Microsoftは、Windows 11向け2026年8月のセキュリティ更新プログラム「KB5121003」以後に寄せられたゲームのクラッシュ報告を、公式のRelease Healthで調査案件として扱い始めた。8月19日17時50分(太平洋時間)に公開し、18時10分に更新した項目の状態は「Investigating」である。利用者に影響しているとみて情報を集めている段階であり、同社の更新プログラムが原因だと確定したわけではない。

この区別は実務上大きい。散発的な利用者報告から、Microsoftが公式に追跡する段階へ進んだ。一方、現時点で公表されているのは対象範囲と症状であって、最終原因、修正の提供日、影響を受けた人数ではない。ゲーム側が示した回避策も、どのタイトル向けかを確かめて使う必要がある。

AD

8月11日の更新と、公式が確認した対象

KB5121003は8月11日に公開されたWindows 11 24H2/25H2向けの累積セキュリティ更新である。24H2のOSビルドは26100.9168、25H2は26200.9168になる。Release Healthは、サーバー製品ではなく、この2つのWindows 11クライアント版を影響対象として挙げた。

項目 Microsoftが公表した内容
更新プログラム KB5121003(2026年8月11日公開)
対象OS Windows 11 24H2/25H2クライアント
対象ビルド 26100.9168/26200.9168
名前が挙がったゲーム ARC Raiders、MARVEL Tōkon: Fighting Souls、The Finals
症状 応答停止、通知なしの終了、EXCEPTION_ACCESS_VIOLATION、予告のない再起動
状態 Investigating

表にある症状は同じ障害を意味しない。ゲームのプロセスで表示されるEXCEPTION_ACCESS_VIOLATIONと、端末が再起動する事象は、Release Healthが併記した現象である。Microsoftは「Microsoftが原因の問題かどうか」を調査していると説明しており、3本のゲームで共通する単一原因を公表したわけではない。

Release HealthでのInvestigatingは、Microsoftがユーザーへの影響を認識し、対象範囲、緩和策、根本原因の情報を集める状態を指す。影響を詳しく確認した後のConfirmedとは異なる。Microsoftが回避策を案内した「Mitigated」や、KBで修正を提供した「Resolved」にも達していない。現段階でクラッシュの報告を無視すべきではないが、更新プログラムの不具合として確定したものとして扱うこともできない。

KB5121003のサポートページには、セキュリティ強化を含む更新であり、Microsoftは現在この更新の問題を認識していないという記述が残る。これはRelease Healthと矛盾するように見えるが、掲載場所が異なる。進行中の問題については、調査中の項目を掲載するRelease Healthが現在の追跡記録になる。サポートページの文言から、寄せられた問題が存在しないと結論づけることはできない。

ARC Raidersだけが示したinpoutx64.sysという経路

Embark Studiosは8月18日公開の「ARC Raiders Live Update 1.42.0」で、KB5121003に関連するPC版のクラッシュを既知の問題に挙げた。同社は公式Discordの一時的な回避手順へリンクし、修正を進めているとしている。ゲームの開発元が更新名を挙げ、プレーヤー向けの対応を出した点は、Microsoftの調査項目とは別の具体的な材料だ。

そのDiscord投稿は、Windows更新後のinpoutx64.sysの動作とクラッシュの関係を示している。ただし、これはEmbarkがARC Raidersの影響を受けたプレーヤーに対して示した経路である。Microsoftが挙げたMARVEL Tōkon: Fighting SoulsやThe Finalsまで、同じファイルが原因だとする根拠にはならない。

InpOut32/InpOutx64は、ユーザーレベルのプログラムからハードウェアポートへ直接アクセスするためのDLLとドライバーである。配布元のHighresolution Enterprisesによれば、ドライバーはDLLの初回実行時にインストールされる。つまり、古いドライバーはゲームそのものではなく、別のユーティリティが導入している場合がある。

同社はこのプロジェクトをレガシーで積極的なサポート対象外とし、InpOutx64のテストはWindows 10 x64までとしている。Windows 11で動くと考えていたものの、同プラットフォームでの試験は行っていないという。したがって、該当ファイルだけを削除すれば解決する、と一般化するのは危うい。所有するアプリケーションを確認せずにドライバーを外せば、別のユーティリティに影響する可能性があり、ファイルが再び現れることもある。

AD

古いカーネルドライバーを取り巻く互換性問題

Microsoftは2026年5月、カーネルモードドライバーの信頼性や認定を高め、古い、または品質の低いドライバーの扱いを見直す「Driver Quality Initiative」を公表した。Windowsのカーネルで動くドライバーは、互換性の問題が起きた場合にゲームやユーティリティの外側まで影響が及び得る。そのため、古い第三者ドライバーが残るPCでは、導入元と対応OSを把握する意味が増している。

とはいえ、同施策が今回のクラッシュを起こした、あるいはKB5121003が特定のカーネルハンドル検証を導入したという説明は、Microsoftから出ていない。MicrosoftのBug Check 0x93文書は、NtCloseに無効または保護されたハンドルが渡された場合の停止コードを説明するが、今回のRelease Health項目に共通する署名として0x93を示したものでもない。個別のダンプで観測される事象と、公式調査中の全体像を混同しないことが必要だ。

いま取れる対応はタイトルごとに異なる

ARC Raidersのプレーヤーは、同作の公式アップデートノートがリンクするEmbarkの手順を参照するのが出発点になる。その手順は同作向けに示された一時対応であり、別タイトルの症状へ転用するものではない。MARVEL Tōkon: Fighting SoulsとThe Finalsについては、調査時点で同じ水準の公式な個別回避策は確認されていない。

Microsoftは影響を受けたユーザーにFeedback Hubからの報告を求めている。Win+Fで起動でき、スクリーンショットを添えて送信できるほか、サインイン中なら類似するフィードバックを検索して投票することもできる。再現条件、対象ゲーム、OSバージョンを添えることで、調査対象の範囲を絞る材料になる。

累積セキュリティ更新を削除すれば、同時にそのセキュリティ変更も失う。MicrosoftはKB5121003のアンインストールを公的な標準対応として案内していない。Microsoftが原因と緩和策を示すか、各ゲームが修正版を出すかで、次の対応が決まる。