2026年11月3日の米国選挙で、10州にまたがるデータセンター関連の住民投票47件が実施され、その大半で建設規制を支持する側が優勢となった。住民投票を追跡する「Data Centers on the Ballot」によると、米東部時間11月4日12時45分時点の非公式集計では、優劣が判明した45件のうち44件で規制強化を支持する側がリードし、開発を容認する側が勝ったのはノースダコタ州Harwoodの1件だけだった。票数を合算しても規制側が72.8%を占め、データセンター建設に対する地域社会の強い警戒感が浮かび上がっている。ただし、住民が支持した規制は一律の建設禁止ではなく、施設の電力規模による制限や住民承認の義務化、拘束力のない諮問など多岐にわたる。報道によって対象件数も29〜47件と異なるため、投票結果を正確に理解するには、集計時点と設問の内容を区別する必要がある。
45件中44件で規制側が優勢、合算得票率は72.8%
Data Centers on the Ballotが11月3日の投票として集計した47件のうち、11月4日昼までに優劣が判明したのは45件だった。規制側がリードしたのは44件、開発容認側が勝ったのは1件で、メイン州のWiscassetとBrownfieldの2件は結果が出ていない。同サイトは設問ごとに異なる表現を比較できるよう、各設問の賛否を「規制側」と「開発容認側」に分類している。例えば「データセンターの建設を認めるか」という設問への反対票は規制側に数える仕組みだ。また、2ポイント以上の差がついた状態を「リード」としており、掲載された結果はいずれも正式認定前の数字である。
45件の票数を合算すると、規制側が185,668票、開発容認側が69,517票で、規制側の得票率は72.8%となった。総投票数255,185票に対する割合を計算したもので、米東部時間11月4日12時45分時点の非公式集計に基づく。この数字には拘束力のない諮問投票10件も含まれており、6件では集計が続いているため、最終的な得票率は変動する可能性がある。
一方、集計サイトが公表した設問ごとの規制側得票率は、中央値が76.58%、平均が73.5%で、単純に票を合算した72.8%とは異なる。中央値や平均は投票規模に関係なく各設問を同じ重みで扱うのに対し、合算得票率は有権者の多い自治体の結果に強く左右されるためだ。
例えば、オハイオ州Hubbardではデータセンターの全面禁止条例に2,622票が賛成し、反対は802票だった。Trumbull郡選挙管理当局が158の選挙区すべてを開票した段階で、賛成率は76.58%に達している。これに対し、ウィスコンシン州Janesvilleでは計26,711票が投じられ、規制側への賛成は16,779票(62.82%)だった。Janesvilleだけで45件の総投票数の約1割を占めるため、比較的低い賛成率が全体の合算得票率を押し下げたことになる。それでも、中央値、平均、合算のいずれで比較しても、規制側の支持は7割を超えている。
25MW超の建設禁止から住民投票の義務化まで、規制内容には大きな違い
今回の47件には、施設の電力規模に応じて規制を適用する設問が複数含まれている。集計サイトがMW(メガワット)単位の閾値を記録した設問は16件で、そのうち12件が一定規模を超えるデータセンターの建設を禁止する内容だった。内訳は25MW超の禁止が10件(オハイオ州9件、カンザス州Ottawa)、10MW超の禁止が2件(カンザス州EmporiaとEl Dorado)となっている。12件すべてで規制側が優勢だったが、Ottawaとオハイオ州Oregonでは集計が続いている。なお、オハイオ州Urbanaの条例には、7.5MW未満の自社利用施設を禁止対象から除外する規定もある。
| 閾値の役割 | 件数 | 自治体・基準 |
|---|---|---|
| 一定規模を超える施設の建設禁止 | 12件 | 25MW超:オハイオ州9件とカンザス州Ottawa/10MW超:EmporiaとEl Dorado |
| 住民投票による承認を求める条件 | 1件 | オハイオ州Grove City:20MW(集計中) |
| 180日間の建設凍結の対象 | 1件 | メイン州Sabattus:20MW |
| 税優遇の条件(保証金・騒音対策の保証) | 1件 | オハイオ州Perry:50MW |
| 独立審査を義務づける基準 | 1件 | ノースダコタ州Harwood:100MW |
重要なのは、MW単位の閾値を持つ16件すべてが建設を禁止するわけではないという点だ。直接的な建設禁止に該当するのは12件で、残る4件は住民承認や独立審査などの条件を定めている。例えば、25MW超の建設を禁止する条例では25MW以下の施設は対象外となる。カンザス州Emporiaの設問はさらに厳しく、電力需要が10MWを超えるか、1日の水使用量が10万ガロン(約380立方メートル)を超える施設について、市内のすべての用途地域で建設を禁じる内容だ。一方、Grove Cityの20MWは住民投票を実施する基準、Harwoodの100MWは独立審査を義務づける基準であり、閾値を超えた施設の建設を直ちに禁止するものではない。
