Microsoft AIは2026年10月27日、画像AI「MAI Image 2.7」のプレビューを発表した。まず既存の画像を指示に従って加工する画像編集機能から提供を始め、テキストからの画像生成機能は近日中に公開する予定だ。独立系AI評価サイトのArtificial Analysis(AA)では、画像編集の総合スコアが1193 Eloとなり、旧モデルのMAI Image 2.6から42点上昇して総合2位に入った。ただし、OpenAIの上位モデルとの差はスコアだけでは判断できず、旧版からの乗り換えを検討するには、編集用途ごとの性能や今後の提供条件を見極める必要がある。

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元の画像を保ちながら、どこまで変更できるか

Microsoftによると、MAI Image 2.7はAAが評価対象とする10の用途と7つの編集操作のすべてで、旧2.6を上回った。同社が特に強みとして挙げているのは、画質の改善と復元、推論を伴う編集、シーンや作風の変更だ。画像内の文字や記号の編集についても性能を高めたという。推論を伴う編集とは、画像内の物体と周囲の関係を踏まえて変更を加える処理を指す。画像の一部分だけを変える場合でも、指示された箇所以外をどれだけ忠実に保てるかが、仕上がりを大きく左右する。

シーンや作風の変更では、照明や画像全体の表現を調整する一方、文字の編集では画像内の文言そのものを扱う。このように、同じ画像編集でも求められる能力は異なる。Microsoftは、シーンや作風の変更に関する評価で、2.7が次点のモデルを24 Elo上回ったと説明している。ただし、10の用途と7つの編集操作すべてで改善したというのは旧2.6との比較であり、あらゆる項目で競合モデルを上回ったわけではない。また、同社は公式発表でArena Editでも3位に入ったとしているが、こちらはMicrosoftが発表した順位として区別する必要がある。

OpenAIの上位モデルとほぼ並ぶ評価

AAの画像編集ベンチマーク「AA-Image-Editing v2.1」では、各モデルに同じ元画像と編集指示を与え、その結果をモデル名を伏せた状態で評価者に比較してもらう。どちらの画像が好ましいかという投票結果から算出されるのがEloスコアであり、数値が高いほど、その比較で選ばれやすかったことを意味する。2026年10月28日に取得したAAの画像編集ランキングを見ると、MAI Image 2.7がOpenAIの上位モデルに迫っていることが分かる。なお、比較対象のGPT Image 2.5 SunburstとGPT Image 2.5 Flareはいずれもmax設定での評価結果だ。

モデル(設定) Elo 95%信頼区間 サンプル数
GPT Image 2.5 Sunburst(max) 1199 1188–1210 18,250
MAI Image 2.7 Preview 1193 1178–1208 4,891
GPT Image 2.5 Flare(max) 1182 1171–1193 19,136
MAI Image 2.6 1151 1139–1163 16,644
Krea 3(Ultra) 1151 1137–1165 5,505
Nano Banana 2.1 1151 1138–1164 6,868
MAI Image 2.6-Flash 1144 1131–1157 10,753

同じ時点の評価を比較すると、MAI Image 2.7は旧2.6を42 Elo上回り、GPT Image 2.5 Sunburstとの差はわずか6点、GPT Image 2.5 Flareに対しては11点上回っている。ただし、これらは表に掲載されたスコアの単純な差であり、統計的な不確実性も考慮する必要がある。2.7と旧2.6の95%信頼区間は重なっていない一方、SunburstやFlareとの区間には重なりがある。したがって、6点や11点という差だけで決定的な優劣を判断するのは早い。ただし、信頼区間が重なることだけを根拠に、モデル間の性能が統計的に同等だと結論づけることもできない。

評価に使われたサンプル数にも違いがある。MAI Image 2.7の4,891件に対し、Sunburstは18,250件、Flareは19,136件と、OpenAIの2モデルにはより多くの評価が集まっている。そのため、スコアそのものだけでなく、推定値の不確実性を表す信頼区間も併せて確認することが重要だ。また、旧2.6からの42 Eloの上昇は、比較評価で選好される傾向の変化を示すものであり、編集の成功率が42%向上したことや、処理速度が速くなったことを意味するわけではない。

旧2.6、Krea 3のUltra設定、Nano Banana 2.1はいずれも1151 Eloで並んでいる。しかし、総合スコアが同じでも、得意とする編集内容まで一致するとは限らない。順位表の上から順にモデルを選ぶだけでは、用途ごとの強みや弱み、実際の制作工程との相性を判断することは難しい。MAI Image 2.7の総合2位という結果は、それだけで乗り換えを決める根拠というより、自分の用途に適したモデルを比較する際の有力な判断材料と捉えるべきだろう。

