AMDが次世代GPU向けに、ニューラルライティング(Neural Lighting)を準備しているとの情報が浮上した。発端は、GPU関連の未発表情報で知られるKepler_L2氏が2026年9月8日、AMDにもNVIDIA DLSS 5に似た仕組みがあると投稿したことだ。

ただし、公開されている原投稿から確認できるのは、次世代向け機能の存在を示唆する短い一文までである。RDNA 5専用かと問われた同氏は「おそらく。かなり重い処理だから」と答えており、世代の紐付け自体を確定情報として提示してはいない。実装方法や性能を語ったAMDの公式資料も、現時点では確認できない。

この話を理解する鍵は、従来の超解像やノイズ除去と、最終画像の表現をAIで生成する技術を分けることにある。AMDがすでに公開したFSR Redstone、NVIDIAが研究成果として公表したDLSS 5、MicrosoftとAMDが共同開発するFSR Nextを並べると、推測の射程と次世代グラフィックスの方向性が見えてくる。

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「AMD版DLSS 5」という一文を3段階に分ける

Kepler_L2氏の投稿には、少なくとも3種類の情報が混在している。第1は、AMDにもDLSS 5に似た次世代の仕組みがあるという情報。第2は、負荷の重さを理由にRDNA 5向けだろうとする推測。第3は、その仕組みがどうあるべきかという同氏自身の設計意見だ。

同氏は、レイ再構成と同じものかという質問に「それは単なるノイズ除去だ」と答えた。さらに別の投稿では、DLSS 5が照明や材質を扱い、色調とカメラ効果にも作用すると説明した。望ましい実装としては、ジオメトリとBVHに加えて、レイ、深度、マテリアルなどのデータを直接入力し、照明と表面シェーディングを分ける案を述べている。

ここで線を引くべきなのは、この具体案がAMDの実装を示す記述ではなく、「自分ならこうする」という意見として書かれている点だ。入力データやレンダリング工程をAMDの仕様として扱う根拠にはならない。原投稿から確度を保って言えるのは、AMD側にもDLSS 5に近い次世代技術があるとの主張までとなる。

Redstoneはすでにニューラル化、ただし役割が違う

AMDの公式情報で確認できる現在地は、FSR Redstoneである。AMDは2025年12月、機械学習を使う4機能をまとめて公開した。高解像度化を担うFSR Upscaling、フレームを補うFSR Frame Generation、ノイズを除去するFSR Ray Regeneration、間接光を近似するFSR Radiance Cachingである。当初はRDNA 4向けに最適化され、対応ゲームへの導入を進めると説明していた。

4機能の役割は同じではない。Upscalingは低解像度の入力から高解像度のフレームを再構成し、Frame Generationは表示フレームの間を補う。Ray Regenerationは低サンプルのレイトレーシング結果からノイズを取り除き、細部を復元する。Radiance Cachingは間接光の計算をニューラルネットワークで近似する技術だ。

2026年3月にAMDが公開したFSR SDK 2.2では、Upscaling 4.1、Frame Generation 4.0.0、Ray Regeneration 1.1.0に加え、Radiance Caching 0.9がプレビューとして収録された。『Crimson Desert』は3月19日の発売時にUpscalingとRay Regenerationを採用したとされる。一方、Radiance Cachingは正式版ではなく、ゲーム側の統合を試す段階に置かれていた。

つまりAMDは、解像度とフレーム数に加え、ノイズ除去と間接光という個別工程をすでにAIで置き換え始めている。しかし、完成した画面の芸術表現まで一つの生成モデルに委ねるとは公表していない。ここがDLSS 5との主要な境界になる。

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DLSS 5は最終画像の何を変えるのか

NVIDIAが2026年9月1日に公表したDLSS 5の研究は、従来の超解像を拡張しただけのものではない。1段階のピクセル空間拡散モデルを使い、ゲームエンジンが描いたフレームとモーションベクトルを受け取る。過去フレームの状態と、制作者が指定する芸術的方向性も条件に加え、最終表示画像の見た目を生成する。

