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トランプ関税、スマホ・PC除外へ大転換:撤回の背景と影響

Y Kobayashi

2025年4月13日

Trump政権は4月12日(現地時間)、スマートフォンやコンピュータ、半導体など20カテゴリの電子機器を新規関税から除外することを発表した。米国税関・国境警備局(U.S. Customs and Border Protection: CBP)が公開した新ガイダンスによると、これらの製品は中国からの輸入品に課される125%の追加関税や全世界からの基本関税10%の対象外となる。この決定により、iPhoneの価格が最大3,500ドルに高騰する可能性が回避され、テクノロジー業界と消費者に大きな安堵をもたらしたが、依然として一部関税は残り、今後の動向は不透明な部分もある。

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関税除外の詳細:何が対象で、何が変わるのか

米税関・国境警備局(CBP)は2025年4月11日夜(米国時間)、Trump大統領による大統領令14257号(およびその後の修正)に基づく追加関税の対象から、特定のハイテク製品を除外するガイダンスを発表した。この措置は4月5日に遡って適用される。

除外対象となる主な製品カテゴリー

CBPが示したガイダンスによると、以下の製品群が追加関税の対象から除外される。

  • スマートフォン (HTSUS 8517.13.00など)
  • コンピュータ(ラップトップ、デスクトップなど) (HTSUS 8471など)
  • 半導体・チップ (HTSUS 8541, 8542など)
  • ハードドライブ、フラッシュドライブ、メモリカード (HTSUS 8523.51.00など)
  • フラットパネルTVディスプレイ (HTSUS 8528.52.00など)
  • 半導体製造装置 (HTSUS 8486など)
  • その他電子部品 (ソーラーセルなど、HTSUS 8541.49関連)

これらの製品は、当初課される予定だった中国製品に対する125%の追加関税、およびその他の国からの輸入品に対する10%の基本関税から除外される。

全ての関税が撤廃されたわけではない

重要なのは、今回の除外措置が全ての関税を撤廃するものではないという点だ。Trump政権発足以前から存在した関税や、フェンタニル対策などを理由に中国製品に課されている既存の20%の関税は、依然として適用される可能性があるという。

CNBCは、除外対象製品の最終的な実効税率についてホワイトハウスとCBPに確認を求めたが、明確な回答は得られていないと報じている。つまり、対象製品の輸入コストが完全に元通りになるわけではない可能性が残る。

ホワイトハウスの説明

ホワイトハウスは今回の除外措置について、「企業が生産拠点を米国に移管するための時間を確保するため」と説明している。Kush Desai副報道官は声明で、「Trump大統領は、半導体、チップ、スマートフォン、ラップトップなどの重要技術の製造を中国に依存できないことを明確にした」「大統領の指示のもと、これらの企業はできるだけ早く米国内での製造を開始しようと急いでいる」と述べている。

なぜ除外?市場と業界の反応は

今回の関税除外の背景には、当初の関税発表が引き起こした市場の混乱と、ハイテク業界からの強い懸念があったと見られる。

市場の動揺と業界の懸念

Trump大統領が4月初旬に中国製品に対して最大145%(既存の20%+追加125%)という高関税を発表した際、市場には大きな動揺が走った。S&P 500は急落し、米国債利回りは急騰するなど、投資家はリスク回避の動きを強めた。

政策転換への圧力か

特にハイテク業界への影響は甚大と見られていた。iPhoneの大部分を中国で生産するAppleは、関税発表後に一時6400億ドル以上の時価総額を失ったとCNBCは報じている。一部の試算では、関税が適用された場合、iPhoneの価格が3,500ドルにまで跳ね上がる可能性も指摘されていた。Wedbush SecuritiesのDan Ives氏は、関税がハイテク業界にとって「解放の日以来の黒い雲」であり、実施されれば「ハルマゲドン」になっていただろうと述べている。

多くのハイテク企業は、関税発効前に在庫を確保するため、駆け込みで輸入を急いだとも報じられている。

こうした市場の反応や、Appleをはじめとする大手ハイテク企業のCEOらによる懸念表明や働きかけが、今回の除外決定に影響を与えた可能性は高い。Ives氏は「ハイテク投資家にとって夢のシナリオだ」「大手ハイテク企業のCEOたちが声を上げ、ホワイトハウスは状況を理解し、耳を傾けざるを得なかったのだろう」と分析している。

市場と消費者への影響

関税除外の発表は、市場に一定の安堵感をもたらした。懸念されていたスマートフォンやPCの大幅な価格上昇は、当面回避される可能性が高まった。

しかし、Trump政権の予測不可能な通商政策自体が依然として市場の不確実性要因であり、投資家の信頼が完全に回復するかは未知数であることには変わりはない。また、一部製品ではすでに関税を見込んだ価格設定が行われたと見られる動きも報じられており、市場が関税騒動以前とは異なる状況にあることは確かだろう。

サプライチェーンと国内生産の課題

ホワイトハウスは「国内生産回帰」を理由に挙げるが、専門家はその実現には多くの課題があると指摘する。米国のハイテク製品輸入の約66%は中国からであり、この構造を短期間で変えるのは容易ではない。

PwCのScott Almassy氏は、サプライチェーンの初期段階にある素材への関税の方が影響が大きいと指摘。また、DeloitteのDuncan Stewart氏は、CHIPS法による補助金をもってしても、米国の半導体製造シェアを大幅に回復させるには数十年単位の時間がかかると分析している。

また、台湾のTSMCのような企業がなければNVIDIAのAI分野での躍進も難しかった可能性は大いにあり、製造拠点だけでなく、設計やエコシステム全体の重要性も指摘されている。関税だけで複雑な貿易不均衡や国際競争力の問題を解決するのは困難であり、補助金政策など多角的なアプローチが必要だろう。

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今後の見通し

今回の除外措置は、多くのハイテク製品を対象としているが、状況は依然として流動的だ。中国との対立は根深く、半導体分野などで国家安全保障を理由とした新たな調査や規制が導入される可能性は決して低くない。また、多くの国に対する関税猶予期間は90日間でありその後の展開も不透明だ。

今回の関税除外は、ハイテク業界と消費者にとって一時的な猶予期間をもたらしたが、米中間の貿易摩擦やグローバルサプライチェーンの再編という大きな潮流における一幕に過ぎない可能性もある。今後の政策動向や企業の対応を引き続き注視する必要があるだろう。


Sources

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