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Microsoft、OpenAI「Sora」の機能を無料で使える「Bing Video Creator」をリリース

Y Kobayashi

2025年6月3日6:33AM

Microsoftは、同社の検索エンジンBingに、OpenAIの先進的なテキストからの動画生成AIモデル「Sora」を搭載した新機能「Bing Video Creator」を導入すると発表した。これにより、ユーザーはテキストプロンプトを入力するだけで、短編動画を無料で作成できるようになる。これまで有料サブスクリプションでのアクセスに限定されていたSoraの機能が無料で利用できることから、大きな注目を集めそうだ。

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Bing Video Creatorとは? OpenAI「Sora」搭載で何が変わるのか

Bing Video Creatorの核心は、OpenAIが開発した最先端の動画生成AI「Sora」を利用している点にある。まずは、このSoraとBing Video Creatorの基本的な特徴を押さえておこう。

OpenAIの「Sora」とは何か? – 技術的背景とこれまでの利用ハードル

OpenAIのSoraは、2024年2月に初めてプレビューが公開され、その圧倒的な動画生成品質で世界に衝撃を与えたAIモデルだ。テキストで指示するだけで、写実的な映像からアニメーションスタイルまで、多様なジャンルの動画を生成できる。特に、複雑なシーンや複数のキャラクター、特定のカメラワークなどを理解し、一貫性のある長尺(プレビューでは最大60秒、現状のChatGPT等での提供は最大20秒程度との情報もある)の動画を生成する能力は、既存の動画生成AIを大きく凌駕するものと期待されてきた。

しかし、Soraはその高度さゆえに、これまで一般ユーザーが気軽に利用できるものではなかった。主にChatGPTの有料プラン(Plus月額20ドル、Pro月額200ドルなど)の契約者や一部のクリエイターに限定的に提供されており、その利用にはコストが伴った。

Bing Video Creatorの主な特徴 – 無料、モバイル先行、Soraのパワー

Bing Video Creatorは、このSoraのパワーを、より多くの人々に解放することを目指している。主な特徴は以下の通りだ。

  • 基本無料: Soraを利用した動画生成が、基本的に無料で提供される。これは最大の注目点と言えるだろう。
  • Sora搭載: OpenAIの強力な動画生成モデルSoraをバックエンドで利用。
  • モバイルアプリ先行: まずはBingのモバイルアプリ(iOSおよびAndroid)で提供が開始される。デスクトップ版(Bing.com/create)およびCopilot Searchへの統合も近日中に予定されている。
  • テキストから動画へ: ユーザーが入力したテキストプロンプトに基づいて、AIが動画を生成する。

Microsoftは、「創造性を手軽に、そしてアクセスしやすくすることで、ユーザーの探求プロセスを支援する」と述べている。

今すぐ試せる!Bing Video Creatorの使い方ガイド

Bing Video Creatorの利用開始は非常にシンプルだ。

対応プラットフォームと利用開始手順

  1. Bingモバイルアプリをダウンロード: iOSまたはAndroidデバイスに最新版のBingアプリをインストールする。
  2. Video Creatorにアクセス:
    • アプリを開き、画面右下のメニューアイコンをタップし、「Video Creator」を選択する。
    • または、Bingモバイルアプリの検索バーに直接「Create a video of…(〜の動画を作成して)」といった形でプロンプトを入力することでもアクセス可能。
  3. プロンプトを入力: 生成したい動画の内容をテキストで詳細に記述する。
  4. 生成開始: 「Create」ボタンをタップすると、AIによる動画生成が開始される。
  5. 通知と確認: 動画が完成すると通知が届き、アプリ内で確認、ダウンロード、共有が可能だ。

デスクトップ版が利用可能になれば、Bing.com/create からアクセスできるようになる見込みだ。

Introducing Bing Video Creator

プロンプト入力のコツ – より良い動画を生成するために

高品質な動画を得るためには、プロンプトの工夫が重要になる。Microsoftは以下のヒントを提示している。

  • 具体的かつ詳細に: 「歩いている人」よりも「雪の降る森を日の出の中、赤いコートを着て歩く若い女性」のように、情景、被写体の特徴、時間帯などを具体的に記述する。カメラアングルや照明に関する指示も有効だ。
  • アクション指向の言葉を使う: 「踊っている」「探検している」「変身している」といった動詞は、AIに動きや意図を伝え、よりダイナミックな映像を生み出すのに役立つ。
  • トーンやスタイルを指定する: 「映画の予告編風に」「カートゥーンアニメのように」「シネマティック」「ドリーミー」といった修飾語を加えることで、動画の雰囲気を大きく変えることができる。

