NVIDIAの「GeForce RTX 50シリーズ」に、早くも“SUPER”モデルの足音が聞こえてきた。PCハードウェア界で高い信頼性を誇るリーカー、Kopite7kimi氏が立て続けに投じた情報によれば、NVIDIAは「GeForce RTX 5070 SUPER」および「GeForce RTX 5070 Ti SUPER」を計画しており、その最大の焦点は「VRAM(ビデオメモリ)の大幅な増強」にあるようだ。
このリークが事実であれば、現行モデルの弱点と指摘されがちだったメモリ容量の問題を解消し、ミドルハイからハイエンド市場の勢力図を塗り替える可能性を秘めている。
Kopite7kimi氏が投じた新たな情報
今回の情報は、過去にも数々のNVIDIA製品の正確な情報をリークしてきた実績を持つKopite7kimi氏がもたらした物で、信頼性に足る物だ。同氏は自身のX(旧Twitter)アカウントを通じて、RTX 5070 SUPERとRTX 5070 Ti SUPERの具体的なスペック情報を公開。これにより、これまで噂レベルで語られてきたSUPERリフレッシュの姿が、一気に現実味を帯びてきた。


RTX 40シリーズのSUPERリフレッシュがそうであったように、NVIDIAは製品ライフサイクルの中盤で性能を向上させた「SUPER」モデルを投入し、市場の活性化と競合へのプレッシャーをかける戦略を得意とする。今回のリークは、その戦略がBlackwellアーキテクチャ世代でも踏襲されることを強く示唆している。
詳細スペック分析①:RTX 5070 SUPER – VRAM 18GB化の衝撃
まず注目すべきは、アッパーミドルクラスの主戦力となるであろう「RTX 5070 SUPER」だ。リークされたスペックは以下の通りである。
スペック | RTX 5070 SUPER (リーク) | RTX 5070 (現行) | 変化 |
---|---|---|---|
GPU | GB205-400 | GB205-300 | フルスペック化 |
CUDAコア | 6,400基 | 6,144基 | +256基 (+4.1%) |
メモリ容量 | 18GB GDDR7 | 12GB GDDR7 | +6GB (+50%) |
メモリバス | 192-bit | 192-bit | 変更なし |
メモリ速度 | 28 Gbps | 28 Gbps | 変更なし |
帯域幅 | 672 GB/s | 672 GB/s | 変更なし |
TGP | 275W | 250W | +25W (+10%) |
最大のトピックは、疑いようもなくVRAM容量が12GBから18GBへと50%も増加している点だ。これは、近年高解像度テクスチャやレイトレーシングを多用するAAAタイトルのVRAM消費量が増大し、「12GBでは心許ない」というゲーマーの声に応える動きと見て間違いないだろう。
興味深いのは、メモリバス幅が192-bitのままで18GBを実現している点だ。これは、従来の2GB(16Gbit)メモリチップではなく、より高密度な3GB(24Gbit)のGDDR7メモリチップを6枚搭載することで可能になる。メモリ帯域幅は変わらないものの、より多くのゲームアセットやテクスチャをVRAM上に保持できるため、特に4K解像度や高設定でのゲームプレイにおいて、パフォーマンスの安定化やカクつき(スタッタリング)の減少に大きく貢献する可能性がある。
一方で、CUDAコア数の増加は6144基から6400基へと約4%の微増に留まる。これはRTX 5070がベースとする「GB205」GPUのカットダウン版であったのに対し、SUPERモデルではフルスペックのGB205が採用されることを意味する。純粋な演算性能の向上は限定的かもしれないが、VRAM増強との相乗効果で、実ゲームにおけるパフォーマンスは数字以上に向上する可能性を秘めている。
詳細スペック分析②:RTX 5070 Ti SUPER – 24GB VRAM搭載、しかしコア数は据え置き
次に、ハイエンドセグメントに位置する「RTX 5070 Ti SUPER」を見てみよう。こちらはさらに驚くべき内容となっている。
スペック | RTX 5070 Ti SUPER (リーク) | RTX 5070 Ti (現行) | 変化 |
---|---|---|---|
GPU | GB203-350 | GB203-200 | チップ流用 |
CUDAコア | 8,960基 | 8,960基 | 変更なし |
メモリ容量 | 24GB GDDR7 | 16GB GDDR7 | +8GB (+50%) |
メモリバス | 256-bit | 256-bit | 変更なし |
メモリ速度 | 28 Gbps | 28 Gbps | 変更なし |
帯域幅 | 896 GB/s | 896 GB/s | 変更なし |
TGP | 350W | 300W | +50W (+16.7%) |
