2年前、米国成人でAIチャットボットを使っていたのは3人に1人(33%)だった。2026年現在、その数字は2人に1人(49%)に跳ね上がった。だが同じ調査で、「AIが今後20年で社会にポジティブな影響をもたらす」と答えたのはわずか16%にとどまった。普及と不信が同時に進行している。

Pew Research Centerが2026年6月に発表した「Americans and AI 2026: Chatbots, Smart Devices and Views on Impact」は、2026年2月17〜23日に5,119人の米国成人を対象に実施された調査だ。ChatGPT登場から約3年が経過した現在のAI観を記録した包括的な世論調査で、使用率の急増と社会的信頼の低水準という対照的な事実を同時に記録した。

AD

49%が使い、16%しか信じない:数字が示す逆説

2年間でチャットボットの使用率は33%から49%へと16ポイント増加した。ChatGPTの使用率は2023年の18%から44%と倍以上に達し、Gemini24%)、Copilot17%)、Meta AI14%)と続く。米国成人の約4人に1人が毎日チャットボットを使っており、主要テクノロジーの普及速度としても際立つ。

「社会へのポジティブな影響」を信じる16%に対し、ネガティブな影響を予測する人は40%だ。政府のAI規制能力を疑う割合も2024年の62%から2026年には67%へと5ポイント増加しており、懸念は使用率の急増と反比例して深まっている。使用の拡大と社会的信頼の乖離は、偶発的に生じた数字ではなく、方向性のある趨勢だ。

ジョンズ・ホプキンス大学 Institute for Assured Autonomy のAnton Dahbura氏は、Pew Researchの調査に対してコメントした外部専門家として、「現在の使用規模はAIが完全に主流になったことを示している」と述べている。同氏はまた「米国人はAIが良い目的にも悪い目的にも使えることを正しく認識している」とも語った。使用と信頼の分離は、認識の失敗ではなく認識の深化の結果かもしれない。

18〜29歳の実像:最も使い、最も警戒する

18〜29歳のチャットボット使用率は66%(2024年55%から+11ポイント)で全年齢層のトップだ。毎日使う割合も31%と高く、情報検索(54%)、業務タスク(41%)、画像・動画作成(34%)に加え、感情サポートや悩み相談(20%)、孤独感の解消(7%)という個人的な用途でも積極的に活用している。

ところが同じ世代が、AIの社会的影響については最も否定的な評価を下している。「今後20年でAIが社会にネガティブな影響を与える」と答えたのは48%で、ポジティブと答えた14%の3倍以上だ。個人への影響も同様で、ネガティブ37%に対しポジティブは20%にとどまる。

30〜49歳ではチャットボット使用率が61%(2024年41%から+20ポイントと最大の増加)に達しつつも、ネガティブ評価は39%。50〜64歳は使用率42%・ネガティブ38%、65歳以上は使用率23%・ネガティブ35%と「わからない」が21%に達する。全年齢層で「ネガティブ > ポジティブ」という構図は変わらないが、若い世代ほど使用頻度が高く、かつ懐疑度も高いという傾向が際立っている。

Dahbura氏が「AIは私たちに降りかかっているものだ」と表現した状況が、まさにこの世代に集中して現れている。彼らはAIを積極的に使いながらも、その社会的帰結については冷静に——ときに厳しく——評価している。

AD

不信の根拠:71%のプライバシー懸念と規制への失望

「AIにより個人情報がより安全でなくなる」と考える人は71%で、最も広く共有された懸念だ。「AIの発展が速すぎる」と感じる人は61〜65%と全年齢帯で安定しており、「政府がAIを適切に規制できないと思う」人は67%(2024年比+5ポイント)に達する。「米国企業がAIを責任を持って開発できない」という回答も59%を占めた。Dahbura氏が「いくつかの州を除いて、ガードレールが欠如している」と指摘する状況と数字は一致する。

チャットボット非使用者の不信はさらに根深い。「興味がない」が83%(うち主要因とした人は60%)でトップだが、「個人情報の使い方が心配」が79%、「正確な情報を与えてくれると信じられない」が76%と続く。使用者の懸念が「プライバシー・速度感・規制」という社会構造への不満であるのに対し、非使用者の不信は「精度への不信・用途の不透明さ」という機能的な問題が中心だ。両グループは同じ「不信」を持ちながら、その中身は異なる——しかしどちらも、AIが「使えるもの」と「信頼できるもの」の間の距離が埋まっていないと判断している点では共通している。

非使用者の67%が今後12ヶ月以内に使い始めると思わないと答えており、使用と非使用の分断は固定化しつつある。

2024年から逆転した民主党の規制不信

「政府がAIを適切に規制できないと思う」という回答を党派別に見ると、方向が鮮明に割れた。民主党支持者は2024年の54%から74%へと+20ポイント急増した一方、共和党支持者は70%から61%へと9ポイント低下した。2024年には規制不信で共和党(70%)が民主党(54%)を大きく上回っていたが、2026年には立場が逆転している。

この変化の背景には、2024年から2026年にかけてのAI政策環境の変化がある。同期間、AIによる雇用喪失懸念、生成AIを使った偽情報・ディープフェイク問題、大企業によるAI倫理違反事例の報告が相次ぎ、連邦政府レベルでの包括的な規制立法は実現しなかった。政権交代と規制方針の変化によって「政府が適切に介入してくれる」という期待が特に民主党支持者の間で失われ、不信が急速に広がったと考えられる。「米国企業が責任を持ってAIを開発できない」という回答でも民主党65%・共和党53%と差がある。

収入・人種別にも使用実態の差は大きい。チャットボット使用率は高所得者66%・中所得者49%・低所得者41%と収入に比例し、人種・民族別ではアジア系70%・ヒスパニック系49%・黒人49%・白人46%と開きがある。AIへのアクセスと使用経験の偏りは、そのままAI観の形成にも影響していく。

AD

信頼を勝ち取る条件——企業・規制・ユーザーそれぞれへの示唆

AI企業にとって最も重い数字はプライバシー懸念の71%だ。「興味はあっても個人情報の扱いが怖い」という層を取り込むには、データ収集・利用ポリシーの透明化と、実害が起きた際の責任の所在を明確にする仕組みが不可欠だ。「ガードレールが欠如している」という現状認識が変わらない限り、使用者が増えても不信は解消されない。

規制当局にとっての課題は、民主党支持者の規制不信が54%から74%に20ポイント跳ね上がったことの意味だ。AI規制への失望が党派横断的に広がりつつある中で、包括的な立法や標準の策定が遅れるほど「政府は信頼に値しない」という認識が固定化する。速度感の懸念(61〜65%)と規制の不備が連動している以上、規制の設計そのものよりも、設計プロセスを公開して市民が見えるようにすることが先に求められる。

ユーザー側の変数は、現在チャットボットを使っていない約51%が握っている。このグループの79%が「個人情報の扱いへの不安」を、76%が「精度への不信」を持ち、67%が今後12ヶ月以内に使い始める気はないと答えている。この壁が崩れない限り、使用率の伸びは頭打ちになる。若者世代(18〜29歳)の66%が使いながら48%が社会的懸念を保ち続ける現象は、「道具として使いこなしながら設計の問題を批判する」という関与の形だ。信頼が16%から動くのは、データ透明化と規制立法の2つの条件が揃ったときであり、そのどちらも2026年現在は「進行中」にとどまっている。