DLSS 5を使用していたGeForce RTX 5090で、電源コネクターが溶けたとの報告が出た。VideoCardzが紹介したのは、MSI製「GeForce RTX 5090 32G GAMING TRIO OC」の所有者による事例で、NBA 2K27のプレイ中に高い消費電力を観測し、その後カードが動作しなくなったという。公表されたGPU-Zの最大値は613.5Wで、MSIの公称575Wを上回る。ただし、これはカード全体の値であり、損傷した端子を通った電力とは一致しない。AIによる描画の負荷がどう変わり、その負荷を接続部がどう受け止めたのかを、別々に考える必要がある。

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613.5Wの最大値と「高負荷が続いた」という証言

所有者のerek氏は、HardForumへの投稿で、DLSS 5を使わない場合は約450Wで変動していたのに対し、使用時には610Wを超える状態が続いたと説明している。別の参加者から画像が最大値表示であると指摘されると、最大値を表示させていることを認めたうえで、ゲームを抜けるまで高い値が続いていたと補足した。

つまり、画像に残る最大値と、継続時間に関する本人の説明は、証拠としての性格が違う。613.5Wをそのまま平均消費電力と呼ぶことはできない。持続的な高負荷だったという訴えを確かめるには、時間軸付きの記録が必要になる。

VideoCardzの報告によると、本人は異臭に気付き、樹脂が溶けてプラグとソケットが固着し始めたため、ケーブルを外すのが非常に難しかったという。同媒体は複数の端子に熱損傷が見られる写真も掲載している。これらは故障の具体性を伝える一方、損傷に至る前の接触状態までは明らかにしない。

MSIの仕様表には、消費電力575W、電源コネクターは16ピンを1基、推奨電源容量は1000Wとある。この3つはそれぞれカードの公称消費電力、接続方式、PCに搭載する電源ユニットの容量を指す。613.5Wとの違いだけから、電源ユニットの容量不足や電力制御の異常を特定することはできない。故障個体の設定やBIOSの確認も欠かせない。

さらに、カードは補助電源コネクターとマザーボードのPCIeスロットから給電を受ける。総電力に両方が含まれるなら、コネクター経由の電力を知るには、同じ時刻のスロット給電分を分けなければならない。規格上の最大値をスロットの実測値に見立てて差し引くこともできない。613.5Wという記録だけでは、600W超がコネクターを通ったとは判定できない。

なぜDLSSで消費電力が増えるのか

NVIDIAは、DLSS 5の技術説明で、従来のDLSSと今回の生成処理の目的を区別している。従来の技術が、より高い計算コストで描いた画像を効率よく再構成するのに対し、DLSS 5は学習した現実世界の外観を利用し、従来の描画結果に生成処理を加える。DLSSという名前から、常に描画が軽くなると考えると、この違いを見落とす。

処理には現在の描画フレームやゲーム内の動きの情報を使い、前のフレームから引き継ぐ状態も与える。NVIDIAの説明では、画素空間で動く1ステップの拡散モデルが、GeForce RTX 50シリーズ上でゲームの描画工程に組み込まれる。生成するための計算は、利用者のGPUが担う。

画質を改善する処理を追加する以上、従来の設定に対して新たな計算コストが生じる。これは「同じ画質を少ない計算で得る」という効率の議論と、「追加の計算で画質を変える」という議論を分ける理由になる。どの程度の電力差になるかは、比較する場面や設定を固定して測る必要がある。

ただし、この仕組みの説明から、erek氏の環境で観測された電力差をすべてDLSS 5の内部処理に割り当てることはできない。まして、DLSS 5が電力上限を無効にしたという証明にもならない。本人が報告した負荷の変化は検証すべき手掛かりであり、故障原因の確定にはさらに測定が要る。

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600W規格の内側にある、端子ごとの発熱

Intelの電源設計ガイドは、12V-2x6を最大600Wの12V電力を供給するコネクターとして説明している。電力用の接点は正極側と接地側を合わせて12個あり、そのほかに信号用の小さな接点がある。600Wという数字には、複数の接点で電流を分担する設計が含まれている。

