Google Pixelの顔認証を暗い場所で使いやすくする可能性がある、新たな照明機能の開発痕跡が見つかった。Android Authorityは10月6日(米国時間)、Android 17 QPR3 Beta 1を解析し、「Face Active Illumination」に関するコードと設定画面を確認したと報じた。

Pixelの顔認証は、端末のロック解除だけでなく、対応するアプリへのログインや支払い時の本人確認にも利用できる。一方、周囲が暗いと顔を十分に認識できず、動作しない場合がある。

今回見つかった機能は、その弱点を照明で補おうとする方向性を示している。ただし、どの光源を使うのか、どのPixelが対応するのかはまだ分かっていない。画面を明るくして顔を照らす方式と、赤外線を使う方式では、取得できる顔の情報も使い勝手も大きく異なる。

AD

開発コードから見える、照明の明るさと利用条件

Android Authorityが確認したのは、照明の明るさを調整する項目と、就寝時間帯や運転中に使用を許可するかどうかに関わる設定だ。

サイレントモード中の使用を示す名称もあり、単に顔を照らす強さを変えるだけでなく、どの場面で照明を使うかまで設定できる可能性がある。同媒体の独自解析による発見である。

ただし、表示できた設定画面は未完成だった。

コードには「暗い」状態に関係するとみられる項目もあるが、周囲の明るさを指しているのか、Androidのダークモードを指しているのかは判然としない。

また、実際にこの照明機能を動作させ、暗所で顔認証に成功したという検証結果が示されたわけでもない。

解析対象となったAndroid 17 QPR3 Beta 1は10月2日に公開された。

QPRは四半期ごとのプラットフォーム更新で、Googleは正式提供に先立ち、開発者が動作を確認できるベータ版を公開している。

ただし、ベータ版のコードに機能の痕跡があっても、その機能が同じQPRの正式版に必ず搭載されるとは限らない。今回の発見も、提供開始の予告として受け取ることはできない。

クラス3の顔認証でも、暗い場所では使えない場合がある

Googleは2023年のPixel 8発表時、機械学習の進歩によって顔認証がAndroidで最も強い生体認証区分を満たし、銀行アプリへのログインやGoogle Walletにも使えるようになったと説明した。

それまでの「顔を向けて端末のロックを解除する」機能から、対応するアプリで本人確認に使える機能へ用途が広がった。

Androidの生体認証区分で最上位に当たるクラス3は、認証データを安全に扱う仕組みや、他人や偽装を誤って本人として受け入れる危険などを評価するものだ。

アプリとの連携も、その安全性に応じて認められる。

ただし、「クラス3」であることから、赤外線センサーを搭載していることや、完全な暗闇でも必ず認証できることまでは導けない。

Googleの顔認証ヘルプにも、暗い場所では顔認証が機能しない場合があると明記されている。

つまり、本人かどうかを安全に判定する仕組みがあっても、その判断に必要な顔の情報を十分に取得できなければ認証は成立しない。

生体認証としての安全性と、暗所での使いやすさは別の問題である。

今回の照明機能が狙っていると考えられるのは、この撮影条件の改善だ。

顔へ届く光を増やせば、本人と判断する基準自体を緩めなくても、暗い場所で認証できる場面を増やせる可能性がある。

ただし、新機能で実際にどのような判定を行うのか、その効果がどの程度あるのかは公表されていない。顔認証の安全性そのものが変更されたことを示す情報もない。

AD

画面を明るくする方式とFace IDでは、得られる顔情報が違う

SamsungはGalaxyの顔認証について、暗い場所で顔を認識しやすくするため、画面の明るさを一時的に上げる設定を公式ヘルプで案内している。

利用できる設定は機種やソフトウェアによって異なるが、ディスプレイを照明代わりに使う方式には既存の例がある。

一方、AppleのFace IDの説明では、TrueDepthカメラが目には見えない多数の点を顔へ投射し、その配置を解析して顔の奥行きを示す深度マップを作る。

さらに赤外線画像も取得し、登録済みの顔データと照合する。Appleは、この仕組みにより完全な暗闇でもFace IDを利用できると説明している。

画面を明るくして顔を撮影しやすくする方式と、赤外線を使って深度情報や画像を取得するFace IDでは、光の使い方も、取得する情報も異なる。

2026年10月7日時点の説明を、光源、取得する情報、暗所での役割に分けて整理すると次のようになる。

方式・開発状況 光の使い方 顔について得る情報と暗所での役割
Galaxyの既存の画面補助 画面を一時的に明るくする 暗所で顔を認識しやすくする。Samsungは、この設定によって深度情報を取得する仕組みが加わるとは説明していない
Pixelの新機能を画面照明と仮定した場合 画面の光で顔を照らす可能性 顔を撮影しやすくする可能性がある。光源も実際の処理も未確定
Face IDのTrueDepth 不可視の点を投射し、赤外線画像を取得 深度マップと赤外線画像を照合に使う。Appleは完全な暗闇でも利用できると説明

