Googleは開発者会議「I/O 2026」において、検索エンジンとしての主要な入口である検索ボックスの大規模な再設計を発表した。これは1998年の設立以来、約25年にわたって親しまれてきたテキストベースのインターフェースに対する最大の刷新となる。

これまでの検索ボックスは、短いキーワードの入力を前提として設計されていた。しかし、ユーザーの検索行動が長文での対話形式や、音声、画像、動画を組み合わせた形式へと移行している現状に対応するため、検索ボックスの挙動そのものを最適化したのだ。新しい検索ボックスは、ユーザーの入力する文字数や複雑さに応じて入力エリアが動的に拡張される仕様となっている。さらに、テキストの入力補完機能(オートコンプリート)を超え、検索の意図を先回りしてより適切なクエリ構成を提案するAIシステムを新たに搭載した。

入力用のインターフェース部分には、新たにAIモード、Talk(音声検索)、Create(画像認識・処理)といった主要機能へのダイレクトなアクセスボタンが配備されている。追加メニューを介して、ユーザーはPCやモバイルデバイス内の画像ファイル、PDFやテキストドキュメント、Chromeのタブ情報をそのまま検索ボックスにドラッグ・アンド・ドロップしてクエリの入力素材として組み込むことができる。この機能は、単一のテキストキーワードのみでは表現できない複雑な状況(例えば、不具合を示す機器の写真と説明書PDFを添付した原因探索など)を直接検索システムに入力することを可能にした。

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デフォルトエンジンとなった Gemini 3.5 Flash と急増するクエリ量

 

今回のフロントエンドの刷新を支えるバックエンドのエンジンとして、Googleは最新の軽量・高速AIモデルである「Gemini 3.5 Flash」を採用し、グローバルに展開する。これにより、検索結果の上部に表示される要約機能「AI Overviews」およびチャット型のインターフェースである「AI Mode」がすべて同モデルで駆動することになる。

Googleの検索部門プロダクト担当バイスプレジデントであるRobby Stein氏によれば、ユーザーが自然言語で疑問を入力した際には、このGemini 3.5 Flashによって生成されるAI Overviewsが確実に提示される設計となっている。そこから追加の質問を入力すると、これまでの対話履歴を維持したまま、より詳細な探索を行うAI Modeへ自動的に遷移する。GoogleはAI OverviewsとAI Modeの間の遷移プロセスの改良を図り、ユーザーが意識することなく最適な回答表示方法を選択できる環境を構築した。

Googleの検索部門を統括するElizabeth Reid氏が公開したデータによると、検索におけるAI Modeの月間アクティブユーザー数はすでに1億人を超えており、クエリの総数は四半期ごとに倍増している。さらに、2025年第1四半期におけるGoogle全体の検索クエリ数は過去最高を記録した。AIの台頭によって従来のウェブ検索が縮小するという市場の懸念とは裏腹に、ユーザーはより詳細で多角的な探索を行うようになり、検索行動そのものが活発化している。GoogleのSundar Pichai CEOはこれに対し、「検索というドメインにおいて解決されているのはまだ1%にすぎない」と述べ、AIによるインタラクティブ化が検索行動の拡大期を牽引している現状を指摘した。

24時間バックグラウンドで稼働する「Information Agent」の仕組みと用途

今回のアップデートにおいて実用的な進化のひとつが、AIエージェント機能「Information Agent」の導入だ。これは、ユーザーが一回限りの検索を行う従来の方式から、検索システムそのものが継続的なタスクを実行する方式への移行を示すものである。

Information Agentは、ユーザーが指定した特定の条件に従い、バックグラウンドで24時間稼働し続ける自律型の情報探索プログラムである。このエージェントは、ウェブ上のブログ記事、ニュースサイト、SNSの投稿に加え、金融、EC、スポーツなどのリアルタイム情報を網羅的に監視する。収集したデータに変化が発生した際、内容を分析・要約したうえでユーザーにプッシュ通知を送信する。

具体的な適用例として、不動産探しにおける自動監視がある。希望する家賃、間取り、立地、設備条件などをテキストで入力しておくと、エージェントが不動産情報サイトを巡回し、合致する物件が登録された瞬間に通知を行う。また、特定のスポーツ選手による限定商品の発表やスニーカーの発売情報を追跡させ、発売と同時に詳細情報を配信させるといった設定も可能である。この自律的な監視機能は、2003年から提供されている「Google Alerts」の概念を生成AIモデルによって拡張したものであり、単純なキーワードの一致にとどまらず、情報の意味的理解に基づいて動作する。この機能は、米国において今夏からGoogle AI ProおよびUltraの購読者を対象に順次提供が開始される。

