Appleは2026年8月18日、EUでのアプリ流通と決済を対象に、複数の契約を統合する新しいビジネス条件を公表した。最も大きな変更は、代替アプリマーケットプレイスやWeb Distributionで配布するアプリにかかる負担を、インストール数から対象となるデジタル販売額へ移す点にある。

新条件は8月19日時点ではまだ発効していない。10月1日、または開発者がAttachment 14へ署名する日がそれより遅ければその日から適用される。Appleは欧州委員会との緊密な協力を通じ、ビジネス条件と代替配布を巡る意見の相違が解決したと説明する。欧州委員会は8月19日時点で、DMA第6条4項の代替配布手続きについて正式な処分を公表していない。

配布経路、決済表示、売上報告が一つの条件に統合され、開発者は負担の計算と運用上の対応を同時に見直すことになる。新条件で料金の基準がどう変わり、Appleの承認や審査がどこに残るのかが実務上の論点だ。

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0.50ユーロのCTFから販売額5%のCTCへ

従来のCore Technology Fee(CTF)は、Alternative Terms Addendumを受け入れた通常のアプリでは、App Storeと代替配布を合わせた直近12カ月の最初の年間インストール数が100万件を超えた分に、1件当たり0.50ユーロを課していた。代替アプリマーケットプレイス自体は最初の年間インストールから対象だった。外部購入リンクの料金は別契約で、Alternative Terms Addendumでは対象オファーに初回取得料2%とStore Services Fee(Tier 1は5%、Tier 2は13%)がかかり、StoreKit External Purchase Link Entitlement Addendumでは同じ2%5%または13%5%のCTCが加わる場合があった。

10月の統一条件では、代替マーケットプレイスまたはWeb Distribution経由の有料アプリ、デジタル商品・サービス、Appleプラットフォームで使える自動更新サブスクリプションなど、定義されたデジタル販売に5%のCore Technology Commission(CTC)をかける。マーケットプレイスやカタログへの有料アクセスも対象であり、実行可能な外部リンクをタップしてから7日以内に始まった対象のWeb販売も含まれる。全開発者の売上の5%ではない。

差は単純な例で見える。代替配布する通常アプリが年間初回インストール200万件を得ても、有料デジタル販売がなければ、旧CTFでは課金対象の100万件に0.50ユーロを掛けて50万ユーロだった。新CTCでは0ユーロとなる。他方、対象デジタル販売が1000万ユーロなら、5%で同じく50万ユーロになる。これは予測ではなく、課金の基準がインストール量から収益化へ移ったことを示す計算例である。

したがって、ダウンロードを広く集める無料アプリには負担減の可能性がある。反対に、代替配布で有料アプリや継続課金を伸ばす開発者は、販売額、配布経路、対象取引の範囲を月次で把握しなければならない。どちらが安くなるかは、インストール数だけでは決まらない。

App Store内の決済別料率と、代替配布の5%

App Store内の新しい料率は、決済経路で決まる。Appleのアプリ内課金(IAP)は26%で、指定プログラムの開発者と開始から1年を過ぎた適格なサブスクリプションには15%が適用される。代替のアプリ内決済処理は20%、低率区分は10%である。実行可能なリンク先で成立する7日以内の販売には15%、低率区分には10%のリンクアウト料金がかかる。これとは別に、代替マーケットプレイスまたはWeb Distributionで配布されるアプリの対象デジタル販売には、配布経路を基準に5%のCTCがかかる。

AppleはEUのストアフロントで、同一アプリ内にIAPと代替決済を併設できるようにする。もっとも、IAPは代替決済と同時に表示し、少なくとも同等の目立ち方にしなければならない。代替決済にはエンタイトルメント、AppleのAPI、システムの開示シートが必要で、価格や提供内容をIAPと異なるものにすることは認める。

