PCB(プリント基板)の製造コストが最大50%上昇し、マザーボードメーカーが再度の値上げを迫られる状況になりつつある。中国の業界フォーラムBoard Channelsが伝えたところによれば、マザーボードの製造コストは少なくとも10%増加したが、メーカーが2026年8月に実施した小売価格の調整は平均約3%に留まった。このギャップが埋まらないかぎり、追加値上げは時間の問題とみられる。

50%という数字は最終製品の値上げ幅ではなく、PCB基板原材料の価格上昇幅だ。ただしこれが製造コスト全体を押し上げている以上、どこかの時点で消費者価格にも転嫁される。それが今か、あるいは年末のQ4価格改定のタイミングになるかは、今後の需要動向次第だ。

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PCB基板に何が起きているのか

PCBコストが急騰した理由は一つではない。銅、電子グレードガラスクロス(ガラス繊維布)、樹脂という三つの主要原材料が同時に逼迫している。

銅はCCL(銅張積層板)のコストの約42%を占める基幹素材だ。2026年初頭、銅の国際価格は1トン当たり1万4,500米ドル超という過去最高水準を記録した。2026年9月3日時点でも約1万4,359米ドルで高止まりしており、AIデータセンターへの電力インフラ整備と電動化需要が価格を高水準に維持している。

電子グレードガラスクロスは、PCBの骨格となるCCLの強化材だ。この素材の不足は2027〜2028年まで続く構造問題とされている。需要急増の主犯はAIサーバーだ。旧型サーバーのPCBが16〜20層構成だったのに対し、最新のAIアーキテクチャでは32〜40層以上のHDI(高密度インターコネクト)構成が求められる。素材消費量は従来比で大きく膨らみ、高品位ガラス繊維布の最大手メーカーである日東紡の新規生産能力も2027年中頃まで本格稼働に入らない見通しだ。

CCL最大手のKingboardは2025〜2026年にわたって、FR-4ラミネートの累積値上げ率が134%超に達する連続改定を続けてきた。AIサーバー向けPCBがラック1台当たり10万米ドル超の高付加価値品である一方、一般PC向けマザーボードはこれよりはるかに低価格帯に位置する。AIサーバー向けの需要がサプライヤーの優先度を塗り替え、PC向けの製造余力を奪っている構図だ。

2026年のAIサーバー出荷台数は前年比28%超の成長が見込まれており、この需要拡大がPCB産業全体を変形させつつある。PCB市場全体の規模が1,000億米ドルの閾値へ向かう中で、高利益率のAI向けが製造資源を引き付けている。マザーボードのような薄利の民生品は、同じサプライチェーンの中で後回しにされやすい立場に置かれる。

コンデンサも同時高騰、代替戦略が効かない

コンデンサの逼迫も今回の事態を複雑にする。Board Channelsの報告では、各種コンデンサのコストが約50%上昇したとされる。

問題は、MLCCとタンタルコンデンサという代替関係にある二種類の部品が同時に高騰していることだ。従来、一方が不足した際はもう一方で代替するのがサプライチェーン管理の常道だった。この選択肢が現在は使えない。

MLCCは「電子部品のコメ」と呼ばれるほど汎用的な受動部品だが、AIサーバーは従来型サーバーよりも高容量・高信頼性の品種を大量に消費する。主要メーカーであるMurata、Samsung、Yageoは価格引き上げと割り当て制を実施しており、リードタイムは26〜40週間に拡大している。

タンタルコンデンサはコンゴ民主共和国とルワンダの採掘障害が直撃した。精錬工程が少数の世界的プレイヤーに集中しているため、産地の障害が市場全体の価格に直結する。AIサーバー向け需要の旺盛さが価格の戻りを妨げており、入手困難な状態が続いている。

Wi-Fiモジュール価格の10〜20%上昇も加わり、マザーボードの部品コスト全体への圧力は多面的だ。

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3%と10%のギャップが示すもの

メーカーが8月に実施した値上げが平均3%に留まった事実は、需要の弱さを反映している。DIY PC市場は低迷が続いており、大幅な値上げは販売数量のさらなる減少につながるリスクがある。コストを吸収してシェアを守るか、値上げして利益率を保つか——このジレンマが今のマザーボードメーカーが直面している局面だ。

ただし吸収し続けるには限界がある。製造コストが少なくとも10%増加した状況で3%の値上げしかできないなら、その差は利益の圧縮によって埋めるしかない。MSIはすでに複数モデルで価格調整を行い、ASUSとGigabyteは高出荷モデルを中心に対応した。各社の対応幅はモデルによって異なるため、均一な値上げにはなっていない。

注目すべきは、このコスト上昇がマザーボードだけの問題ではない点だ。PCBを使うすべての電子製品がこの連鎖の影響下にある。ただし、メインストリームのマザーボードは価格帯の制約が厳しく、コスト吸収力が他カテゴリより小さい。その分、転嫁の遅れか、あるいは急激な転嫁かという二択が、製品ラインナップの選定に影響する可能性がある。

調達環境も変わりつつある。CCLをはじめとする高度素材のリードタイムは最大3〜5ヶ月に拡大し、サプライヤーはアロケーション(割り当て)制を導入し始めている。大量発注者が優先される構造の中で、小口ロットのPC向け部品が後回しになる傾向は今後も続く可能性がある。

Q4が次の分岐点になる

現時点で大手メーカーからの公式な追加値上げ発表はない。ただ、Board Channelsのような業界フォーラムはサプライチェーンの参加者が早期の需給情報を共有する場であり、メーカー公式の価格発表ではないが、市場動向の先行指標として参照されることがある。

今後の判断材料は二点だ。一つは年末商戦に向けたQ4価格改定のタイミングで、各社の正式なプライスリストに変更が入るかどうか。もう一つはAIサーバー向け需要が引き続きサプライチェーンを圧迫するかどうかだ。電子グレードガラスクロスの新規供給が2027年中頃まで増えない以上、PCBコストの高止まりは当面続く可能性が高い。銅価格が仮に軟化してもガラスクロスと樹脂の制約が残るため、全体的な緩和は遅れる見込みだ。

一方、PC市場の需要が回復すれば、メーカーはコスト増を転嫁しやすくなる。消費者にとっては、年内にマザーボードを購入する計画があるなら、Q4の価格改定が実施される前が相対的にリスクが低い。ただし、この見通しはBoard Channelsのフォーラム報告に基づくものであり、大手メーカーが公式にどう決定するかは現時点では未確定だ。