Windows 11 26H2へ更新したところ、メモリ使用量が減り、普段の操作も軽快になったという報告が出ている。Windows Latestは10月5日、3年間使用しているメモリ16GBのノートPCで、更新後に使用量が約2GB減ったと報告した。メモリを増設しにくいPCにとっては期待できる変化だが、この一例だけで26H2によって一律に2GB削減されるとは判断できない。Microsoftが進めてきた操作時の応答性向上と、起動後のメモリ使用量の変化を分けて見ると、今回の更新で何を評価すべきかが見えてくる。
応答性の改善は26H2より前から始まっていた
Microsoftの公式資料を時系列で見ると、操作時の応答性を高める改善は5月26日の24H2・25H2向け更新ですでに明記され、6月9日の更新にも引き継がれている。26H2で初めて導入された改善というわけではない。
5月26日の任意プレビュー更新「KB5089573」では、アプリの起動や、スタートメニュー、検索といったWindowsの基本操作を高速化すると説明していた。この変更は段階的に配信される項目に含まれているため、同じ更新を適用したPCでも、改善が有効になる時期がそろうとは限らない。
| 公式資料の時点 | 対象・位置づけ | 性能改善との関係 |
|---|---|---|
| 2026年5月26日、KB5089573 | 24H2・25H2向け任意プレビュー | アプリ起動、スタートメニュー、検索、アクションセンターの高速化を記載 |
| 2026年6月9日、KB5094126 | 24H2・25H2向け月例更新 | 前月のプレビュー更新に含まれた非セキュリティ改善を取り込む |
| 26H2の年次更新 | 対象となる24H2・25H2搭載PCへ有効化パッケージで提供 | 月例更新を通じて配信済みの多くの改善を共通基盤上で有効化する |
この表は、5月の更新履歴と6月9日の更新内容、26H2の変更点一覧を対応させたものだ。公式に示された対象と配信方式を比較したものであり、個々のPCで機能が有効になった日や、実際の速度向上率を示しているわけではない。
26H2は24H2・25H2と共通のコード基盤を使い、すでに配信済みの機能の一部を有効化するとともに、サポート期間を更新する。年次アップデートとしてバージョン名が切り替わる時期と、内部の改善が実際に届く時期は必ずしも一致しない。そのため、26H2へ更新して初めて変化を感じる人がいる一方で、それ以前から同じ改善を利用していた人もいる。
Microsoftは26H2で、エクスプローラーのホーム画面についても起動時間と応答性を改善したと説明している。ただし、更新履歴に「高速化」と記載されていても、すべてのPCで同じだけ速くなるわけではない。日常的な待ち時間がどの程度短くなるかは、端末の構成や使い方によって変わる。
CPUを瞬間的に高速化し、操作時の待ち時間を減らす
アプリを起動した直後などにCPUの動作周波数を一時的に引き上げる「低遅延プロファイル(Low Latency Profile)」も、応答性を高める仕組みとして注目されている。Windows Latestは8月12日の独自検証で、同じCore i5-13420H搭載PCに同一のアプリ環境を用意し、8月の更新前後を比較した。HWiNFOでCPU周波数を確認したところ、更新後はアプリ起動時に高性能コアが最大周波数付近まで上昇し、起動時間も短くなったという。
同媒体によると、周波数が高くなるのは1~3秒程度だ。操作を始めた直後だけ処理能力を高め、必要な処理を早く終えてから再び待機状態へ戻す。クリックしてから画面が反応するまでのわずかな待ち時間を縮めることが狙いだ。
ただし、8月にこの変化が確認されたのは同媒体の検証機であり、すべてのPCで同じ日に有効になったことを意味するわけではない。Microsoftの5月の説明には、すでにアプリ起動の高速化が改善項目として含まれていた。
Microsoft自身の説明にも、この方向性に沿った変更がある。5月1日の品質改善報告では、日常的によく使われるOS操作やアプリを対象に、性能と消費電力の調整を3月中旬から配信してきたと説明していた。処理をCPUコアへ割り当てるスケジューラーにも手を加え、CPUの省電力状態であるCステートをより適切に制御することで、普段の操作に対する応答性を高めるとしている。
ここで注意したいのは、CPU使用率と動作周波数は別の指標だという点だ。CPU使用率が低い場面でも、短時間の処理をどの周波数で実行するか、どのタイミングで省電力状態から復帰するかによって、体感的な応答速度は変わる。
逆に、メニューやアプリが素早く開くようになったからといって、動画エンコードやゲームの描画性能まで同じ割合で向上するわけではない。低遅延プロファイルの効果は、まず操作を始めた直後の待ち時間がどれだけ縮まるかで評価するのが適切だ。
メモリ使用量の減少は、複数の改善が積み重なった可能性
Microsoftは、メモリ使用量を減らすために進めている改善についても説明している。7月31日の進捗報告では、より効率的なメモリ割り当てを導入し、アプリやOSの各コンポーネントに伴うメモリ消費を減らす取り組みを挙げた。画面表示に使われるWinUI 3の改善に加え、OS内部で利用されるChromiumやWebView2の効率化も進めているという。