電力規模による基準を設けない規制もある。オハイオ州Hubbardの条例は施設の規模にかかわらず、市内でのデータセンター建設を全面的に禁止するものだ。ウィスコンシン州Janesvilleでは、市が所有する旧GM/JATCO用地における4億5,000万ドル超の開発案件に住民投票を義務づける設問が支持されたが、条文自体にはデータセンターという言葉は登場しない。
また、規制側がリードした44件のうち34件は拘束力のある投票だったが、残る10件は自治体に住民の意向を伝える諮問投票だった。「賛成すれば開発を認める」という形式の設問13件では、いずれも反対票が上回っている。イリノイ州Joliet Townshipで実施された諮問投票では、賛成3,800票に対して反対が14,207票に達した。米メディアStatelineも、今回の投票には全面禁止、一時的な建設凍結、エネルギー使用量の制限、建設前の住民承認、諮問など、性質の異なる措置が含まれていると報じている。
AmazonとMetaの計画地でも建設規制を支持、唯一の例外はHarwood
大手テクノロジー企業がデータセンターを計画する自治体でも、建設規制への支持が多数を占めた。オハイオ州Sunburyでは、Amazon Data Servicesが約20億ドルのデータセンター建設を計画しているが、25MWを超える施設を禁止する設問に2,809票が賛成し、反対は763票だった。同州Piquaでも、Metaが約607エーカー(約246ヘクタール)のキャンパスを計画しているにもかかわらず、25MW超の施設を禁止する設問に4,061票が賛成し、反対の2,027票を上回った。ただし、Piquaの規制がすでに承認されているMetaの計画にも適用されるかどうかは明らかになっていない。
ウィスコンシン州Janesvilleの住民投票も、大規模データセンター計画を背景としている。Data Centers on the Ballotによると、Viridian Partnersが構想していた800MW、約80億ドルの施設建設を阻止する目的があったという。ただし、地元報道では、市議会が6月に開発業者との協定を失効させる決議をしており、選挙前の段階で計画は事実上撤回されていたとされる。
これに対し、結果が判明した45件のうち唯一、規制強化案が否決されたのがノースダコタ州Harwoodだ。100MW以上などの大規模産業案件に独立審査を義務づける憲章改正案は、賛成105票、反対325票で否決された。同地域は、Applied Digitalが進める約30億ドル、280MWのAIデータセンターキャンパスに隣接している。StatelineとData Centers on the Ballotはいずれも、Harwoodが今回の投票で唯一、開発容認側が勝利した事例だと伝えている。
各地の基準を実際の開発規模と比較すると、規制対象の大きさが分かる。オハイオ州では25MWが多くの条例で禁止の境界線となった一方、Harwoodに隣接するキャンパスは280MW、Janesvilleで構想された案件は800MWに達する。ただし、条例の閾値と事業者が示す施設容量は必ずしも同じ定義で計算されているとは限らず、単純な比較には注意が必要だ。
さらに、住民投票で規制側が勝っても、条例が直ちに施行されるとは限らない。カンザス州Emporiaでは、Lyon郡の非公式最終集計で建設規制への賛成が4,346票、反対が2,891票となった。しかし、集計サイトによると、賛成多数が正式に確定しても、裁判所が最終判断を下すまで条例の公示、施行、執行は停止される。
報道によって住民投票の件数が29〜47件と異なる理由
今回の選挙をめぐる報道では、データセンター関連の住民投票件数に大きな違いがある。主な集計を比較すると、数えた時点だけでなく、自治体数と設問数の違いや、対象とした州の範囲が数字に影響していることが分かる。
| 発信元 | 時点(米東部時間) | 件数 | 集計対象 |
|---|---|---|---|
| Ballotpedia | 9月21日(選挙前) | 34件 | 11月3日に投票予定の設問。2026年全体では8州38件 |
| Stateline | 11月4日0時48分の記事 | 33件 | 規制強化が可決されたか、リードしている設問。ほかに約12件が未発表 |
| Washington Post | 11月4日6時39分の記事 | 少なくとも29 | 禁止・制限が可決された自治体 |
| Data Centers on the Ballot | 11月4日12時45分 | 47件 | 10州44自治体で実施された設問。うち44件で規制側がリード |
特に大きいのが、自治体数と設問数の違いだ。Statelineはオハイオ州の21自治体で投票が行われたと報じたが、Data Centers on the Ballotでは21件は設問数で、対象自治体は18となっている。Ballotpediaの事前集計では同州を17自治体、20件としており、ここでも数字は一致しない。例えばWilmingtonでは4つの区画について個別に投票が行われたため、1自治体から4件の設問が数えられている。このように、1件の住民投票が必ずしも1自治体に対応するわけではない。
