StatCounterの2026年7月データで、北米のデスクトップ向けLinuxが初めて10%を超えた。8月4日時点の集計ページは10.65%と表示しており、Linuxデスクトップにとって目を引く数字である。ただし、これは北米のPC台数に占める割合ではない。StatCounterが測っているのは、同社の計測網に入るWebページをデスクトップやノートPCから閲覧した量の構成比だ。しかも同じ公式ページから取得できる月次CSVは7月を10.61%としている。数字が示す変化と、数字では確定できない利用者の移行を分ける必要がある。
10.65%はインストール台数の比率ではない
StatCounterは世界100万以上のWebサイトに設置した計測コードを通じ、月間30億件を超えるページビューを集計する。ページが開かれるたびにブラウザのユーザーエージェントなどからOSと端末区分を判定し、その閲覧量を市場シェアとして示す。ノートPCも「desktop」に含まれる。一人が同じサイトを何度も見れば、その分だけページビューは増えるため、端末台数や利用者数を数える調査とは性格が違う。

集計には人口や国別インターネット利用者数による人工的な重み付けもない。StatCounterはボット活動を除外していると説明するが、公開されるのは集計後の比率であり、OSごとの実数や人間と自動アクセスの内訳は示されない。特定の大規模サイトが計測網へ加わる、訪問者の構成が変わる、OS判定が更新されるといった場合でも比率は動き得る。
速報値としての扱いも欠かせない。StatCounterは初回公開から45日間、誤りや欠落を訂正できるとしている。8月4日時点で北米の棒グラフは10.65%、同じサイトの月次CSVは10.61%と0.04ポイント異なる。10%突破という大枠は共通するものの、小数点以下まで確定した数字ではない。
6月24日に生じた不連続
月次CSVでは、北米Linuxは5月の3.56%から6月に6.14%、7月に10.61%へ上昇した。2カ月で7.05ポイント増え、比率は約2.98倍になった。Windowsは同じ期間に64.66%から57.63%へ7.03ポイント低下している。両者の増減はほぼ鏡写しだが、これだけでWindows搭載PCがLinuxへ入れ替わったとは言えない。合計が100%になる構成比では、どこかが上がれば別の項目が必ず下がるからだ。
日次データを見ると、変化はさらに急である。Linuxは6月23日の4.77%から、翌24日に10.19%へ跳ねた。28日には17.05%まで上がる。7月も5.54%から17.94%まで大きく振れ、月末31日は9.16%だった。月次の10.61%は月内のページビューをまとめた比率であり、月末時点の値でも、日次比率の単純平均でもない。
一晩で2倍を超える変化を、OSの入れ替えだけで説明するのは難しい。人によるLinux閲覧が増えたのか、計測対象サイトの訪問構成やアクセス頻度が変わったのかは判別できない。StatCounterが公開する比率からは、それぞれの寄与を分解できない。したがって確定できるのは、6月下旬以降、同社が観測した北米のデスクトップWeb閲覧でLinuxと判定された割合が急増したことまでである。
米国11.87%、カナダ3.83%という分断
国別に分けると、北米全体の10%超えは一様な動きではない。米国のLinux比率は5月3.71%、6月6.33%、7月11.87%と伸びた。メキシコも2.58%から6.08%へ上昇している。ところがカナダは6月の5.59%から7月に3.83%へ下がった。地域名だけでは見えない差である。
StatCounterは国ごとの人口で重み付けせず、計測したページビューをそのまま集約する。米国の11.87%は北米全体の10.61%に近く、カナダの3.83%とは大きく離れている。ただし、国別のページビュー数は月次表にないため、米国が北米値を何ポイント押し上げたかまでは計算できない。11.87%もLinux搭載PCの台数比ではなく、米国内と判定されたデスクトップWeb閲覧の比率である。
同時期の伸びは北米だけでもない。世界全体のLinux比率は5月3.81%、6月5.59%、7月7.51%へ上がり、アジアも3.88%から7.17%へ上昇した。一方、欧州は6月と7月がともに5.49%だった。複数地域の観測値は上向いたが、それだけで利用台数の広がりや北米固有の大量移行は確定しない。
Steamの4.01%とWindows 10終了が教える限界
別の母集団を見ると、伸びの方向と大きさを分けて考えられる。Valveの2026年7月Steamハードウェア&ソフトウェア調査では、Linuxは4.01%で前月から0.32ポイント増えた。Steam利用者を対象にした任意・匿名の月次調査であり、StatCounterのWebページビューとは測り方も地域も違う。Steam調査内でLinux比率が上がったことは確認できるが、北米Web閲覧の10.61%を裏づける数字ではない。
Windows側には移行を促す事情がある。Microsoftは2025年10月14日にWindows 10の通常サポートを終え、技術支援や機能更新、通常のセキュリティ更新を停止した。延長セキュリティ更新プログラムの利用者には例外がある。Windows 11へ移れないPCの所有者にとってLinuxは選択肢になり得る。ただし、サポート終了から8カ月以上たった6月24日にStatCounterの比率が突然倍増した理由を、この日付だけで説明することはできない。
10%突破はStatCounterの計測範囲では事実であり、無視できる変化でもない。普及の節目として確定するには、45日間の改訂後も7月値が残り、8月と9月にも米国を中心とする高い比率が続く必要がある。Steamのように異なる母集団の調査も同じ方向を示せば、Web閲覧の急変から実際の利用拡大へ、ようやく結論を一段進められる。



