CopilotKitは2026年10月1日、OpenAIの常時稼働型AIエージェント「dots」の代替を目指すオープンソースソフトウェア「OpenDots」を公開した。Mac上で動作する別のOSS「Open Dot」も登場し、利用者がAIモデルや実行環境を自由に選べるようになりつつある。OpenAIが9月29日に発表したdotsは、会話を終えた後も自律的に仕事を進めるAIを目指す製品だが、利用者からは接続障害や利用制限に関する報告も寄せられている。各製品の設計や公開コードを調べると、モデルを自由に選べるかどうかだけでなく、処理をいつ開始し、どこまで自動化し、中断した仕事をどう再開するかという課題が浮かび上がる。

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3つの「dots」は何が違うのか

OpenAIのdotsはGPT-6 Astraを搭載し、専用のクラウドコンピューターと連携アプリを使って仕事を進める。発表時点では、対象地域のChatGPT ProおよびBusiness Premiumユーザーに提供され、Enterpriseなどには管理者が有効化できるベータ版として提供される。チャットを通じて指示を受けるAIに、ブラウザーやファイルを操作する専用環境と、作業を継続する仕組みを組み合わせた製品だ。

一方、CopilotKitのOpenDotsは、利用者が自分でサーバーを運用することを想定したテンプレートだ。エージェントとユーザーインターフェースを結ぶ通信プロトコル「AG-UI」を採用し、会話の内容やツールの実行状況を画面に反映する。もう一つのOpen DotはMac向けのデスクトップアプリで、OpenAIのモデルに加え、OpenRouter経由でKimi、DeepSeek、Qwenなども利用できる。名前は似ているものの、実行環境や運用方法は大きく異なる。

2026年10月8日時点の公式発表と開発文書を基に、各製品の標準的な構成を実行環境・モデル・データの保存先という3つの観点から比較すると、次のようになる。

製品 継続作業を支える実行環境 モデルの選択 会話・文書の保存先
OpenAI dots OpenAIが管理するクラウド環境 GPT-6 Astra OpenAIのサービス内
CopilotKit OpenDots 自前のアプリサーバーと、別途設定する会話基盤 OpenAI互換APIを提供するモデルから選択 会話履歴はCopilotKit Intelligence、ページや設定はSQLite
Open Dot Mac上で動作するローカルサーバー OpenAI、またはOpenRouter経由のオープンモデル Mac上に会話履歴や設定を保存

つまり、OpenAIのdotsは同社が管理するクラウド、OpenDotsは利用者が運用するサーバー、Open DotはMac上のアプリを中心に動作する。OpenAIの発表、OpenDotsの構成、会話サービスの設定、Open Dotの説明に基づく設計上の比較であり、稼働率や処理速度を測定した結果ではない。

この違いは、手元のPCを閉じても作業を継続できるか、トラブルが起きた際に誰が復旧を担うかといった点に直結する。モデルを自由に切り替えられることと、仕事を中断せずに続けられることは別の問題だ。

クラウドPCがあっても、定期実行できるとは限らない

Open Dotは、ウィンドウを閉じてもアプリ自体を終了しなければ、ローカルサーバーがバックグラウンドで動作し続ける。作業環境にはMac上のフォルダーやDockerのほか、E2Bが提供するクラウドコンピューターも利用できる。ただし、READMEには、Macがスリープしている間に予定時刻を迎えた定期タスクや、その間に発生したトリガーイベントは実行されず、スキップされると明記されている。

クラウド上に作業用PCを用意しても、タスクを開始する仕組みまでクラウドで動くとは限らない。Open Dotの定期実行コードを見ると、アプリ内のサーバーがスケジュールを読み込み、指定時刻に処理を開始する構成になっている。

ここで重要なのは、作業を実行する環境と、その作業を開始する仕組みが別々に存在することだ。クラウドPCはブラウザーやプログラムを動かす場所であり、定期実行の仕組みは、指定された時刻にそれらを起動する役割を担う。

例えば、毎朝メールを要約するよう設定していても、予定時刻にMacがスリープしていれば、クラウドに作業環境を用意しただけでは処理は始まらない。「バックグラウンドで動く」という説明を理解するには、ウィンドウを閉じた状態、アプリを終了した状態、Macがスリープした状態を区別する必要がある。

