SK hynixが次世代HBM向けのハイブリッドボンディング開発で難航し、Samsungは同方式を使ったサンプル出荷で先行しているという情報が、Damnangによる技術者への取材をもとに10月7日に報じられた。

HBMは複数のDRAMチップを縦方向に積み重ね、AI半導体へ大量のデータを送るメモリだ。接合方式を変えると、積層できるチップの数やパッケージの高さ、放熱性能などにも影響する。

ただし、今回伝えられた開発状況は両社の公式発表によるものではない。SK hynixは既存の接合方式を使ったHBM4Eのサンプルをすでに出荷している。

Samsungがハイブリッド接合の試作で先行しているとしても、それが量産での優位につながるには、銅を高精度に接合するだけでなく、研磨から接合までの一連の工程を安定して繰り返せることが条件になる。

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「試作できていない」のは次世代HBM全体ではなく、新しい接合方式

今回の情報は、SK hynixの未来技術研究所に所属するプロセス開発技術者への聞き取りに基づく。

Damnangが10月6日に公開した取材記事の導入部によると、取材は9月19日に米太平洋時間で約90分にわたって行われた。発言は技術者個人の見解であり、会社の公式見解ではないことも明記されている。

この取材内容を紹介するP Equity Researchの投稿を引用した報道では、SK hynixはハイブリッドボンディングで技術的な問題を抱え、HBMサンプルの製造を始められていない一方、Samsungはすでに顧客向けサンプルを出荷したとされている。

ただし、この比較は引用報道を通じて伝わったもので、取材全文は有料公開となっている。対象となるHBM世代や積層数、顧客名は確認できない。また、9月時点の技術者の見解を、10月時点の確定した開発状況として扱うこともできない。

ここで重要なのは、新しい接合方式を使った試作が進んでいないことと、次世代HBMそのものを試作できていないことは別だという点である。

SK hynixは6月18日の発表で、主要顧客へ12層HBM4Eのサンプルを出荷したと説明している。容量は48GBで、接合にはAdvanced MR-MUFを採用する。

これは、チップ間を小さな金属接点でつなぎ、その隙間に液状の保護材を流し込んで固める、同社が改良を重ねてきた方式だ。

SK hynixは、このHBM4Eで前世代のHBM4に比べて熱抵抗を17%改善したとも発表している。

新しいハイブリッド接合技術に課題があるとしても、既存工程の延長線上で次世代製品を顧客評価へ進める取り組みはすでに進んでいる。今回の証言だけから、SK hynixのHBM4E開発全体が止まっていると考えることはできない。

銅を直接つなぐには、接合面だけでなく工程全体をそろえる必要がある

ハイブリッドボンディングでは、はんだを使うマイクロバンプを介さず、チップ表面の銅同士を直接接続する。

同時に、その周囲にある絶縁膜同士も接合するため「ハイブリッド」と呼ばれる。接続部や層間を埋める材料が占める空間を減らせれば、限られたパッケージ高さの中に、より多くのDRAMを積み重ねやすくなる。

電気信号が通る距離も短くなり、信号損失や消費電力を抑えられる可能性がある。また、熱を伝えにくい有機材料を接合界面から減らせることは、放熱面でも有利に働く。

ただし、接続端子を横方向に並べる間隔である「ピッチ」と、上下のチップ間の距離は別の寸法だ。細かな接続ピッチを実証しただけで、多層HBMの量産技術が完成したことにはならない。

Applied Materialsの工程解説では、銅表面の形状が接合品質を左右する理由を説明している。

化学反応と機械的な研磨を組み合わせるCMP(化学機械研磨)で絶縁膜を平坦化し、銅パッドをその表面よりナノメートル単位でわずかに低くする。

まず絶縁膜同士を密着させ、その後の加熱によって膨張した銅同士が接触するようにするためだ。

銅の凹みが深すぎれば接合面に空隙が残り、反対に銅が突出しすぎれば剥離を引き起こす可能性がある。

単に「平らに磨く」だけでは不十分で、絶縁膜と銅の高さの関係を、接合する面全体で一定に保つ必要がある。

さらに、研磨やチップ切り出しの際に生じた粒子、表面に残った汚染物質、端部の欠陥なども密着を妨げる。

プラズマなどで接合しやすい状態にした表面も、時間の経過とともに性質が変化する。そのため、表面を活性化してから接合するまでの時間や、工程間を清浄な状態で搬送する環境まで管理する必要があるとApplied Materialsは説明している。

接合装置が一度だけ高い位置合わせ精度を実現できても、前後の工程にばらつきがあれば、接合品質を安定させることはできない。

HBMでは、さらに薄いダイを扱う難しさも加わる。

Applied Materialsの8月18日のHBM製造解説によると、積層数を増やしながらパッケージ全体の高さを維持するには、DRAMダイを薄くする必要がある。

薄くなったチップは応力によって反りやすくなる。12層から16層以上へ積層数を増やすほど、位置ずれや接合不良によって歩留まりが低下するリスクも高まる。

これらは、ハイブリッド接合や高積層HBMに共通する製造上の課題である。

SK hynixが実際にどの工程で難航しているのかは明らかになっておらず、CMPやチップの反りが今回の遅れの直接的な原因だと断定することはできない。

それでも、ハイブリッド接合が「新しい接合装置を導入すれば解決する」ほど単純な技術ではなく、前後を含む製造工程全体の安定化が必要なことは分かる。

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「先行」を比べるには、接合方式と開発段階をそろえる必要がある

