Microsoftは2026年10月15日、Windows 11の応答性が同社の測定で最大20%改善したと発表した。メモリ管理も見直し、8GBのRAMを搭載するPCで使用中のデータを最大2GB多くメモリ内に保てると説明している。8GB以下のPCでは、Widgetsを開くときだけ読み込む方式に変え、200MB超をアプリなどへ回すという。日々の操作が軽くなる期待はあるが、3つの数値は測っているものが違う。8GB機にどんな効果を見込めるのかは、応答時間とメモリの使い方を分けると見えてくる。
3つの改善値は、何を測っているのか
Microsoftが10月15日に示した「最大20%」「最大2GB」「200MB超」は、それぞれ操作の応答時間、RAM内に保つデータ量、Widgetsの読み込みを遅らせて空ける容量を指す。公式発表の本文と脚注から、対象と比較条件を対応させると次のようになる。
| 公表値 | 何が変わるか | 対象・比較条件 |
|---|---|---|
| 応答性が最大20%改善 | 日常操作に対する反応 | 検索、Start、右クリック、設定、Snipping Tool、エクスプローラーの応答時間。ビルド26300.9550と26200.7628を比較 |
| 最大2GB多く保持 | 使用中のデータを低速ストレージへ移さずRAMに残す | 8GB機で特に意味があると説明。物理メモリの増設量ではない |
| 200MB超を利用可能に | Widgetsを開くまで読み込まない | 8GB以下のPC。脚注はビルド26300.9550に含まれる改善に基づくとする |
応答時間の測定は、操作してから画面が反応するまでの速さに関わる。PC全体の計算能力が一律に20%上がったという結果ではなく、8GB機だけを使って測ったとも記されていない。20%の根拠となる脚注が挙げるのは、表に記した操作の応答時間である。
一方、最大2GBは「使用中のデータをどれだけ多くRAMに残せるか」という容量の話だ。常時2GBの空きが生まれる、あるいは8GB機が増設なしで10GB機になる、という意味にはならない。また、Widgetsの節約分と最大2GBの効果がどこまで重なるかは示されておらず、両者を足して「2.2GB節約」とする計算にも根拠がない。
8GB機で効くのは、アプリへ戻るときの待ち時間
ブラウザーで調べものをした後、開いたままの文書アプリへ戻る。そんな切り替えで必要なデータがRAMから追い出されていれば、ストレージから読み直す処理が発生する。画面は開いていても、すぐに操作できるとは限らない。
Microsoftのアプリ性能に関する開発文書は、この仕組みを説明している。OSは最近使われた内容をメモリに残そうとし、必要に応じて、以前に使ったデータを追い出す。別のアプリへ戻ったとき、そのデータがRAM内になければディスクから読む必要があり、ユーザーは遅さを感じやすくなるという。
つまり、同じ8GBでも、作業中のデータがRAM内に残るかどうかで切り替え時の待ち時間は変わり得る。今回の「最大2GB多く保持」という説明は、この場面と結びつく。アプリやタブを増やしても反応を保ちやすくするというMicrosoftの狙いを、CPUの処理速度とは別の面から理解できる。
Widgetsの変更は、使っていない機能に先にメモリを渡すのを抑える施策だ。必要になったときに読み込めば、それまではアプリや作業データに使える容量が残る。開発文書も、背景で使うメモリを減らすことが、他のアプリの内容を追い出しにくくし、システムの応答性を助けると説明している。
ただし、これはメモリ使用量が減るほど常に快適になる、という単純な関係ではない。同じ文書は、作り直す負担が大きいキャッシュなら保持を選ぶ場合もあるとする。容量を空けることと、すぐに使う内容を残すこと。その両方を作業に合わせて調整する点に、メモリ管理の難しさがある。
7月の計画から具体的なメモリ改善へ
Microsoftは7月31日の品質改善報告で、8GB以上のPCに向けたメモリ最適化を新たな重点分野に掲げていた。10月の発表は、その方針に対し、データ保持量と背景のメモリ使用量という具体的な効果を示した形になる。
7月の報告には、改善を進めている場所も挙がっている。メモリをアプリへ割り当てる仕組みを効率化し、アプリや部品に伴う余分な使用量を抑える。画面を構築するWinUI 3の調整を続け、OS内で使われるChromiumやWebView2の効率も高めているという。見た目の変更だけではなく、複数の部品で小さな負担を減らす取り組みが背景にある。
もっとも、10月の最大2GBという値に、それぞれの施策がどれだけ寄与したかは説明されていない。新しいメモリ圧縮方式を導入した、特定の部品だけで2GBを生み出した、と内部実装を決めつけることもできない。確認できる変化は、8GB機を含む最適化の方針から、利用者の作業に結びつく数量の説明へ進んだことだ。
手元のPCで期待できること
8GB機でまず注目したいのは、普段の作業を続けたときのアプリ切り替えや、メニューを開く際の引っかかりである。使っていないメモリの量だけを比べるより、同じアプリを開いて同じ作業へ戻る場面を比べるほうが、今回の狙いに沿っている。
ただ、20%はMicrosoft自身の測定に基づく上限の表現だ。発表では比較したビルドと操作の種類は分かるが、測定PCの構成や操作ごとの実時間は公表されていない。8GBのどのPCで何秒短くなるかを、この数字から割り出すことはできず、同社も実際の性能は端末構成や使い方などで変わるとしている。
配信も機能ごとに見る必要がある。公式発表の冒頭は、今年進めた改善が広く配信され始めていると説明し、脚注では時期と利用可能性が端末・地域によって異なると記す。新しい検索画面にはInsider向け提供と年内の対象拡大が案内されているものの、その日程をメモリ改善すべての配信予定として読むのは早計だ。
同じ8GB機でも、更新後に作業中のアプリへ戻る待ち時間が減るなら、メモリを使い切りやすい場面での改善を評価できる。普段使うアプリを保ったまま作業を続けられるかが、今回の最適化を手元のPCで判断する目安になる。