一方、OpenDotsでは定期タスクをサーバー側で実行するが、中断した仕事を自動的に再開するとは限らない。処理を担当するワーカーが停止した場合などは、実行状態を「Interrupted(中断)」と記録し、利用者が内容を確認したうえで、明示的に再実行する仕組みになっている。

これは、処理が途中で止まっても、文書の作成やコンピューター上の操作がすでに完了している可能性があるためだ。結果が返ってこなかったからといって、同じ処理を最初からやり直せばよいとは限らない。中断した仕事を再開するには、同じ操作を重複して実行しないための対策も必要になる。

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記憶の再利用と、外部操作を承認する仕組み

Open Dotのプロンプト生成コードでは、保存された記憶やルールを読み込み、次のタスクを実行する際にモデルへ渡している。繰り返し使う手順はスキルとして保存し、必要に応じて呼び出すこともできる。

これは、モデル自体を追加学習して内部の重みを変更する仕組みではない。過去のやり取りで得た情報を保存し、次の入力に反映することで、以前の経験を活用できるようにしている。

OpenDotsの「Automatic Learning」も同様に、会話から再利用可能な手順を作成し、人による審査と公開を経て、エージェントが利用できるようにする仕組みとして説明されている。

AIが会話を重ねて「学ぶ」という表現には、こうした記憶や作業手順の蓄積も含まれる。例えば、利用者が好む報告形式を記録しておけば、毎回同じ指示を与える手間を省ける。しかし、以前の仕事で許可した操作まで、別の仕事でも自動的に認めてよいとは限らない。

そこで重要になるのが、外部サービスに対する操作を事前に確認する仕組みだ。

Open Dotのルール判定コードでは、エージェント本体とは別の小型モデルを使い、提案された操作にどの利用者ルールを適用すべきかを判定する。その結果をプログラム側で処理し、複数のルールが該当する場合は「禁止」「事前確認」「自動許可」の順に優先する。操作の審査を別のモデルに任せても、適用すべきルールを正しく判断できるかという課題は残る。

OpenDotsの外部ツール連携では、承認が必要な操作について、接続先・ツール・引数を保存する。利用者が承認すると、保存済みの内容に従って処理を実行し、同じ承認で実行できるのは1回だけに制限される。承認画面で確認した操作と、実際に実行される操作が食い違わないようにするための設計だ。

ただし、ツールが「読み取り専用」であることを示す情報は、接続先サーバーの自己申告に基づく。開発文書でも、信頼できないツールについては、読み取り専用とされていても承認を必須にする設定が推奨されている。

OpenAIのdotsでは、利用者に役立つ情報を自発的に探す「先回りの調査」を、システム側の制御によって読み取り専用に制限している。このバックグラウンド処理では、連携アプリの内容を変更したり、他人にメッセージを送ったり、ブラウザーやデスクトップを操作したりすることはできない。調査結果を基に実際の操作を行う場合は、通常の権限管理と審査の仕組みが適用される。

もっとも、これは利用者が明示的に依頼した仕事まで、すべて読み取り専用に制限されるという意味ではない。情報収集を目的としたバックグラウンド処理と、外部サービスに変更を加える処理を区別している。

また、操作の妥当性を確認する「Auto-review」の制御機構は、dot自身が変更できる作業環境の外に配置される。AIに適切な判断を学習させるだけでなく、そもそも実行できる操作をシステム側で制限するという考え方だ。

49件の安全性評価と、実際の利用で報告された停止

OpenAIはdots向けに、作業中に環境や権限、許可された操作の範囲が変化した場合でも、適切に対応できるかを検証している。

GPT-6 Astraのシステムカード第12.3.5.1節によると、単一の仕事を対象とした49件の評価エピソードのうち、45件が合格し、合格率は91.8%だった。権限が明示的に変更された17件はすべて合格した一方、残る4件では、許可された操作の範囲を適切に判断できないケースがあったという。

