ドイツのGPU市場で、GeForceの値上がりがRadeonやIntel Arcを上回っている。ハードウェア情報サイト3DCenterが10月4日に公表した比較では、2025年11月から2026年10月にかけて、GeForce RTX 50の価格は平均66%上昇し、RTX 5090は132%高くなった。最上位モデルを除いてもGeForceの平均上昇率は57%で、普及価格帯まで購入の負担が増している。ただし、約1年の小売価格の変化を、メーカーの公式値上げや世界共通の上昇率として読むことはできない。
同じGPUでも、8GBから16GBへメモリ容量を増やすための追加予算は、GeForceとRadeonで違う動きを見せた。価格帯と算出方法をそろえると、どの選択肢が遠くなったのかが具体的に見えてくる。
「66%」の中身は購入可能な小売価格
RTX 5090の価格帯は、2,600〜2,900ユーロから6,000〜6,800ユーロへ移った。一方、RX 9070 XTは590〜670ユーロから790〜880ユーロへ上昇している。3DCenterの比較表が捉えたのは、同じ世代のカードを買うために必要な予算が、約1年でどれほど増えたかという変化だ。
| GPU | 2025年11月 | 2026年10月 | 上昇率 |
|---|---|---|---|
| GeForce RTX 5090 | 2,600〜2,900ユーロ | 6,000〜6,800ユーロ | 132% |
| GeForce RTX 5080 | 1,000〜1,140ユーロ | 1,540〜1,650ユーロ | 51% |
| GeForce RTX 5070 Ti | 740〜830ユーロ | 1,200〜1,290ユーロ | 60% |
| GeForce RTX 5070 | 520〜560ユーロ | 800〜900ユーロ | 56% |
| GeForce RTX 5060 Ti 16GB | 410〜450ユーロ | 680〜850ユーロ | 74% |
| GeForce RTX 5060 Ti 8GB | 320〜380ユーロ | 460〜560ユーロ | 45% |
| GeForce RTX 5060 | 270〜310ユーロ | 420〜490ユーロ | 56% |
| Radeon RX 9070 XT | 590〜670ユーロ | 790〜880ユーロ | 33% |
| Radeon RX 9070 | 520〜580ユーロ | 660〜760ユーロ | 28% |
| Radeon RX 9060 XT 16GB | 330〜380ユーロ | 520〜590ユーロ | 57% |
| Radeon RX 9060 XT 8GB | 260〜320ユーロ | 440〜510ユーロ | 65% |
| Intel Arc B580 | 240〜280ユーロ | 330〜410ユーロ | 41% |
| Intel Arc B570 | 210〜250ユーロ | 270〜360ユーロ | 34% |
価格帯と上昇率は3DCenter掲載値。上昇率は各時点の「(価格帯の下限×2+上限)÷3」という加重平均価格を比較して算出している。メーカー別の掲載平均はGeForce RTX 50が66%、Radeonの比較対象4モデルが46%、Arc B580・B570が38%である。GeForceの平均には、表で省略したRTX 5050も含まれる。
この平均は、売れた枚数で重み付けした購入者全体の平均ではない。市場調査の説明によれば、価格帯は複数の小売店で購入可能な、比較的有利な製品の提示価格から採っている。eBayやAmazon Marketplaceの再販業者は除外し、基準クロックの仕様を持つ同じGPUモデルについて、複数のカードメーカーの製品を調べる方法だ。一度だけ出た底値でも、全店舗の単純平均でもない。
それでも、上昇の広がりははっきりしている。RTX 5060は56%、Arc B580も41%上がった。RTX 5090を外してもGeForceの平均は57%であり、旗艦だけが平均を押し上げたわけではない。従来と同じ予算を用意しても、同じカードに届きにくくなっている。
16GBを選ぶ追加予算はGeForceとRadeonで違う
RTX 5060 Tiの16GB版は74%上昇したのに対し、8GB版は45%だった。両方ともNVIDIAの公式仕様ではGDDR7を搭載する。GPUの系列をそろえても、容量を増やすための負担が大きく変わった。
RTX 5060 Tiで16GB版を選ぶための上乗せ額は、同じ算出法で約83ユーロから約243ユーロへ拡大した。