RTX 5070 Ti SUPERの戦略は、RTX 5070 SUPERとは少し異なるようだ。なんと、CUDAコア数は8,960基で現行モデルから据え置かれている。その一方で、VRAMは16GBから24GBへと、こちらも50%の大幅増強が図られている。これは、現行のRTX 5080に迫る容量であり、4Kゲーミングはもちろん、大規模なAIモデルの学習や高解像度ビデオ編集といったクリエイティブ用途においても絶大な効果を発揮するだろう。
ここで注目すべきは、コア数が同じにもかかわらず、TGP(総グラフィックス電力)が300Wから350Wへと50Wも増加している点だ。VRAMチップの増加も電力増の一因ではあるが、これほどの大幅な増加は、ベースクロックやブーストクロックがかなり引き上げられている可能性を示唆している。つまり、NVIDIAは同じGPUダイの中からより品質の高い選別品をSUPERモデルに割り当て、電力供給を強化することで、演算性能の向上を図っているのではないだろうか。
結果として、RTX 5070 Ti SUPERは「同じコア数だが、より高速に動作し、より多くのメモリを搭載した強化版」という位置づけになりそうだ。
なぜ今「VRAM増強」なのか?NVIDIAの戦略を読み解く
今回のSUPERリフレッシュで共通するテーマは、紛れもなく「VRAMの大幅増強」である。なぜNVIDIAはこのタイミングで、この戦略を打ち出してきたのだろうか。そこにはいくつかの理由が考えられる。
- ユーザーの不満への回答: RTX 40シリーズから続くRTX 50シリーズの初期ラインナップにおいて、特にミドルからハイエンド帯のVRAM容量は、その価格帯に見合わないという批判が常に付きまとっていた。今回のVRAM増強は、こうした市場の声を真摯に受け止めた結果と解釈できる。
- 将来のゲームへの布石: Unreal Engine 5に代表される次世代ゲームエンジンは、よりリッチなグラフィックス表現と引き換えに、大量のVRAMを要求する。16GBですら将来的に不足する懸念が語られる中、18GBや24GBといった容量は、ユーザーに「将来にわたって安心して使える」という強力なメッセージとなる。
- AI・クリエイティブ需要の取り込み: ゲーミング性能だけでなく、NVIDIAはGPUのもう一つの柱であるAIやコンテンツ制作市場を強く意識している。これらの分野ではVRAM容量が生産性に直結するため、大容量メモリは極めて強力な訴求ポイントとなる。
- コスト効率の良いリフレッシュ戦略: 新たなGPUダイを開発するには莫大なコストがかかる。既存のGB203やGB205ダイを流用し、メモリ構成の変更とクロックの最適化で製品価値を大幅に高める今回の手法は、NVIDIAにとって非常にコスト効率の良いアップデート戦略と言えるだろう。
CUDAコア数を大幅に増やすのではなく、VRAM容量で差別化を図る。これは、近年のGPU市場におけるユーザーのペインポイントを的確に突いた、実に巧みな戦略ではないだろうか。
発売時期と価格はどうなる?
リーク情報に具体的な発売日はないものの、一部の情報サイト(Benchlife)は「CES 2025までは登場しない」と報じている。つまり、数週間単位ではなく、数ヶ月先を見据えた製品ということになる。例年1月に開催されるCESは、新製品発表の舞台として絶好のタイミングであり、このあたりで正式発表が行われる可能性は高い。
価格については、さらに興味深い予測がなされている。Wccftechなどの海外メディアは、RTX 40 SUPERシリーズが価格を据え置いた、あるいは一部値下げした前例を踏襲するのではないかと見ている。もしこれが実現すれば、RTX 5070 SUPERは$549、RTX 5070 Ti SUPERは$749という現行モデルの価格帯で、大幅に増強されたVRAMを手に入れられることになる。そうなれば、コストパフォーマンスは劇的に向上し、市場に大きなインパクトを与えることは必至だ。逆に言えば、現行のRTX 5070モデルを買うのは「時期が悪い」と言うことにもなりかねない。
ゲーマーとクリエイター待望の「VRAMリッチ」な選択肢となるか
今回のKopite7kimi氏によるリークは、NVIDIAの次の一手を明確に示した。それは、小手先の性能向上ではなく、「VRAM」というユーザーが最も渇望していた部分に真正面から応えるという、力強いメッセージだ。
- RTX 5070 SUPERは、微増したコア数と18GBへと増強されたVRAMで、ミドルハイクラスの新たなスタンダードを目指す。
- RTX 5070 Ti SUPERは、コア数こそ据え置きながら、24GBという大容量VRAMと向上したクロックで、4Kゲーミングやクリエイティブ作業のハードルを大きく引き下げる。
もちろん、これらは現時点ではあくまでリーク情報であり、最終的な製品仕様や価格はNVIDIAの公式発表を待たなければならない。しかし、もしこの情報が真実ならば、GeForce RTX 50 SUPERシリーズは、VRAM不足という長年の懸念に終止符を打ち、多くのPCユーザーにとって待望のアップグレード候補となるだろう。PCパーツ市場が再び熱狂に包まれる日は、そう遠くないのかもしれない。
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