さらに、作業の途中で別の関連タスクを挟み、その後も同じ環境で仕事を続けた場合に、当初の許可範囲を守れるかどうかも検証している。

この評価では重大な情報漏えいは観測されなかったものの、別の仕事に情報を持ち越すなど、中程度の権限・操作範囲の逸脱は残った。

これらはOpenAI自身が設計した安全性評価であり、実際の利用環境で問題が発生する割合を示すものではない。それでも、長期間にわたって文脈を保持するAIには、仕事が切り替わるたびに適切な権限を判断し、それぞれの仕事で許可された範囲を守り続ける能力が必要であることが分かる。

一方、実際の利用者からは、安全性評価とは別の問題も報告されている。

macOSのChatGPT Proユーザーは10月1日、チャットは続けられるものの、クラウドコンピューターが利用できなくなったと報告した。

また、Windowsユーザーは10月6日、dotがサイドバーから消えて操作できなくなった一方、バックグラウンドでは他のチャットへのメッセージ送信が続いていたと報告している。ただし、この報告だけでは、dotや会話履歴そのものが削除されたとは判断できない。

さらに、macOSのChatGPT Proユーザーからは、米東部時間10月6日に、不正利用防止のための利用上限を知らせる表示が出て、応答が停止したという報告もあった。具体的な上限値や利用再開の時刻が分からず、作業の予定を立てられないという訴えだ。

OpenAIも公式発表で、負荷の高い作業には利用枠が設けられると説明している。「常時稼働」という言葉を、計算資源を無制限に利用できるという意味で捉えるべきではない。

これらはいずれも個別の利用者報告であり、共通の原因があるのか、どの程度の頻度で発生するのかは確認できない。

ただし、チャットで応答できること、クラウドコンピューターが使えること、利用者が画面から操作に介入できることは、それぞれ別の状態だ。AIに長時間の仕事を任せるには、どの機能が停止し、どの処理がまだ動いているのかを、利用者が把握できる仕組みも欠かせない。

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自前で運用しても、すべてのデータが手元に残るとは限らない

OpenDotsでは、ページや設定をSQLiteに保存する一方、会話履歴はCopilotKit Intelligenceに保存する。クラウド版のIntelligenceを利用する場合、会話の内容やツールの呼び出し履歴はCopilotKit側に送信される。また、Intelligenceをローカル環境で動かしても、利用するAIモデルが外部のサービスで提供されていれば、会話の文脈はそのモデルの提供元に送られる。

Intelligenceには、クラウド版、ライセンス契約が必要な自己ホスト版、本番運用を想定していないローカル評価環境という選択肢がある。

ローカル評価環境は更新可能な30日間のライセンスで利用できるが、既存のクラウド環境に保存された会話が自動的に移行されるわけではない。アプリを自分のPCで動かすことと、会話を含むすべてのデータを手元で管理することは、分けて考える必要がある。

SQLiteのデータベースだけをバックアップしても、別のIntelligence環境に保存された会話履歴までは復元できない。

機能の完成度にも違いがある。

OpenDotsは、1人で運用することを前提とした開発初期段階のテンプレートだ。Slack連携や音声会話からのタスク委譲など、実際の外部サービスと接続して検証する必要がある機能も残されている。

Open Dotにも制約がある。オープンモデルを利用する場合、ブラウザーの操作はページ上のテキスト情報に依存するため、Canvasで描画された内容などは正しく扱えない場合がある。また、音声通話機能を利用するにはOpenAIのAPIキーが必要だ。AIモデルを切り替えられるからといって、すべての周辺機能が同じように使えるわけではない。

オープンソースの選択肢が増えたことで、利用するモデルや操作ルールを、自分の用途に合わせて柔軟に設定できるようになった。その一方で、APIや作業環境の利用料金に加え、サーバーの稼働管理や会話履歴の保存なども、利用者自身が考えなければならない。

毎朝の定期タスクを確実に実行できるか。途中で止まった仕事を重複なく再開できるか。仕事の内容が変わったときに、権限を適切に確認し直せるか。

こうした条件を満たして初めて、過去の会話を記憶するだけのAIから、継続的に仕事を任せられるAIエージェントへと近づくことができる。