600Wを12Vで供給すると合計50A、正極側の6端子へ均等に分かれれば1端子あたり約8.3Aとなる。計算は「600W÷12V÷6」で、同ガイドの端子構成に基づく説明用の値だ。故障したカードの端子電流を再現したものではない。

同ガイドのコネクター性能要件は、全12接点へ通電した条件で1接点あたり9.2A、周囲温度からの温度上昇を30℃以内としている。ここでの30℃は端子の絶対温度ではない。また、9.2Aを超えた瞬間に溶けるという意味でもない。規定の条件を満たす接続部の性能を表す数字である。

数値・条件 対象 その数字だけでは分からないこと
613.5W GPU-Zに記録されたカード全体の最大消費電力 補助電源経由の電力、継続時間
600W 12V-2x6の供給電力 実機での各端子への分担
約8.3A 600W・12V・正極6端子で均等分担した計算値 故障個体の実際の端子電流
9.2A、温度上昇30℃以内 Intelガイドに記された接点の性能条件 接触が劣化した個体の故障温度

表の数値を直列につないで「上限を超えたから溶けた」と結論づけることはできない。総電力の測定と、各接点で起こる現象の間に、まだ埋まっていない情報がある。

接触部で生じるジュール熱は、電流の二乗と抵抗の積で決まる。同じ抵抗なら、電流が2倍になると発熱は4倍になるという関係だ。複数の端子に流れる電流が均等でなければ、一部の接点へ負担が偏る。接触状態が変われば抵抗も変わるため、カード全体のW数が同じでも、局所の温度は同じになるとは限らない。

もっとも、偏りが見つかっただけで故障を予告できるわけではない。Igor'sLABが2025年に行った測定では、RTX 5090 Founders EditionとMSI製Suprimに軽微な電流の偏りがあり、挿し直しなどで値も変わったが、熱画像に異常は見られなかった。負荷分担と接触状態が測定対象になることを示す例であり、今回のGaming Trio OCの故障を再現した試験ではない。

12V-2x6では電源端子を長く、検知用の端子を短くし、電力を運ぶ端子が十分に接触してから検知側がつながるように改良されている。しかし、接触の順番を整える機構と、使用中の各端子の温度を測る機構は別である。改良規格であることを、そのまま実機の温度監視と同一視することはできない。

総電力の監視から、接続部の保護へ

CORSAIRは、ケーブルの温度を監視する「ThermalProtect」を製品化している。同社の説明では、GPU接続部から30mm離れたケーブルコーム内で温度を検知し、65℃を超えると検知ピンを介してGPUへ停止信号を送る。電源ユニット自身の過熱保護とは別に、ケーブル側にも監視を設ける設計だ。

この65℃は、その位置のセンサーが捉える温度であり、金属接点の温度そのものではない。Intelの性能条件にある「周囲温度から30℃上昇」とも対象が違う。こうした製品の存在は、総電力以外の監視が設計上の選択肢になっていることを示すが、今回の故障を確実に防げたという証拠にはならない。

原因を調べる試験では、同じゲーム場面と解像度にそろえ、フレームレート上限を固定したうえでDLSS 5の有効・無効を比較する必要がある。そのとき総電力の最大値だけを記録しても、高い負荷がどの程度続き、どこが熱くなったのかは残らない。カード全体の電力推移に加え、端子ごとの電流と接続部の温度を時間軸に沿って対応させることが、負荷の変化と損傷を結びつける検証になる。

今回の事例では、故障個体の調査を通じて接触状態や電力設定を確かめる作業も残る。使用中に壊れたという時間的な一致から、DLSS 5固有の故障率を求めることはできない。反対に、原因が未確定であることを理由に、持続的な高負荷という本人の訴えを測定せず片付けるのも早い。

DLSS 5の画質向上を評価する際には、フレームレートとともに、その画質を維持する電力と接続部の温度を確認したい。同条件の長時間試験と故障個体の分析がそろえば、利用者はAI描画の効果と、機器が負担するコストを具体的に比較できるようになる。