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自動電話架電と予約を統合した「Agentic Booking」および「Universal Cart」

Googleは情報の監視にとどまらず、検索結果から実際のアクションを完結させる機能を拡充している。その代表例が「Agentic Booking」と「Universal Cart」である。

Agentic Bookingは、ユーザーが具体的な条件を入力するだけで、検索から予約の手続きまでを完結させる機能である。例えば「金曜日の夜に6名で利用でき、深夜まで食事を提供している個室カラオケ店」という条件を入力すると、Searchは条件を満たす店舗の空き状況と料金プランを自動的に抽出し、予約ページへの直接リンクを提示する。さらに、自宅の修復作業、美容、ペットケアなど、直接の対話や電話連絡が必要な一部のローカルビジネスに対しては、Googleのシステムがユーザーに代わって店舗へ電話をかけ、予約や問い合わせを代行するサービスも展開される。この機能は、米国の全ユーザーを対象に今夏より展開される予定である。

また、購買行動の利便性を高める「Universal Cart」も導入される。これは、Google Search、YouTube、Gmail、Geminiといった複数のGoogle製サービスで商品を閲覧した際、単一の買い物かごに製品を追加できる共通のカートシステムである。複数の異なる小売店から商品を追加した場合でも、このカート上で一括して決済を行えるほか、元の販売サイトへ移動して購入処理を完了することも可能である。

このUniversal Cartには、AIを用いた部品の互換性判定機能が搭載されている。例えば、異なるECサイトからPCのパーツを選択してカートに追加した場合、選択したマザーボードとプロセッサの規格が適合しているかを自動で検証し、互換性に問題がある場合にはユーザーに代替案を提案する。このショッピング機能は、今夏より検索およびGeminiアプリで先行して導入され、その後YouTubeやGmailへと順次拡大される。

Google Antigravity と Gemini 3.5 Flash が実現する「Agentic Coding」とジェネレーティブUI

技術的な観点において今回の刷新でもっとも注目されるのが、「Agentic Coding」による検索結果画面の動的構築である。Googleは「Google Antigravity」と呼ばれるフロントエンド技術と、Gemini 3.5 Flashのコード生成能力をSearchに直結させた。

これにより、検索システムはユーザーの質問に合わせた専用の画面レイアウトやインタラクティブなコンポーネントをその場でプログラム・描画する「Generative UI」を提供する。例えば、宇宙物理学の複雑な概念や精密機械の内部構造について質問した場合、検索結果に静的なウェブページの抜粋を表示するのではなく、パラメーターを変更して動かせるシミュレーター、インタラクティブなグラフ、3Dビジュアルなどをリアルタイムに構築して提示する。このGenerative UI機能は、今夏よりすべてのSearchユーザーに無償で提供される。

さらに、この技術を発展させた「ミニアプリ」の自動作成機能も実装される。これは、ユーザー自身が自然言語で特定の管理ツールを指定すると、検索エンジンがそれに応じたカスタムアプリケーションを自動で構築・提供する機能である。例えば、ユーザーが「パーソナライズされた健康管理ツール」を要求した場合、AIは個人のスケジュール(Google Calendar連携)やジムの利用状況、位置情報、天気予報などのリアルタイムデータを統合した入力フォームや進行状況トラッカーを作成する。ユーザーはこの生成されたミニアプリを用いて、日々の運動メニューをチェックし、食事プランを記録できる。このコード開発を不要とするミニアプリ生成機能は、米国のGoogle AI ProおよびUltra購読者を対象に段階的にリリースされる予定である。

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200カ国への拡大を果たす「Personal Intelligence」とプライバシー制御

AIがより的確な提案を行うための仕組みとして、ユーザーのプライベートな情報を検索に連携する「Personal Intelligence」の提供範囲も大幅に拡大される。この機能は、これまですでに米国の一部ユーザー向けに提供されていたが、本日より世界約200の国と地域、98の言語を対象に、有料サブスクリプションを必要としない一般機能として解放される。これにより、ユーザーはGoogle Photos、Gmail、Google CalendarといったサービスとSearchを紐付けることが可能になる。例えば「来週の予定と、先月旅行した際の写真」に関連する質問を行うと、検索システムはウェブ上の公開情報と個人のデータを安全に照合し、文脈に即した結果を出力する。

個人データの統合が進むなかで、データのプライバシー管理についても対策が講じられている。どのアプリケーションを検索アカウントと接続するか、どの範囲の情報をAIに読み込ませるかについては、ユーザーが完全に制御権を持つ仕様となっており、設定画面からいつでも接続の解除やデータのクリアを実行できる。利便性と安全性のバランスを確保しながら、個人用の情報プラットフォームとしての検索の価値を高める設計となっている。