生成される動画の仕様 – 長さ、アスペクト比、フォーマット

現時点でのBing Video Creatorの仕様は以下の通り。

  • 動画の長さ: 5秒固定。
  • アスペクト比: 当初は9:16(縦長)。これはTikTokやInstagram Reelsなどのショート動画プラットフォームを意識した仕様と言えるだろう。16:9(横長)フォーマットも近日中に追加予定。
  • ファイル形式: 生成された動画はダウンロード可能で、一般的な動画形式(MP4など)で提供されると推測される。
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「無料」の範囲はどこまで?利用条件と制限をチェック

「無料」という言葉は魅力的だが、一定の利用条件や制限が存在する点を理解しておく必要がある。

Fast生成とStandard生成の違い – 回数制限とMicrosoft Rewards

  • Fast生成: 各ユーザーは、月に10回まで「Fast」モードでの動画生成を無料で行える。Fastモードでは、数秒から数分程度(公式発表は数秒だが、一部報道ではサーバー負荷等により時間を要する場合もあると指摘されている)で動画が生成されるとされる。
  • Standard生成: Fast生成の無料枠を使い切った後も、「Standard」モードであれば無料で動画生成を継続できる。ただし、StandardモードはFastモードよりも生成に時間がかかる。
  • Microsoft Rewardsポイント: Fast生成の無料枠を使い切った後、さらにFastモードを利用したい場合は、1回あたり100 Microsoft Rewardsポイントを消費することで可能になる。このポイントは、Bingでの検索やMicrosoft Storeでの購入などで獲得できる。

同時生成数と動画の保存期間

  • 同時生成キュー: 一度に最大3つまでの動画生成リクエストをキューに入れることができる。
  • 動画の保存期間: 生成された動画は、ユーザーのアカウントに最大90日間保存され、その間はいつでもアクセスや共有が可能だ。

提供地域と今後の展開

Bing Video Creatorは、発表日(2025年6月2日)より、中国とロシアを除く全世界で順次提供が開始されている。前述の通り、現在はBingモバイルアプリが先行しているが、デスクトップ版やCopilot Searchへの統合も予定されており、利用シーンの拡大が期待される。

AI動画生成の民主化へ – Microsoftの狙いと市場への影響

このBing Video Creatorの投入は、Microsoftの大きな戦略の一環と見ることができる。

なぜMicrosoftはSoraを無料で提供するのか? – 戦略的背景を考察

Microsoftが、本来有料級のSoraの機能を無料で提供する背景には、以下のような狙いがあると考えられる。

  1. Bingの利用促進とシェア拡大: Googleが圧倒的なシェアを握る検索市場において、Bingの魅力を高め、ユーザーベースを拡大する起爆剤としたい。特にBingモバイルアプリの利用者を増やす狙いは大きいだろう。
  2. AI市場でのリーダーシップ強化: OpenAIとの強力なパートナーシップを背景に、生成AI分野での技術力と先進性をアピールし、Googleをはじめとする競合に対する優位性を築きたい。
  3. Microsoftエコシステムへの誘引: Microsoft Rewardsポイントの活用などを通じて、ユーザーを同社の他のサービスやプラットフォームへと誘導し、エコシステム全体の活性化を図る。
  4. 広範なユーザーデータ収集とAIモデル改善: 無料提供により多くのユーザーに利用してもらうことで、多様なプロンプトや利用状況に関するデータを収集し、Soraを含むAIモデルのさらなる改善に繋げる。

CopilotではなくBingを先行させた理由とは? – 製品戦略の読み解き

一部からは、なぜMicrosoftのAI戦略の中核である「Copilot」ではなく、Bingの機能として先行提供されたのかという疑問の声も上がっている。これにはいくつかの推測が可能だ。

  • テストと段階的展開: Soraのようなリソース消費の大きい機能を、まずはユーザー層や利用シーンが比較的限定されるBingモバイルアプリでテストし、その結果を踏まえてCopilotへと展開する戦略。
  • 検索との親和性: 「検索」という行為と「コンテンツ生成」を結びつけ、新たなユーザー体験を模索する意図。将来的には検索クエリから直接関連動画を生成するといった機能も考えられる。
  • 開発の迅速性: Bingプラットフォームへの実装の方が、OSレベルやOffice製品群との連携が複雑なCopilotへの統合よりも迅速に行えた可能性。

筆者としては、Bingの利用促進と、検索と生成AIの融合による新しい価値提供の実験という側面が大きいのではないかと考えている。

競合ひしめくAI動画生成市場 – Soraの優位性と課題

Bing Video Creatorの登場は、AI動画生成市場の競争を一層激化させることは間違いない。現時点で、主要な競合サービスとの比較を改めて整理してみよう。