アプリが必要とするメモリを割り当てる仕組み、画面を描画する仕組み、Webコンテンツを表示する部品は、それぞれ異なる層で動いている。Windows全体のメモリ使用量は、こうした複数のコンポーネントと、実際に動作しているアプリの積み重ねで決まる。単一の機能を変更するだけで、すべてのメモリ消費量が決まるわけではない。
使用するメモリ量だけでなく、不要になったメモリをどれだけ早く解放するかという改善も進められている。Microsoftは5月、ウィジェットの通常時のメモリ消費を抑えるとともに、使われていないときはより早くメモリを解放する取り組みを説明した。
また、すぐに表示できるようアプリや機能をあらかじめ起動しておく処理についても、利用者が制御できる範囲を広げ、メモリ容量の少ない端末では制限する方針を示している。当時はInsider向けに段階的な配信が始まった時期だった。
こうした経緯を考えれば、26H2への更新後にメモリ使用量が改善する可能性は十分にある。ただし、今回報告された約2GBの減少について、どの変更がどの程度寄与したのかまでは分かっていない。Microsoftがメモリ割り当てや表示部品の改善を進めていることと、1台のPCの起動後の数値から個々の改善効果を算出できることは別の話だ。
また、CPUの動作周波数を短時間引き上げる仕組みも、RAM使用量の削減を直接説明するものではない。操作の応答性を高める施策と、メモリに余裕を生み出す施策は、同じPCで同時に効果を発揮していても、別々に評価する必要がある。
「使用中7GB」と「キャッシュ済み4GB」は単純に足せない
Windows Latestが検証したメモリ16GBのPCでは、再起動後のタスクマネージャーに7.0GBが「使用中」と表示された。Windowsが認識しているメモリ容量は15.7GBで、「キャッシュ済み」は4GB、「利用可能」は8.8GBだった。これらは、その時点におけるPC全体のメモリ状況を示す数字だ。
「使用中」の7GBは、Windowsそのものだけが消費している容量ではない。起動時に常駐するアプリやドライバーなども含まれる。同媒体のPCでも複数の常駐アプリが動作しており、OS単体のメモリ使用量を比較したものではない。
この点はMicrosoftのメモリ評価資料でも説明されている。この資料自体は旧世代のWindows向け評価ツールを扱っているが、ここではメモリの分類や、起動時にどのような要素がメモリを消費するかという基本的な説明を参照している。
キャッシュは、一度読み込んだデータをメモリ上に残しておき、再び必要になったときの読み込みを高速化する仕組みだ。この中には、アプリがメモリを必要としたときに再利用できるスタンバイメモリも含まれる。Microsoftは、Windows 11も対象とするキャッシュ管理の文書で、スタンバイ領域が「利用可能なメモリ」の一部として扱われることを説明している。
したがって、「使用中」の7GBと「キャッシュ済み」の4GBを単純に足して、「11GBが占有されている」と考えるのは適切ではない。空いているメモリの一部を、必要なデータをすぐ取り出せるようキャッシュとして活用しているためだ。キャッシュの値が大きいからといって、それだけでアプリが使えるメモリの余裕が少ないとはいえない。
更新前後で「使用中」のメモリが減ったという観測には意味がある。ただし、常駐アプリの状態やアプリのバージョンが変われば、PC全体のメモリ使用量も変化する。再起動直後の1回の計測だけから、「Windows 11 26H2では一律に2GB軽くなった」と結論づけることはできない。
効果を確かめるなら、普段と同じ使い方で比較する
手元のPCで改善を確かめたい場合は、更新前後で条件をできるだけそろえて測る必要がある。それぞれ再起動し、ログイン後に同じ時間だけ待ってから比較する。常駐アプリや電源設定をそろえ、比較に使うアプリのバージョンも記録しておくと変化を判断しやすい。
メモリ使用量を減らすために常駐アプリを停止してしまえば、その変更自体の効果が測定結果に混ざる。OS更新による差を見るのであれば、普段と同じ環境を保つことが重要だ。
何を測るかも分けて考えたい。起動後の「使用中」と「利用可能」は、アプリを動かすためにどれだけメモリの余裕があるかを見る目安になる。スタートメニューやアプリを開くまでの時間は、操作時の応答性を見る指標になる。そして普段使うブラウザーや仕事用アプリを同時に動かせば、実際の作業環境で余裕が増えたかどうかを確認できる。
一つの数字だけでPC全体の「速さ」を表すことは難しい。メモリ使用量が減ったか、操作時の待ち時間が短くなったか、複数のアプリを同時に使ったときに余裕が増えたかを、それぞれ分けて見る必要がある。
Microsoftは7月の報告で、メモリ8GB以上を搭載するPC向けの最適化を今後の重点項目の一つとして挙げていた。こうした取り組みが、どの程度のメモリ容量を持つPCで、どのような作業に効果をもたらすのかについては、今後も比較検証が必要だ。
メモリを増設できないノートPCでも、普段使うアプリを同時に動かした状態で待ち時間が短くなり、利用可能なメモリにも余裕が残るのであれば、OS側の改善によってPCを快適に使える期間を延ばせる可能性がある。



