表示を差し止めた。事件番号は26 O 869/26である。裁判所は、検索結果を独自の言葉でまとめ、評価して新しい主張を作った以上、表示は検索事業者に帰責できるとした。

ただし、この仮処分は民法上の企業人格権侵害を扱った別件で、裁判所が6月12日に発表した時点で確定していない。ZAKの命令はメディア法上の透明性と差別禁止を扱う行政手続であり、法的根拠も救済も異なる。両者が共有するのは、AIが作った要約を第三者情報の表示として扱わないという発想だ。

現行のMStVを適用したZAKの判断とは別に、委託された法的意見は今後の立法課題も示した。生成回答とリンク仲介を併せ持つAI検索をより明確に扱うため、州法に独立したテレメディ区分を設けるよう提言している。これは規制当局の決定や裁判所の判断ではなく、専門家による非拘束的な意見である。それでも、現行の仲介者規制を適用しながら、AI検索固有の法的区分を作るべきだという問いが生じている。

MStV第109条は、違反への措置として違反の指摘や提供禁止を挙げる。必要な場合はサービスを遮断し、認可を撤回・取消しできる。今回の命令にどこまでが使われたかは公表されていない。GoogleとPerplexityの不服申立てに加え、当局が具体的に何を求めているか、AI回答と従来リンクの表示が変わるかを確認すれば、ドイツが作った先例の強さを測れる。