サービス名提供元主なAIモデル料金体系動画の長さ特徴
Bing Video CreatorMicrosoftOpenAI Sora無料(10回Fast生成後ポイント/標準)5秒無料アクセス、Microsoft Rewards連携、9:16縦長(16:9近日)、モバイルアプリ先行、生成動画にC2PA明示
ChatGPT Pro/PlusOpenAISora月額20ドル/200ドル最長20秒?高品質な動画生成、プロンプト解釈の精度が高い、一部ユーザーは60秒生成を期待しているが未提供の可能性
Gemini AdvancedGoogleVeo 3月額20ドル未詳細より手頃な価格での提供、様々な動画スタイルに対応、Googleエコシステムとの連携
RunwayMLRunwayMLGen-1/Gen-2有料(無料枠あり)最長18秒AI動画生成のパイオニア、テキスト-動画、画像-動画、動画-動画、編集機能も充実、プロフェッショナル向け
Luma AI (Dream Machine)Luma AIRay2無料(有料プランあり)未詳細高い写実性と物理法則への追従、高速生成、カメラの動きの制御、個人クリエイターを中心に人気
KlingKuaishou (中国)独自未詳細未詳細高品質な中国発AI動画モデル、独特のスタイル、海外クリエイターからも注目

Soraはかつて「比類なきレベルのリアリズム」で注目されたものの、その後発サービスが次々と高機能化し、Soraの「60秒生成」がまだ実現していない現状も鑑みると、その絶対的な優位性は薄れてきているのは事実である。

しかし、Bing Video Creatorの無料提供は、Soraの競争力を再燃させる強力な起爆剤となりうる。技術の性能差は日々縮まる可能性があるが、「無料」という圧倒的なアクセス障壁の低さは、ユーザー獲得において決定的な武器となるからだ。特に個人クリエイターやSNSユーザーにとって、手軽に高品質な動画を生成できるこのサービスは、非常に魅力的に映るだろう。

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責任あるAIへの取り組み – 偽情報対策と透明性確保

生成AIの進化は、ディープフェイクや偽情報の拡散といった負の側面も伴う。Microsoftトはこの問題に対し、以下のような対策を講じている。

  • Microsoftの責任あるAI原則: 同社の定める責任あるAIの原則と基準に基づき開発・運用。
  • OpenAIのセーフガード活用と追加保護策: Soraに組み込まれている安全対策に加え、Microsoft独自の保護レイヤーを追加。
  • 有害コンテンツ生成のブロック: システムが有害または危険な動画が生成される可能性のあるプロンプトを検知した場合、そのプロンプトをブロックし、ユーザーに警告を発する。
  • C2PA標準のコンテンツクレデンシャル: 生成された動画には、C2PA(Coalition for Content Provenance and Authenticity)標準に基づいた来歴情報(コンテンツクレデンシャル)が付与される。これにより、AIによって生成されたコンテンツであることを識別しやすくなる。

これらの取り組みは重要だが、巧妙化する悪用手口とのいたちごっこになる可能性も否定できず、継続的な技術開発と社会的な議論が求められる。

Bing Video Creatorは試す価値大!今後の進化に期待

Bing Video Creatorの登場は、間違いなくAIによるコンテンツ創造の新たな扉を開くものだ。OpenAIの「Sora」という最先端技術に、誰でも無料で触れられる機会が提供されたことの意義は大きい。5秒という制限はあるものの、その手軽さとSoraの潜在能力は、多くの人々にとって新しい表現の可能性を広げるだろう。

筆者としては、特に以下の点に注目し、今後の進化に期待したい。

  • 16:9フォーマットの早期実装と動画生成時間の延長
  • デスクトップ版およびCopilotへのスムーズな統合
  • より高度な編集機能やカスタマイズオプションの追加
  • 生成品質の継続的な向上と、より複雑なプロンプトへの対応能力強化

もちろん、AI生成コンテンツを巡る倫理的・社会的な課題については、引き続き慎重な議論と対策が必要だ。しかし、それを踏まえた上で、Bing Video Creatorは、私たちの創造性を刺激し、コミュニケーションのあり方を変える可能性を秘めた、エキサイティングなツールであると言えるだろう。

まずはBingモバイルアプリを手に取り、あなた自身の言葉で、どんな動画が生まれるのか試してみてはいかがだろうか。そこから、新しい発見やインスピレーションが生まれるかもしれない。


Sources

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