LG Displayは2026年3月22日、1Hzから120Hzまでリフレッシュレートを自動で切り替えるノートPC向けLCDパネルの量産を始めたと発表した。同社によると、この種のノートPC向けLCDパネルの量産は世界初である。静止画表示時は1Hzまで下げて消費電力を抑え、動画視聴やゲームなど画面の更新が多い場面では最大120Hzで動作する。
同社はこのパネルを「Oxide 1Hz technology」を搭載した製品と位置付けている。既存ソリューションと比べ、1回の充電当たりの使用時間が48%伸びたとしており、まずはDellのフラッグシップであるXPSシリーズ向けに供給する。さらに、同じ技術を取り入れた1Hz対応OLEDパネルについても、2027年から量産を始める準備を進めているという。
静止画では1Hz、動画やゲームでは120Hzへ切り替える
今回のパネルの中心にあるのは、表示内容に応じてリフレッシュレートを変える仕組みだ。メール確認や電子書籍、研究論文の閲覧のように画面変化が少ない場面では、最低1Hzで動作する。一方、映画やスポーツのストリーミング再生、ゲームのように画面の書き換えが頻繁に起きる場面では、最大120Hzの高リフレッシュレートで表示する。
リフレッシュレートは、画面を1秒間に何回描き直すかを示す値である。高いほど動きの速い映像でも滑らかに見えやすい反面、静止画中心の場面でも高い更新頻度を維持すると、そのぶん回路の動作が続き、消費電力が増えやすい。今回の製品は、この無駄を抑えるために、画面の状態に応じて更新頻度を落としたり上げたりする設計を量産品として実装した点に特徴がある。
ノートPCでは、軽さや性能と並んで、バッテリー駆動時間が製品選びの大きな判断材料になる。表示パネルは常時使う部品であり、表示品質を維持したまま消費電力を抑えられるかどうかは、実使用時の使い勝手に直結しやすい。LG Displayは、その部分で差を付ける技術として今回のパネルを前面に出している。
回路アルゴリズムとTFT材料の見直しで省電力化した
LG Displayは、このパネルを実現するために独自の回路アルゴリズムとパネル設計技術を開発したとしている。加えて、新たな材料を見いだし、低リフレッシュレート動作時の電力漏れが最も少ない酸化物を、ディスプレイの薄膜トランジスタ(TFT)に適用したという。
発表内容から分かるのは、単に制御ロジックだけを工夫したのではなく、パネルの構造と材料の両方を調整していることだ。静止画表示時にリフレッシュレートを下げても、その状態で回路の電力損失が大きければ十分な省電力効果は得にくい。LG Displayは、低リフレッシュレート時の電力漏れを抑える材料選定まで踏み込むことで、消費電力の削減につなげたとしている。
同社は成果として、既存ソリューション比で1回の充電当たりの使用時間が48%伸びると説明した。ただし、比較条件や測定環境の詳細は今回の発表では示していない。現時点で確認できるのは、LG Displayが量産品ベースで大幅な駆動時間改善を訴求している、という点までだ。
DellのXPSシリーズに採用、CES 2026で披露済み
LG Displayは、このOxide 1Hz対応パネルをDellへ供給すると明らかにした。供給先はDellのフラッグシッププレミアムPCであるXPSラインアップである。Dellは2026年1月のCES 2026で、このパネルを採用した新型XPSをすでに公開していた。
このため、今回の発表は技術コンセプトの紹介にとどまらず、実際のPC製品向けに供給される量産段階へ進んだことを示す内容になっている。ディスプレイ技術は発表から実機採用まで時間が空くことも珍しくないが、今回は量産開始と採用先が同時に示されたことで、商用化の段階が比較的分かりやすい。
一方で、発表ではDell側の具体的な販売構成や、どのモデルにどう搭載されるかまでは明記されていない。現時点で確認できる事実は、XPSシリーズ向けの供給が始まることに留まる。
2027年にはOLED版も計画、環境目標にも組み込む
LG Displayは、同じ技術を取り入れた1Hz対応OLEDパネルについても、2027年から量産を始める準備を進めているとした。まずLCDで量産を始め、その後OLEDへ広げる流れである。ノートPC向けの可変リフレッシュレート技術を、単発製品ではなく製品群として展開していく方針が見える。
また同社は、Oxide 1Hzのような省エネ技術を「Carbon Emission Reduction Project」にも位置付けている。この取り組みは、製品の使用段階で発生する炭素排出量を最大10%削減することを目指すものだ。今回の発表は、ノートPCの駆動時間を伸ばす製品訴求にとどまらず、使用時の電力削減を通じた環境負荷の低減にもつなげる構図になっている。
今回明らかになったのは、LG Displayが1〜120Hzで可変するノートPC向けLCDパネルを量産段階に移し、DellのXPSシリーズ向けに供給を始めること、そして2027年にはOLED版の量産も視野に入れていることだ。価格や採用拡大の時期などは今後の発表を待つ必要があるが、ノートPC向けディスプレイの省電力化をめぐる製品投入としては、かなり具体的な段階まで進んだ発表といえるだろう。
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