開発者が選んだ決済手段の組み合わせは、EUのすべてのストアフロントで12カ月間固定される。リンク先の販売は無期限にAppleの手数料対象となるわけではなく、タップから7日以内という帰属期間が条件だ。KidsカテゴリのアプリはWeb購入の提供ができず、13歳未満へのアプリ外オファーは禁止される。代替決済には保護者ゲートが求められ、13〜17歳のアプリ外オファーにも同様の制約がある。各地のデジタル同意年齢が13歳より高い場合は、その年齢が置き換わる。

CTCは利用者価格から取引税を除いて計算する。開発者は失敗した取引を含む対象取引を報告し、暦月の終了後15日以内に月次報告を提出する。Appleが報告後に請求し、支払い期限は請求書発行から30日後である。料率表だけを比較すると、この運用コストを見落とす。

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代替マーケットプレイスの入口は広がったが、審査は残る

新条件では、代替アプリマーケットプレイスの運営やWeb Distributionの利用に、EU域内の法人を置くことは必須ではなくなる。財務上の信頼性を示す経路も増えた。D&BのLow RiskまたはBelow Average Risk評価、上場企業またはそのグループ、指定リストに載る投資会社からの出資、過去3年以内に無限定適正意見が付いた監査報告などを利用できる。出資額に下限はない。

ほかにも、Apple Developer Programの年会費免除を受けた非営利団体・教育機関・政府機関、少なくともBBB-格の金融機関による100万米ドルのスタンバイ信用状、あるいは開発者プログラム参加2年以上かつ前年の世界の年間初回インストールが100万件超という経路がある。信用状は開始後少なくとも6カ月維持する。以前は、A格の金融機関による100万ユーロの信用状を運営中維持するか、2年以上のプログラム参加と前年EUで100万件超の年間初回インストールが主な条件だった。

小規模マーケットプレイス運営者には、直近12カ月の世界売上が1000万ユーロ未満で、EUにおけるマーケットプレイス自体のダウンロードまたはサブスクリプション料金の生涯売上が100万ユーロ未満なら、免除がある。免除対象はマーケットプレイスアプリ自体の有料ダウンロード・アクセス料金であり、そのマーケットプレイスが配布する各アプリの対象デジタル販売は免除されない。

入口を増やしても、配布が自動的に認められるわけではない。代替配布にはAppleの承認とNotarizationが引き続き必要である。Notarizationは完全なApp Reviewとは別の、セキュリティ、プライバシー、機能性を基準とする審査であり、Appleは代替配布アプリに署名・暗号化を施し、既知のマルウェアを止められる。Appleは2026年秋に、アプリ内からダウンロードを始めるAPI、代替インストール画面の更新、海外旅行中のEU利用者がEU外でインストールできる期間を90日へ延長する計画も示した。

DMAの二つの論点と、10月1日に残る確認点

今回の変更を、DMAを巡る一件の是正として扱うと制度上の違いを見失う。2025年4月23日、欧州委員会はAppleに対し、外部オファーへ誘導するDMA第5条4項の義務違反で5億ユーロの制裁金を科し、技術的・商業的な制限を取り除くよう命じた。これはApp Store外の取引へ案内する行為、いわゆるステアリングを巡る別の判断である。

同日、委員会は代替アプリ配布に関するDMA第6条4項についても、Appleの契約条件が効果的な代替配布を妨げるとの暫定見解を示した。そこで挙げたのはCTF、厳しい適格性要件、煩雑で分かりにくいインストールの流れだった。Appleは2025年6月26日、単一のEUビジネスモデルとCTFからCTCへの移行を2026年1月1日までに予定すると公表していたが、今回の発効日はそこから9カ月後となる。

Appleは意見の相違が解決したと説明する。欧州委員会は8月19日時点で、DMA第6条4項の代替配布手続きについて正式な処分を公表していない。新条件は10月1日または開発者の署名後に発効し、開発者の支払いが実際にどう変わるかは、統一条件を受け入れる開発者の数、代替マーケットプレイスの参入、対象販売の報告実務によって明らかになる。