表はSamsungとAppleの公式説明、Android Authorityの解析内容を、仕組みの違いが分かるよう整理したものだ。

認証成功率や速度を同じ条件で測った比較ではなく、GalaxyとPixelの生体認証としての安全性が同じという意味でもない。

画面を照明として使う方式なら、既存のディスプレイを使って顔を撮影するための光を補える。

しかし、画面を明るくしただけで、Face IDのように顔の奥行きや赤外線画像を取得できるようになるわけではない。

暗所での使い勝手を改善できたとしても、どの程度暗い場所まで使えるのか、顔の向きや距離にどの程度左右されるのかは、実装後に確認する必要がある。

Android Authorityは、見つかった設定項目から、画面を明るくする方式が有力だとみている。ただし、実際の光源を特定できたとはしていない。

また、以前報じられた顔認証の開発計画「Project Toscana」と今回の機能との関係も確認されていない。

今回のコードから、Pixelへの専用赤外線ハードウェアの搭載が決まったと判断することはできない。

夜間のまぶしさと、照明を使う条件

就寝時間帯やサイレントモード中に照明を使うかどうかを設定できるのであれば、夜間の顔認証には新たな使い分けが生まれる可能性がある。

例えば、暗い寝室で端末を短時間確認したいときに、顔認証を助けるため画面が強く光れば、利用者が望む明るさを大きく超えてしまう可能性がある。

顔を認識しやすくすることだけを優先すればよいとは限らない。

仮に画面照明方式であれば、照明の明るさや使用条件を調整できる設定には、こうした不便を抑える意味があると考えられる。

夜間でも顔認証を使いたい人は照明を許可し、まぶしさを避けたい場合は指紋認証を使う、といった選択が可能になるかもしれない。

ただし、就寝時間帯には自動で照明を抑えるのか、初期設定で照明が有効になるのかなど、具体的な動作はコード上の名称だけでは分からない。

既存のPixelの顔認証には、画面を直接見ることを求める設定や、アプリへのログインや支払いを承認する際に追加確認を求める設定もある。

照明を使って顔を認識しやすくする条件と、利用者本人が画面を見て操作を承認する条件は、分けて考える必要がある。

光を当てて顔を認識しやすくすることは、利用者の意思確認の代わりになるものではない。

Googleは現在、暗所で顔認証がうまく動作しない場合に備えて、指紋認証を併用することを案内している。

新しい照明機能が導入されたとしても、照明を使いたくない場面や、顔をうまく認識できない場面で、指紋など別の認証方法へスムーズに切り替えられることが、日常的な使いやすさを左右する。

AD

対応機種と、実際の認証動作が次の判断材料

既存のディスプレイを照明として使う方式なら、専用の光源を追加する方式に比べ、ソフトウェア更新だけで機能を提供しやすい可能性がある。

ただし、それだけを理由に、過去のPixelを含むすべての機種が対応すると考えることはできない。

どの世代の顔認証システムと組み合わせられるのか、どの用途まで利用できるのかは、Googleが正式な仕様を示すまで分からない。

特に確認したいのは、ロック画面の解除だけでなく、対応アプリでの本人確認にも照明が使われるかどうかだ。

Googleのヘルプで説明されているPixel 8以降の顔認証の用途を考えると、暗所での改善がアプリ認証にも適用されれば、夜間にログインしようとして別の認証方法へ切り替える手間を減らせる可能性がある。

ただし、今回の解析では、そこまでの適用範囲は明らかになっていない。

実用性を判断するには、暗い場所で実際に認証できるかだけでなく、認証にかかる時間も確認する必要がある。

画面がどの程度明るくなり、何秒ほど点灯するのかも、寝室などでは使い勝手を大きく左右する。

照明をオフにした場合の動作まで含めて確認できれば、顔認証の利便性を高めながら、夜間に望む画面の明るさも保てる改善なのかが見えてくる。