Reutersが8月19日に伝えたSamsung Foundryの価格改定には、「最大15%値上げ」という総括では捉えきれない地域差がある。同社のSF4では、2026年7月の新規受注に中国と米国の顧客へ前月比10〜15%、台湾の顧客へ5〜10%の上げ幅が示されたという。事情を知る2人の情報源に基づく報道で、Samsungはコメントを控えた。価格表や顧客別の契約条件は公式に開示されていない。

Reutersの情報源によれば、中国からの注文はSamsungの受注能力を上回る一方、同社は米国顧客を優先し、自社チップ向けにも能力を留保しているため、全ての注文を満たせない。記事が示したのは、同じ4nm世代で地域別の見積もりが異なり、供給にも優先順位があるという状況だ。ただし、Samsungが何を基準に値上げ幅を決めたかは確認されていない。AI/HPC向けの構成比が上がり、HBM4のベースダイも4nmを使い始めた今、価格改定とは切り分けて、限られた生産枠の配分を見る必要がある。

AD

SF4は地域によって上げ幅が違う

Reutersによると、SF4の値上げ幅は中国と米国の顧客で前月比10〜15%、台湾の顧客で5〜10%だった。中国顧客は最も高い上げ幅を受け入れていると、情報源の1人は説明した。同じプロセスノードであっても、新規見積もりの上げ幅は地域ごとに異なる。ただし、発注量や契約期間を含む顧客別の条件は開示されておらず、地域だけで差が生じたとは断定できない。

値上げはSF4に限らない。ReutersはSF5で10〜15%8nm10%近い価格上昇があったとしている。ただし、対象は2026年7月の新規受注であり、既存契約まで同じ条件で改定されたとは報じていない。Samsungは適用日、顧客、ウェハー単価を公表していないため、見えているのは報道が示す新規案件の範囲である。

5nm4nmの価格を上げる方針は、今回が初めてではない。TrendForceはSamsungが2025年第4四半期に顧客へ値上げを通知したと伝えていた。今回の新しさは、方針の存在ではなく、Reutersが地域別の見積もりと供給優先順位を具体的に報じた点にある。4nmを必要とする顧客は、ノードの選択に加え、どの地域の供給枠に入るかも調達条件として考える必要が出てくる。

台湾向けの5〜10%という幅が、中国・米国向けより低いからといって、台湾の顧客へ十分な生産枠があるとは結論付けられない。Reutersの報道は地域別の見積もりを示したが、顧客ごとの発注量、ダイ面積、契約期間は明らかにしていない。逆に中国・米国の10〜15%も、各社が実際に支払う確定単価ではない。数字は、7月に提示された新規案件の上げ幅として読む必要がある。

中国の注文と米国顧客への優先供給

中国からの注文はSamsungの受注能力を上回るが、同社は米国顧客への供給を優先するため、すべてを引き受けられない。Reutersは匿名情報源の説明として、同社が自社チップ向けに一部能力を留保していることも伝えた。同じ記事は中国顧客がより高いSF4の上げ幅を受け入れているとも報じたが、需要超過や供給優先が価格差の原因だとまでは確認していない。

Reutersは、中国顧客が海外ファウンドリへ依存する背景に、米国の先端半導体製造装置に対する輸出規制を挙げる。米商務省産業安全保障局(BIS)は2024年12月2日、先端ノードIC向けの製造装置24種とソフトウェア3種などを追加規制すると公表した。BISの措置は中国の先端半導体製造能力を制限する政策である。個々の中国企業がどの製品をSamsungへ発注したかは明らかではないが、海外の製造能力を求める需要が強まる条件にはなる。

米国向けの供給を優先し、自社向けにも能力を確保するなら、中国顧客は強い需要があっても希望量を確保しにくい。ただし、Samsungは地域別の優先順位やその基準を公式に認めていない。高い値上げが生産枠を得るための追加料金なのか、何が価格差を決めたのかは分からず、価格差のすべてを輸出規制で説明することもできない。

AD

Foundry全体のAI/HPC比率と、SF4を埋める製品

ReutersはSamsungの見通しとして、2026年のFoundry売上高に占める先端プロセスの比率が50%超、AI/HPC用途の比率が30%超になると伝えた。AI/HPCは2025年後半には15〜20%だったという。これはFoundry全体の売上構成であり、SF4の価格や稼働率、個別ラインの用途別比率を表す数字ではない。一方、Reutersが別に報じた平沢ラインの生産品目を見ると、SF4の枠を使う製品が具体化する。

韓国・平沢(ピョンテク)のSF4ラインは2025年末からフル稼働し、Qualcommなど外部顧客向けのロジックと、Samsung自身の多層HBM向けベースダイを生産しているとReutersは報じた。HBM4のベースダイは積層DRAMを制御するロジックダイで、Samsungは4nmプロセスを採用したHBM4の量産と商用出荷を2月12日に発表している。外部顧客向けロジックの受託生産と、メモリー製品に使うロジックの内製が4nm世代の供給配分で接する。

Samsungが2026年4月に示した第2四半期の見通しでも、先端ノードのフル稼働、4nmメモリー製品、AI/HPC向けLPUの量産拡大、HBM4ベースダイの供給増が並んだ。第2四半期の実績では、HBMベースダイ需要と米国顧客の強い受注でFoundry売上が増えたとしている。個別の製造ラインで外部顧客製品とベースダイが直接競合するかは開示されていないが、4nmの配分には外販ロジックと自社HBMベースダイの双方が入る。

Samsungは2026年下期に4nm LPUとベースダイの販売を拡大し、米国と中国の需要増を背景にFoundry事業の売上高を2桁伸ばす目標を掲げる。この目標は、Reutersが伝えた地域別価格や優先供給を公式に裏付けるものではない。ただ、外部のAI/HPCロジック、メモリー製品に使うベースダイ、地域ごとの新規受注が同時に増えるなら、4nmの生産枠を用途別・顧客別に振り分ける判断は以前より重くなる。

ウェハー原価から最終製品まで

Foundryの値上げは、顧客が購入するウェハーの原価をまず押し上げる。だが、そこからチップ1個当たりの原価、さらに完成品の価格までには複数の段階がある。ダイ面積が大きければ1枚のウェハーから取れる個数は減り、歩留まりが低ければ良品数も減る。パッケージ工程の費用も製品ごとに異なるため、新規ウェハー価格の上げ幅をそのまま小売価格の上げ幅へ置き換えることはできない。

AI向け製品では、ロジックダイ以外にHBMや先端パッケージが原価へ加わる。長期契約の条件によっては、顧客が値上がり分の一部を吸収する場合もある。したがって、中国・米国のSF4で10〜15%、台湾で5〜10%というReutersの数字は、スマートフォンやAIサーバーの販売価格を予告するものではない。調達担当者にとっては、どのプロセスを使うかに加え、どの地域の新規受注枠に入るかが原価に影響するという話である。

Samsungの採算も、価格改定の幅からは判断できない。同社はFoundry単独の売上高や利益額を開示しておらず、黒字かどうかも分からない。先端ラインの稼働と値上げは収益を改善し得るが、歩留まり、製品構成、設備の減価償却費を差し引いた利益は別に確認しなければならない。収益性を測るには、価格改定の上げ幅より、実際の販売構成と費用の開示が必要になる。次の決算では、4nm LPUとHBM4ベースダイの販売拡大が実績としてどう示されるか、先端ノードの稼働が続くか、そしてFoundry単独の採算に踏み込む開示があるかを見たい。