NVIDIAとCiscoは2026年10月12日、AIデータセンター向けの新しい光モジュール「USFP」の設計計画を発表した。機器の前面から抜き差しできる構造を維持しながら、既存の200Gb/s/レーン品に対して帯域密度4倍、電力効率約1.3倍を目指す。最大12.8Tb/sへの拡張も視野に入るが、最初に計画する構成は6.4Tb/sだ。通信量を増やすだけでなく、ネットワーク機器の設置面積や保守の手間をどう抑えるかが、この設計の狙いである。
12.8Tb/sへの道筋は16レーンから
USFPは「Ultra-Dense Small Form Factor Pluggable」の略で、電気信号と光信号を相互に変換する光トランシーバの新しい形状・接続方式を指す。両社が最初に計画するモジュールは、広く使われるOSFPに近い大きさの筐体へ16本の全二重レーンを収める。全二重とは、送信と受信を同時に行える仕組みのことだ。1レーン当たりの電気信号は400Gb/sに対応し、スイッチとNVIDIAのSuperNICの双方で使うことを想定している。
発表に登場する「4倍」と「12.8Tb/s」は、同じ構成を示す数字ではない。Ciscoの技術幹部による解説は、初期構成と将来の拡張を次のように分けている。
| 比較対象・構成 | 1レーン当たりの速度 | レーン数 | モジュールの容量 | 発表時点の位置づけ |
|---|---|---|---|---|
| 比較基準となる現行の着脱式光モジュール | 200Gb/s | 8 | 1.6Tb/s | 既存世代 |
| 初期USFP | 400Gb/s | 16 | 6.4Tb/s | 最初に計画する構成 |
| 拡張後のUSFP | 400Gb/s | 32 | 12.8Tb/s | 将来の拡張先 |
容量はレーン速度と本数の積で、16×400Gb/s=6.4Tb/s、32×400Gb/s=12.8Tb/sとなる。現行の8レーンは、比較基準の1.6Tb/sを200Gb/sで割っても確認できる。初期構成はレーン数と各レーンの速度をそれぞれ倍にするため、1.6Tb/sに対して4倍の帯域を同程度の面積に収められる、という説明だ。
つまり、12.8Tb/sは6.4Tb/sの送信と受信を足した表記ではなく、32レーンへ増やす段階の容量である。初期製品から12.8Tb/sが使えると受け取ると、導入時に見込む帯域が倍違ってしまう。両社の共同発表には、将来は32レーン以上へ増やせる設計とも記されている。
帯域を増やす鍵は接点の配置と挿し方
両社はUSFPによって、1.6Tb/sで接続する機器をより多く収容し、ネットワークの階層を増やさずにAIシステムを拡張することを狙う。スイッチの接続容量が尽きれば、さらにスイッチや光リンクを追加する必要が生じ、その分だけ遅延、電力、費用が増え得るからだ。NVIDIAも同日の解説で、計算資源を増やしながらネットワーク階層の追加を抑える点を強調している。
前面パネルの面積は有限である。同じ場所から出せる帯域が増えれば、モジュールを並べるためだけに装置を大型化する圧力を和らげられる。ただし、これでスイッチ内部の処理能力やデータセンターの冷却能力まで増えるわけではない。実際にどこまで接続機器を増やせるかは、USFPを組み込むシステム全体の設計にも左右される。
400Gb/sの高速信号を受け持つのは、新たな2次元配列のコネクターだ。モジュールを挿入してから高速信号用の接点をかみ合わせる2段階の構造とし、接点の摩耗を減らしながら信号品質を改善するという。挿し込む際に必要な力も予測しやすくなる。両社は、このコネクターが将来のレーン増設を支え、200Gb/s/レーンでも性能改善につながると説明している。
ここで継承するのは、現場でモジュールを交換する運用方式である。OSFPに近い寸法という説明だけでは、手元のOSFPソケットへそのまま差し替えられることにはならない。新しい接続方式を採る以上、既存機器との互換性は、対応する装置や仕様が示された段階で別途確認する必要がある。
電力効率1.3倍と100Wは別の数字
10月12日の共同発表が示す電力効率は、200Gb/s/レーンの着脱式光モジュールに対して約1.3倍という値だ。これは、同じエネルギーで運べるデータ量が増えることを表す。「消費電力が30%減る」と読み替えると計算が変わってしまう。
電力効率1.3倍を同じ通信量の電力量に換算すると、削減率は約23%となる。効率をデータ量÷電力量とし、同じ比較範囲で一定量のデータを転送すると仮定すれば、必要な電力量は1÷1.3≒0.769倍。したがって、削減率は(1−1÷1.3)×100≒23%と求められる。
これは両社の公称倍率を逆数にした条件付きの換算であり、USFPを測定して得た省電力率ではない。共同発表は電力の計測範囲や試験条件の詳細を示しておらず、モジュールごとの実消費電力も読み取れないため、冷却を含むデータセンター全体の電力が23%減るとは言えない。通信量そのものを増やして運用する場合も、総電力が減るかどうかは別の計算になる。
一方、最大100Wという数字は放熱に対応できる能力を示す。両社の説明は、トランシーバ内部に独立した専用冷却回路を設けずに、この放熱量へ対応するというものだ。装置側の冷却設備を不要にするという意味ではなく、100Wを常に消費するとの実測値でもない。
同じ発表に並んでいても、1.3倍はエネルギー当たりの転送効率、100Wは熱を逃がす設計の話である。ネットワーク設計者が電源や冷却の容量を決めるには、採用するモジュールと装置について、実際の負荷でどれだけ電力を使い、その熱をどう排出するかを確かめる必要がある。
CPOと並ぶ、現場で交換できる光接続
CiscoはUSFPを説明する中で、着脱式、ニアパッケージ型、CPO(光部品と電子部品を同じパッケージへ組み込む方式)などには、それぞれ利点と制約があると述べている。AIネットワークが一つの光接続方式へ統一されるという見方は採っていない。顧客が求める運用や長期的な設備計画に合わせて、使う技術を選ぶという立場だ。
USFPが引き継ごうとするのは、故障したモジュールを現場で個別に交換できることや、成熟した供給網を利用できることだ。異なる供給元の製品を組み合わせる相互運用性も、Ciscoが挙げる利点に含まれる。帯域当たりの電力だけを比べるのではなく、交換作業や部品調達まで含めて導入を判断する利用者に向けた設計と読める。
この構想を製品につなげるため、NVIDIAとCiscoはTE ConnectivityおよびAmphenolと協力し、モジュールを保持するケージ、コネクター、モジュール本体を開発する。コミュニティ主導の複数供給元によるプロジェクトを通じ、オープンな業界仕様を策定する計画も示した。もっとも、公開仕様の完成や他社製品との互換性試験が済んだという発表ではない。
10月12日の共同発表とCiscoの解説には、商用製品の発売日や価格、独立した性能測定は掲載されていない。導入の判断材料となるのは、今後登場する対応機器と、実負荷での消費電力・放熱条件である。それらがそろえば、AIデータセンターの運営者は、使い慣れた交換・保守の方式を保ちながら通信容量を増やす選択肢として、USFPを評価できるようになる。