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背景・照明・文字の編集で確認すべき性能

例えば商品画像の背景だけを差し替える場合、背景が指示どおりに変更されたかだけでなく、商品の形状や質感、色などが維持されているかも重要になる。照明の調整では、明るさや雰囲気を変えながら、指示していない部分に不要な変更が加わっていないかを確認する必要がある。これらはMicrosoftが強みとして挙げる編集能力を評価するための一般的な用途例であり、MAI Image 2.7について個別に測定された結果ではない。

画像内の文字を差し替える作業も、総合スコアとは別に検証する価値がある。Microsoftは文字や記号の編集を強みとしているが、指定した文言を正確に再現できるか、周囲の画像を変えずに修正できるかは、実際の素材と指示を使って確かめる必要がある。特に日本語の文字をどこまで正確に扱えるかについては、今回の総合評価だけでは判断できない。英語の文字編集で高い評価を得ていたとしても、それが日本語の複雑な字形や文字配置にも当てはまるとは限らない。

モデル間の性能を比較する際には、元画像と編集指示をそろえることが重要だ。同じ条件で編集すれば、維持すべき部分が保たれたか、変更したい部分が意図どおりに仕上がったか、不要な変更が発生していないかを比較しやすくなる。AAの評価も入力条件をそろえているが、多数の評価者による好みを集計した総合スコアと、制作担当者が特定の成果物に求める条件は必ずしも一致しない。全体として好まれる画像であっても、求めていた編集内容を正確に満たしているとは限らないためだ。

実際の制作工程では、最初の出力で完成するか、それとも何度も修正を重ねる必要があるかによって、作業効率が大きく変わる。今回のランキングからは、各モデルの処理時間や、目的の仕上がりを得るまでに必要な修正回数までは分からない。そのため、MAI Image 2.7の品質向上が、そのまま制作時間の短縮につながると判断することはできない。元画像を保ちながら必要な変更を加える能力と、完成までにかかる手間の両方を検証する必要がある。

乗り換え判断の鍵となるAPIと料金

MicrosoftがMAI Image 2.7の試用先として案内しているのは、Arena、AA、MAI Playgroundの3カ所だ。一方、今回の発表ではAPIの提供開始日や料金、Microsoft Foundryでの提供時期は明らかにされていない。AAのAPI欄にも「No API available」と表示されており、現時点では既存の制作システムに組み込むための条件が整っていない。

旧2.6系とは提供状況が異なる。Microsoftは2026年9月4日の発表で、品質を重視したMAI Image 2.6と、速度を重視したMAI Image 2.6-FlashをFoundryのパブリックプレビューとして案内していた。また、複数の参照画像を使った編集やWeb情報を利用した画像生成、可変の縦横比、最大1.5Kの解像度にも言及している。ただし、これらは旧モデルについて説明された機能や仕様であり、2.7でも同じ条件で利用できるとは限らない。

料金を比較する際にも、何を基準にした費用なのかをそろえる必要がある。AAの価格欄には、モデル開発元のAPIを既定設定で利用し、1024×1024ピクセルの画像を1,000枚生成した場合の費用が掲載されている。GPT Image 2.5 SunburstとFlareのmax設定はそれぞれ210.7ドル、MAI Image 2.6は38.9ドル、2.6-Flashは19.5ドルだ。Nano Banana 2.1は33.6ドル、Krea 3のUltra設定は270.0ドルとなっている。

ただし、この価格は同じ品質の画像編集を1件完成させるための総費用ではない。目的の仕上がりに到達するまでの修正回数や待ち時間を考慮したものでもなく、今回の編集品質ランキングと直接対応する指標ではない。さらに、MAI Image 2.7の料金はまだ明らかになっていないため、旧2.6の価格を根拠に「OpenAIの上位モデルより安価な代替品」と評価することはできない。

なお、Microsoftが9月4日の発表で旧2.6をAAの画像編集ランキング1位と紹介していたのは、当時の評価に基づくものだ。今回の同一ランキングでは旧2.6が1151 Elo、2.7が1193 Eloとなっている。モデルの追加や評価結果の更新によって順位は変動するため、異なる時点の順位を単純に比較するよりも、同じ時点のスコアと信頼区間を確認する方が改善の程度を把握しやすい。

MAI Image 2.7は、画像編集の総合評価でOpenAIの上位モデルに迫る結果を残したものの、制作環境への導入を判断するにはまだ情報が不足している。今後、APIの提供条件や料金が明らかになれば、品質だけでなく、作業効率や費用対効果も含めた比較が可能になる。重要なのは、同じ素材と指示を使い、必要な仕上がりを得るまでに何回の修正が必要で、どれだけの時間と費用がかかるかを確かめることだ。こうした実務上の検証によって初めて、ランキング上の高評価が実際の制作工程でどれほどの価値を持つのかが見えてくる。