Lucid Groupは2026年7月14日、倒産または株式非公開化を検討しているとの報道を「完全に誤り」とする文書を米証券取引委員会(SEC)へ提出した。同社は2027年に入ってもしばらく事業を続けられるだけの流動性があると説明する。ただし、手元現金はその一部にすぎない。サウジアラビアの政府系ファンドから借りられる資金と、この春に実施した増資が大きな割合を占める。

倒産手続きや株式非公開化を検討しているとの報道を、会社自身が正面から退けた。一方で、Lucidは2026年第1四半期だけで14億3,883万ドルのフリーキャッシュフロー赤字を計上し、7月には新たに8億ドルを借り入れている。事業を支える猶予は、否定の言葉ではなく直近の資金調達が生んだものだ。資金消費と量産の問題は、否定の後も残っている。

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「完全に誤り」とした8-Kが否定したもの

発端となったEV専門媒体「EV」の報道は、事情を知る2人の話として、再建助言会社AlixPartnersがLucidの取締役会に調査結果を報告する予定だと伝えた。検討対象には株式非公開化と米連邦破産法11条の適用申請が含まれるという。ただし、取締役会がどちらかを決めたとは報じていない。

Lucidは同日付の8-Kで、噂全体を「完全に誤り」と表現した。そのうえで、報道された選択肢を検討する特別委員会は設けておらず、AlixPartnersも経営陣や取締役会に破産を勧告していないと明記している。同社がAlixPartnersを起用している事実は初めて公式に認めたが、その役割は業務の執行を改善し、事業運営を立て直すことだと説明した。

ここは切り分けが必要だ。AlixPartnersのような再建助言会社は、コスト削減や生産改善から法的整理まで、幅広い局面で企業を支援する。起用という事実だけから、破産申請の準備に入ったとは判断できない。Lucidの8-Kは差し迫った倒産観測を公式に否定する一方、外部専門家を入れて経営改善を急いでいる現状も認めた。

47億ドルはどこから来たのか

Lucidが反論の根拠にしたのは「現金」ではなく「流動性」である。2026年3月末の開示を分解すると、31億6,000万ドルの大半は、まだ借りていない信用枠だとわかる。

2026年3月31日時点の流動性 金額
現金・現金同等物・投資 7億1,400万ドル
PIF系AyarのDDTL未使用枠 19億8,000万ドル
ABL未使用枠 4億6,840万ドル
GIB未使用枠 230万ドル
合計 31億6,000万ドル

Lucidは4月、サウジアラビア公共投資基金(PIF)傘下Ayarの転換優先株5億5,000万ドル、普通株公募3億ドル、Uberの普通株投資2億ドルを合わせ、約10億5,000万ドルを調達した。さらにAyarの遅延引出型タームローン(DDTL)の融資枠を5億ドル増やしている。3月末の31億6,000万ドルに、資本調達の10億5,000万ドルと融資枠拡張の5億ドルを足すと、会社が示すプロフォーマ総流動性は約47億1,000万ドルになる。4月にDDTLから借りた5億ドルは未使用枠から現金への振り替えなので、この足し算には入らない。

7月6日には同じDDTLから8億ドルを追加で引き出した。これも未使用枠を、利払いの必要な現金へ振り替える取引だ。したがって、47億ドルに8億ドルをそのまま足して現在の流動性を算出することはできない。7月14日時点の確定残高は、まだ公表されていない。

資金の支え手もはっきりしている。PIFはAyarを通じ、転換後の普通株を含めてLucid株の約56.85%を受益所有する。4月に買い入れたSeries C転換優先株には年9%の現物配当が付き、四半期ごとに複利で増える。清算時の受取順位も普通株より上だ。PIFの支援は当面の資金繰りを支える一方、Lucidにとっては将来の持ち分希薄化と資金コストを伴う。

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資金流出を膨らませた在庫と量産

資金が必要になる理由は、第1四半期の損益とキャッシュフローに表れている。売上高は2億8,247万ドルだったのに対し、純損失は10億2,834万ドルに達した。営業活動で11億8,566万ドル、設備投資で2億5,317万ドルを使い、フリーキャッシュフローは14億3,883万ドルの赤字となった。前年同期の赤字5億8,985万ドルから大きく膨らんでいる。

在庫も現金を吸収した。3月末の在庫は14億6,885万ドルで、2025年末から3億5,932万ドル増えている。Lucidは第1四半期に5,500台を生産したが、納車は3,093台にとどまった。部品調達のために現金が出ていく一方で、完成車を納車して代金を回収するまでには時間がかかる。

第2四半期は3,953台を納車し、第1四半期を上回った。それでも生産は4,774台にとどまり、上期合計では生産1万274台に対し納車7,046台となる。差は3,228台だ。2026年2月に掲げた年間生産2万5,000〜2万7,000台という当初目標へ届くには、下期に1万4,726〜1万6,726台を生産する必要がある。だが6月、Lucidは予想需要に生産計画を合わせるとして、アリゾナ工場の第2シフトを廃止した。増産を急ぐより先に、生産台数と販売のずれを縮める方針である。

18%削減後もMidsize量産まで資金が要る

6月22日に発表した再編で、Lucidは米国の従業員、契約社員、製造現場の時間給労働者を合わせて約18%削減する。年間のコスト削減効果は1億5,800万ドルを見込み、退職金などで約3,200万ドルの現金支出が生じる。CEOのSilvio Napoliは直属の役職を半減した。財務と技術の責任者も交代させ、顧客部門と全社変革には新たな責任者を置いている。

削減効果は大きいものの、第1四半期だけで14億ドルを超えた資金流出を埋める規模ではない。粗利益率はマイナス110.4%で、在庫評価損、部品の確定購入契約に伴う損失、追加関税が採算を圧迫した。売るほど固定費を回収できる量産体制へ移るには、Gravityの納車を増やしながら、車両1台当たりの損失を縮めていく必要がある。

その先に置かれているのが、2026年末に生産開始を予定するMidsizeプラットフォームだ。Lucidは価格帯を広げ、量産効果を得る成長の柱としている。しかし、同社が掲げるフリーキャッシュフロー黒字化は2020年代末であり、10-Qでも事業成長には追加資本が必要になると明記した。「2027年に入ってもしばらく持つ」という流動性見通しは、Midsizeを立ち上げるための猶予を意味する。自力で資金を生む段階へ到達したという意味ではない。

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8月4日、否定の次を数字で確かめる

Lucidは8月4日に第2四半期決算を公表する。そこで初めて、4月の増資と7月の8億ドル借入を経た現金残高、直近の資金流出、在庫の変化が同じ時点で見えてくる。倒産観測への反論を評価するには、会社の言葉よりこの三つの数字が役に立つ。

さらに、Gravityの納車増が粗利益率をどこまで押し上げたか、削減計画が費用へ反映され始めたかも確認したい。車両1台を生産して納車するまでの資金流出を減らせるかは、設備投資の抑制や追加調達の条件と並び、Midsize量産まで事業を支えられるかを左右する。