オックスフォード大学ウェルビーイング研究センターが3月20日に発表した2025年世界幸福度レポートによると、日本は世界147カ国中55位にランクされ、アジアでは5位となった。フィンランドが8年連続で世界一の座を維持する中、アジアでは台湾が最も幸福な国として27位にランクインし、シンガポールを抜いてアジアトップの座に立った。
世界幸福度ランキング2025の概要
2025年の世界幸福度ランキングでは、フィンランドが10点満点中7.736点を獲得し、8年連続で1位の座を維持した。上位4位はすべて北欧諸国が占め、フィンランドに続いてデンマーク、アイスランド、スウェーデンの順となっている。
今年の特徴的な変動としては、コスタリカとメキシコが初めてトップ10入りしたことが挙げられる。コスタリカは6位、メキシコは10位にランクされた。また、ハマスとの戦争状態にもかかわらず、イスラエルは8位と高い順位を維持している。
一方、米国は過去最低となる24位に転落した。2012年に11位だった米国の順位は徐々に低下し続けている。同様に英国も23位と、2017年以降で最低の評価となった。リトアニア(16位)、スロベニア(19位)、チェコ(20位)などの東欧諸国は上昇傾向を示しており、東欧と西欧の幸福度の収束が見られるとレポートは指摘している。
世界最下位はアフガニスタンで、特に同国の女性は生活が特に困難だと報告している。次いでシエラレオネ、レバノンが下位に位置している。
日本のランキングとアジアの状況
日本は世界55位、アジア圏内では5位にランクされた。アジアの最上位は台湾で、世界ランキングでは27位となっている。台湾は昨年の31位から上昇し、これまでアジアトップだったシンガポールを抜いて首位に立った。ベトナムも昨年の54位から46位へと大幅に順位を上げており、過去5年間で83位から約40位上昇という顕著な改善を示している。
アジア地域の幸福度ランキングは以下の通りとなっている:
- 台湾(世界27位)
- シンガポール
- ベトナム(世界46位)
- タイ
- 日本(世界55位)
- フィリピン
- 韓国
- マレーシア
- 中国(世界68位)
- モンゴル
レポートによると、台湾が高いランキングを獲得した理由の一つとして、他者との食事の共有が多いことが挙げられている。台湾の人々は週に7回の夕食のうち5.5回、7回の昼食のうち4.7回を他者と共有していると報告しており、この合計10.1回という数字は142カ国中8位の高水準である。
幸福度を決定する要因と今年の特徴
世界幸福度レポートのランキングは、人々が自己評価した生活の満足度に基づいているが、その違いを説明するために以下の6つの主要な要因が分析されている:
- 1人当たりGDP
- 社会的支援
- 健康寿命
- 自由の感覚
- 寛大さ
- 腐敗の認識
今年のレポートの特徴的なテーマは「ケアと共有」であり、他者との食事の共有が幸福度と強く関連していることが新たに発見された。レポートによれば、食事の共有が主観的幸福に与える影響は、収入や失業の影響と同程度である。
しかし、東アジア諸国、特に日本と韓国では、一人での食事が増加傾向にあるという懸念が示されている。これには単身世帯の増加と人口の高齢化が主な原因として挙げられている。米国では過去20年間で一人で食事をする人が53%増加しており、2023年には約4人に1人が前日のすべての食事を一人で取ったと報告している。
また、他者の親切さへの信頼も幸福と密接に関連していることが明らかになった。他の人が自分のなくした財布を返してくれるだろうと信じるということは、国民の幸福を強く予測する要因となるが、興味深いことに、人々は他者の親切さを過小評価する傾向があり、例として、紛失した財布の返却率の認識と実際の返却率には大きな乖離があり、実際の財布返却率は人々の予想の約2倍だったとの実験結果も報告されている。
世界的な傾向と若者の幸福度
レポートが示す懸念事項の一つは、若者の社会的孤立の増加である。2023年には世界の若年成人の19%が社会的支援を得られる人が誰もいないと報告しており、これは2006年と比較して39%増加している。
特に北米では若者の幸福度が著しく低下している。歴史的に若者は高齢者より生活満足度が高いと報告してきたが、現在は北米ではその傾向が逆転し、高齢者の方が若者よりも幸福となっている。西欧でも同様の傾向が見られ始めていると指摘されている。
また、「絶望による死」(自殺や薬物・アルコール乱用による死亡)と親切な行為の間には関連性があることも明らかになった。寄付やボランティア、見知らぬ人を助けるなどの親切な行為が多い国では、絶望による死亡率が低いとの分析結果が示されている。
さらに、社会的信頼の低下が政治的な極性化と「反システム」投票の増加と関連しているという分析もレポートに含まれており、幸福度と社会的信頼が政治的動向にも影響を与えている可能性が示唆されている。
これらの知見を総合すると、物質的な豊かさだけでなく、社会的つながりや信頼関係、特に食事の共有といった日常的な交流が個人と社会の幸福度に大きな影響を与えていることがわかる。日本を含む多くの国で、こうした社会的要因への関心を高めることが、幸福度向上への鍵となりそうだ。
Source
- World Happiness Ranking: World Happiness Report 2025: People are much kinder than we expect, research shows