これは3DCenterの価格帯に同じ重みを付け、16GB版の代表価格から8GB版の代表価格を引いた計算だ。たとえば2026年10月のRTX 5060 Tiなら、16GB版は「(680×2+850)÷3」、8GB版は「(460×2+560)÷3」で、差は約243ユーロになる。Radeon RX 9060 XTにも同じ計算を当てると、追加額の動きはずっと小さい。
| モデル系列 | 2025年11月の16GB追加額 | 2026年10月の16GB追加額 |
|---|---|---|
| GeForce RTX 5060 Ti | 約83ユーロ | 約243ユーロ |
| Radeon RX 9060 XT | 約67ユーロ | 80ユーロ |
追加額は、ドイツの3DCenter掲載価格帯から「16GB版の加重平均価格−8GB版の加重平均価格」で算出した。差を取ってから整数に丸めており、同じカードメーカーや冷却設計の製品同士を比べた値ではない。
したがって、約243ユーロを「追加8GBの製造原価」と解釈することはできない。示しているのは、小売市場で16GBを選ぶために必要な追加予算である。RX 9060 XTでは8GB版の上昇率が65%と16GB版の57%を上回り、同じ16GBでもRX 9070の上昇率は28%にとどまる。容量が大きいほど同じ割合で高くなる、という説明ではこれらの差を捉えられない。
16GBのカードを探す読者にとっては、ブランド別の平均より、この追加負担の方が選択に直結する。同じ系列の8GBと16GBを比べたうえで、別系列の16GBも同じ予算に入るかを確認する必要がある。
GDDR6にもGDDR7にもかかる供給圧力
メモリの供給側では、ゲーム向けGPU以外の用途が生産配分を変えている。TrendForceが9月30日に公表した分析によると、メモリメーカーはGDDR6の生産を縮小し、段階的に市場から撤退している。GDDR7も、先端工程の生産能力がサーバーDRAMなどへ振り向けられるため、生産量が限られるという。
TrendForceは、GDDR7の需要についてもAIチップ向けの調達がPC市場を上回る勢いだと説明し、グラフィックスDRAMの価格が上昇を続けると予測した。これは、ゲーム用カードの購入需要だけを見てもメモリ価格を説明できない理由になる。供給を他用途へ回せば、PC向けの需要が強くなくても価格には圧力がかかる。
RTX 5060 Tiが使うGDDR7に対し、RX 9060 XT 16GBの公式仕様はGDDR6である。新しい規格と従来の規格は、異なる事情で供給を絞られている。同じ「メモリ不足」でも、製品への影響が一様になるとは限らない。
ただし、TrendForceが示したのはメモリ市場の供給と見通しであり、各GPUの値上がりを分解した結果ではない。RTX 5090の132%のうち、メモリ費用が何割を占めたかは、この資料からは分からない。カードごとの需要や流通在庫も区別して調べる必要があり、容量とメモリ規格だけからメーカーの利益や値上げの内訳を決めつけることはできない。
Radeonの割安さはレイトレーシングでも続くのか
1440pのラスタライズ、つまり従来方式の描画性能を価格で割ると、3DCenterの比較ではRX 9070 XTがRTX 5070 Tiを46%上回る。RX 9070とRTX 5070の比較でもRadeon側が28%有利だ。これはRadeonの動作速度がそれだけ速いという意味ではなく、支払う価格に対して得られる性能が大きいという評価である。
ところが、同じ表に載るレイトレーシングの価格性能比は、その条件でゲームを測った結果ではない。AMDのラスタライズ性能を約15%引き下げる簡易補正に基づく推計である。3DCenterはその推計でもRadeon側が有利になると示しているが、光の経路を追う描画の負荷はゲームと設定で変わる。一律の補正値を、遊びたいタイトルの性能差として使うことはできない。
価格性能比の土台となる性能指数も、複数のハードウェアレビューを集約した目安だ。3DCenter自身、個別の試験結果とは数%程度の差が出ると説明している。アップスケーリングなど利用する機能を含め、実際の解像度とゲーム設定で比べ直して初めて、価格差に見合う選択かを判断できる。
日本の購入者が使えるのも、この比較の手順である。ドイツの上昇率を国内価格へ当てはめるのではなく、購入可能な国内製品で8GBと16GBの追加額を確かめ、同じ予算に入る競合カードの実ゲーム性能と照らし合わせる。価格と在庫が落ち着いたと判断するには、安い一品が見つかるだけでなく、必要な容量のカードを複数の店でその予算内に買えることが条件になる。