狙いは、高コストな参照画像をそのまま再構成することではなく、シーンの意味と制作者の意図に沿った画面を直接作ることにある。NVIDIAは、材質表現と照明を一貫して扱い、カメラ効果や色調も生成できるとしている。RTX 50シリーズ上で最大4Kまでローカル実行可能だという。研究上の要件には、時間方向の安定性、入力に対する決定性、将来フレームを必要としない因果的な動作が含まれる。

この方式では、AIは欠けた画素を補う補助役から、画面の仕上げを担うレンダリング段階へ進む。開発者にとっては、高価なシェーダーやポストプロセスの一部を生成モデルに移せる可能性がある。その反面、ゲーム固有の画風をどこまで固定できるか、入力遅延や時間方向の破綻をどう抑えるか、ハードウェアごとの計算量をどう管理するかが課題になる。

AMD側の技術が本当に同じ領域を狙うなら、比較すべきは「DLSS 5相当」という名称ではない。モデルへ渡す情報、開発者が指定できる表現、従来のシェーダーとの分担、対応GPUでの処理時間が判断材料となる。これらは原投稿にもAMDの公開資料にも示されていない。

FSR Nextが示す方向、示さない製品仕様

AMDの次世代AIグラフィックスに関する公式な手掛かりは、Microsoftが2026年3月に発表したProject Helixにある。次世代Xboxの構想となる同プロジェクトは、AMDとの共同設計によるカスタムSoCを採用し、次世代DirectXとFSRを共同開発する。MicrosoftはこれをFSR Nextと呼び、AIをグラフィックスとコンピュートのパイプラインへ統合する方針を示した。開発者向けアルファ版ハードウェアは2027年から提供する計画だ。

この発表は、AMDとMicrosoftが個別機能の追加より広い範囲でAIレンダリングを設計していることを示す。ただし、Project Helixの公開情報にRDNA 5という製品名はなく、FSR Nextをニューラルライティングと呼んでもいない。Xbox向けの共同技術が、同じ形でPC向けRadeonへ展開されるかも未発表だ。

コンソールはCPU、GPU、メモリ構成を固定できるため、モデルの計算量やフレーム時間を設計しやすい。PCでは幅広いGPU世代と解像度を扱い、複数のゲームエンジンにも対応する必要がある。Project Helixが技術の方向を裏付けても、対応製品と提供範囲は別の確認事項として残る。

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次の勝負は名称でなく制御可能性

現時点で、確認済みの技術と未発表の仕様は次のように分かれる。

論点 確認済み 未確認
現行FSR Redstoneの4機能、SDK 2.2の各バージョン 最終画像の芸術表現を一つのモデルで生成する機能
次世代基盤 Project Helix向けFSR Next、AIをパイプラインへ統合する方針 RDNA 5という名称、PC版、必要性能
原投稿 AMDにもDLSS 5に似た次世代技術があるとの主張 入力データ、品質、速度、提供時期

AMDの次世代AIグラフィックスで確認済みなのはRedstoneの4機能とProject Helix向けFSR Nextの方向性までで、RDNA 5限定のニューラルライティング、具体的入力、性能、PC提供は未確認である。

今後の発表で見るべき点は4つある。第1は、低解像度の色画像やモーションベクトルに加え、ジオメトリやマテリアル情報までモデルへ渡すのか。第2は、照明と表面表現を開発者が別々に制御できるのか。第3は、対象がRDNA 5だけなのか、既存のRDNA 4にも一部機能を提供するのか。第4は、FSR NextがXbox固有の実装なのか、PC向けFSRへ共通化されるのかだ。

NVIDIAの発表によって、AIグラフィックスの競争軸は画素数やフレーム数から、開発者の意図を保ったまま最終画像を生成できるかへ広がった。AMDが対抗技術を投入する可能性は原投稿とProject Helixの方向性から読み取れる。しかし、製品名と実装を先回りして確定する段階ではない。次の公式資料で、モデルの入力、制御方法、対応ハードウェアが揃って初めて、DLSS 5との実質的な比較が可能になる。