Microsoftは2026年8月17日、Windows 11のFile Explorerで右クリック時に開くコンテキストメニューの段階展開を始めた。対象はWindows 11 Insider Experimental Preview Build 26340.9212であり、設定画面から組み込みコマンドやアプリ拡張の見せ方を変えられる。Microsoft自身が、Windows 11で導入した新メニューが時間とともに「混雑し、遅くなった」と説明した点が出発点である。
Windows 11の新メニューは、Windows 10時代に積み上がった項目と処理を整理するための設計だった。ところが5年後、問題は消えず、アプリが拡張を追加するほどメニューを開く処理も増えるという形で戻った。2026年版では、何を上位メニューに残すかを利用者が設定で調整できる。
2021年に解いたはずの問題が戻った
2021年にMicrosoftがWindows 11の新コンテキストメニューを導入した際、念頭にあったのはWindows 10のメニューが20年にわたって無秩序に成長した状況だった。旧来のIContextMenu拡張では多くのコマンドがExplorerのプロセス内で動くため、性能と信頼性を損なう可能性があると同社は説明していた。新しい上位メニューでは共通操作をポインターの近くへ置き、OpenとOpen withをまとめ、同じアプリの複数の操作はアプリ名付きのflyoutへ集約した。
互換性を切り捨てたわけではない。IContextMenuによる旧拡張や利用頻度の低いコマンドは「Show more options」に残し、Shift+F10でもWindows 10のメニューを開けるようにした。二層化は、旧拡張を維持しながら上位メニューを軽く保つための意図的な設計だった。
しかしMicrosoftは2026年の発表で、その新メニューも時間の経過とともに混雑・低速化したと認めた。右クリックしてから操作できるようになるまでの時間を大幅に減らす必要があるという。2021年版が項目をOS側で整理する設計だったのに対し、今回の変更は、利用者が不要な組み込み項目やアプリ拡張の露出を減らせる点に差がある。
これはWindows 10のメニューをそのまま復活させる変更ではない。既存の旧メニューへ戻す公式設定は示されておらず、2026年版が変えるのはWindows 11の新メニューの表示と既定値である。
設定で変えられる表示の範囲

Build 26340.9212では、コンテキストメニュー末尾の「Customize menu」から、設定のPersonalization配下にある設定ページを開ける。利用者はSend to、Create shortcut、Printなどの組み込みコマンドをオン/オフできる。右クリックで常に見えている必要がない操作を、個別に外せるようにする。
アプリが加える拡張は、メインメニューに置くかサブメニューへまとめるかを選べる。サブメニュー自体を隠す設定も用意される。これまでアプリ側の登録内容によって上位メニューへ並びやすかった項目を、利用者が視界から外す選択肢が増える。
Cut、Copy、Pasteは、メニュー上部の横並びアイコン列ではなく、縦の項目として表示することもできる。Rename、Delete、Shareも同じ表示方法を選べる。Propertiesは最下部へ移動できる。Windows 10風の操作感に寄せる選択肢は含むが、旧メニューの構成や実装を既定表示へ戻すものではない。
設定が全ファイル共通なのか、拡張子、フォルダー、背景の種類ごとに変わるのかは明らかにされていない。設定の同期やバックアップ、企業向けポリシーとMDM、アクセシビリティの最終仕様も未公表である。表示を選べるという発表内容と、管理環境でどこまで制御できるかは分けて見る必要がある。
右クリックが遅くなる仕組み
Windows 11の上位メニューに表示されるアプリ拡張は、IExplorerCommandとアプリIDを使う。File Explorerはメニューを構築するとき、IExplorerCommandのCOMクラスを有効化し、GetTitle、GetIcon、GetStateなどを呼び出す。Microsoftは開発者に対し、これらを速く保ち、重い処理をUIの経路で動かさないよう求めている。
理由は明確である。IExplorerCommandのメソッドはUI threadから呼ばれ、ネットワーク資源への通信はUIの停止を招き得る。メニューを開く瞬間にアプリ拡張ごとの初期化や状態確認が重なれば、利用者が待つ時間も増える。Microsoftが「アプリが独自の項目を加えるたび、メニューは余分な処理をする場合がある」と説明したのは、この経路を指す。
同社は高速化の源泉を、内部のエンジニアリング改善と、既定メニューを軽くすることの両方だとしている。File Explorer全体では数十の潜在的な停止・中断要因を取り除いたとも述べた。ただし、これは右クリック単体の改善件数ではない。
今回の中心は新しいSDKや拡張APIではない。OSが項目をどう表示し、どの既定値を採り、利用者が何を隠せるかを変える。Microsoftは2021年、開発者に軽い実装を求めた。2026年版では利用者にも表示制御を渡す。ただし、表示制御が右クリックの待ち時間にどの程度影響するかは、現時点では検証されていない。
性能改善を測る材料はまだ足りない
Microsoftはコンテキストメニュー単体について、新旧のベンチマークと改善率を公表していない。測定機種、拡張数、コールド/ウォーム条件、メモリ消費も未公表である。File Explorer全体で除去した停止・中断要因の「数十」という説明も、右クリックの応答時間へそのまま置き換えられない。現時点で確認できるのは、表示を軽くする方針と内部改善の説明までである。
とりわけ、設定で非表示にした拡張のCOM activation自体を省くのか、画面から項目を隠すだけなのかは技術資料で説明されていない。前者なら拡張の初期化や呼び出しを減らせる可能性があるが、後者なら視認性の改善とCPUやI/Oの削減は同じではない。Microsoftはその差を明らかにしていない。
配布の範囲も限定される。Build 26340.9212はWindows 11 version 26H2を基にしたExperimental Previewで、Controlled Feature Rolloutにより一部の利用者から段階的に提供される。同じビルドを導入しても全員が同時に利用できるわけではなく、機能は変更、削除されるか、一般提供されない場合もある。
一般提供の日付と正式な対象バージョンは未定で、Experimental以外のInsiderチャネルや24H2、25H2へ展開されるかも分からない。実際の改善は、メニュー単体の時間を拡張数とコールド/ウォーム条件ごとに測り、非表示設定がactivationをどう変えるかが示されて初めて比べられる。現時点で設定を試せるのはControlled Feature Rolloutの対象になった一部のInsiderに限られ、待ち時間がどこまで縮むかは、その検証を待つ段階である。