また、Statelineの33件はData Centers on the Ballotの集計を引用しているため、両者は独立した調査結果ではない。33件と44件の差は主に集計時点の違いによるものと考えられる。一方、Washington Postが報じた「少なくとも29自治体」はStatelineの記事より後に公開されているにもかかわらず、数字が小さい。これは同紙が自治体単位で集計しているとみられることに加え、「少なくとも29」という数字自体が確定した総数ではなく、確認できた範囲の下限だからだ。
対象州の違いも無視できない。Ballotpediaが9月に公表した2026年全体の38件は、オハイオ、イリノイ、ウィスコンシン、カンザス、カリフォルニア、ミシガン、ネバダ、フロリダの8州が対象だった。一方、Data Centers on the Ballotの47件には、この8州に含まれないメイン州の8件、ニュージャージー州の2件、ノースダコタ州の1件が含まれる。同サイトはデータセンターの建設禁止や電力上限に加え、用地の区画変更、開発協定、住民承認制度、諮問など、データセンターに直接関係する幅広い設問を集計対象としている。
したがって、「47件中44件で規制側が優勢」という数字は、11月4日昼時点に集計サイトが把握した設問を単位とする非公式結果であり、44自治体が規制を可決したという意味ではない。また、Alhambra、Ottawa、Downe、Boulder City、Grove City、Oregonの6件では集計が続いている。Grove Cityは規制側の得票率が54.6%と比較的接戦で、ネバダ州Boulder Cityでは郵便投票の集計に数日を要する見通しだ。
地元への建設に65%が反対、規制は州全体へ拡大する可能性も
データセンターをめぐる住民の警戒感は、今回の投票だけに限らない。NBCの出口調査では、連邦議会選挙での投票判断に「AIとデータセンター」が決定的、または主要な要因だったと答えた有権者が56%に達した。内訳は「決定的」が23%、「主要な要因」が33%だった。ただし、この調査はAIとデータセンターをまとめて政治的な重要性を尋ねたもので、施設建設への賛否を直接調べたものではない。
マサチューセッツ大学アマースト校(UMass Amherst)がYouGovを通じて8月21〜26日に1,000人を対象に実施した調査では、地元へのAIデータセンター建設を支持する人は11%にとどまり、65%が反対した。反対理由などを自由回答から分類した結果、全回答者に占める割合で環境・資源利用への懸念が28%、土地利用や地域社会への影響が15%、AIや関連業界への不信が13%、光熱水費の上昇など経済的負担が10%だった。同大学のAlexander Theodoridis准教授は、多くの米国人はデータセンターそのものではなく、自分の住む地域に建設されることに反対している可能性を指摘している。
同様の摩擦は日本でも起きている。政府資料によると、2023年時点で国内データセンターの約9割が、面積ベースで東京圏と大阪圏に集中していた。時事通信の報道では、千葉県印西市で2026年3月、駅前に計画されたデータセンターの建築確認の取り消しを求める住民訴訟が起こされ、隣接する白井市でも同様の訴訟が提起された。こうした状況を受け、日本データセンター協会は5月、施設の立地を検討する際に周辺住民や自治体と十分に協議するよう求める指針を公表した。
茨城県つくば市でも、オーストラリアのGoodmanが最終的に1GW、投資額約3兆円に達するデータセンター開発を計画している。同社は第1期となる50MWの施設を着工したが、ロイターによると、約45ヘクタールの開発用地が住宅や病院、介護施設に隣接していることから、地域住民などによる批判が出ている。施設の電力需要や水利用だけでなく、土地利用や周辺環境への影響も、開発を進めるうえで重要な課題になりつつある。
もっとも、今回の米国の住民投票結果を、すべての有権者がデータセンター建設そのものを拒否した証拠と見ることはできない。25MWや10MWという基準は条例案を提出した側が定めたもので、有権者が複数の規模を比較して選んだわけではない。また、全面禁止を支持する投票がある一方、10件は拘束力のない諮問だった。住民が求めているのが建設の全面停止なのか、規模の制限なのか、それとも開発手続きへの関与なのかは、各設問の内容に即して判断する必要がある。
今後は、選挙結果の正式認定と条例の施行状況が焦点となる。Data Centers on the Ballotは11月13日まで1時間ごとに集計を更新する予定で、残る6件の結果は変わる可能性がある。Emporiaの建設禁止条例についても、裁判所の判断を待つ必要がある。
さらにオハイオ州では、Conserve Ohioが25MWを超えるデータセンターを州全体で禁止する憲法改正を目指している。同団体は2026年7月の署名提出期限に間に合わなかったものの、2027年11月の住民投票への付議を目標としている。仮に憲法改正案が投票にかけられて承認されれば、これまで自治体ごとに導入されてきた25MWという建設規制が州全体に広がることになる。今回の選挙は、データセンターの立地をめぐる対立が個別自治体の問題にとどまらず、州レベルの政策課題へ発展する可能性を浮き彫りにした。