Samsungは3月17日のGTC向け発表で、ハイブリッド銅接合技術「HCB」を紹介した。

16層以上の次世代HBMを支える技術として位置づけ、従来の熱圧着接合であるTCBと比べて熱抵抗を20%超低減できるとしている。

今回報じられた「Samsungがサンプル出荷で先行している」という内容とは整合する方向の技術開発だが、この3月の発表そのものが、HCBを使ったHBMの量産開始を意味するわけではない。

SamsungのHCB技術展示、SK hynixのMR-MUFを使ったHBM4Eサンプル出荷、imecによるウェハー接合実証は、それぞれ対象も開発段階も異なる。

公表主体・日付 接合対象と方式 公表した到達段階 数字を読む際の条件
Samsung、2026年3月17日 16層以上の次世代HBM向けHCB GTCで接合技術を紹介 熱抵抗20%超低減はTCB比。量産開始や顧客認定の発表ではない
SK hynix、2026年6月18日 12層・48GBのHBM4E、Advanced MR-MUF 主要顧客へサンプル出荷 熱抵抗17%改善は前世代HBM4比。ハイブリッド接合品ではない
imec・EV Group、2026年5月28日 ウェハー同士を接合するテスト構造 銅パッドの200nmピッチを実証 300mmウェハーの全ダイで接合後の位置ずれベクトル40nm未満。HBM量産時の性能ではない

表は、Samsungの発表、SK hynixのサンプル出荷発表、imecの研究発表を、対象と到達段階ごとに整理したものだ。

確認できる正式発表だけを並べており、Samsungのサンプル出荷に関する今回の証言は、技術展示の欄には含めていない。

特に、熱抵抗の「20%超」と「17%」だけを比べて、Samsungの方が優れていると判断することはできない。

前者は接合方式をTCBと比較した数字で、後者は製品を前世代のHBM4と比較した数字だ。同じ積層構成や測定条件で評価したものではない。

熱抵抗は、発生した熱を外部へ逃がしにくい度合いを示す。熱抵抗が下がることと、チップそのものの消費電力が減ることも分けて考える必要がある。

imecの成果についても、HBM量産とは距離がある。

5月の実証は、配線を形成した2枚のウェハーを一括して貼り合わせる方式だった。

SK hynix Newsroomに掲載された仁荷大学Seunghwan Joo教授の解説では、ウェハー同士を一括して接合するウェハー・ツー・ウェハー方式と、個々のチップをウェハー上へ配置するダイ・ツー・ウェハー方式の違いを説明している。

ウェハー・ツー・ウェハー方式は、一度に多くのチップを処理できる利点がある一方、不良ダイもそのまま接合されるため、歩留まりに影響しやすい。

ダイ・ツー・ウェハー方式では、事前に検査を通った良品ダイを選んで積層できるが、一つずつ配置するため処理速度が課題になる。

Joo教授は、HBMではダイ・ツー・ウェハー方式が商用化へ向かっていると説明している。

ウェハーを一括接合した際の高い位置合わせ精度と、良品ダイを選びながら多数の層を積み重ねるHBMの量産性は、別々に評価する必要がある。

量産競争では、同じ品質の接合を繰り返せる工程が重要になる

Applied MaterialsとBesiは10月1日、先端パッケージング分野での協業拡大を発表した。

両社は2020年以来、Applied Materialsの研磨、洗浄、計測などの工程技術と、Besiのチップ配置・接合技術を組み合わせてきた。その成果の一つが、工程を統合したダイ・ツー・ウェハー型ハイブリッド接合システム「Kinex」である。

接合前の表面処理と、実際にチップを貼り合わせる工程を一体で設計する。

こうした装置開発の方向性は、ハイブリッド接合で重要なのが「どれだけ高精度に位置合わせできるか」だけではなく、「同じ品質の接合を量産工程でどれだけ安定して繰り返せるか」であることを示している。

ただし、今回の協業発表から、SamsungやSK hynixがKinexを採用していると判断することはできない。

両社が共同研究を拡大する対象には、ハイブリッド接合だけでなく、既存のTCB技術の改良も含まれている。

つまり、既存方式を改善し続ける道と、新しいハイブリッド接合へ移行する道は並行して進んでいる。

SK hynixがAdvanced MR-MUFを使ったHBM4Eサンプルを出荷していることも、ハイブリッド接合への完全移行を待たずに次世代製品を進められる例といえる。

ここから分かるのは、新しい接合方式を採用する時期が、単に技術の新しさだけで決まるわけではないということだ。

既存工程で顧客が求める容量や放熱性能を満たせるのであれば、蓄積した量産技術を引き続き使う意味がある。

一方、積層数を増やすほどチップの反りや放熱の制約が厳しくなれば、層間の厚さを減らせるハイブリッド接合の利点は大きくなる。

ただし、この一般的な技術選択の考え方を、SK hynixの開発遅れが意図的な戦略によるものだったという説明へ結び付けることはできない。

Samsungが実際にハイブリッド接合を使ったサンプルを先に顧客へ出荷しているのであれば、顧客環境で評価を進め、量産へ向けた課題を早い段階で洗い出せるという利点はある。

しかし、試作品が動作することと、顧客が必要とする数量を安定して供給できることの間には、歩留まりと製造時間という課題が残る。

積層後の信頼性に加え、AIプロセッサーと組み合わせた最終パッケージで正常に動作するかどうかも、採用を判断する重要な材料になる。

今後、両社の差を判断するうえで重要なのは、ハイブリッド接合を採用するHBMの世代と積層数、顧客認定を終えた時期、そして量産時に確保できる歩留まりと供給量である。

これらの条件をそろえられたメーカーは、同じパッケージの高さにより多くのメモリを搭載し、増え続けるAIモデルの容量要求へ対応できる選択肢を広げられる。