Microsoftが、Windows 11の起動時間とWindows Helloの応答性に「大幅な改善」があったと表明した。Windows + Devices担当バイスプレジデントのMark Linton氏が、AcerのIFA 2026基調講演で明らかにした。同社は8GBのRAMを搭載するPCでも快適に動くよう最適化を続けるという。ただし、何秒短くなったのか、どのビルドで試したのか、いつ利用者へ届くのかは公表していない。今回増えたのは改善を進めたという幹部の進捗表明であり、検証できる製品仕様ではない。

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IFAで何が新たに確定したのか

Acerが9月2日に開いた基調講演で、Linton氏は「基礎部分の改善を続けている」と述べ、起動時間とWindows Helloの応答性を成果の例に挙げた。さらに、8GBのRAMでもPCが快適に動くよう最適化していると説明した。いずれも利用者が毎日触れる場面だが、発言には更新プログラム名もビルド番号もなかった。

これは新しい大型アップグレードの発表とは異なる。Microsoftは7月31日のWindows品質報告ですでに、起動とサインイン時間が改善したと説明し、「8GB以上のメモリ最適化」を年末までの重点領域へ加えていた。IFAで新たに確定したのは、同社がその後も作業を続け、幹部が成果を「大幅」と評価したことである。改善幅を裏付けるデータは増えていない。

Windows 11バージョン26H2との関係にも注意が要る。8月27日の公式案内によれば、26H2は有効化パッケージとして提供され、24H2、25H2、26H2は同じサービス基盤を共有する。新機能や品質改善の多くは月例更新を通じて段階的に入るため、IFA発言だけを根拠に「26H2で起動が速くなる」と結び付けることはできない。

同じ理由で、バージョン番号が26H2へ変わったことだけを改善の証拠にもできない。7月の公式報告は、多くの品質改善を秋からWindows 11 PCへ広く展開するとしたが、起動時間と8GB最適化をどの更新へ入れるかは分けて示していない。利用者側では、配信されたKBとOSビルドを記録し、機能が有効になった時点を特定する必要がある。

OS全体にまたがる8GB対策

Microsoftが公表した作業は複数の層にまたがる。7月の品質報告では、Windowsが初期状態で使うメモリ量を減らし、より効率的なメモリアロケーターを使うほか、WinUI 3で作るアプリ、Windows内で動くChromiumとWebView2のメモリ効率を高めていると説明した。OSの基盤、画面部品、Web技術を使うコンポーネントを別々に詰める取り組みである。

公開済みの更新にも低メモリ環境を狙った修正はある。KB5101684は、システムメモリが少ないときのサインイン画面とロック画面の信頼性を改善し、起動中のスタートメニューとタスクバーも安定させる。一方、同ページは起動時間の短縮量を示さず、8GB専用の更新とも、IFAで語られた成果の実装とも書いていない。信頼性の修正と時間短縮を同じ変更だとみなす材料はない。

8GB機の応答性は、OSだけのアイドル時使用量でも決まらない。アプリを開けば、コードとデータがRAMへ入り、空きが足りなければWindowsは利用頻度の低いページをストレージへ移す。OSと標準コンポーネントが使う量を減らせれば、アプリがRAMに残る余地は増える。ただし、ブラウザのタブ数や常駐アプリ、内蔵GPUとのメモリ共有が違えば、同じ8GBでも結果は変わる。

効き方も層ごとに異なる。メモリアロケーターの改善は複数のアプリやコンポーネントへ広がり得るが、WinUI 3の調整は同フレームワークを使う部分に効く。ChromiumやWebView2の削減は、それらを組み込むWindows機能の負担を変える。Microsoftの説明は改善箇所を示している一方、8GB機でどの層が何MB減らしたかまでは明らかにしていない。

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「大幅な改善」を検証する6項目

「起動が速い」という言葉には、複数の時間が含まれる。Microsoftの起動性能評価は、電源ボタンを押してからデスクトップが表示され、起動後のタスクが終わるまでを測り、OS起動と「Post On/Off」を分ける。高速スタートアップを使うシャットダウン後の起動と、完全な再起動も同じではない。既定の評価では3回の計測結果を平均する。

検証項目 IFAで分かったこと まだ必要な情報
効果量 「大幅な改善」との評価 短縮した秒数、割合、ばらつき
比較基準 従来状態より改善したこと 比較したWindowsビルドと設定
測定区間 起動時間とWindows Helloを改善 電源投入、OS起動、サインイン、起動後処理の境界
端末条件 8GB RAM機も最適化対象 CPU、ストレージ、ドライバー、常駐アプリ
提供対象 更新を通じて改善を届ける方針 KB番号、Previewチャネル、対象バージョン
配信時期 作業を継続中 試験開始日と一般提供日

表の6項目がなければ、「大幅」という評価を第三者が追うことはできない。

同社は数値を出せない企業ではない。2023年には、Windows HelloのEnhanced Secure Sign-Onに関する別の改善で、メモリ逼迫時に最大10%の高速化、さらに多数のアプリが復帰する場面では遠隔手続き呼び出しを減らして最大8%短縮したと条件付きで公表している。今回も基準ビルドと端末構成をそろえ、測定区間を定義して複数回試せば、「大幅」という評価を第三者が追える。

メモリも同様だ。タスクマネージャーで一瞬の使用率を比べるだけでは、キャッシュやOSの調整動作が混ざる。Microsoft Learnは、ワーキングセット(Working Set。その時点で物理メモリ上にあるページ群)がRAM量やメモリ圧力に左右されると説明し、操作中にシステム全体が触れたページを数える参照セット(Reference Set。シナリオ中にシステム全体が実際に触れたメモリページの集合)を推奨する。

参照セットでは、操作中に一時的に膨らむピークと、操作後にも残る定常状態を分けられる。ピークを減らせば、別のアプリが使っていたデータをRAMから追い出す場面を抑えやすい。定常状態を下げれば、次の操作に使える空きが増える。OSが何MB減ったかと、アプリの待ち時間が実際に減ったかをつなぐには、両方の記録が要る。

8GBで快適かは同じPCの更新前後で決まる

Windows 11の最小要件4GBのままであり、IFA発言は要件変更ではない。Microsoftの一般向けメモリ案内は、文書作成や動画視聴などを想定して長期利用には8GBを推奨し、写真・動画編集など高い性能を要する作業には16GB以上を案内する。「動く」「推奨する」「快適に動く」は別の基準である。

改善を確かめるなら、同じ8GB機で更新前後のWindowsビルドを固定し、同じシャットダウン方法とアプリ構成で複数回測る必要がある。起動ではデスクトップ表示までと起動後処理の完了までを分ける。メモリでは同じブラウザや文書作成、ビデオ会議などの操作を再現し、ピーク使用量と定常状態を記録する。さらに、ページングと入力への応答時間を比べるべきだ。

Microsoftが対象KBと測定条件を示せば、IFAの表明は初めて利用者が追試できる変更になる。8GB機を買い替えずに使い続けられるかは、空きメモリの数字一つでは決まらない。同じ作業で待ち時間とストレージへの退避が減り、それが異なる機種でも再現するかが判断線になる。